米、NATO拡大方針を堅持 ロシア外相が反発

米、NATO拡大方針を堅持 ロシア外相が反発
ウクライナ加盟排除せず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2781X0X20C22A1000000/

『【ワシントン=中村亮、モスクワ=石川陽平】バイデン米政権は26日、欧州の安全保障体制をめぐり北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を容認する立場を堅持した。ロシアはNATOの東方拡大の停止を強く求めており、ロシアのラブロフ外相は反発した。

米政権とNATOは26日、ロシアが2021年12月に提案した欧州の安保構想について、それぞれ書面回答した。

ブリンケン米国務長官は同日の記者会見で「NATOのドアは開かれている」と語った。ウクライナなどの加盟の可能性を残し、NATOの拡大停止を拒否した。これまで東欧からのNATO軍の撤収や、核兵器を自国の外に配備しないとするロシアの要求を拒んでおり、書面回答でも受け入れなかったとみられる。

ロシア外務省が27日公表したラブロフ外相の発言によると、同外相は米国の書面回答について「主要な問題で肯定的反応はない」と述べ、NATOの東方拡大停止の拒否に不満を示した。「真剣な対話を始める希望が見いだせるのは副次的な問題だけだ」とも語った。

ラブロフ氏は「省庁間で調整しプーチン大統領に報告する」としたうえで「彼(プーチン氏)が今後の措置を決める」と述べた。ペスコフ大統領報道官によると、プーチン氏はすでに米国の書面回答を読んだという。

米欧はロシアがウクライナ国境に10万人規模の部隊を展開中とみる。「自国の安保が著しく損なわれる」としてロシアがウクライナに侵攻するシナリオを米国は警戒する。プーチン氏は21年12月に「米欧が明らかに攻撃的な路線を続けた場合、われわれは適切な軍事技術的対抗策をとる。非友好的な措置には厳しく対応する」と述べた。

一方、ブリンケン氏は26日、中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と電話で協議した。ロシアによるウクライナ侵攻に反対するよう求めたとみられる。王氏は「ロシアの安全保障上の合理的な懸念を重視し、解決すべきだ」とロシア支持を打ち出した。

米欧は対ロシアで厳しい経済制裁を準備するが、中国がロシア支援に回れば抑止効果が薄れるとの見方が多い。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は2月4日の北京冬季五輪の開会式にプーチン氏を招いている。

バイデン政権はウクライナ侵攻にも備えを急ぐ。米CNNテレビによると、米政権は英国などの有志国と東欧のNATO加盟国への追加派兵を検討している。ルーマニアやブルガリア、ハンガリーに1000人規模の軍を送る案が浮上する。

ロシアがウクライナを侵攻すれば、近隣の東欧諸国に対するロシアの脅威も高まる。米国は派兵を通じ、北大西洋条約第5条が規定する集団防衛を確約する意志をアピールできるとみる。NATOに加盟しないウクライナへ戦闘部隊は送らず、武器提供などで支援を続ける。

【関連記事】
・ロシアとウクライナ、緊張下で東部和平の協議進展に期待
・強硬プーチン氏 NATO不拡大要求、大統領再選にらむ
・緊迫するウクライナ情勢 ロシア、なぜここまで強硬?

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

池上彰のアバター
池上彰
ジャーナリスト・東京工業大学特命教授
コメントメニュー

ひとこと解説

東西冷戦時代に設立されたNATOに対し、当時のソ連は東欧諸国を巻き込みワルシャワ条約機構を設立して対抗。

両者の衝突はありませんでしたが、チェコスロバキアで民主化運動「プラハの春」が起きると、ワルシャワ条約機構軍が戦車を送り込んで制圧。ソ連にとってチェコが緩衝地帯であることを見せつけました。

冷戦終結後、ワルシャワ条約機構は解体。プーチン大統領にしてみれば、「ワルシャワ条約機構を解体したのだからNATOも解体すべきだ。せめて拡大はするな」という思いを持っているのでしょう。

アメリカとしてNATO参加の自由という建前を保ちつつ、プーチン大統領の「不安感」をどう解消できるかの匙加減が課題です。

2022年1月28日 11:23

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
コメントメニュー

分析・考察

理屈からすれば、NATOの拡大を止めることはできず、オープンドア政策(誰にでも門戸を開く)を変える合理的な理由はない。

むしろロシアはウクライナに圧力をかけて、ウクライナが加盟を申請しないようにさせる(中立国にさせる)しかないわけだが、ウクライナがそれを飲むとも思えない。

しかし、そもそもの問題としてNATOがウクライナを加盟させようとしていたわけでもなく、させたいわけでもないのにプーチン大統領が必要以上に圧力をかける理由がいまだによくわからない。

2022年1月28日 10:37

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
コメントメニュー

ひとこと解説

バイデン大統領の忠実な部下であるブリンケン国務長官はやはり、主権国家の権利(ウクライナがNATOに加盟する自由)という原理原則論を前面に出した。

ロシアの要求を正面からはねつけた形である。

ウクライナを巡る今回の米国とロシアの対決は、高邁な理想主義と冷徹な現実主義の対決という様相を帯びる。

外交交渉が今後断続的に進められる中で、玉虫色の妥協点が見出され、ロシア軍ウクライナ侵攻という事態は回避されるのが望ましいと、筆者は考える。

だが今のところ、そうした手打ちへの糸口は見えておらず、ウクライナ問題は金融市場にとっても無視できないリスク要因になっている。

2022年1月28日 8:57 』