愛国者プーチンが全方面に仕掛ける外交戦

愛国者プーチンが全方面に仕掛ける外交戦
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/28046740.html

『ロシアの大統領プーチン氏を評価する時、何を基準にするかで変わるでしょうが、「国が繁栄する為ならば、何をしても良い」と考える点で、一点の曇りもない愛国者と呼べるかも知れません。まぁ、言葉尻だけ見ると、とんでもない言い草に聞こえるかも知れませんが、少なくてもスターリンや毛沢東の独裁と、プーチンの独裁は、種類が違うと考えています。

スターリンも毛沢東も、レーニンの示した革命のビジョンに、少なくても最初のうちは感化されて、そういう社会を目指した夢想家的な革命家でした。共産社会というビジョンがあって、国の仕組みを、それを実現する為に作り直し、壮大な社会実験の末、最終的には権力欲の権化みたいになって、国家に対して多大な害を成しました。

プーチン氏が活躍した時代は、既に共産主義の制度疲労が見えていた為、ゴルバチョフ議長が推進を始めたペレストロイカの時代です。この時、KGBの職員として働きながら政治的にもサンプトペテルブルグ副市長として働いていました。守旧派とKGBなどの旧権力側が、ゴルバチョフ氏に反抗して起こした国会議事堂占拠事件の時、あっさりと時代錯誤なKGBを退職しています。

この時、後に大統領になるエリツィン氏の活躍で、軟禁状態だったゴルバチョフ氏が救出され、実権がエリツィン氏へ移ります。エリツィン氏の初期の執政は、色々と評価できるのですが、体調を崩してからは、家族による政治の私物化や、贈収賄による黒い金の横行が進み、当時、新興勢力として力をつけてきた新財閥集団オリガルヒが、政治を操ろうとしていました。

そのエリツィン氏の片腕として、新KGBとも言える組織をバックに順調に出世していたのが、プーチン氏です。国家の保安組織を握っていた為、プーチン氏には、色々な武器が手元に揃っていました。まず、自身の権力のバックであるエリツィン氏に対しては、不正を行ってでも徹底的に守りました。この当時のプーチン氏は、周りからは忠実な飼い犬に見えていたと思います。なにせ、エリツィン氏とその取り巻きの家族の不正を摘発しようとしていた検察のトップを、恐らくは偽造したセックス・スキャンダルをネタにして、懲戒免職にさせています。

この功績を認められ、病床のエリツィンから後継者指名を受け、政界に手を伸ばしていたオリガルヒからも、「自分達の都合に合わせて動いてくれる駒」として、大統領選挙の支持を取り付けるのに成功しました。まぁ、これがとんでもない勘違いだったんですけどね。

当時からオリガルヒを、国家を蝕む癌だと見ていたプーチンは、大統領に当選すると、徹底的に組織の破壊に動きました。この時に権勢を誇っていた、ガス会社・メディア・石油会社のCEOが逮捕されたり、国外逃亡した者は、なぜか自宅で不審死して発見されたりして、あっという間にプーチンに楯突く人間はいなくなりました。この時、プーチン氏は、「オルガリヒの諸君。君たちは選ぶ人間を間違えた」と言ったとされています。

財閥連合を崩壊させると、エネルギー産業を子飼いの部下の制御化におき、旧ソ連時代に積み上がった外債を5年で返済しています。また、莫大な蓄財を国庫に貯めました。この貯金が、後にロシアを襲う経済危機の時に、ロシアの産業を救う事になります。どこの企業を救うかは、決済権を持っているプーチン氏の裁量で決まるので、そのリストは「プーチンのリスト」と呼ばれて、産業界は完全にプーチン氏に掌握される事になります。

外交でも、当初は協調路線をとり、ヨーロッパとの関係修復、日本との北方領土問題の解決に向けて、今までになかった方向性を示しました。しかし、アメリカは、これをプーチン氏がロシアが復権を目指していると警戒し、ソ連崩壊の時に分離独立した周辺国をNATOに組み入れる事で、対ロシア包囲網を構築しようとします。現在、ウクライナやカザフスタンで、揉めているロシア軍とNATOの対立は、この頃から継続しているのです。

2008年のグルジアで起きた南オセチア紛争が起こると、すぐさま軍事介入。アメリカは、猛批判しましたが、結局軍隊の投入はしませんでした。つまり、東ヨーロッパの紛争に及び腰である事を見きったわけです。これで、2014年のクリミア併合、2015年のシリア内戦では、軍事介入したアメリカと敵対する組織に武器支援。泥沼の戦争に引きずり込む事で、国力の弱体化を狙います。そして、中国とアメリカが対立を始めると、中国の支援を始めます。ただし、これは中国の経済的な国力が予想を上回る発展を遂げた為、右手で握手して左手にナイフを持つ関係が続いていて、必ずしもうまくいきませんでした。

そして、まさに現在進行系で、中国を利用して経済にテコ入れを目論んでいます。中国がAIIBという途上国向けの開発銀行を主催しているのはご存知かと思います。中国と国境を接するカザフスタンで、エネルギー価格の高騰を直接の原因とする市民暴動が起きて、これをロシアの軍事力を背景して政府が鎮圧しました。つまり、カザフスタンにロシアは大きな貸しを作った事になります。カザフスタンは、中国の一帯一路政策でも、核になる地域で、ここが親ロシアになると、色々と中国には都合が悪いわけです。

カザフスタンへの影響力を確保した状態で、ロシアはAIIBへ高速道路建設の為の資金、1兆3千億円余りの融資を申し込んでいます。この道路は、どこを指すのか具体的に報道されていないのですが、恐らくは、カザフスタン国内を縦断してロシアへ達する道路かと思います。つまり、ロシアへの流通を確保する為にカザフスタンに建設する縦断道路の建設資金を、中国に出させようとしています。一種の脅しを背景にした、資金の無心です。

このように、プーチン氏は、超現実主義者で、強大な権力を振るいますが、蓄財や私欲の為というよりは、やはり国家の為に行っているのです。その手段は、時に横暴ですが、そういう態度でないと、治まらないのがロシアという広大な国土なのでしょう。』