テクニカル指標一覧

テクニカル指標一覧
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 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ けっこう使っているものもあって、参考になった…。

 ※ 今後のこともあるんで、貼っておく…。

『テクニカル指標(テクニカルしひょう)とは、テクニカル分析で用いられる指標である。以下ではその種類と各論について解説する。』

『テクニカル指標の概要

過去のチャートから次の値動きの目安になる情報を抽出するための計算アルゴリズムである。

トレンド・偏差・最高価格からの比率・市場心理等様々な観点から指標が作成されて発表されている。

本来、値動きとは人間の意識が絡む偶発的かつ非常に複雑な現象であるため、常に正しいシグナルを出すテクニカル指標は存在しない。

特定の集団が価格操作の目的で意図的に巨額の購入や売却を行った場合や短期間に暴騰・暴落が起きる場合では、テクニカル指標自体が無効になることもあり得る。つまり、どのテクニカル指標も不連続な動きに対して弱い傾向にある。

デジタル信号処理の観点からはほぼ全ての指標がFIRフィルタに分類される。

リアルタイムなFIRフィルタではノイズを減らせば遅延は大きくなり、遅延を減らせばノイズが多くなる事が知られている。ノイズは騙しであり、遅延は判断の遅れに繋がるため、複数の指標を組み合わせて確率的な観点から判断を行うべきである。

指標の系統

テクニカル指標には2つの系統が存在する。

トレンド系指標(順張り系指標) - トレンドの方向性を判定する。移動平均から派生した物など。

オシレーター系指標(逆張り系指標) - 過去の値動きから、今の価格が高い位置にいるのか安い位置にいるのかを判定する。トレンドの転換点を判定する。パーセント「%」で表示する物が多い。

トレンド系でもオシレーター系でも、順張り投資・逆張り投資の両方に使われる。いずれの指標も単体での活用はだまし(ダマシ)に遭うことが多いため、トレンド系とオシレーター系の指標をうまく組み合わせ、さらに複数の時間足を参照して、トレンド分析をした上で有効に活用すべきとされている。

オシレーター系の指標は正確な出来高が確認できない為替相場などにおいては出来高の推移を代用するツールとしても活用されている。そのパーセント「%」の数値の大小で「買われすぎ」「売られすぎ」を判別するのは基本だが、それに加えて、価格と出来高の逆行現象と同じように「価格とオシレーター系指標の逆行現象(ダイバージェンス)から相場の反転を予想する」という機能も期待されている。

シグナル

指標自体のトレンドの方向性を判定するため、指標の移動平均をとったものをシグナルと呼ぶ。「指標 > シグナル」ならば、指標自体は「上げトレンド」である。例えば、MACDのシグナルがMACDシグナルである。ストキャスティクスの%Dのシグナルは、Slow%Dと呼ぶ。

指標の指標

シグナルを一般化し、指標自体のトレンドの方向性を判定するため、指標の指標をとることができる。シグナル以外では、RSIのストキャスティクスであるストキャスティクスRSIなど。

移動平均線

移動平均線とは、過去の一定期間の終値を平均してつないだ線のことである。移動平均線には、短期移動平均線、中期移動平均線、長期移動平均縁があり、トレードの世界では、それら3本の線を表示して使うことが多い。

分析では、移動平均の値 M A {\displaystyle MA} {\displaystyle MA} と現在の値 P {\displaystyle P} P とを比較するといった形で使われる。もし、 P > M A {\displaystyle P>MA} {\displaystyle P>MA} ならば「上げトレンド」、 P < M A {\displaystyle P<MA} {\displaystyle P<MA} ならば「下げトレンド」を意味する。

また移動平均は、トレンド系のテクニカル指標に分類される。移動平均の傾きでのトレンド判定は、モメンタムによる判定法である。

詳細は「移動平均」や「移動平均線」を参照。

MACD

MACDは、MACDとシグナルの2本の線でトレンドの状態を見るトレンド系のテクニカル指標であるが、オシレーター系としても利用されることが多いので、オシレーター系に分類される場合もある。

英語では、 Moving Average Convergence Divergence で、頭文字の、MACD(エムエーシーディー・マックディー)で呼ばれるのが一般的である。日本語では、「移動平均収束拡散法」という。

MACD(12,26,9)インジケーター(下半分)の典型的な表示を使用した過去の株価データ(上半分)の例。青い線はMACDシリーズ固有のもので、価格の12日間と26日間のEMAの違いです。赤い線は平均またはシグナルシリーズで、MACDシリーズの9日間のEMAです。棒グラフは、発散系列、これら2本の線の差を示しています。

考案者はジェラルド・アペル (Gerald Appel)。1960年代に発表。「Technical Analysis: Power Tools For The Active Investors」(ISBN 0131479024)、「アペル流テクニカル売買のコツ」(ISBN 4775970690)で利用法が紹介されている。

算出方法は

MACD = 短期(x日)の指数移動平均 – 長期(y日)の指数移動平均
MACDシグナル = MACDのz日の指数移動平均

x, y, z の組み合わせとしては、12, 26, 9 が使われることが多い。上記は日足での計算式であるが、日足でも分足でも計算式は同じである。MACDシグナルとしては、単純移動平均が使われることもある。

「MACD > MACDシグナル」なら上げトレンド、「MACD < MACDシグナル」 なら下げトレンドを意味する。

投資判断は、MACDがMACDシグナルを上へ抜いたら「買い」のチャンス、MACDがMACDシグナルを下へ抜いたら「売り」のチャンスである。

ただしそれだけでは利益損失比が1:1を割り込むケースが多いため、レンジ相場での活用を避ける・大局的に見て優位性のあるトレンド方向へだけ売買する・他の指標と組み合わせて分析するなどの必要性がある。

詳細は「MACD」を参照。

DMI

DMIは、「 +DI」,「 -DI 」、「ADX」という3本の線を利用してトレンドの発生を調べるトレンド系のテクニカル指標である。

英語では、「Directional Movement Index。Average Directional Movement Index 」と言う。日本語訳は、「方向性指数」と呼ばれる。 「+DI」の線は上昇トレンドの強さ(買い手の強さ)、「 -DI 」の線は下降トレンドの強さ(売り手の強さ)、「ADX」の線はトレンドの総合的な強さと方向性を表す。

ADX は Average Directional Index の略。DI は Directional Indicator の略。

考案者はJ・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア (J. Welles Wilder, Jr.)。1978年に「New Concepts in Technical Trading Systems」(ISBN 0894590278) にて発表。本書の和訳は、「ワイルダーのテクニカル分析入門」(ISBN 4939103633)。

定義

定義は以下の通り。

DMの定義。擬似コードを含む。+DM も -DMも0以上の実数。

HighMove = 高値 - 前日高値
LowMove = 前日安値 - 安値
if (HighMove > LowMove && HighMove > 0) { +DM = HighMove; } else { +DM = 0; }
if (HighMove < LowMove && LowMove > 0) { -DM = LowMove; } else { -DM = 0; }

True Range, Average True Rangeの定義。TRとATRは0以上の実数。
TR = max(高値 – 安値, 高値 – 前日終値, 前日終値 – 安値)
ATR = TR の移動平均
DIの定義
+DI = +DM の移動平均 / ATR * 100
-DI = -DM の移動平均 / ATR * 100
DX, ADXの定義
D X = | +DI − -DI | +DI + -DI × 100 {\displaystyle DX={|{\mbox{+DI}}-{\mbox{-DI}}| \over {\mbox{+DI}}+{\mbox{-DI}}}\times 100} {\displaystyle DX={|{\mbox{+DI}}-{\mbox{-DI}}| \over {\mbox{+DI}}+{\mbox{-DI}}}\times 100}
ADX = DX の移動平均

Wilderは移動平均には、14日の修正移動平均を使っていた。14日の単純移動平均が使われることも多い。それ以外の移動平均が使われることもある。

RSIと同一人物が同一書籍で発表した物であるが、RSIを改良した定義となっている。

トレンド判定

「+DI > -DI 」ならば上昇トレンド、「+DI < -DI 」ならば下降トレンド。

ADXはトレンドの強さを表現する指標。「ADX >= 40」なら強いトレンド、「ADX <= 20」なら弱いトレンド。

ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドとは、移動平均線とその上下3本の線(バンド)で表されるオシレーター系のテクニカル指標である。上下3本の線は過去の値動きから計算した標準偏差を表したものであり、それぞれ、中心の移動平均線から近い順に、「1σ(シグマ)、2σ、3σ」と呼ぶ。

ボリンジャーバンドは相場の動きに応じて、バンドの向きや大きさが変わるのが特徴である。相場にトレンドがない時は、ボリンジャーバンドの向きは水平であり、バンドの幅は小さくなる。逆に大きなトレンドがある時は、ボリンジャーバンドは大きく変動し、その向きと幅が大きくなる。

考案者はジョン・A・ボリンジャー (John A. Bollinger)。一般には逆張りに分類されることが多いが、ボリンジャーは順張りに使用している。「Bollinger on Bollinger Bands」(ISBN 0071373683)、「ボリンジャー・バンド入門」(ISBN 4939103536)にて、利用法が紹介されている。

ボリンジャーは1980年代に発表。ただし、平均誤差の標準偏差という考え方は金融の世界に大昔からある。例えば、1973年に発表されたブラック・ショールズ方程式もこの考え方に基づいている。

算出方法は、

ボリンジャーバンド = x日の移動平均 ± x日の標準偏差 × y

yとしては、2が使われることが多い。移動平均は、単純移動平均が使われることが多いが、単純以外も使われることがある。単純以外を使用する場合は、標準偏差ではなく、移動平均に対する誤差の二乗平均平方根となる。

背後にある理論としては、値動きの正規分布を前提としている。線形自己回帰移動平均モデルと同じ考え方に基づいている。ただし、現実としては、平均からの誤差は正規分布から大きく離れた分布となる。そのため、あくまでも、ボラティリティを測る尺度として、誤差の二乗平均平方根が使われているに過ぎない。正規分布ではないことは、経済物理学を参照。

投資判断は、トレンドが出ているときは終値が上のバンドを上抜いたら買い、下のバンドを下抜いたら売り。レンジ相場のときは逆パターンに利用される。

エンベロープ

エンベロープとは、移動平均線の上下に一定の幅の線を表示したものであり、その上下の線は、中央の移動平均線の動きに連動して表示される。その上下の幅(乖離率)は、常に一定であり、一般的に25日の移動平均線では、そのエンベロープの乖離率は「2~3%」に設定されることが多い。

