米、石油価格安定へ総力戦 備蓄放出・増産へ「罰金」も

米、石油価格安定へ総力戦 備蓄放出・増産へ「罰金」も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN31E7A0R30C22A3000000/

 ※ 11月の「中間選挙」までに、「物価(特に、ガソリン価格)」を下げないと、「大敗」は必至だから、それまでに「納得してもらえる価格」にもっていかないと…。

 ※ 政権の将来的には、「ウクライナ」よりも、むしろ、「こっち」だろう…。

『【ヒューストン=花房良祐】バイデン米政権が石油価格の安定へ総力戦に乗り出した。31日には「史上最大」とする石油戦略備蓄の放出を表明したほか、石油会社には「罰金」をちらつかせて増産を迫った。ロシア産原油の禁輸で逼迫する需給を緩める狙いだが、効果がどこまで長続きするかは見通せない。

「史上最大の石油備蓄放出になる」と政府高官が話す今回の施策は、5月から半年にわたり石油戦略備蓄を日量100万バレル、計1億8000万バレル放出する。他国にも協調放出を求め、バイデン氏はその量が3000万~5000万バレルに達するとの見通しを示した。

INPEX米国法人の田中洋平チーフエコノミストは今回の米国の放出について、「日量で米国の原油生産量の9%近くに相当し、短期的には価格を下げる効果がある」とみる。実際、31日のニューヨーク市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物価格は一時1バレル約100ドルを割り、前日比約7%下落した。

ただ、市場では効果は長続きしないとの見方が強い。

ウクライナ侵攻前のロシア産原油の輸出量は日量約500万バレル。侵攻後に西側企業を中心に取引自粛が広がり、大規模な供給断絶につながった。市場関係者によると4月以降は長期契約の失効で一段と取扱量が減少する見込みで、国際エネルギー機関(IEA)は原油と石油製品で同300万バレルの輸出が失われるとみる。

このほかカザフスタン産原油の供給も滞った。ロシア領のパイプラインと港湾を経由して日量100万バレル規模が輸出されていたが、天候不順で黒海の積み出し設備が被害を受け、対ロシア経済制裁で補修部品も手に入らないと報じられた。

ブッシュ元大統領(第43代)の特別補佐官を務めた米調査会社ラピダン・エナジーのボブ・マクナリー社長は「石油備蓄を日量100万~200万バレル放出したところで、ロシア(産原油)の問題は大きすぎて解決できず、持続的な価格沈静化にはつながらない」と指摘する。加えて、石油備蓄量が減少することで将来の地政学リスクに対する市場の脆弱性も増すとみている。

中長期的な需給バランスの調整には、需要の抑制と供給の増加が欠かせない。

バイデン氏は31日、「最終的には化石燃料への依存を減らす必要がある」と強調。電気自動車(EV)の大容量蓄電池に使うリチウムやニッケルなどの重要物資の国内生産を支援すると表明し、石油需要抑制に努める姿勢を示した。同時に打ち出したのが、石油会社に増産を迫るための妙手だ。

「(遊休の公有地を)活用するか、さもなくば失うかだ」。バイデン氏は公有地で許認可を得ながら原油を生産していない石油会社に対して、土地を遊ばせ続けるなら「対価」を求める方針を表明。詳細は今後、議会と協議して詰めるが、増産を渋る石油会社への圧力を強め、ロシア産の取引自粛などで空いた穴を早期に埋める戦略だ。

これに対し、石油業界は早速反発を強める。シェール企業で構成する米石油開発生産協議会は31日、「(生産者への)懲罰的な支払い要求は増産につながらない」と反対した。バイデン政権は陸上の公有地でリース権を新規に付与しておらず、広範囲での開発がしにくくなっている。許認可取得後も生産可能な量が少ないことが判明し、開発を断念することもある。

今回の石油備蓄放出は、中長期的に需給ギャップが解消されるまでの「つなぎ」の意味合いが強い。バイデン政権が描くような需要の抑制と供給の増加が進まなければ焼け石に水となる可能性もある。米国ではガソリン高などによる高インフレに国民の不満が高まっている。11月の中間選挙を控えて、バイデン氏は時間との戦いを迫られる。

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