産油国「増産せず」、消費国は備蓄放出 さや当て激化

産油国「増産せず」、消費国は備蓄放出 さや当て激化
ウクライナ危機が対立増幅
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR31DS30R30C22A3000000/

『石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えた「OPECプラス」が3月31日、米欧日が求めた原油の追加増産に応じないと決めた。その直後、米国は石油備蓄の追加放出を発表し原油価格を抑える姿勢を鮮明にした。ロシアのウクライナ侵攻が原油高に拍車をかけるなか、産油国と消費国のさや当てが激化している。

「最近のボラティリティーは、ファンダメンタルズによるものではない」。OPECプラスは31日の閣僚協議で、5月も現行の増産ペースをほぼ維持すると決めた。昨年来の相場上昇局面で繰り返してきた決定だが、事態は一段と深刻だ。

2月のロシアによるウクライナ侵攻で、原油相場は急騰した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は3月初めに一時1バレル130ドル前後と13年7カ月ぶりの高値をつけた。

米欧日はウクライナに侵攻したロシアに制裁を科し、複数の銀行を国際的な資金決済網から排除した。米国は3月初めにロシア産原油の輸入禁止を決め、英国も段階的に輸入を停止するとした。国際エネルギー機関(IEA)はロシアの輸出が日量250万バレル減るとみる。世界の供給の3%弱にあたる。

主要7カ国(G7)は24日の首脳会議で、OPECの産油国に「責任ある態度」を求め供給増を促した。「サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)だけが、直ちにロシア産の不足を相殺できる実質的な増産能力を持つ」(IEA)からだ。

しかし両国とも頑として動かない。ジョンソン英首相は16日、サウジとUAEを訪れ両国首脳と直談判したが、増産の確約は得られなかった。

ロシア産の穴埋めに増産すれば収入は増えるが、米欧の制裁で打撃を受けるロシアをよそに米欧を助けることになる。ロシアには利敵行為にほかならない。高値維持を望む中東産油国にとって、OPECプラスの価値はかつてなく高い。ロシアとの結束を優先するのは自然だ。

しびれを切らしたバイデン米政権は31日、日量100万バレルを戦略石油備蓄から6カ月間にわたり放出すると発表した。米中間選挙を11月に控え、インフレ対策への焦りが透ける。事前に報じられると同日のWTIは一時100ドル前後と前日比7%下落した。需給の逼迫感が和らぐとの思惑で売りが先行した。

消費国でつくるIEAも4月1日に緊急会合で協調放出を議論する見通しだ。ただ石油備蓄は供給途絶などの危機に備える「虎の子」で、無限ではない。どこまで価格を抑えられるかは見通しがきかない。

米国のシェールオイル生産量は増えていく公算だが、中東産油国を抜きにロシア産の減少分は補えない。IEAによると2月時点で、サウジだけで日量200万バレル、UAEは113万バレルの増産余地がある。消費国が束になって備蓄を放出しても及ばず、各国首脳が重ねて中東産油国に協力を求めた理由だ。

戦略商品の売り手と買い手は緊張関係にあるのが常だが、ウクライナに侵攻したロシアがOPECプラスの主要メンバーであることから、産油国カルテルと西側の消費国の利害調整は極めて難しくなった。むき出しの対立が長引けば、原油価格に上昇圧力がかかり続ける恐れがある。

(ブカレスト(※ ルーマニアの首都)=久門武史)』