もしローソク足が上側のエンベロープの線に届いた時は、その現在の価格が買われすぎであり、これから反転、下落する可能性が高い、と判断して「売りのシグナル」、逆にローソク足が下側のエンベロープの線に届いた時は、その現在の価格は売られすぎであり、これから反転して上昇する可能性が高い、と判断して「買いのシグナル」、とみなす。

移動平均乖離率

移動平均乖離率は現在価格が「移動平均線」からどれくらい離れているかを判別するオシレーター系のテクニカル指標である。英語表記は「Moving average divergence rate」。
株式相場や為替相場などで、その時の「マーケットの行き過ぎ感」をグラフ化して表示する。もしローソク足が移動平均線より上に大きく高ければ「上昇トレンド」であり、その現在の価格が「買われ過ぎ」を意味し、「売りのシグナル」となる。逆にローソク足が移動平均線より下に大きく低ければ「下降トレンド」であり、その現在の価格が「売られ過ぎ」を意味し、「買いのシグナル」となる。

移動平均乖離率は以下の計算式で求められ、「%」で表示される。

計算式

((現在の終値-移動平均値)÷移動平均値)×100

定義

price − M A ( price ) M A ( price ) × 100 {\displaystyle {\frac {{\mbox{price}}-MA({\mbox{price}})}{MA({\mbox{price}})}}\times 100} {\displaystyle {\frac {{\mbox{price}}-MA({\mbox{price}})}{MA({\mbox{price}})}}\times 100}
MA = 移動平均

値域は0% – 100%。
モメンタムとROC

モメンタム

Momentum。単純移動平均の傾き。正なら上げトレンド、負なら下げトレンド。

定義は、

Momentum = (終値 – n日前の終値) / n

ROC

Rate of Change。変化率。正なら上げトレンド、負なら下げトレンド。

定義は2種類ある。

ROC = (終値 – n日前の終値) / n日前の終値 × 100%
ROC = (終値 – n日前の終値) / 終値 × 100%
ストキャスティクス

ストキャスティクスとは、値動きの異なる2本の線を利用して市場の過熱感を見るオシレーター系のテクニカル指標である。

2本の線は、「%K」、「%D」で表す。

2本の線が80%の高水準の線を越えた時は、その現在の価格は買われすぎと判断し、「売りシグナル」とみなす。逆に、2本の線が20%の低水準の線を越えた時は、その現在の価格は売られすぎと判断し「買いシグナル」とみなす。

また、「%K」が「%D」を下から上に抜けた時は、ゴールデンクロスとみなして「買いシグナル」、「%K」が「%D」を上から下に抜けた時は、デッドクロスとみなして「売りシグナル」、とみなす。

詳細は「ストキャスティクス」を参照。

RSI

RSIとは、相場の過熱感を「0%~100%」で表したオシレーター系のテクニカル指標である。英語では、 Relative Strength Index で、頭文字の「RSI」で呼ばれるのが一般的である。日本語では、「相対力指数」と呼ばれる。

単にRSIといった場合、CutlerのRSIを指すことが多い。

RSIの数値が70%以上では「買われすぎ」を意味し、30%以下では「売られすぎ」を意味する。

WilderのRSI

考案者はJ・ウエルズ・ワイルダー・ジュニア (J. Welles Wilder, Jr.)。1978年に「New Concepts in Technical Trading Systems」(ISBN 0894590278) にて発表。

算出方法は

RSI = 値上がり幅の指数移動平均(α) ÷ (値上がり幅の指数移動平均(α) + 値下がり幅の指数移動平均(α)) × 100

α=1/14を使うのをワイルダーは推奨している。つまり、14日の修正移動平均。30以下では売られすぎ70以上では買われすぎの水準と言える。

ロバート・バーンズのDirectional Relative Volatility (DRV)も同じ物。 DRV = RSI / 50 − 1 {\displaystyle {\mbox{DRV}}={\mbox{RSI}}/50-1} {\displaystyle {\mbox{DRV}}={\mbox{RSI}}/50-1}。

CutlerのRSI

WilderのRSIの指数移動平均を単純移動平均に置き換えた物をCutlerのRSIという。

算出方法は

RSI = n日間の値上がり幅合計 ÷ (n日間の値上がり幅合計 + n日間の値下がり幅合計) × 100

nとして、14や9を使うのが、一般的。30以下では売られすぎ70以上では買われすぎの水準と言える。

トゥーシャー・シャンデが1994年に発表した、Chande Momentum Oscillator (CMO) もCutlerのRSIと同じ物。 CMO = 2 RSI − 100 {\displaystyle {\mbox{CMO}}=2{\mbox{RSI}}-100} {\displaystyle {\mbox{CMO}}=2{\mbox{RSI}}-100}。

ストキャスティクスRSI

1994年にトゥーシャー・シャンデとスタンリー・クロールが「The New Technical Trader」(ISBN 0471597805)にて発表。RSIのストキャスティクス%K。指標の指標。

ストキャスティクスRSI = (RSI – n日間のRSIの最小値) ÷ (n日間のRSIの最大値 – n日間のRSIの最小値)
ストキャスティクスRSIシグナル = ストキャスティクスRSIの単純移動平均

RSIのストキャスティクス%Dは、

(RSI – n日間のRSIの最小値)の単純移動平均 ÷ (n日間のRSIの最大値 – n日間のRSIの最小値)の単純移動平均

であり、上記の単純移動平均(指標の指標の指標)がRSIのストキャスティクスSlow%Dである。
MFI

オシレーター系のテクニカル指標。Money Flow Index。RSIは終値だけを使うが、それを、Typical Price × 出来高に置き換えた物。

資金が買い、売り、どちらの方向にあるのかを、株価と出来高から判断するための指標。
RSIは株価の変動幅のみを使っている指標であるのに対し、MFIは出来高も考慮する。

例 : 0~100%で推移する時、
20%以下は売られすぎ、徐々に買いサイン。
80%以上は買われすぎ、徐々に売りサイン 。

RSIと同様に株価と逆行する場合もあるため注意。

計算式
TP = (高値+安値+終値)÷3
MF = TP×出来高
PMF = 前日比でTPが上昇した、日数 n のMFの合計
NMF = 前日比でTPが下落と変わらずだった、日数 n のMFの合計

MFI = 100-(100÷(1+(PMF÷NMF)))

  日数 n は14日を用いる事が多い。

CCI

Commodity Channel Index。商品チャンネル指数。Donald Lambertが1980年に発表した。移動平均からの乖離を平均偏差で割った物。移動平均乖離率を改良した物。オシレーター系のテクニカル指標。

絶対値の2乗を使う標準偏差ではなく、絶対値の1乗である平均偏差を使うことにより、分母である偏差は外れ値の影響を受けにくくなり、逆にCCIは外れ値をより明確に示すようになる。

定義。

C C I = 1 0.015 p t − S M A ( p t ) σ ( p t ) {\displaystyle CCI={\frac {1}{0.015}}{\frac {p_{t}-SMA(p_{t})}{\sigma (p_{t})}}} {\displaystyle CCI={\frac {1}{0.015}}{\frac {p_{t}-SMA(p_{t})}{\sigma (p_{t})}}},
p t {\displaystyle p_{t}} {\displaystyle p_{t}} = (高値 + 安値 + 終値) / 3
σ ( p t ) {\displaystyle \sigma (p_{t})} {\displaystyle \sigma (p_{t})} = 平均偏差。 | p t − S M A ( p t ) | {\displaystyle |p_{t}-SMA(p_{t})|} {\displaystyle |p_{t}-SMA(p_{t})|}のn日間の平均。
SMA は単純移動平均(n日)

トレンド判定は、

-100以下から、-100以上になるとき、上げトレンドの始まり。
100以上から、100以下になるとき、下げトレンドの始まり。

C C I >= 100 {\displaystyle CCI>=100} {\displaystyle CCI>=100}というのは平均偏差の1.5倍以上に大きく乖離したことを意味する。

0以上なら上げトレンド、0以下なら下げトレンド、という判定法は、移動平均でのトレンド判定法と同じになる。ただし、その判定法よりもより早い段階で判定する。

CCI/MA

CCIの移動平均、つまり、シグナルをとり、

CCI > CCI/MA なら CCI が上げトレンドなので価格も上げトレンド
CCI < CCI/MA なら CCI が下げトレンドなので価格も下げトレンド

という判定法。

Williams %R

オシレーター系のテクニカル指標。W%R、ウィリアムズ%R、Williams %Rと呼ばれる。考案者はラリー・ウィリアムズ (Larry Williams)。1966年に発表。

算出方法は、

W%R = (当日の終値-過去n日間の最高値) ÷ (過去n日間の最高値-過去n日間の最安値) × 100

数値は-100% – 0%となる。値は、ストキャスティクスの %K – 100 と同じ。発表時期は、ストキャスティクスの方が古い。短期間の値動きで上下に激しく振れる特性がある。

判断方法はRSIと同じである。これもRSIと同じくウィリアムズ自身はこの指標を自身が作った数多くの指標、投資法の中の一つと考えていて、この指標はそれほど信用していない。信用度は後に『Ultimate Oscillator(究極のオシレーター)』なる物を作る程度のものである。短期取引における反応性を重視したウィリアムズの考えがこの指標にも反映されている。

短期の値動きに対する反応が非常に早いが、それだけ目先の値動きに敏感になり騙しも多い。特に、大きなトレンドが発生した時に値が上下どちらかに張り付くガーベージトップ・ガーベージボトムという騙しが発生することが知られている。ガーベージトップ・ガーベージボトムを排除するために、他の指標も組み合わせて使用するべきである。
RCI

オシレーター系のテクニカル指標。英語では、 Rank Correlation Index で、頭文字のRCIで呼ばれるのが一般的である。日本語では、「順位相関指数」と呼ばれる。

判断方法は複数あるが、一般的に「-50を下回る」と売られすぎ、「-50を越える」と買われすぎ、と判断する逆張り指標。トレンド判断の為に別々の周期でRCIを計算しクロスする所で仕掛ける場合もある。

判断基準を+100~0~-100とした場合。 ある期間内の株価(終値)に上昇順位をつけ、 その期間の日数との相関関係を指数化したもの。 「上がり始め」「下がり始め」の時期とタイミングを捉える指標。 株価の動きと日数を重視する。 株価の天井圏と株価の底値圏 +100付近で天井圏、-100付近で底値圏。

<売りのシグナル例>

              プラス80以上からの天井圏      ・・・反落警戒
              プラス80以上がプラス80以下になる  ・・・下降転換
              プラスゾーンでの反落        ・・・上昇傾向の停止

<買いのシグナル例>

              マイナス80以下からの底値圏     ・・・上昇反発警戒
              マイナス80以下がマイナス80以上になる・・・上昇転換
              マイナスゾーンでの反発       ・・・下降傾向の停止

