【解説】 ロシアは軍事的に何を誤ったのか ウクライナ侵攻

【解説】 ロシアは軍事的に何を誤ったのか ウクライナ侵攻
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60831488

 ※ 初戦のつまづき(キーフ(キエフ)に、電撃的に侵攻し、支配下に置くことに失敗した)が、全てだったような感じだな…。

 ※ 今日は、こんなところで…。

『(2022年3月23日)
ジョナサン・ビール、BBC防衛担当編集委員

ロシアは世界有数の強力な軍隊を保有している。しかし、その強力な軍事力はウクライナ侵攻の開始当初、ただちにあらわにならなかった。西側の軍事アナリストの多くは、ロシア軍のこれまでの戦いぶりに驚いている。「みじめなものだ」と言う専門家もいる。

ロシア軍の軍勢はほとんど前進せず、これまでの損失から立ち直れるのだろうかと疑問視する人もいる。3月半ばになって、北大西洋条約機構(NATO)の軍幹部はBBCに対して、「ロシア軍は明らかに目的を実現していないし、おそらく最終的にも実現しないだろう」と話した。だとすると、いったい何がうまくいかなかったのか? 西側諸国の複数の軍幹部や情報当局幹部に、ロシアが何をどう誤ったのか、尋ねてみた。
事実誤認が前提に

ロシアの最初の間違いは、自分たちより小規模なウクライナ軍の抵抗力と能力を過小評価したことだった。ロシアの年間国防予算は600億ドル(約7兆2600億円)以上。対するウクライナはわずか40億ドル(約4800億円)余りだ。』

『イギリス軍幹部によると、ロシアの軍事投資の大部分は、大量の核兵器と最新兵器の実験に費やされてきた。極超音速ミサイルの開発などが、それに含まれる。ロシアは世界最新鋭のT-14アルマータ戦車を開発したとされる。モスクワの赤の広場で行われる戦勝記念軍事パレードでT-14アルマータが登場したことはあるものの、戦場には現れていない。これまで実戦に投入されているのは、旧式のT-12戦車や、装甲兵員輸送車、大砲やロケットランチャーだ。

侵攻開始当初、ロシアは明らかに空では有利だった。国境近くまで移動させた戦闘機の数はウクライナ空軍の戦闘機の3倍だった。ほとんどの軍事アナリストは、ロシア軍が侵略開始と共に直ちに制空権を掌握するものと見ていたが、実際にはそうならなかった。

ロシア政府は、特殊部隊も、素早い決着をつけるのに重要な役割を担うはずだと考えていたかもしれない。

西側政府の情報当局幹部がBBCに話したところでは、特殊部隊スペツナズや空挺部隊VDVなどが少数精鋭の先遣隊となり、「ごく少数の防衛部隊を排除すれば、それでおしまい」だとロシアは考えていたようだ。しかし、開戦間もなく首都キーウ(ロシア語ではキエフ)近郊のホストメル空港に戦闘ヘリコプターで攻撃を仕掛けたものの、ウクライナ軍に押し返された。このためロシア軍は、兵員や装備、物資の補給に必要な空路を確保しそこねた。
T-14 Armata in Moscow in 2017

画像提供, Getty Images
画像説明,

軍事パレードには登場するものの戦場では見かけない最新式T-14アルマータ戦車

代わりにロシア軍は、補給物資のほとんどを主に陸路で運ぶ羽目になっている。このため軍用車両の渋滞が発生し、渋滞すると予測できる場所も生まれ、ウクライナ軍からは急襲しやすくなっている。道路から外れて進もうとした重装甲車は、ぬかるみで身動きが取れなくなった。「泥沼にはまった」軍隊のイメージが、ますます強くなった。

この間、人工衛星がウクライナ北部上空で撮影したロシア軍の長大な装甲車の列は、いまだに首都キーウを包囲できていない。ロシア軍は主に、鉄道を使った補給ができている南部で、軍を進めている。イギリスのベン・ウォレス国防相はBBCに、ロシア軍が「勢いを失っている」と話した。

