米、石油備蓄1日100万バレルを追加放出へ

米、石油備蓄1日100万バレルを追加放出へ
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『【ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領は3月31日、今後6カ月間にわたって戦略石油備蓄を1日当たり平均100万バレル追加で放出すると発表した。計1億8000万バレルに相当する。他国も協調し、3000万~5000万バレルを放出する可能性がある。ロシアによるウクライナ侵攻で高止まりしているガソリン価格の抑制を狙う。

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バイデン氏はホワイトハウスで演説し「他国が数千万バレルを追加放出すると約束した」と明らかにした。米国以外の放出規模が「3000万~5000万バレルになるだろう」と述べた。国際エネルギー機関(IEA)は4月1日、石油の協調放出を協議する。

米国の放出は「史上最大の石油備蓄放出になる」(政府高官)という。国内需要の9日分に相当する。ガソリン高をどれほど抑える効果があるかは不透明だ。

バイデン政権は1日100万バレルの石油備蓄放出を表明した=AP

米国による戦略石油備蓄の放出表明を受け、3月31日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は反落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の5月物は前日比7.54ドル(7.0%)安の1バレル100.28ドルで取引を終えた。
バイデン氏は米国の石油会社に増産も求めた。巨額の利益を計上しているにもかかわらず、需要にあわせて供給を増やしていないと批判する。連邦政府が貸し出した土地が生産に使われていない場合、費用を払わせる法律をつくるよう議会に求めた。

バイデン氏は「最終的には化石燃料への依存を減らす必要がある」と強調し、再生可能エネルギーの促進策も発表した。電気自動車(EV)や発電所の大容量蓄電池に使うリチウムやニッケルなどの重要物資の国内生産を支援する。大統領権限で指定部材の生産を促せる「国防生産法」を活用する。

今回の放出は最近の措置の規模を大幅に上回る。米国は2021年11月、5000万バレルの放出を表明し、日本や韓国などと協調した。22年3月1日には、ロシアのウクライナ侵攻を受けてIEAで足並みをそろえ、米国は3000万バレルの放出を担った。

バイデン政権は8日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの追加経済制裁として、ロシア産原油の輸入を禁じた。ガソリン高の一因となるため、追加の価格抑制策に取り組む姿勢を示していた。

米国ではガソリン高などによる高インフレに国民の不満が高まっている。11月の中間選挙を控えて、バイデン大統領はガソリン価格の動向に神経をとがらせている。

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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
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別の視点

エネルギー価格の高騰が米国を始めとする主要石油消費国のここまで重要な国内政治・経済問題になるのは1970年代の石油危機の頃の事態に匹敵するのではないか。

第4次中東戦争とアラブ禁輸が大問題となった第1次石油危機、当時600万バレル/日の生産規模を誇ったイランの原油生産がイラン革命で完全停止した第2次石油危機、これらの問題が当時の世界を揺さぶったのと同様、ウクライナ危機による価格高騰や市場不安定化の問題が主要消費国を揺さぶり続けている。

米国はSPRの放出と産油国・企業に増産圧力を掛け、欧州や日本は消費者保護の補助金制度などを導入・強化する。2-3年前には考えられなかったような事態が起きている。

2022年4月1日 9:19

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

米ギャラップ社が30日に発表したエネルギー関連世論調査結果では、米国民の47%がエネルギー供給と価格に懸念をもっていると回答。

興味深いのは、民主党支持者は上記に28%が懸念と回答しているのに対し、共和党支持者は66%となっていること。

地球環境保護とエネルギー開発でどちらを優先するかについて、民主党支持者では前者優先78%・後者優先17%に対し、共和党支持者では前者優先17%・後者優先78%とちょうど反対の答え。

同社29日発表「米国で懸念される問題」世論調査では、3位のエネルギー価格高騰4%を大きく上回り1位はインフレ懸念17%との結果。米国民は原油高をインフレ要因として懸念しているわけです。

2022年4月1日 7:17 (2022年4月1日 7:17更新)

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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察

米ゴールドマン・サックスは米国の備蓄放出などを踏まえた昨日のリポートで、ブレント原油でみた今年後半の原油相場が1バレル120ドルと従来予測より15ドル下がる可能性があるとしました(修正予測は125ドル)。

一方で、来年の相場は115ドルと従来予測から5ドル高くなるとみています。

今年の相場が抑えられることが石油需要を下支え、米国の増産ペースを鈍化。さらに、放出した備蓄を補充する調達が必要になることが理由です。

中国の景気変調は石油需要の回復ペースを鈍らせる要素です。

ただ、戦況とともにロシア産原油の供給減少や調達敬遠がどこまで広がり、長期化するかも不透明です。不安定な相場が続くことになります。

2022年4月1日 7:34 (2022年4月1日 9:42更新)』