株の需要と供給状況により変化の状況が続かず上昇下降が短期的に繰り返す場合もある。
サイコロジカルライン

サイコロジカルラインは市場参加者たちの心理状態を数値化したオシレーター系のテクニカル指標である。

サイコロジカルラインが75%以上に上昇すれば、その現在の価格が「買われすぎ」と判断して、売りシグナル、逆に、25%以上に下落すれば、その現在の価格は「売られすぎ」と判断して買いシグナルとみなす。

定義

サイコロジカルライン = 過去n日で前日比で終値が上昇した日数 ÷ n × 100%

詳細は「サイコロジカルライン」を参照。

一目均衡表

一目均衡表(いちもくきんこうひょう)は、昭和初期、「都新聞」商況部部長の細田悟一が考案したテクニカル分析。日本が世界に誇るチャート分析の一つである。世界のマーケットでは「Ichimoku」として広く知られ、海外のFX会社、金融機関でも、この「Ichimoku」をテクニカル分析ツールの一つに加えて利用している。

一目均衡表は、ローソク足と5本の線(基準線、転換線、遅行線、先行スパン1、2)を用いて、相場の動きを判別する。

もし転換線が基準線を下から上に抜けたら「好転・買いシグナル」を意味し、もし転換線が基準線を上から下に抜けたら「逆転・売りシグナル」を意味する。先行スパン1と先行スパン2で囲まれた部分は「クモ」と呼ばれ、下値支持線、上値抵抗線とみることができる。

詳細は「一目均衡表」を参照。

広義ボラティリティ

価格変動の激しさをボラティリティという。ただし、狭義には、ヒストリカル・ボラティリティなどを指す。年末年始や市場が開いているにもかかわらず主要国が祝祭日の時に、ボラティリティが小さくなる傾向がある。

ヒストリカル・ボラティリティ

価格の対数差分の標準偏差。ボラティリティを参照。
ATR

Average True Range。値動きの幅を表す指標。DMIなどが使用。

定義

TR = max(高値 – 安値, 高値 – 前日終値, 前日終値 – 安値)
ATR = TR の移動平均
標準偏差

移動平均からの乖離の二乗平均平方根(標準偏差)。ボリンジャーバンドが使用。平均からの差ではなく、移動平均からの差であることに注意。それ故、厳密には、標準偏差ではない。

平均偏差

移動平均からの乖離の絶対値の平均(平均偏差)。標準偏差よりも平均からの外れ値の影響を受けにくい。CCIなどが使用。』

経済とは気であるという解りやすい理由

経済とは気であるという解りやすい理由
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/28002054.html

『 FXや株のトレードで使うチャートの分析に、PIVOTという目安があります。チャート分析をする為のインジケーターの一つで、とても広く使われているものです。証券会社なんかは、毎日、「今日のPIVOTの値」をメールで配信してくれたりします。

開発したのは、J.W.ワイルダー氏で、テクニカル分析の父と言われている人です。ワイルダー氏の開発したインジケーターは、RSI、DMI、ADX、PIVOT、パラボリックSAR、ボラティリティ・システムなど、有名所、メジャーなインジケータがズラリと並びます。全てを使ってなくても、このうちの一つをチャートに表示させているトレーダーは多いでしょう。

さて、こう書くと、PIVOTとは、さぞや高度な数学解析を使った複雑なインジケーターなんだろうなぁと考えガチですが、計算式はしごく単純です。前日の最高値・最安値があれば、全てのPIVOTは計算出来ます。(前日終値 + 前日高値 + 前日安値)÷ 3が基準のPIVOTになります。PPと略します。何を求めているかと言えば、前日の値幅の中間の値です。つまり、これより価格が高い場合、強気で上昇傾向にあり、低い場合、弱気で下降傾向にあると判断する基準の価格です。

さて、この単純な値に何の数学的な根拠があるのでしょうか。「まったく、ありません」理系の人が見たら、頭を抱えそうな回答ですが、この数値が数学的に重要である根拠は、まったく無いのです。この前日の値動きのど真ん中という値は、今現在に取引をしているトレーダーがポジションを持つ時の、心理的な指針になっているから重要なのです。トレーダーにとって、今が強気なのか弱気なのかというのは、ポジションを持つ心理的な大きな判断材料になります。にわとりが先か卵が先かの話になりますが、今、まさにチャートを見つめているトレーダーの多くの判断基準が、前日の値幅の中間値を基準に判断されるのです。

なぜかと言う問には、そうなっているからとしか言いようがありません。敢えて言えば、トレードしているのが、機械ではなく人間だからです。AIなどで自動で売り買いするシステムもありますが、AIが判断をする基準にもPIVOTは取り入れられているので、結局のところ人間のトレーダーと同じような判断基準を持ちます。

経済とは気であるというのは、こういうところから来ています。まったく原因の判らない、突然の暴落・暴騰は、市場では良く起こります。良くいわれる「嫌気」とか「強気」とか、市場の状態を表す言葉は、全てに「気」が付きます。明確な理由がある場合もありますし、トレーダーは、そういう情報に敏感であって当然ですが、市場は気で動いていると言っても過言ではありません。

人が市場を動かしている、それゆえに、特定の数字が意味を持つ場合があるのです。PIVOTには、さらに前日の高値・安値から計算される、R1~R3、S1~S3という値があります。これは、Rがレジスタンスの略で、Sがサポートの略です。価格が上昇する時の抵抗ラインが、レジスタンス。価格が下降する時のサポートラインがサポートになります。これは、トレードにおいて、とても意識される重要な価格です。

その理由も同じです。前日の値動きを元にして、PIVOTで計算されて示されるので、心理的に重要な価格として、トレーダーに意識されるのです。数学的な根拠はありません。まぁ、PIVOTは、R4、S4以上も求められるのですが、そこまで行くと、ニュースになるくらいの暴落・暴騰が市場で起きた時ぐらいで、年に何回あるかという話になるので、多くの日常はR3、S3までで十分に間に合います。

月に何百兆円と取引される国際市場の世界で、最も重要なインジケーターの一つが、根拠の無い理由で設定されています。それが、市場が気で動いているとされる理由です。この事をもって、本で勉強したから、知識を蓄えたから、分析をたくさんしたから、「市場で勝てるようになるわけではない」という理由がお分かりでしょうか。

世の中の多くのスキルというのは、費やした時間に応じて、向上するものです。しかし、トレードに関しては、それが当てはまりません。何十年単位で勝ち続けても、一度の取引で全てを失う事があります。天才相場師と言われた、ヴィクター・ニーダー・ホッファー氏も、緻密な分析と独自開発の手法で、数十年相場で勝ち続けましたが、アジア通貨危機という場面での一度の逆張りで、全財産を失いました。しかも、相場が反転したのは、彼が強制ロスカットされて、4時間後の事です。

市場は法則で動いているわけではなく、その時々の環境で、有効な手段が限られた期間続くというだけです。それも、完全にたまたまです。その為、誰かの真似をしても、その時の相場が調子の良かった時期と一緒じゃないと、意味を成さない事も、しばしばあります。

その為、情報商材やセミナーを参考にして、相場を自分の眼で読む人は、トレードが上達しますが、それを真似する人には、何の役にも立ちません。それらは、「ある時期、うまくいった事がある、一つのやり方」が紹介されているに過ぎないからです。

これは、他国の言葉を覚えて、しゃべれるようになる経過と似ています。その言葉が溢れる環境に身をおいて、懸命に努力すると、いつのまにか言葉が頭にスッと入ってきて、理解できるようになり、その国の言葉で表現ができるようになります。

この文法を覚えたから、この単語を暗記したから、その国の言葉がしゃべれるようになるわけでは、ありません。トレードも、これと似ています。』

【地球コラム】カザフの「天安門事件」(下)

【地球コラム】カザフの「天安門事件」(下)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022011700380&g=int

『 ◇トカエフとは何者か

【地球コラム】カザフの「天安門事件」(上)

 中央アジアのカザフスタンで年明け早々、燃料価格高騰に端を発した反政府デモが瞬く間に全土に広がり、治安部隊との衝突などで200人以上の死者を出した。トカエフ大統領は、治安権限を掌握するとともにデモ隊を「テロリスト」と呼んで射殺を命令。同じ旧ソ連構成国で2020年に民主化運動が弾圧された東欧ベラルーシのように、さらなる強権化を進めている。

 報道を通じたこうした受け止めは間違ってはいないが、あくまで表面的なものにすぎない。カザフは、伝統的な部族社会と旧ソ連的な強権支配が「神仏習合」したような体制で、内実は極めて複雑だ。逆に内政や指導者像を見ていけば、ヒントが隠されていることが分かる。筆者も含めて内外のウオッチャーが指摘している最大の出来事は、旧ソ連末期から「国父」として30年以上影響力を保持したナザルバエフ前大統領が失脚したという点だ。

 ナンバー2の上院議長だったトカエフ大統領は2019年、高齢で辞任したナザルバエフ前大統領から政権を託され、当初は「つなぎ」や「操り人形」との評価もあった。ところが、徐々にナザルバエフ派を追放。この1月の混乱の中で(あるいは混乱に乗じて)権力闘争が繰り広げられ、トカエフ大統領が勝利したもようだ。

 トカエフ大統領は旧ソ連外務省「チャイナスクール」(中国語研修組)出身で、1989年の天安門事件を目撃している。スーツを着た元外交官として外見はスマートだが、この原体験が強硬対応に少なからず影響しているのではないかという見方もある。(時事通信社・前モスクワ特派員 平岩貴比古、2回連載・内政編)

◇逆風下で攻勢

 昔は騎馬民族が駆け抜けた草原のカザフ。ロシア帝国、ソ連時代を経て独立したこの資源国は、国父(エルバシ)と呼ばれるナザルバエフ前大統領が支配してきた。エリートのソ連共産党政治局員で、ゴルバチョフ元大統領から「副大統領」職を打診されたほどの大物。ロシアのプーチン大統領も一目置いていた。

 憲法改正で「終身大統領」に道が開かれていたが、78歳だった2019年に辞任。中央アジアでやはりワンマン体制を敷いたウズベキスタンのカリモフ初代大統領がその3年前、78歳で急死していたことも、背中を押したもようだ。金と権力を握るナザルバエフ一族の安泰が続くよう「院政」のシナリオを選択したとみられた。

 後を継いだ外交官出身のトカエフ大統領は、首都アスタナを前任者のファーストネームの「ヌルスルタン」に改称し、忠誠心をアピール。自分が務めた上院議長(大統領が欠けた場合の継承順位1位)のポストに、ナザルバエフ前大統領の長女を就ける配慮も見せた。もっとも、1年ほどで長女を解任して遠ざけるなど、独自路線は芽生えつつあった。

