ロシア戦死者、膨大に 米国の「イラク・アフガン」超え

ロシア戦死者、膨大に 米国の「イラク・アフガン」超え
米欧分析
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA30CIK0Q2A330C2000000/

『ウクライナ侵攻を巡るロシアの戦死者や軍備の損失が大きくなってきた。米欧の分析によると戦死者は米軍が過去20年にイラクやアフガニスタンの戦闘で出した死者数を上回った。ロシアで国内世論の反発や経済的な負担が増せば、戦況に変化が生じ得る。

【関連記事】政府、ウクライナ首都「キーウ」に表記変更

2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は1カ月を超えた。プーチン政権は当初、数日で軍事作戦を終えられると見込んでいたとされる。米欧から対戦車ミサイルなどの支援を受けたウクライナ軍による抗戦で長期化している。

米紙ニューヨーク・タイムズは16日、米情報機関が開始3週間でのロシア軍の死者数を7000人以上と推定したと伝えた。CNNなど複数の米メディアはその1週間ほど後、北大西洋条約機構(NATO)高官が7000~1万5000人とみていると報じた。

タス通信によるとロシア国防省が25日に公表した戦死者は1351人で、CNNは23日にウクライナ軍参謀本部の推定では1万5600人だと紹介した。

これらの数字は情報戦の意味も含めてばらつきがあるが、ロシア軍のダメージが徐々に増えているのは確かだ。

相手国領内に軍隊を送った近年の戦争事例としては、米国のイラク戦争やアフガニスタン戦争がある。

米ブラウン大ワトソン研究所が2021年にまとめた報告書によると、01年の米同時テロ以降に戦闘行為で死亡した米兵は7000人強だった。大半をイラクとアフガンでの戦死者が占める。

米欧の分析に基づけばロシア軍の戦闘での人的損失は侵攻開始から1カ月ほどで米軍の20年分に達したことになる。

ブラウン大の報告書は米軍について、戦闘ではなく心理的な負担により自殺した現役兵と退役軍人の合計人数が3万人超にのぼるとも指摘した。全体の死者数は4万人近い計算になる。

文化や民族が近いウクライナを攻撃するロシア兵も同じ現象が起こる可能性はある。

ロシアのプーチン大統領は国内に情報統制を敷くものの、死者が増えていけば国内の厭戦(えんせん)ムードに波及しやすい。戦争継続の政治的コストが高まることになる。

ロシアの経済的な負担も大きい。英研究機関「経済回復センター」などは3月上旬、ロシアの戦争経費や破壊された兵器の損失額といったコストの合計を試算した。

侵攻開始当初は1日あたり70億ドル(0.8兆円)だったが、その後に200億ドル(2.5兆円)規模に膨らんだと見積もった。

米ハドソン研究所の長尾賢研究員はこの試算について「購入済みの兵器の損失など即座に支出が必要でないものが含まれる点は留意が必要だ」と指摘する。そのうえで「長期的なロシアへの影響を考えるには意味がある」と指摘する。

ロシアの国内総生産(GDP)は1.5兆ドルほどで、1日200億ドルの損失が1カ月続くとGDPの4割、2カ月半で100%に相当する規模となる。

米議会に提出されたリポートによると米国のイラク戦争とアフガニスタン戦争の戦費支出はピークの年でもGDP比で10%未満だった。これは戦争にかかわる財政支出の計算だった。

ロシアの失った兵器の価値も合算した経済回復センターの報告書とは算出基準が異なるため比較できないものの、ロシアにとって重荷であることはうかがえる。精密誘導弾のような高価なミサイルなども戦費がかさむ要因となる。

米欧は国際決済網からロシアの一部銀行を排除するといった経済制裁を科し、さらなる追加制裁も検討している。戦況の長期化に伴うコストに制裁を上乗せしてロシア経済へ圧力をかけ、ウクライナからの撤退を迫る狙いだ。

ロシア国防省は29日、ウクライナの首都などでの軍事活動を縮小すると表明した。米国は懐疑的で状況を見極める構えだが、ロシア軍が戦線を絞り込むような動きではある。

ロシアの前身である旧ソ連は1979年から10年間、アフガニスタンに侵攻した。ロシア国内にはその負担がソ連崩壊と冷戦終結の一因になったとの記憶がある。

【関連記事】

・ロシア、部隊再配置 南東部マリウポリで攻勢
・ロシア産ガス、「ルーブル払い」で大統領令

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

福井健策のアバター
福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
コメントメニュー

分析・考察

記事にある通り、今戦われているのは各国メディアも巻き込んだ史上空前の情報戦ですから、海外の報道も数字の扱いには相当なバラつきがありますね。また、SNSなどでの大規模な情報操作を指摘する記事も少なくありません。
冷静に情報を比較し続ける視点が、大切ですね。
2022年4月1日 7:56 』