日本海で「特異な動き」 中ロ接近、軍事同盟の様相

日本海で「特異な動き」 中ロ接近、軍事同盟の様相 
編集委員 高坂哲郎
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM192PM0Z10C22A1000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ 激しく、雑用に見舞われている…。

 ※ バタバタと、一日中走り回った…。世界情勢分析の”ネタ”となる「情報収集」している時間すら無かった…。

 ※ 世界情勢緊迫で、じっくり「情勢分析」していたいところだが、巡り合わせでそうもいかないのが、世の中だ…。

『中国軍とロシア軍が日本周辺で進める軍事協力が、新たな段階に入っている。両軍は特に日本海北部海域を重視しているようだ。東アジアの秩序を揺るがす潜在力を秘めており、北朝鮮の最近のミサイル連射の背景にある生き残りの思惑まで読み取れる。
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「特異な動きだ」。日米の防衛当局が驚きをもって受け止めた動きが、2021年11月19日に起きた。日本海北部で中ロ両空軍の爆撃機計4機が南下を始めていた。両空軍の日本周辺での合同飛行は、19年7月、20年12月に続いて3回目とみられるが、今回が過去と大きく異なるのは中国軍機の飛行ルートだった。

19年と20年の際、中国軍機は中国領から対馬海峡などを経由して日本海上空に達し、ロシア軍機と合流して東シナ海や太平洋で合同飛行を実施した。こうした動きに対し21年の飛行時は、中国領北部から洋上に出ずに直接ロシア極東部に入り、ロシア領内で同国空軍機とともに日本海上空に出ている。
並んで航行する中国(右側)とロシアの海軍艦艇(2021年10月、長崎県男女群島の南南東海域)=防衛省提供

軍事訓練には、有事の予行演習の意味合いがある場合もある。ロシアが有事に自国領を経由した外国軍機の作戦行動を容認し始めたとすれば、中ロの関係は単なる「軍事面での協力」の段階を過ぎ、事実上の「軍事同盟」のレベルに達し始めたともいえる。中ロ両軍は21年10月にも、計10隻の艦艇を投入し、津軽海峡から本州沿いを経て東シナ海に至る艦隊機動訓練というもう一つの「特異な動き」をみせた。
「接近阻止戦略の一環」

海空両戦力を動員したこうした動きは何を狙うのか。「日本海北部海域に米軍や自衛隊を近づけさせないようにする接近阻止戦略の一環だ」とある防衛省情報部局OBは断言する。

日本海北部に面する北朝鮮東岸に羅津(ラジン)という港湾都市がある。かつては旧日本海軍も使っていた羅津から少し沖合に出れば一気に水深が深くなり、潜水艦が隠れるのに非常に適した海域となる。中国海軍は現在、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)巨浪(JL)3と、搭載する「唐級」新型戦略原子力潜水艦を開発中だ。日米防衛当局者たちは、中国軍が唐級原潜をいずれ日本海北部に配備するだろうと以前からみていた。日本海北部の海域からなら、ワシントンを含む米東海岸を攻撃できるとみられるからだ。

当然、米軍も日本海での中国の接近阻止戦略を防ぎ、JL3を無力化しようと手を打ち始めている。北海道の小樽港には、19年2月には米第7艦隊の旗艦ブルーリッジが寄港し、22年2月には米海軍艦艇としては3年ぶりにミサイル駆逐艦ストックデールが寄港する予定だ。中国海軍だけでなく、宗谷海峡を経由して日本海とオホーツク海を往来するロシア海軍艦艇に対するけん制でもある。

百戦錬磨の米軍に現代戦の経験がほとんどない中国の海空軍が対抗するには、ロシア軍に共同訓練などを頼み、技量の向上を図ることが欠かせない。中国の思惑が一連の海空での中ロ両軍の動きにあらわれる。ロシアは近年、地下資源や武器など自国産品を中国に買ってもらうことで自国経済を維持しているのが実情で、中国から合同訓練を頼まれれば断れない。

21年11月に日本海などでロシア軍と合同飛行をした中国軍の爆撃機H6には核兵器を搭載できるタイプもある。中国軍は、自らの「虎の子」兵器であるJL3を無力化するため米軍が日本海北部に突入してくるなら、戦術核兵器でこれを排除することも辞さないとの強烈な威嚇を合同飛行を通して示したともいえる。

日米豪欧各国が最近、東アジアで多国間の艦艇機動訓練をしきりにしていることにいらだつ中国としては、ロシアとの合同訓練には「自国が孤立しているわけではない」と国民に訴えかけられる内政上の利点もある。
北朝鮮が実施したミサイルの発射実験(1月17日)=朝鮮中央通信・共同
焦燥感募らせる北朝鮮

中国軍の日本海シフトに焦燥感を募らせているとみられるのが、北朝鮮である。中国軍にとってJL3と唐級原潜は対米軍事戦略上、最重要の兵器システムだ。突き詰めれば、唐級の母港として最適な羅津港を含む北朝鮮の日本海側を中国領にしてしまうのが望ましいだろう。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は中国の思惑を強く警戒しており、中国海軍艦艇が北朝鮮領に寄港した事例は近年、ほとんど確認されていない。

長年にわたる中国やロシアの北朝鮮支援には、米軍の関心を引き付ける「おとり」を育てる意味合いがあったといえる。北朝鮮を使って朝鮮半島有事を引き起こさせれば、米軍の関心が向かう。中国には台湾侵攻、ロシアにはウクライナ攻略といったそれぞれの国益追求の機会が訪れるだろう。朝鮮半島有事の末に現体制が崩壊したとしても、すかさず中国軍が北朝鮮を占領し、羅津一帯も押さえられるというわけだ。

こうした状況下で金正恩体制が今後も北朝鮮の地で存続するには、米国と衝突する事態はぎりぎりで回避する一方、中国軍の米軍への対抗行動に同調することで中国に存続を容認してもらうしかない。北朝鮮が日本海に向けてしきりにミサイル発射し、接近する米軍をけん制する能力を誇示している背景には、いままで各国の軍関係者の間でしか認識されてこなかった「中国軍の日本海シフト」を受けた北朝鮮の生き残り戦略という意味合いもあるのだ。北朝鮮は21年の中ロ艦隊の機動訓練の際も、応援するかのようにミサイル発射をしている。

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