 1月初め、自動車燃料などに使われる液化石油ガス(LPG)価格が2倍に高騰すると、反政府の傾向が強い西部マンギスタウ州でデモが発生。最大都市の南部アルマトイを含め、全土に飛び火していった。強権でデモを押さえ込んできたカザフでは異例の事態。トカエフ大統領は逆風にさらされつつも、あえて攻めの姿勢に出た。

◇国父派を一掃

 トカエフ大統領は1月5日、ナザルバエフ前大統領を最重要ポストの安全保障会議議長から解任した。これは自身にもにらみを利かせていた治安機関を掌握するとともに、院政を終わらせることを事実上意味する。表向きは危機に対する「挙国一致」が宣伝されたが、国父は公の場からしばらく姿を消した。ナザルバエフ一族が乗ったとみられるプライベートジェットが、不動産を持つアラブ首長国連邦(UAE)や隣国キルギスなどに向かったとの情報も流れた。

 トカエフ大統領はこの日、非常事態宣言を出して反政府デモの武力鎮圧に乗り出すとともに、失政の責任を取らせる形で内閣を退陣させた。インターネットが遮断される中で流された国民向けのテレビ演説では、デモ隊を「テロリスト」と呼んで非難。ロシア主導の軍事同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)に平和維持部隊の派遣を要請するなど、動きは迅速だった。

 ナザルバエフ前大統領が失脚したという「状況証拠」を挙げよう。トカエフ大統領は、自分が安全保障会議議長を兼任した上で、旧ソ連国家保安委員会(KGB)の流れをくむカザフ国家保安委員会(KNB)の上層部を刷新。ナザルバエフ派の追い落としを図った。一族の中でもおい(弟の息子)であるアビシ第1副議長の影響力をそごうと、同じポストに自身の側近のヌルトレウ大統領府副長官を送り込んだ。トカエフ大統領が国連欧州本部トップだった当時、ジュネーブ駐在の外交官として支えた懐刀だ。

 続いて、ナザルバエフ派であるKNBのマシモフ議長も解任。後任には、トカエフ大統領のSPとして信頼を得た国家警護局(SGO)のサギムバエフ長官を任命した。つまり、治安機関をトカエフ派でほぼ固めたことになる。

◇弾圧か、クーデターか

 治安機関トップのマシモフ議長は解任後の1月6日、国家反逆容疑で拘束された。トカエフ大統領は反政府デモをめぐる英語のツイート(後に削除)で、外国人を含むテロリストら「2万人」に攻撃を受けたと決め付けていた。主張の真偽や是非はともかく、治安維持に落ち度があったことを口実に、ナザルバエフ派を一掃したもようだ。

 ナザルバエフ前大統領の出国説などが飛び交う中、スポークスマンは「首都ヌルスルタンにいる」「安全保障会議議長ポストは自主的に返上した」と説明した。しかし、トカエフ大統領はかばうどころか、11日の演説で「国父のおかげで富裕層が生まれた」と格差の広がりを遠回しに批判し、富の再分配を訴えた。権威失墜はもはや火を見るより明かだろう。

 30年前のソ連崩壊時にレーニン像が倒されたように、地方では「ナザルバエフ像」が引きずり落とされた。デモ隊は「年寄りは去れ」と連呼し、実際に一連の解任でナザルバエフ派は力を失った。反政府デモは、対応を誤ればトカエフ大統領自身も政権の座から転落しかねないところ、権力闘争にたくみに利用した格好だ。実力者による院政を終わらせたという意味において「クーデター」に似た動きが見られたと言ってもいい。

 年明けのカザフ情勢について、カーネギー財団モスクワ支部のリポートは次のように結論付けている。「結果的にトカエフ大統領が最大の受益者かもしれないが、危機をプロデュースしたとは言えない。恐らくとっさに権力掌握のチャンスに利用したのだろう」。われわれの前に浮かび上がったは「策士」トカエフ大統領の姿だ。

◇デモの原体験

 国連で要職を務め、欧米とも関係を築いていたトカエフ大統領が、デモ隊に対して流血の事態も辞さない姿勢を取ったことに、国際社会の動揺は大きい。異例のロシア軍などの派遣要請に続き、警告なしでデモ隊の射殺まで容認しており、バイデン米政権も自制を強く呼び掛けた。一方、隣国・中国はカザフ支持を表明している。

 実のところトカエフ大統領は、リベラルというよりも保守的な思想の持ち主で、民主主義よりも権威主義の信奉者なのかもしれない。そのキャリアはソ連外交官として始まる。名門のモスクワ国際関係大で学び、外務省入りしてシンガポールに駐在。1980年代後半には在中国大使館で勤務し、天安門事件を目の当たりにした。若き日にゴルバチョフ元大統領の通訳も務めたというこの中国語専門家は、著書の中で事件を次のように回想している。

 「100メートル離れた場所で人の海が荒れ狂っていたのに、宴会は平穏かつ友好的な雰囲気で行われた」。1989年のゴルバチョフ元大統領訪中時の様子を振り返ったもので、民主化を求める学生らへの冷めた視線が伝わってくる。

 ロシアの政治アナリストは、反政府デモに関して「トカエフ大統領は駆け出し時代に天安門広場で改革を求める若者の大規模デモを目撃しており、今回のような事態に発展するのを常に恐れていた」と指摘している。国際派の大統領が「反ナザルバエフ」を掲げるデモを権力闘争に利用しながら、天安門事件のように市民を弾圧したとすれば、皮肉というほかないだろう。 』

【地球コラム】カザフの「天安門事件」(上)

【地球コラム】カザフの「天安門事件」(上)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022011200655&g=int

『◇プーチン、対中警戒か

 中央アジアのカザフスタン全土で反政府デモの嵐が吹き荒れ、ロシアのプーチン政権は1月6日、旧ソ連圏の軍事同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)の枠内で平和維持部隊を派遣した。カザフのトカエフ大統領の要請後、24時間以内のスピード介入だ。ウクライナとの西部国境に軍を集結させて北大西洋条約機構(NATO)に圧力を加える中、ロシアの勢力圏を守るためならすぐにでも行動に移せるという臨戦態勢を対外的に誇示した。

 ただ、プーチン政権が一時的にも平和維持部隊でにらみを利かせた相手は、欧米だけではなさそうだ。カザフはNATOと一定の協力関係にあるが、ロシアとの同盟を軸にバランス外交に努めており、ウクライナなどのようにNATO加盟を目指しているわけではない。ここで見えてくるのが、カザフへの経済進出を活発化する東の隣国・中国の存在だ。
 中央アジア5カ国は、ロシア帝国、ソ連時代を経て独立。カザフのナザルバエフ前大統領のような強権指導者が統治してきた。しかし、ソ連崩壊から30年が過ぎ、地域の安定にはほころびが見える。その一つが、年明けのカザフ情勢でもある。

 権力の空白が生まれれば、中国に付け入る隙を与える―。中ロは現在、戦略的パートナーシップ関係にあるが、歴史的には中ソ国境紛争も経験したライバル同士。プーチン大統領の素早い決断に際し、中ロ「蜜月」の中で表向きには言えない中国への警戒感が念頭にあったもようだ。(時事通信社・前モスクワ特派員 平岩貴比古、2回連載・外交編)

◇迅速すぎる展開

 カザフのトカエフ大統領が国民向けのテレビ演説で、デモ隊を「テロリスト」と呼び、平和維持部隊の派遣を要請したのは1月5日。ロシア主導のCSTOが深夜に正式決定後、ロシア空挺(くうてい)軍が駐留する中部イワノボ州では翌日、雪の中でずらりと並んだ軍用車両がカザフ行き輸送機への搭載を待っていた。

 平和維持部隊の中心となったのは、このロシア空挺軍。チェチェン紛争やウクライナ南部クリミア半島併合などに際して投入された精鋭部隊であり、欧米はデモの武力鎮圧と共に、ロシアの軍事介入に懸念を示した。

 年明けからの反政府デモの暴徒化を受け、要請した主体はカザフだ。CSTOの平和維持部隊の活用は初めて。しかし、旧ソ連圏でロシアが介入してきた前例からして、展開は「迅速すぎた」とも言える。2013~2014年にデモに見舞われたウクライナは、CSTO非加盟で今回のような選択肢はあり得なかった(結果的にロシア軍がクリミア半島を制圧した)。2020年に大統領選不正疑惑がデモに発展したベラルーシは加盟国だが、ロシアからは治安部隊の支援表明にとどまった。

 ウクライナはその後、NATO加盟路線をさらに鮮明にし、ベラルーシでは政権崩壊こそ免れたものの、反ルカシェンコ派が欧州連合(EU)域内に逃れて「亡命政府」のように振る舞っている。問題を長期化でこじらせたという反省点がロシアにはあり、カザフでの対応に生かされたとみられる。迅速な介入に当たっては(1)ロシアが主導して要請させた(2)事前のコンティンジェンシー・プラン(緊急時対応計画)が存在した―可能性もありそうだ。

◇くすぶる併合論

 ロシアの行動には言うまでもなく、他の旧ソ連構成国を見下したような態度が透けて見える。カザフに1月に展開したロシア空挺軍の平和維持部隊は、2014年のクリミア半島併合に際して作戦に当たった司令官が指揮。このことから、ロシアの政界では、自国による「カザフ併合論」がまことしやかに語られた。
 中央アジアの草原には15世紀以降、モンゴル帝国の流れをくむ「カザフ・ハン国」が存在し、清朝にも朝貢していた。19世紀にロシア帝国が併合。30年前のソ連崩壊までロシア人と運命を共にしていた。

 「中央アジアはロシアの土地だ。インターネット上で議論されているように、私は歴史的な祖国・ロシアへの編入を問うカザフでの住民投票実施を支持する」。反政府デモで混乱する中、政権与党・統一ロシア所属の下院議員はこう表明して波紋を呼んだ。歯に衣着せぬ物言いで知られる極右・自由民主党のジリノフスキー党首も「カザフは人工的かつもろい国家。分裂するとすれば二つで、南はカザフ人のものとなり、北はロシアに復帰するだろう」と言いたい放題だ。

 カザフで人口の約2割はロシア系で、国境を接する北部に多い。万が一、大混乱に陥ってロシアから離反するくらいならば、ウクライナのように「ロシア系住民」の分離独立地域をつくったり、併合したりするシナリオもなくはない。プーチン大統領自身、2014年に若者らとの会合で「(ソ連崩壊まで)カザフに国家は存在しなかった」と述べており、不気味だ。最近の併合論は、内外の反応を探る観測気球なのかもしれない。

