北欧フィンランド、スウェーデン NATO加盟の議論表面化

北欧フィンランド、スウェーデン NATO加盟の議論表面化 自らの首を締めるプーチン大統領
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『【揺らぐ「北欧バランス」】

ロシア・プーチン大統領がウクライナに軍事的圧力をかけているのはウクライナ東部をロシア領にしたいという話ではなく、その最大の目的は東方拡大を進めてロシア国境に迫るアメリカ主導のNATOの動きを止めたいということにあるように思われます。

ロシアはアメリカに文書でNATOが東方拡大を止め、ウクライナのNATO加盟がないことを確約するように迫り、アメリカ、NATOが文書回答でこれを拒否するという形で現在綱引きが行われています。

NATO加盟は当事国の主権の問題であり、加盟させる・させない云々をロシアに確約するというのは、原則論からして応じられない話です。

ただアメリカ・NATOも、ロシアとの火種を抱えるウクライナの現時点でのNATO加盟を望んでいる訳でもありませんので、表向きの「拒否回答」とは別に、水面下で付随する様々な事柄に関する交渉が行われていると推測されます。

一方、北欧に目を転じると、“北欧には、NATO加盟国であるノルウェー、中立のスウェーデン、ソ連に近い国であるフィンランドが存在するという、「北欧バランス」といわれた安全保障体制というべきものが形成されてきた。”【1月28日 WEDGE】という状況でしたが、近年の、そして今回のロシアの露骨に軍事力を振りかざす姿勢によって、この「北欧バランズ」が崩れ始めています。それも、ロシアが避けたいと考えている方向へ。

【フィンランド 「NATO加盟を申請する選択肢を保持している」】

ウクライナのNATO加盟云々に引きずられるように表面化しているのがフィンランドのNATO加盟問題。

フィンランドでは、マリン首相が昨年12月31日に、ニーニスト大統領が1月1日に、それぞれ、フィンランドにはNATO加盟の選択肢がある旨、明言しています。

****フィンランド NATO加盟の権利主張 欧露間で緊張も****

北欧フィンランドが北大西洋条約機構(NATO)への加盟を阻む隣国ロシアの意向に反し、「加盟する権利」を声高に訴えている。

ロシアによるウクライナ侵攻が警戒される中、フィンランドの安全保障政策にまで介入する姿勢を見せるロシアに対し、自国の政策を決める権利を主張した形だ。

ウクライナ情勢をめぐりロシアが今月、NATOや米国と協議するのを前に、欧露間で一段と緊張が高まる恐れがある。

フィンランドのニーニスト大統領は1日、年頭の声明で「フィンランドの戦略と選択の自由には、NATOへの加盟申請の可能性が含まれる」と述べた。マリン首相も昨年12月31日の声明で「自国の安全保障政策を決める権利」を主張。「(フィンランドは)NATO加盟を申請する選択肢を保持している」とした。

首脳陣が相次いでNATO加盟に言及する発端となったのが、ロシア側が12月下旬に発した警告だ。

露外務省のザハロワ報道官は同月24日の記者会見で、NATOに加盟していないフィンランドとスウェーデンが「NATOの大規模な演習にますます積極的に参加するようになっている」と非難。両国の非加盟が「北欧の重要な安定要因」とした上で、両国がNATOに加盟した場合は「軍事的、政治的に深刻な結果をもたらし、ロシア側に適切な対応が求められるだろう」と強調した。

この発言は「安全保障政策への介入」(フィンランドの外交問題専門家)と受け止められ、同国でロシアへの警戒が高まった。

欧州連合(EU)加盟国のフィンランドは大戦が勃発した1939年に旧ソ連の侵略を受けたが、独立を保った歴史がある。大戦後は「中立」を看板とし、西側の国としては唯一、旧ソ連と友好協力相互援助条約を結んだ。

一方、ソ連解体後も約1300キロメートルにわたり国境を接するロシアの軍事的脅威に対する警戒を続けた。2014年のロシアによるクリミア併合などを受け、NATOとの連携を強化してきたが、中立政策を掲げる立場からNATOに加盟していなかった。加盟に反対する国民も多く、申請の可能性は低いとみられる。

