米・ロシア、冷戦期以来の緊張 金融市場揺るがす

米・ロシア、冷戦期以来の緊張 金融市場揺るがす
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『ロシアによるウクライナ再侵攻を警戒し、米欧はウクライナ周辺の東欧地域に派兵する準備に入った。政治体制が異なる核保有国同士が直接対峙するのは冷戦期以来の事態だ。米ロが直接衝突する可能性は低いとみられるが、偶発的な事象をきっかけに緊張が高まりかねない。米欧が資源大国であるロシアへの制裁に踏み切れば、影響は世界経済に及ぶ。金融市場には動揺が広がっている。

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米国防総省は24日、ウクライナ周辺の東欧地域に最大8500人規模の米軍を派遣する準備に入ったと明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)が即応部隊の派遣を決めればこれに加わる。

1990年代の台湾海峡危機では、米国の圧倒的な軍事力の前に中国は引き下がった。現在の米国は国力が低下し、ウクライナ情勢に関与する余裕はない。ロシアはこうした事情を見透かし、強硬姿勢を崩していない。

米政府高官は25日、再侵攻があれば半導体などのハイテク製品を想定した輸出規制を講じると説明。資源分野への制裁も検討し、ロシア以外からの天然ガス調達を目指す。同高官は「ロシアは収入を得る機会を失い、ロシア経済は脆弱になる」と話した。

しかし、制裁はロシア経済への打撃にとどまらない。エネルギーや鉱物、食料など同国が握る資源の供給が細り、世界的な生産活動に影響が及ぶ可能性がある。

市場は警戒している。24日の欧州株は4%安と急落した。25日は日経平均株価が5カ月ぶりの安値を付け、米ダウ工業株30種平均は一時800ドル超下げた。金融市場が「経済的な影響の大きさを感じ取った」(野村総合研究所の木内登英氏)ためだ。

天然ガスではロシアが世界生産の17%を握り、特に欧州は消費量の3割を依存する。パイプラインを通じた供給が減るリスクを警戒し、欧州の天然ガス価格は24日に前週末比で19%上昇する場面があった。日本のロシア産ガスの輸入割合は1割程度だが、大手電力の燃料調達担当は「ロシアからの輸入が滞れば中東産などの奪い合いになり、日本が買い負けるリスクがある」と懸念する。

鉱物資源でもロシアのシェアは高い。自動車の排ガス触媒に使うパラジウムでは世界生産量の4割を握る。ステンレスや電気自動車(EV)用の電池に使うニッケルも世界の生産量の1割を占め、供給が細れば世界の自動車生産に支障を来す。

エネルギー価格の高騰が続けば消費を冷やし世界経済の逆風になる。

(ワシントン=中村亮、ブリュッセル=竹内康雄、コモディティーエディター 浜美佐)

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

ロシアによるウクライナ侵攻の可能性は欧州の政治的緊張を高めており、侵攻が起きると世界の金融市場の動向にも影響を与えるし、世界の投資家のリスク回避姿勢をさらに高める可能性がある。

ロシアが欧州向けガスの供給を抑制していることもあって欧州のガス価格が高い水準にあるうえに、ちょうど米国など金融緩和の正常化をする先進国が増えていく時期と重なっているので、金融株式市場は不安定になりやすい。

日本から欧州に向けた輸出はさほど多くないので日本経済への直接的な影響は限定的と見られるが、市場のボラティリティを高めているので注意を要する。

2022年1月26日 7:37 (2022年1月26日 7:47更新)

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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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分析・考察

バイデン米大統領は米軍を直接ウクライナに派遣することは否定しており、米国とロシアが直接、戦闘行為を交える可能性は現時点では低いでしょう。

しかし、それ自体が米国の対ロシアでの抑止力を弱め、
プーチン大統領率いるロシアによる足元を見るような動きを招いている印象があります。
ウクライナに侵攻したら、ロシアを経済や金融の面で干上がせる強力な制裁に出るぞ、と米国は警告しますが、エネルギーや鉱物などロシアからの資源供給が途絶えれば、その跳ね返りは日米欧などに及び、世界的なインフレ傾向に一段と拍車をかける恐れがあります。

最近の世界金融市場の混乱は、ロシアを追い詰めることの「不都合な真実」の表れともいえます。

2022年1月26日 7:32

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志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察

天然ガス、原油といったエネルギーとともに小麦やトウモロコシの価格にどう影響するかが懸念されます。

農産物は自国消費が中心で輸出できる国は限られます。その意味で、ロシアとウクライナは世界にとって「重要な輸出国」なのです。

国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数はすでに2008年と11年の過去のピークに匹敵する高い水準にあります。食料価格の高騰は世界の飢餓人口を拡大させ、新興国などの情勢を不安定にするリスクがあります。

2022年1月26日 7:26 』