◇ロシアが本気の理由

 最悪の場合、併合されかねないという可能性も考慮してか、バイデン米政権も厳しい目を向けた。ブリンケン国務長官は1月7日の記者会見で「ロシア人がひとたび家に居座れば、彼らを立ち退かせるのは非常に難しい」と懸念を示した。

 緊迫するウクライナ情勢を念頭に置いた発言とみられるが、対日関係では北方領土も同じだろう。ともあれ、カザフ派遣の平和維持部隊には、ロシア空挺軍の特殊部隊(スペツナズ)が含まれていることが判明。ロシアの著名ジャーナリストも「チェチェン共和国、南オセチア、クリミア半島、シリアに投入されたエリート部隊」だとして目的をいぶかった。

 ロシアが本気になるのはなぜか。ウクライナやベラルーシでの反省点があるのは先述の通りだが、これに加え、ロシア主導の軍事同盟であるCSTOの実効性に疑問符が付いており、それを払拭(ふっしょく)する狙いもあったとみられる。

 旧ソ連圏で2020年に再燃したナゴルノカラバフ紛争では、地域大国トルコがドローンを供与するアゼルバイジャンと、CSTOを通じたロシアの同盟国アルメニアが交戦。アルメニアはCSTOの支援を受けられなかった。CSTOはカザフやキルギスなどが加盟し、同じイスラム教徒で言葉も近いアゼルバイジャンと敵対させるのは不可能だった。

 ロシアは停戦合意に基づき、単独でナゴルノカラバフに平和維持部隊を送るのがやっと。CSTOの機能不全は、いざというときに助けてくれないロシアの求心力低下を意味する。汚名返上に向けて加盟国間での緊急時対応計画を改めて確認し、年明けのカザフの混乱を受けて、万を持してロシアがイニシアチブを取り、軍事介入に踏み切ったもようだ。
◇露骨な中国外し

 カザフのトカエフ大統領は「対テロ作戦」を名目として、ロシア主導のCSTOに平和維持部隊を要請する形を取った。もっとも、地域機構による対テロ作戦であれば、中ロを含む上海協力機構(SCO)の方が具体的な協力が進展していたはずだが、中国に議論する余地を与えず、プーチン大統領はCSTOを通じて実力を誇示した。

 くしくも2021年、中央アジアに隣接するアフガニスタンではガニ政権が崩壊し、イスラム主義組織タリバンが権力を掌握。これに乗じてイスラム過激派が中国やロシアに流入するのを阻止するため、SCOの役割に期待が高まっていた。

 簡単に言えば、中国を含むSCOではなくCSTOを選ぶというロシアとカザフの決定は、露骨な「中国外し」と同義だ。カザフを巨大経済圏構想「一帯一路」の陸上ルートの入り口と位置付け、経済利権を有する中国はどう眺めているのだろうか。

 沈黙していた中国の習近平国家主席は1月7日、トカエフ大統領にメッセージを送付。反政府デモの武力鎮圧に支持を表明した上で「カザフにできる限りの必要な支援を提供したい」と伝えた。香港で民主派を押さえ、欧米の介入を許さない立場を明確にする中国は、ロシアと近い権威主義国家だが、メッセージでロシアへの直接的な言及はなかった。

 一方、中国外務省の汪文斌副報道局長は7日の記者会見で「SCOが地域や加盟国において安全と安定を確保する上で、今後も役割を果たすことを期待する」と強調。あくまでSCOを軸にカザフ情勢の安定化を図るべきだと暗に反論した形だ。王毅国務委員兼外相がCSTOの平和維持部隊への支持を口にしたのは10日。中ロ間のカザフをめぐる綱引きが既に始まっている。

◇新疆弾圧に怒り

 当のカザフは、隣の経済大国・中国をどう認識しているのだろうか。2019年にナザルバエフ前大統領から政権を引き継いだトカエフ大統領は、旧ソ連外務省「チャイナスクール」(中国語研修組)出身。駆け出し時代、北京で天安門事件を目の当たりにした。資源国のトップとして、同盟国ロシアだけでなく、中国とも協力するバランス外交を展開し、上院議長時代の2017年には現地で筆者のインタビューに対し「(一帯一路は)カザフが参加しなければ成功しない」と自信を見せていた。

 ただ、カザフ国民の対中感情は複雑だ。新疆ウイグル自治区でのカザフ族(約150万人)を含むイスラム教徒弾圧も、国民の怒りに拍車を掛けている。

 この年明けは燃油価格高騰をきっかけにデモが全土に広がったが、抗議活動はこれが初めてではない。実は2019年、反中デモが反政府デモに転じ、カザフ各地に飛び火。トカエフ大統領の初の公式訪中に冷や水を浴びせた経緯がある。

 経済進出に伴って中国人がやってくれば、カザフ人労働者が職を奪われるという懸念があったらしい。カーネギー財団モスクワ支部の専門家は「カザフの経済成長は対中関係に依存し、指導部は協力する必要性を認識しているが、同時に過度の依存も懸念している」と指摘。国民の反中感情への配慮が課題となっていると解説した。

 CSTOの平和維持部隊の派遣は、盟主ロシアが前のめりだったとはいえ、要請したのはカザフ。トカエフ大統領は中国を含むSCOの対テロ作戦には頼れなかったのだろう。「反中」がデモの火に油を注ぎ、それこそ収拾不可能になってしまう。 』

「過激なイスラム」理解するには 池内恵氏

「過激なイスラム」理解するには 池内恵氏
東京大学先端科学技術研究センター教授(イスラム政治思想)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD237R60T21C21A2000000/

『アフガニスタンでの武装組織タリバンの復権や過激派組織「イスラム国」(IS)のテロなどで、イスラム教に対する脅威が世界で論じられるようになった。

イスラムと西欧思想では価値規範が異なり、イスラム法を適用すれば民主主義や自由主義に反する部分が出てくる。民主主義で決めた法を神の命令であるイスラム法に優先させることは受け入れ難いとする信徒が多いので、摩擦は必然的に起きる。欧州など自由主義の原則が強い国々でイスラム脅威論が台頭するのは当然と言える。

イスラム教徒は、神が法を啓示した集団であるウンマ(共同体)に帰属し、それを守る義務を負う。この帰属意識が再確認され、強まっていることが過激な政治運動につながる。欧米などで優勢な自由主義は、イスラム教徒にとってはイスラム法に反し、ウンマを支配・侵食するものと受け止められる傾向が強い。

そこで、イスラム法とウンマへの脅威に対する反撃が義務だと考える人が出てくる。それがたとえ全世界のイスラム教徒の1万人に1人であったとしても、全体としては巨大な数になってしまう。過激思想はインターネットやSNS(交流サイト)で広く拡散し、容易に検索できる。実際に行動に出る信者の割合は低くても、グローバルに見ると共通の宗教的規範を掲げたテロが頻発するので、一つの運動組織があるように見える。

イスラム教は、7世紀にアラビア半島で神から下されたと信じられている聖典コーランや預言者の言行録(ハディース)が今でもそのまま読まれている稀有(けう)な世界。19世紀まではもっぱら宗教指導者による口伝だったが、今やネットなどのメディアで一般信徒が自ら過去の権威のある解釈を探し出し発信することができる。

日本には神の言葉として示された明確な宗教的規範がなく、自由主義も強くないので、イスラム教と正面から対立しないで済み「異文化」としての関心にとどまっている。日本でイスラム教徒と共存するためには、信者は極力その信仰を内なる規範にとどめ、他者に強制する自由は認めない、という原則を確認する必要がある。国家の側も、内面の規範には立ち入らないことが重要だ。
当欄は投稿や寄稿を通じて読者の参考になる意見を紹介します。原則1000字程度で、住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、ご応募ください。匿名での掲載希望はお受けできません。ご意見の趣旨を変えずに文章を編集することがあります。採用させていただく場合、日本経済新聞朝刊と電子版で紹介します。
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WHO、欧州コロナ流行「終わり近い」 集団免疫に言及

WHO、欧州コロナ流行「終わり近い」 集団免疫に言及
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR240330U2A120C2000000/

『【パリ=白石透冴】世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)について「欧州での終わりは近いかもしれない」と語った。仏AFP通信の取材に答えた。今後多くの人が免疫を獲得して「集団免疫」を達成し、危機の度合いが下がる可能性に言及した。

WHO幹部がパンデミックの終わりに言及するのは異例だ。欧州では急速に変異型「オミクロン型」が感染を広げており、3月1日までに人口の6割が感染するとの試算がある。クルーゲ氏は「オミクロン型が落ち着いたら、数週間か数カ月、集団免疫の状態になるだろう。ワクチンのおかげでもあり、多くの人が感染するからでもある」と説明した。

クルーゲ氏は「年末にかけてコロナ流行が再開するかもしれないが、必ずしもパンデミック(と言うほど)ではない」と続けた。

ただコロナを危機の水準が下がった状態である「エンデミック」と今すぐ呼ぶことには反対した。「エンデミックというのは我々が次に何が起こるか予想できる状態だ。だが新型コロナウイルスは予想外の変化をみせてきた。警戒を続けなければいけない」と表明した。

英国やスペインなどはオミクロン型の重症化率が従来より下がっていることなどを理由に、コロナをエンデミックと定義する検討を始めている。感染者の全件把握や隔離をやめられるか分析している。医療関係者の負担を下げ、隔離者の増加で社会がまひするのを防ぐ狙いがある。

【関連記事】

・コロナのピーク越え「大半の州で2月中旬」 米医療顧問
・WHO、パンデミックの終息「ほど遠い」
・WHO「欧州の過半数がコロナ感染」 今後6~8週で 』

ロシア、「デマ情報」と英批判 ウクライナ巡り

ロシア、「デマ情報」と英批判 ウクライナ巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB240A00U2A120C2000000/

『【モスクワ=共同】ロシア外務省は23日、ロシアがウクライナの政権を転覆させ親ロ指導者の就任を計画しているとの英外務省発表について「デマ情報」と一蹴、挑発行為をやめるよう求め英側を批判した。発表で最有力候補と名指しされたウクライナのムラエフ元最高会議議員は23日「私はロシアから制裁を科されている身だ」と述べ、全面否定した。
英側発表についてロシア外務省はツイッターで「米英主導の北大西洋条約機構(NATO)側こそがウクライナでの緊張を高めていることを示す証拠」と指摘した。

ロシア通信によると、ムラエフ氏はウクライナの親ロシア野党勢力が再編され「野党プラットフォーム―生活党」が結成された際に旧指導部と決裂し、自身の党「味方」を立ち上げた。反ロ活動への資金提供などを理由に2018年、ロシア政府から同国内の資産凍結などの制裁を科された。

