【ウクライナ侵攻】プーチン大統領を取り巻く面々

《戦時経済》【ウクライナ侵攻】プーチン大統領を取り巻く面々と後継者の「本命」=名越健郎
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220329/se1/00m/020/056000c

『プーチン政権 側近4人とサークル形成 「盟友」はパトルシェフ氏=名越健郎

 ロシアのプーチン大統領が命じたウクライナ侵攻は、無謀な国際法違反の戦争であり、プーチン氏は「侵略者」の汚名を歴史に刻むことになった。ロシアは国際社会から指弾され、欧米諸国から最大級の経済制裁を浴びており、プーチン氏の権力基盤が弱体化する可能性もある。ここでは、ウクライナ侵攻がクレムリンで誰によって決定されたのか、ロシアの権力機構を探り、プーチン氏の後継候補を含めて分析した。

 ロシアの最高意思決定機関は大統領直属の安全保障会議で、ウクライナ東部の親露派支配地区の独立を承認した2月21日の安保会議は公開で行われた。ただ、安保会議は上下両院議長や閣僚らも加わり、密談する場ではない。全面侵攻に至るウクライナ政策は、プーチン氏が旧ソ連国家保安委員会(KGB)時代の同僚ら一握りの幹部と決めたとみられる。

 英紙『ガーディアン』(2月4日付)は、プーチン氏が最も信頼し、頻繁に会う側近として、パトルシェフ安保会議書記、ボルトニコフ連邦保安庁(FSB)長官、ナルイシキン対外情報庁(SVR)長官、ショイグ国防相を挙げた。米紙『ニューヨーク・タイムズ』(1月31日付)もロシア消息筋の情報として、プーチン氏を含めこの5人がクレムリンのインナーサークルを構成すると報じていた。

 ショイグ国防相を除く4人は1970年代後半、ロシア北西部の都市サンクトペテルブルクのKGB支部で同僚だった。KGBの工作員は反米思想が強烈で、内外で敵を識別し、仲間しか信用しない。プーチン氏は2000年に大統領に就任した後、サンクトペテルブルクKGBの同僚を政権に招き、シロビキ(武闘派)と称する強硬派最大派閥が誕生した。

 この中でプーチン氏が最も信頼する盟友がパトルシェフ書記だ。KGBの1年先輩で、強硬な安保思想と帝国復活志向を持つ。昨年末、メディアで「ウクライナ指導部はヒトラー並みの悪人ぞろいだ」「ウクライナのネオナチが東部でジェノサイド(大量虐殺)を実行している」などと非難した。このレトリックは、2月24日のプーチン大統領の開戦演説とも重複しており、全面侵攻は2人で決定した可能性がある。
軍、情報機関は反発か

 また、クレムリンのウクライナ政策担当は20年 、スルコフ補佐官からコザク大統領府副長官に代わっている。コザク氏もサンクトペテルブルク市の法律顧問時代にプーチン氏と親しくなった「サンクト派」であり、大統領の懐刀として今回のウクライナ侵攻に重要な役割を果たした模様だ。

 これに対し、ナルイシキン長官は安保会議での演説で、一人だけ「外交交渉優先」を示唆してしどろもどろになった。ショイグ国防相も核兵器の警戒態勢引き上げを命じられた時、力なくうなずく様子が伝えられた。欧米の経済制裁に核抑止力を警告として応じる無謀さは、米露軍備管理交渉を担当するスタッフにとって、ルール違反と映る。

 ウクライナでの流血の無差別攻撃には、軍や外務省、情報機関の幹部は反発を抱いている可能性がある。今後、プーチン体制を支える「暴力装置」の分裂や、内部の抵抗が表面化す…(※ 無料は、ここまで)

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