そうした中で、首脳陣がNATO加盟の申請について踏み込んだ発言をした背景には、ウクライナ情勢を緊張緩和に導く狙いもあるとされる。

フィンランド政府は、同じロシアの隣国であるウクライナの情勢が「フィンランドの安全保障にも関わる」(ニーニスト氏)として、ロシアの脅威の抑制が急務とみている。

エストニア外交政策研究所のレイク所長は現地メディアに「フィンランドはNATO加盟の申請をロシアとの(交渉の)カードに使った」と分析。ロシアが侵攻を止めなければ「(ロシアが懸念する)加盟を申請すると迫るメッセージをロシア側に送った」との見解を示した。

一方、フィンランドの対応は、北欧のEU加盟国、スウェーデンにも波及する可能性がある。英紙テレグラフなどによると、スウェーデンは今月1日、ロシアなどを念頭に情報操作やプロパガンダ(政治宣伝)、心理戦への対策を講じる新たな政府機関を設立した。

両国の強硬姿勢を受け「ロシアが反発を強める」(スウェーデンの外交問題専門家)事態が予想される。【1月6日 産経】

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アメリカ・バイデン大統領も、このフィンランド首脳のNATO加盟への言及に応じる形で、ロシアを牽制しています。

****NATO加盟申請「権利ある」 米大統領、フィンランドに保証****

バイデン米大統領は18日、フィンランドのニーニスト大統領とウクライナ情勢について電話協議した。ホワイトハウスによると、バイデン氏は「欧州各国は安全保障体制を独自に決める権利を持っている」と強調。ロシアの隣国フィンランドが、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請する権利を「保証」した。(後略)【1月19日 毎日】

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ただ、フィンランドとしても自国の加盟問題が過度に焦点となるのは好まないところでしょうから、マリン首相は一定に議論をコントロールする姿勢も見せています。

****フィンランド、NATO加盟計画せず 対ロ制裁なら協調へ****

フィンランドのマリン首相は19日、同国が近い将来に北大西洋条約機構(NATO)に加盟する計画はないが、ロシアがウクライナを攻撃した場合は欧州の同盟国と米国に歩調を合わせて厳しい制裁を発動すると述べた。

首相はロイターとのインタビューで、「制裁はかなり実質的な影響をもたらし、極めて厳しいものとなる」と述べた。

一方、自身の任期中にフィンランドがNATO加盟を申請する公算は非常に小さいと述べた。(後略)【1月20日 ロイター】

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【スウェーデン 「ロシアの脅威」に対し軍事力を強化】

スウェーデンでは、中道左派の社民党政権がNATO加盟に懐疑的な態度を取り続けていますが、右派の野党はNATO加盟に積極的です。

そうした政治状況のなかで、近年の「ロシアの脅威」に対し、軍事力を強化する方向に舵を切っています。

****ロシアの脅威に北欧スウェーデンが選んだ軍拡の道****

10月19日付の英Economist誌が「スウェーデンは、数十年間で最大の軍事力増強に着手した。理由はロシアである」との解説記事を掲載している。

スウェーデンでは、10月14日に新国防法案が提出され、過去70年間で最大の軍拡を予定している。理由は、暗殺から侵略まで、ヨーロッパにおけるロシアの脅威が増し、スウェーデン人の対露警戒心が高まっているからである。
 
近年、スウェーデンは、ロシアが領空と領海を頻繁に侵犯したとして非難してきた。それでスウェーデンは、NATO(北大西洋条約機構、注:スウェーデンは非加盟国)や、米国、他の北欧諸国と、軍事的関係を深めてきた。 
 
新国防法案が成立すれば、国防予算を2021年~2025年の間に275億スウェーデン・クローネ(約31億ドル)増加することになる。これは、軍隊の50%増も賄う。軍隊は、正規兵の他、徴兵兵士、地元の予備役を含め9万人になる見通しである。
 
冷戦終結後、徴兵制は10年前に廃止されたが、ロシアの脅威の高まりによって2017年に男女ともに復活した。スウェーデンの議会や国民から大きな反対はなかった。18歳以上の男女が年間8千人、徴兵される。また、上陸部隊がスカンジナビア最大の港、ゴーテンブルグに再び置かれることになる。
 
民間防衛では、サイバーセキュリティ、電力網、および保健の分野のために、より多くの資金が投じられるだろう。
 
スウェーデンは中立国であるが、ロシアの脅威を強く認識するに至り、軍拡路線にかじを切ったという興味深いエコノミスト誌の解説記事である。国際情勢全般に与える影響は大きくないが、ご紹介する。
 