ムラエフ氏はウクライナのメディアに、ロシアの制裁を受けている自身が「ロシアの”占領政府”トップになるというのは『ミスター・ビーン』のような話だ」と述べ、英人気コメディーを引き合いに発表内容を否定した。

【関連記事】ウクライナ政権転覆画策か ロシアで動きと英外務省 』

ウクライナ政権転覆画策か ロシアで動きと英外務省

ウクライナ政権転覆画策か ロシアで動きと英外務省
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2409V0U2A120C2000000/

『【ロンドン=共同】英外務省は22日、ロシアでウクライナに親ロシア指導者を就任させようとの動きがあると発表した。親ロシアのヤヌコビッチ元政権下で最高会議議員だったムラエフ氏が最有力視されているという。トラス外相は「ウクライナの政権転覆を狙うロシアの活動が明るみに出た」との声明を出した。機密情報の発表は異例だ。

ロシア外務省は23日、英国の発表について「デマ情報」と一蹴した。ムラエフ氏は「私はロシアから制裁を科されている身だ」と述べ、全面否定した。

ロシアはウクライナ国境周辺に推定10万人の軍隊を展開。21日に米ロ外相が直接会談したが、緊張緩和への具体的合意はなかった。ロシアの軍事侵攻の可能性に危機感を抱く英国は阻止へ外交努力を続ける一方、情報機関などによる情報収集を強化している。

英メディアなどによるとムラエフ氏は45歳。2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を支持しているとされ、前回19年の総選挙で落選した。

英外務省は、ロシアとの接触があるとして他に元首相ら4人の名前を挙げ、このうちの一部がウクライナへの攻撃計画に関与しているとも指摘した。

トラス氏は声明でロシアに対し緊張緩和を呼び掛け、攻撃や偽情報の作戦をやめるよう要求。「いかなるロシア軍による侵攻も重大な戦略的過ちであり深刻な犠牲を伴う」と警告した。

【関連記事】ロシア、「デマ情報」と英批判 ウクライナ巡り 』

ドイツ海軍総監辞任 ウクライナ情勢への問題発言で物議

ドイツ海軍総監辞任 ウクライナ情勢への問題発言で物議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB240BO0U2A120C2000000/

『【ベルリン=共同】ドイツメディアは23日までに、同国海軍トップのシェーンバッハ総監(海軍中将)がウクライナ情勢を巡り問題発言をしたとして、引責辞任したと報じた。21日にインドで開かれたシンクタンクの会合で、ロシアがウクライナに侵攻しようとしているとの欧米諸国の考えは「ナンセンス」だと述べていた。

報道によると、シェーンバッハ氏は会合で「ロシアのプーチン大統領が本当に望むものは(自らに対する)敬意だ」と発言。ロシアが2014年、ウクライナから強制編入したクリミア半島についても「なくなってしまった。(ウクライナ側に)戻ることはないだろう」と語った。

ウクライナ側は発言を受け、ドイツに抗議した。シェーンバッハ氏は22日、発言は「明らかに間違いだった」と説明し、辞意を表明。ドイツ国防相が辞任を受け入れた。』

習政権、強まる独自色 政治文書のキーワードから探る

習政権、強まる独自色 政治文書のキーワードから探る
大中国の時代
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA062V30W1A201C2000000/

『中国の歴代政権の政府文書を分析すると、習近平(シー・ジンピン)国家主席の下で政治思想や外交の独自色が強まっている。キーワードを抽出するため、2013年以降の中国共産党中央委員会全体会議(人事決定中心の第1回全体会議除く)で発表されたコミュニケ(公報)と、1980年以降の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の「政府活動報告」に注目。検索大手、百度(バイドゥ)のツールを用いて文書を単語に分類し、出現回数を数えた。

共産党創設以来3回目の「歴史決議」を採択した21年11月の第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)は13年以降で最もイデオロギー色が強まった。「社会主義」「マルクス主義」「マルクス・レーニン主義」は合計79回登場し、前年の約3倍に増えた。過去2回の「歴史決議」を発表した「毛沢東」や「鄧小平」への言及も増えた。

対外姿勢も変化した。20年の5中全会までは、「双方にメリットのある協力」など「対外開放」を念頭に置いていた。一方、21年の6中全会では「中国の特色ある大国外交」を推進し、「対外開放」に触れることはなかった。

全人代開幕式では首相が政府活動報告を発表し、その年の政策指針などを示す。21年までに「習近平」は75回言及され、歴代最多の「鄧小平」(84回)に迫っている。政府肝煎りの脱貧困政策については、所得の不平等さを測るジニ係数が上昇(悪化)に転じた16年前後から記述が急増。「脱貧(脱貧困)」が5回以上言及されたのは16年が初めてだ。21年には「返貧(再び貧困に戻ること)」が増えるなど、貧困問題が習政権にとっての重点課題の一つとなっている。

65歳以上の高齢者が人口の1割まで増加した14年前後からは「養老」に関連する単語が増えた。介護保険の拡充に加え、年金制度の改革で高齢化に対応する考えだ。

企業支援策では政府の視線は国有企業から中小・零細企業に移っている。14年ごろから記述が増え、足元では国有企業よりも頻出している。中国国家統計局の調査によると、18年末時点で中小・零細企業は全企業の99.8%にあたる1807万社にのぼり、13年と比較して2倍以上に増えた。中小・零細企業は中国の雇用の8割を担っており、政府は相次いで資金枠を設けるなど支援を強化している。

食糧問題にも危機感が高まっている。21年の政府活動報告では食糧に関する記述が特に目立った。「穀物(糧食)」への言及も10年以降最多となった。背景には穀物価格の高騰が挙げられる。豚肉は21年に入ってから値下がりする一方、飼料として使われるトウモロコシや大豆は過去10年間で最高の水準が続いている。

(西野杏菜)

大中国の時代 https://www.nikkei.com/theme/?dw=22012100 』

中国の脱貧困村の現実 「豊かさ」実感、自立は遠く

中国の脱貧困村の現実 「豊かさ」実感、自立は遠く
大中国の時代
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE09C5O0Z01C21A2000000/

『上下水道や道路など生活インフラもままならない小さな農村に「豊かさ」をもたらしたのは指導者のスローガンだった。

中国内陸部の重慶市中心部から長江を500キロほど下った巫山県双竜鎮。大型クルーズ船で長江の風景を楽しむ「三峡下りツアー」で知られる農村に2021年5月、大型の観光施設「石上生花」が開業し、地元経済を潤し始めている。

率いるのは地元育ちの劉小紅(55)。音楽教師から長江下りの観光業などで成功していた実業家だ。国家主席の習近平(シー・ジンピン、68)が15年に「脱貧困」政策を打ち出すと習側近の重慶市トップ、陳敏爾(61)も政策を推進。かねて「地元に貢献したい」と考えていた劉小紅が石上生花を開業する追い風となった。

21年5月に大型の観光施設「石上生花」を開業した劉小紅

総投資額は約1000万元(約1億8000万円)にのぼる。80ヘクタールほどの敷地に100種類以上の草花を植え、子どものための遊戯施設やレストランなどを建てた。地元政府が電力や上下水道などのインフラを整え、施設の運営は劉小紅が6割、地元の農民らが4割の株式を持つ企業が担う。開業以来、ピーク時には1日1万人余りの観光客が来場し、にぎわいをみせる。

80ヘクタールほどの敷地に100種類以上の草花を植え、子どもが遊ぶ遊戯施設やレストランを建設した大型の観光施設「石上生花」

双竜鎮白坪村で育った劉道学(64)はその恩恵を受けた一人だ。3年前に建設工事を始めた石上生花に農地を貸し出し、自らも植栽を担う職員として働く。年2万5500元の収入を得るようになった。それまでは家庭収入で1万元がやっとの生活だった。

家族を巡る環境も大きく変わった。自身は福建省の建設現場に出稼ぎに出ていた。土壁の家は崩れかけていて住めず、持病を持つ妻、離婚して故郷に戻ってきた娘とその子ども、94歳の母親はそれぞれ「親戚や友人の家に仮住まいする状況だった」と打ち明ける。

バラバラだった家族は自分の家で住めるようになった。「習主席の脱貧困政策があったから生活が改善している。家庭収入は5万元まで増えて希望の光がみえてきた」と話す。将来の夢を尋ねると「車を買いたい」と笑顔をみせた。

叔父と談笑する楊開桂㊨

白坪村からほど近い安静村でも貧困層から脱出できた人がいる。農業を営む楊開桂(56)は毛沢東の肖像画の前で、叔父とお茶を楽しむ余裕ある生活ができるようになった。

習の脱貧困政策に基づく貧困層の認定を受けて「3人の娘の学費や自宅建築などで補助を受けた」と振り返る。娘のうち2人は短期大学を卒業して重慶市中心部で働く。娘らの仕送りもあり家庭収入はかつての5倍にあたる年5万元まで増えた。

「生活は確実に改善している」と強調する楊。さらに近く高速道路も開通する予定で「娘も頻繁に帰郷してくれるようになる」と喜んでいた。

双竜鎮では鎮トップの易前聡(45)が習の唱える脱貧困政策の実現を陣頭指揮する。

地場の農作物と観光を融合した振興策を掲げ、2000キロ離れた山東省煙台市に協力を求めた。観光や農業施設の建設資金の一部負担や田畑の改良だけでなく、ブドウなどの果実栽培やネット販売まで幅広くノウハウの提供を受けた。

煙台市が双竜鎮に投じた資金は累計で1317万元(約2億4000万円)に達する。易は「この5年で6654人いた貧困層を完全に解消できた」と胸を張る。

先に豊かになった沿海部が内陸部の貧困地域を支援するのは中国独特の発展のロールモデルだ。先に豊かになった者が後の者をけん引するという鄧小平の「先富論」から、格差縮小に向けて分配を重視する習が唱える「共同富裕」につながる手法とされる。

ただ「脱貧困」の継続は容易ではない。インフラ整備や観光居施設の建設などによって一時的に押し上げられた側面は大きい。重慶の脱貧困対策資金の9割は重慶市など大都市からの支援が占める。地域で自立した経済構造にできなければ持続可能性は期待できない。
指導者のスローガンで喚起された「豊かさ」はもろい。地方で脱貧困を達成しても若者の多くは都市部に出稼ぎに行ったままだ。劉道学は「地元に残って働くのは私のような高齢者ばかり。貧困からは脱出できたが、私自身に何かあれば将来はすぐに不透明になる」と不安を漏らす。(敬称略)