「(ロシア軍は)身動きが取れない状態で、じわじわと、しかし確実に、相当な被害をこうむっている」
かさむ被害と低い士気

ロシアは今回の侵攻作戦のために約19万人の部隊を集めた。そのほとんどはすでに戦場に投入されているが、すでに兵の約10%を失ってしまった。ロシア軍とウクライナ軍双方の戦死者数を正確に判断するための、信頼できる数字はない。ウクライナはロシア兵1万4000人を死なせたと主張するが、アメリカはおそらくその半数だろうと見ている。

ロシア兵の間で士気が下がっている証拠もあると、複数の西側当局者は言う。士気は「とてもとても低い」とさえ言う当局者もいる。別の政府関係者は、ロシア兵はそもそもベラルーシとロシアの雪の中で何週間も待機させられた挙句に、侵略を命じられたので、「凍えているし、くたびれて、腹を空かせている」のだと話した。

ロシアはすでに失った分の兵士を補充するため、国の東部やアルメニアなど遠方の予備役部隊さえウクライナに移動させている。シリアからの外国人部隊や、謎めいた傭兵組織「ワグナー・グループ」も、近くウクライナでの戦闘に参加する可能性が「きわめて高い」と、西側当局者は見ている。NATOの軍幹部はこれについて、「たるの底にあるものを必死でかき集めている」印だと述べた。

補給と後方支援

ロシア軍は基本的な部分でつまずいた。軍事には、素人は戦術を語るが、プロは兵站(へいたん、物資補給などの後方支援)を学ぶという古いことわざがある。ロシアは後方支援について、十分に検討していなかったと言える証拠がいくつもある。装甲車の縦隊は、燃料も食料も砲弾も足りなくなった。故障した車両は放置され、やがてウクライナのトラクターに撤去されていった。

複数の西側当局者は、ロシア軍は特定の砲弾も不足しつつあると考えている。巡航ミサイルを含め長距離精密誘導兵器をすでに850~900発は使用済みだが、これは無誘導型の兵器よりも補充しにくい。この不足を補うため、ロシアは中国に支援を求めていると、米政府は警告している。
US soldier operates the Switchblade drone

画像提供, Alamy
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アメリカがウクライナに提供する武器には、自爆型のスイッチブレード・ドローンも含まれる見通し

対照的に、西側諸国からウクライナへの武器供与は絶えることなく続いており、ウクライナ側の士気を高めている。米政府は8億ドル(約950億円)規模の武器の追加供与を、発表したばかりだ。対戦車ミサイルや地対空ミサイルが追加されるほか、アメリカ製の小型自爆ドローン「スイッチブレード」も含まれる見通しだ。スイッチブレードはバックパックで運べるサイズで、地上の標的に小型の爆発物を届けることができる。

一方で西側当局者は、プーチン大統領が今からでも「これまで以上に残酷な形で攻撃を激化させる」こともあり得ると警告する。ウクライナ各地の都市を「かなり長期間」攻撃し続けられるだけの火力は、まだ残っていると。

様々な問題が作戦の速やかな遂行を妨げているとはいえ、プーチン大統領は「後には引かないだろうし、むしろエスカレーションを選ぶかもしれない。ロシアが軍事的にウクライナを敗れると、おそらく今でも自信を持ち続けているだろう」と言う情報当局者もいる。そしてウクライナ軍は確かにこれまで激烈な反撃を続けてきたものの、相当量の補給が続かなければウクライナも「いずれは弾と兵士が尽きてしまう」とも、この情報関係者は言う。

開戦当初に比べると、ウクライナが圧倒的に不利な状況ではなくなっているものの、それでもウクライナの劣勢は変わっていないようだ。

(英語記事 Ukraine: What have been Russia’s military mistakes?)』