北欧は、ノルウェーがNATOの加盟国、フィンランドが親ロシア、そしてスウェーデンが中立国ということで微妙なバランスを保ちつつ、平和を維持してきた。

が、ロシアの最近の動きがスウェーデンを刺激し、スウェーデンが脅威に対応する必要を感じ、軍拡しているということである。国防費を一挙に40%増にするのは予算に飛躍はないという中でかなり強い対応である。スイス、スウェーデンは武装中立国であるが、周辺の国に脅威を与えることはほぼない。
 
ロシアは何の意図でスウェーデンの領海、領空を侵犯し、スウェーデンのような国の警戒心を高めているのか、理解できない。北方領土に軍を配備し、演習をして、日本から抗議されているのと同じような愚行ではないかと思われる。
 
ロシアの経済は、いまやIMF(国際通貨基金)のGDP統計で韓国以下であり、かつ石油価格は新型コロナ・ウィルス、温暖化対策等で今後回復しそうにもない。

プーチン大統領は国際的に大国として大きな役割を果たしているロシアを演出するために、シリアやリビアに進出し、ベネズエラに傭兵を出すなど、やりすぎている。こういうことは、ロシアの衰退につながると思われる。【2020年11月18日 WEDGE Infinity】

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【プーチン大統領 自らの言動でNATO拡大を招く】

ロシア・プーチン大統領が“こわもて”ぶりを発揮して、軍事大国として存在感を見せつけ、かつて世界を二分したソ連の残影を追い求めるほどに、周辺国はロシアの脅威を感じ取り、その脅威に備える方向に向かいます。

プーチン大統領はNATOの東方拡大を強く批判していますが、自らの言動がそうした事態を招き、助長していると言わざるを得ません。

****スウェーデン、フィンランドのNATO加盟論が再燃****

ウクライナをめぐる危機においてロシアのプーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)はロシアの国境に向かって侵入するのをやめなければならないと主張している。だが、そのプーチン氏の要求が欧州大陸の北端で意図せぬ事態を招いている。フィンランド、スウェーデンのNATO加盟の是非をめぐる議論の再燃だ。

ウクライナ国境付近でのロシア軍の兵力増強に世界が注目するなか、北欧2国では政治指導者が党派の違いを超えて、いつでもNATO加盟申請という選択肢があると強調するようになっている。

「前例のない活発な議論だ。色々なことが起きている。次に起きることによって大きく左右される」と話すのは、フィンランドの野党第1党でNATO加盟を唱える中道右派「国民連合」の外交政策・欧州連合(EU)顧問、ヘンリ・バンハネン氏だ。

スウェーデン、フィンランドの両国外相は24日、ブリュッセルでNATOのストルテンベルグ事務総長と会談した。フィンランドのニーニスト大統領が米国、ロシアの両大統領と協議するなど、このところの一連の外交対話のさらなる進展だ。

「NATOの扉は開かれたまま」

「NATOの扉は開かれたままだ。スウェーデンとフィンランドは我々の最も緊密なパートナーだ」とストルテンベルグ氏は会談後に語った。

フィンランドのハービスト外相は「フィンランドはNATO加盟国ではないが、行動の余地と選択の自由を維持することはフィンランドの外交、安全保障、防衛政策の不可欠な一部分だ」と述べた。

EU加盟とその相互防衛条項のために長年の中立政策を放棄した両国は近年、NATOへの接近を強め、危機発生時や演習においてNATO軍部隊が領内を通過することを認めている。

ロシアは、バルト海沿岸の両国を含めてNATOがさらに拡大すれば、厳しい対応を取ると威嚇している。ロシア外務省は2021年12月、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟は「ロシア側の十分な対応を必要とする重大な軍事的、政治的結果を招く」と表明した。

米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのアンナ・ウィースランダー北欧部長は、ロシア自身の行動がスウェーデンとフィンランドをロシアにとって望ましくない出方の検討に動かしていると指摘する。

「私たちがスウェーデンで問題のない状態にあれば、私たちを安全保障政策の変更に動かす大きな力は生まれない。他にもっと重要な問題がある。外からの脅威という力が必要なのだが、それはロシアにとって逆効果となる」