大中国の時代 https://www.nikkei.com/theme/?dw=22012100 』

中国軍機39機、台湾の防空圏に侵入 日米連携に反発か

中国軍機39機、台湾の防空圏に侵入 日米連携に反発か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM240SQ0U2A120C2000000/

『【台北=中村裕】台湾の国防部(国防省)は23日、中国軍の戦闘機など39機が防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。今年最多の侵入数で、30機以上の大量侵入は2021年10月以来、久々となる。21日にオンライン形式で日米首脳協議が開かれ、中国への諸課題に今後緊密に連携するとしたことに強く反発した可能性がある。

侵入したのは、中国の戦闘機「殲16」24機、同「殲10」10機を中心に、爆撃機や電子戦機が含まれた。台湾空軍の軍機も緊急発進(スクランブル)して対応した。

中国の建国を祝う国慶節の昨年10月には、過去最多の56機が台湾のADIZに侵入した。米国が国際社会を巻き込み中国に圧力をかける動きに反発したもので、今回も日米の連携に強く反発したものとみられる。

日米首脳協議では、岸田文雄首相とバイデン米大統領が中国の東シナ海や南シナ海での一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。

さらに日米両国は22日、フィリピン海で合同の演習を実施した。米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」、日本からはヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」などが参加し、自由で開かれたインド太平洋をアピールした。こうした動きにも中国側は強く反発したものとみられる。』

「中国は超大国になれない」 エマニュエル・トッド氏

「中国は超大国になれない」 エマニュエル・トッド氏
大中国の時代 識者に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14D8L0U2A110C2000000/ 

『世界第2位の経済大国となった中国ですが、ここにきて国際社会との向き合い方が明らかに変わってきました。中心にいるのが、今秋の党大会で異例の3期目入りを狙う習近平(シー・ジンピン)氏です。「中華民族の偉大な復興」へ向け、米国をしのぐ強国をめざす一方、既存の国際秩序との摩擦や対立も大きくなっています。24日からスタートした新連載「大中国の時代」では、膨張する中国と、それに直面する世界の行方を追いかけます。

中国は急速な少子高齢化に加え、過去の「一人っ子政策」による男女の出生数の偏りなどで、人口動態に関わる難題を抱える。人口問題は中国に何をもたらすのか。家族構造や識字率、出生率から世界を読み解く仏歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏に聞いた。

――中国の台頭をどのようにみていますか。

「新型コロナウイルス禍では、遠く離れた欧州でさえも中国からのマスク輸入に依存した。中国の経済規模や政治的な存在感を痛感し、ある種の怖さも感じた。だが、人口学者としてみれば、出生率の低さや高齢化の(進展の)速さから、中国が世界を支配する超大国になることは非現実的だ」

「2020年の合計特殊出生率が1.3と極めて低かったことから、中国が中長期的な脅威ではないことは明らかだ。実態を知るには、いつから低水準だったのかを解明する必要がある。労働力となる20~64歳の人口は60年までに15年比で35%以上減るとみられている。巨大な人口規模から労働力の一部を国外で補うこともできず、中国の人口減は日本よりも深刻なものになるだろう」

――中国の家族構造については、どのように分析していますか。

「中国の農民世帯では、古くから親子間は権威主義的であり、兄弟間は平等な関係だ。これが権威と平等を重んじる文化を生み、共産主義の発展と中国共産党の権力維持を支えてきた」

「生活水準の上昇や核家族化が進んでも、社会の根幹にある価値観の変化はとてもゆっくりとしたものだ。権威主義がシステムに根強く残る中国が、リベラルな民主主義国になることはないだろう。民主化を急ぐよう(国際社会など)外部が中国に促してもあまり意味はない。米欧でも民主主義が危機下にある現在では、中国が民主主義になるかという問題の重要性は薄れている気さえしてしまう」

「中国には平等の文化があったため共産主義革命が起きた。社会に根付く平等の価値観と、現実に拡大する格差は緊張関係にあり、人口減によって状況は一段と悪化するだろう。中国の指導者層は今でも、革命が起きることに不安を感じているはずだ」

――中国の今後を読み解くうえで何に注目しますか。

「高等教育だ。若者の25%が大学に行くようになると、社会の古いシステムが崩れる。中国はまだこの段階に至っておらず、おそらく今後10年で新たな危機を経験することになる。共産党が非常に厳しい局面を迎えるのは間違いないだろう」

「4分の1以上の人が高等教育を受けた社会では、大衆の連帯から人々が離脱する現象が起こり、不平等が生じて社会システムを不安定にしてきた。米国では1965年に新自由主義という危機が起き、格差がどんどん広がった。フランスは80年代に古いカトリック教会の思想や共産主義思想が崩壊した。ロシアは(91年の)共産主義の崩壊前にこの段階に達していた。中国での危機がどんなものになるかはまだわからない」

――米中対立をどうみていますか。

「米中の対立構造で世界が再構成されること自体が脅威だ。両国以外の国々は、この新たな冷戦という幻想に巻き込まれてはいけない。それぞれの地域圏が平和でなければ、各国は人口問題という社会の真の問題に向きあうことはできないのだ。民主的社会が生き延びられるかどうかより、そもそも社会や人の存在を維持できるかが重要だろう」

「米国ではバイデン大統領の就任後、オーストラリアとの原子力潜水艦の契約や北京冬季五輪の外交ボイコットを通して、中国との経済的な対立を軍事や外交の領域まで広げている。現在の世界に不確実性を作り出しているのは中国ではなく、米国のほうだ」

――両国のはざまにいる日本のとるべき道は。

「日本は米国に付いていくか、中国と対話をしていくかを選ばなければならず、歴史的に重要な場面を迎えている。日本の真の課題は戦争ではなく、低出生率という人口問題だ。米国という国の本質や世界での振る舞いをよく分析する必要がある。本来は、人口減という共通課題に日中両国がともに向き合うことも可能なのだ。中国の人口減は安全保障面で日本の恐怖を減らすかもしれないが、経済面では深刻な影響になりうる」

(聞き手は山田遼太郎)

Emmanuel Todd 1951年生まれ。歴史人口学者でフランスを代表する知識人。乳幼児死亡率から旧ソ連の崩壊を言い当て、中年白人男性の死亡率から米トランプ政権の誕生を予見した。著書に「最後の転落」「帝国以後」など。

大中国の時代 https://www.nikkei.com/edit/topic/topic_daityuugoku.jpg 』

「中国、ピークを前に強硬」 マイケル・ベックリー氏

「中国、ピークを前に強硬」 マイケル・ベックリー氏
大中国の時代 識者に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC143IM0U2A110C2000000/

『中国は対外的な強硬姿勢を強める半面、国内で少子高齢化や不動産バブルなど多くの課題を抱え経済成長は減速している。中国が世界で最も脅威となるのはいつか。衰退する大国の危険性を指摘する米タフツ大学のマイケル・ベックリー准教授に聞いた。

――衰退に向かう大国は攻撃性を強めると主張しています。

「台頭する大国は歴史上、経済の減速や他国からの包囲網によって国力がピークを迎え、衰退に転じる際に攻撃的な行動をとってきた。長期的には状況が悪くなると分かり、いま目標を達成しなければチャンスがなくなると考えるためだ」

「戦前の日本や第1次大戦前のドイツ帝国がこうした『ピークパワー』の代表例だ。中国は同じ道をたどっているようにみえる。中国の衰退が実際には米中対立の激化を意味すると懸念している」

――中国が世界にもたらす脅威はなんでしょう。

「1つは米国との軍事対立だ。大国間の戦争は歴史的に交戦国の想定より長引いた。米中とも国力があるだけに長い戦争を戦うことができてしまう」

「次に監視カメラや顔認証を駆使するデジタル権威主義の輸出だ。かつてないほど独裁を効率的にし世界中の権威主義国が中国の技術を求めている。民主主義の没落を早めかねない」

――中国のピークはいつだと分析しますか。

「2020年代後半から30年代早期にかけてだろう。その後中国の成長は鈍り、当面は非常に強大な国ではあるが、もはや台頭する国ではなくなる。最大の課題は人口動態だ。30年代早期までに中国の生産年齢人口は7000万人減り、高齢者が1億人増える」

「習近平(シー・ジンピン)国家主席も33年に80歳となり後継問題が迫る。中国が広域経済圏構想『一帯一路』などで供与した融資の多くもこの頃に満期を迎える。借金の取り立てを始めれば、各国の歓心は反発に変わる」

――中国が米国の国力を上回る可能性はありますか。

「米中間の経済力、軍事力の差は多くの人が考えるより大きい。中国の国力が米国を追い抜くことはない。中国のような人口大国は国内総生産(GDP)や軍事支出の数字は膨らむものの、14億人もの国民の面倒をみなければいけない弱みがある。食糧確保や治安の維持といった費用を差し引くと中国の実質的な富は見かけよりも小さい」

「さらに中国は水やエネルギーなど資源不足は深刻で、取り巻く国際環境も過去と比べて敵対的だ。これら全てが長期的に中国にとって逆風となる。一方で米国はこうした難題に悩まされていない」

――台湾を巡る軍事衝突のリスクが指摘されます。

「20年代後半が非常に危険だ。中国が急速に軍艦を増やし、米国は軍備刷新への投資を先延ばしにしたため古くなった主力の軍艦や爆撃機などを退役させる必要がある。台湾海峡での軍事バランスは短期的には中国の優位に傾く」

「長期的には米台がいずれも軍事力を強化し、日米もより緊密に連携するため中国に不利になる。中国が20年代後半を台湾統一の最後の機会だと捉えてもおかしくない」

「レガシー(政治的功績)を残したいという習氏の個人的な動機と、低成長になって現在のペースで軍への投資が難しくなることも20年代後半の危険度を高める。米中対立の最も激しい局面は多くの人が考えるよりずっと近い未来に訪れる。米政府が自国の立て直しや研究・開発投資にかけられる時間は少ない」

――米国や日本は中国にどう対応すべきですか。

「最優先は台湾海峡での中国への抑止力を高めることだ。台湾周辺にできるだけ多くの艦艇やミサイル、ドローンなどを備え、台湾を簡単に侵攻できる見込みを持たせないことが大事になる。他方、中国を戦争以外の選択肢を失うほど追い詰めるのも望ましくない」

「対中同盟の側面を強める日米同盟に加え日米豪印の『Quad(クアッド)』や米英豪の『AUKUS(オーカス)』の枠組みにより、アジア太平洋での防衛協力がこの1年で広がった。日本は国防への投資を増やして自衛隊を強化し、中国を除外したサプライチェーン(供給網)づくりを進めるといった取り組みをさらに拡充すべきだ」

(聞き手は山田遼太郎)