スウェーデンのリンデ外相は、ロシアのウクライナに対する意図と「攻撃的な言辞」について「深く懸念」していると述べ、フィンランドとともにNATOと話し合ったのは重要だと強調した。

スウェーデンとフィンランドは最近、相互の防衛協力を強化。NATO加盟に関しては以前から、いかなる動きにおいても両国は足並みをそろえるものとみなされている。

識者は、NATO加盟をめぐる議論はフィンランドのほうが深いとみている。理由として、スウェーデンが徴兵制を廃止して軍を大幅に縮小したことがあるのに対し、フィンランドは防衛を緩めることなく大規模な国防支出と多数の予備役を維持していることが関係しているはずだという。

スウェーデンでは2010年代初頭、防衛力は国を1週間守れるだけで、首都ストックホルム爆撃を想定した軍事演習をロシアが行った際、ジェット戦闘機を緊急発進させられなかったことを国防軍司令官が認めた。このどん底の時期の後、スウェーデンは軍事支出を拡大して徴兵制を復活させた。

NATO加盟について、スウェーデンはフィンランドよりも政治的に分裂しているようだ。中道左派の与党・社会民主労働党がNATO加盟に強硬に反対する一方、中道右派の野党勢力は加盟推進で結束している。

フィンランドでは中道左派のマリン首相が先週、自身の在任中にフィンランドがNATO加盟を申請する「可能性は極めて低い」と語り、波紋を広げた。フィンランドは選択の余地を残しておくべきだとする野党の痛烈な批判を浴びた首相は、発言が「過剰に解釈された」と釈明した。

それでもフィンランドの首都ヘルシンキでは、NATO加盟まではあと「サウナ1回」だと冗談半分にささやかれている。サウナの中かどうかは別にして、状況次第で各政党の指導者と首相がすぐに加盟申請を決められるという意味だ。

手の内は明かさず

「フィンランドがNATO加盟について真剣に検討している場合、この時点で私たちがそれを知ることはないはずだ。事前に手の内を明かすのは賢明ではない」と国民連合顧問のバンハネン氏は言う。

同氏はさらに、フィンランドは戦略と計画を曖昧にしたまま公式発表を微妙な内容にすることで、NATO加盟の選択肢を外交政策上の「抑止力」として使っていると説明した。フィンランドは最近、軍の即応態勢を高めたが、詳細は明かしていない。

これに対し、スウェーデンは高速道路と貨客フェリーを使って軍用車両をゴットランド島に送り込んだ。同島はバルト海上の空母になぞらえられている。周辺海域を航行するロシア船舶の目に付く対応だ。

アトランティック・カウンシルのウィースランダー氏は「以前は、北欧最大の国であるスウェーデンが主導しなければならないだろうと思っていた。しかし、今の力学を踏まえると、ストックホルムよりヘルシンキのほうが早く動き始める可能性が高いと思う」と話す。

議論の焦点は、純粋にスウェーデンとフィンランドにとってNATO加盟は何を意味するかだけではない。欧州北部の戦略的要衝に位置する両国がNATOに何をもたらしうるのか、という点も絡んでいる。

バルト3国の一つ、エストニアのカラス首相はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、これはスウェーデンとフィンランドだけの決断であるとする一方、「両国がそうすると決めた場合、私たちはNATO内で両国を強く支援する」と語った。

カラス氏は、両国は強い軍事能力をもたらして「NATOの版図で半島のような」バルト3国を助けることになると指摘した。「間違いなく、この地の安全保障を高めることになる」
(2022年1月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)【1月26日 日経】

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プーチン大統領は「強いロシア」を復活させたということで国内的な支持を得てきましたが、個人的には誤った評価だと考えています。

プーチン大統領の「強いロシア」志向は周辺国の警戒心を強め、ロシアに対抗するNATO勢力を拡大させ、ロシアの孤立化・経済の低迷を招いています。ロシアは軍事力と資源だけが頼りの国家になろうとしています。

ウクライナに侵攻するのかどうか・・・そこは知りませんが、仮に侵攻した場合、軍事的にいくらかの得るものがあったにしても、ロシアは今の誤った道をこれまで以上のスピードで転げ落ちることにもなるでしょう。

後世の歴史家からは「プーチンがロシアを滅ぼした」と評されることにも。』