Michael Beckley 

1982年生まれ。米タフツ大学准教授、米アメリカン・エンタープライズ研究所客員研究員。近年、米外交専門誌などで「中国の台頭の終わり」を論じ、衰退時の危険性を指摘している。曽祖父母が日本出身。

大中国の時代 https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2Ftopic%2Fog%2F22012100-8.jpg?ixlib=js-2.3.2&auto=format%2Ccompress&fit=max&ch=Width%2CDPR&s=b6642935b2858734ff10bc8e60f15b59 

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柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

いかなる国も世界ナンバーワンでありつづけることができない。アメリカも例外ではない。

民主主義は強権政治によって弱体化しているわけではない。それ自身のパワーをつり出す力が弱くなっている。中国問題は外の包囲網によって弱体化するのではなく、中国自身の先天性の弱点、制度面の欠陥によってピークアウトするだろう。

中国共産党中央委員会の発表によれば、これまでの9年間、計700万人の腐敗幹部が追放されたといわれている。この人たちはほとんど中国のエリート。彼らの知見は国力の増強に貢献していない。彼らの優秀な頭脳は無駄になってしまった。だからピークアウトすると思われる

2022年1月24日 8:01

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楠木建
一橋大学 教授
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分析・考察

何をもって「超大国」とするかによるが、21世紀半ばからは、20世紀的な意味での超大国がどこにも存在しなくなるという方向に進化していくと考える。

つまり、「覇権」「ナンバーワン」という概念そのものが有効性を喪失していくという成り行き。損得勘定で言っても、かつての覇権主義は国益に直結したが、これから先はかえってコストやリスクがベネフィットよりもずっと大きくなるだろう。そうした時代に覇権主義をとるのは根本的に無理がある。

2022年1月24日 8:21

青山瑠妙のアバター
青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説

アメリカでは、アリソン教授が警鐘を鳴らした「トゥキディデスの罠」はもう昔の話。

この記事でマイケル・ベックリーの指摘している「中国衰退」説がむしろ主流になりつつある。

つまり、アメリカなどの抑止政策、中国の人口問題などで中国の国力はもうすぐピークオウトする。ピークオウトする前に中国が冒険的な対外行動をとる。だから危ないのだという。

こうした「予測」に基づいてアメリカは対中政策を立てている。

しかし中国の現状はむしろその中間ー超大国にはなれないが、崩壊もしないーにあるのではないかだろうか。

2022年1月24日 8:22 』

台湾うかがう「強国」の橋 習氏の焦燥、爪を隠せず

台湾うかがう「強国」の橋 習氏の焦燥、爪を隠せず
大中国の時代 坂の上の罠①
https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00000600Z01C21A2000000/

『 誰も見たことのない「強大国」中国が現れた。独善、そして威圧的な行動から透けるのは、自信だけではない。急成長から一転し、衰退へと向かう新興大国が陥る「坂の上の罠(わな)」――。その矛盾が各所で噴き出しつつある。急転する中国と世界を追う。

「おい見ろ、ここだ。この橋が台湾まで延びる。車で1時間半で、台北にも行けるようになるぞ」

中国南部、福建省福州市。男性運転手の呉峰(57)はそう言って、海沿いにタクシーを止めると、巨大な橋を指さした。全長16キロメートル。橋は中国大陸から台湾海峡に浮かぶ小さな平潭(ピンタン)島に向かって、突き出るように架かる。2020年12月に完成したが、それで終わりではなかった。

21年3月11日、全国人民代表大会(全人代)の最終日。中国政府はその平潭に至る橋をさらに延伸させ、台湾の本島にまでつなげる建設計画案を可決した。無論、台湾側は了承などしていない。
平潭島に架かる全長16キロメートルの巨大橋の上層には高速道路、下層は高速鉄道用の線路が敷かれる(21年12月、福建省福州市)

中国は全長130キロメートルに及ぶ巨大大橋の完成を13年後の「2035年」と明記した。海上での建設作業は難航必至だ。代わりに台湾海峡の下に海底トンネルを掘り、北京と台北を高速鉄道などで結ぶ案も示し、統一に並々ならぬ執念をみせた。

その全人代から2週間後だ。「平潭はいま、千年に一度の好機を迎えた。中台融合のため、大きな一歩を踏み出すべきだ」。国家主席の習近平(シー・ジンピン、68)は自ら現地に入り、福建省幹部らに「統一」に向けた大号令をかけた。
いまはのどかな平潭島も、台湾と橋でつながれば、中国屈指の都市へと開発が進むと予想される(21年12月、福建省福州市)

「強国有我(強国に我あり)」。習氏が異例の3期目入りを狙う中国でいま、自らの国力を誇示するネット用語が流行する。鄧小平氏以来の爪を隠して力を蓄える「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略は過去のものとなり、かつてない強硬路線がむき出しになる。

台湾海峡が「世界一危険」と呼ばれるようになったのも、中国内で広がる「偉大な復興」への自信と熱狂が大きい。米軍は習氏の3期目が終わる27年までに、中国が武力侵攻に動くとみる。

だが現実の「大中国」はもっとしたたかだ。
中台統一を視野に整備した平潭駅に高速鉄道がつながった。台湾に最も近いこの駅からは、北京まで乗り換えなしで12時間強で行ける(21年12月、福建省福州市)

中国が領有権を認められていない南シナ海で7つもの人工島を造成し、軍事拠点化を進めていた18年10月。習氏はその海域をのぞむ中国南部にいた。

香港から広東省珠海市、マカオを結ぶ世界最長級の「港珠澳大橋」開通式典に出席。中国大陸と香港、マカオを一体化する全長55キロメートルの海上大橋と海底トンネルを9年余りで完成させ、習は壇上で「国力だ」と誇った。

香港市民は巨大橋の完成を恐れた。「このままでは、香港が大陸にのみ込まれる……」。わずか1年半後。香港国家安全維持法(国安法)がスピード成立し、香港は中国の強権下にあっさり落ちた。

まず造る。既成事実化し、あとは押し切る。リアルな軍事力ではない。それが最善の近道だ、と中国は知っている。戦わずして勝つための作戦が進む。

次は台湾だ。

「環太平洋経済連携協定(TPP)加盟申請に向け、台湾当局が加盟各国と進めていたやり取りが中国側に漏れた可能性がある。全て防げるものではない」

台湾でサイバーセキュリティーを手掛ける大手、TEAMT5の最高経営責任者(CEO)である蔡松廷は悔しげに振り返る。21年9月中旬、中国は台湾より1週間早い僅差のタイミングでTPPへの加盟を申請し、台湾当局を出し抜いた。単なる偶然とみる者は少ない。

さらに21年10月4日、過去最多の中国軍56機が台湾の防空識別圏に侵入し、威嚇行為が最高潮に達したちょうどその頃。地上の台湾中枢部にも、中国のサイバー攻撃が襲いかかっていた。

台湾軍、外交部(外務省)、与党・民主進歩党(民進党)、経済部(経済省)――。狙われたのは、対中政策で厳しい姿勢をみせる主要機関だ。個人宛てに偽のログイン画面を大量送付し、機密情報を巧みに抜き取った。「21年に台湾の政府・官庁が受けたサイバー攻撃のうち、実に9割は中国からだった」と蔡は分析する。

にぎわう台湾の朝市。中国の脅威が身近に迫っていることを知る台湾人はまだ少ない(21年12月、台北市)

台湾の国防部(国防省)が21年11月に公表した21年の国防報告書。強調したのはやはり、軍事力には頼らない統一作戦への脅威だった。19年から21年8月までに14億回を超えるサイバー攻撃があったと断定。偽ニュースやメディアを使う世論操作と合わせ、台湾社会が揺さぶられる実態を列挙した。

中国は習(写真左=ロイター)が3期目でさらに地歩を固め、敵視する台湾総統の蔡英文(同右=台湾総統府提供)の任期が切れる24年に狙いを定める

中国が統一を譲ることはない。むしろ、その執拗さは今後さらに増す可能性が高い。「中国はピークパワーの罠に陥りつつある」。米タフツ大学准教授のマイケル・ベックリーは台湾、そして世界が直面する新たなリスクを指摘する。

平潭島の「台湾に最も近い場所」である海岸には、すでに多くの中国人観光客が押し寄せる(21年12月、福建省福州市)

新興大国が経済の急減速に苦しむと、対外的に強権、高圧的になる状態を指す。ベックリーは第1次大戦前のドイツ帝国、戦前の日本を例に挙げ、こう警告する。「台頭する大国は歴史上、衰退期を迎えると、目標を達成しなければという焦りから攻撃的になる」

これまで成長の足取りが速かった分、坂の上の先への恐怖も増す。世界最大の経済大国の座を目前にする中国だが、不動産バブルや少子高齢化で限界も見える。だからこそ、着実な詰め手を急ぐ。

中国が台湾統一に向け、狙いを定めるのは、米軍が警戒する27年ではない。反目する台湾総統、蔡英文(ツァイ・インウェン)の任期が切れる24年だ。「いまは待っている。次期総統選で親中派の国民党を勝たせるよう後ろ盾となり、その新政権とともに24年から統一を目指して事を仕掛けていくのだろう」。中台の外交専門家らのほぼ一致した見方だ。

いまの台湾なら、ミサイルや爆撃機を使わずとも、容易にねじ伏せられる。中国はそう踏む。

平潭島の1キロメートル先に浮かぶ島には飛行場を建設し、空からも台湾本島との一体化を推し進める計画だ(21年12月、福建省福州市)

「台湾に最も近い中国」として知られる小さな島、平潭はまさにそのための足がかりになる。35年完成へ。現地ではいま、巨大橋の建設に向け、地質調査・測量工事が静かに動き始めた。

いまの中国が、もはやかつての中国でないことは明らかだ。

「中国の民主化はもう期待できない」。ソ連崩壊や米トランプ政権の誕生を予見した仏歴史人口学者のエマニュエル・トッドは憂う。「世界は中国と共通の課題で対話するか、米中対立の渦に巻き込まれるかの選択を迫られる」。国も企業も、そして個人も「大中国」とは無縁でいられない。危うさと背中あわせの新時代が始まった。(敬称略)

「中国公船から逃げろ」
尖閣沖に向かう命懸けの漁師

「海警の船が出てきたぞ、気をつけろ」。2020年1月下旬、尖閣諸島から東に数キロメートルの沖合で鹿児島県の漁師、宮崎卓己さん(61)は仲間の漁師4人にこう叫んだ。

沖縄県・尖閣諸島周辺を航行する中国海警局の船(21年2月15日)=仲間均氏撮影

どこからともなく突然現れたのは中国の海上保安機関「海警局」の大型巡視船。漁船の動きに合わせるように数百メートルまで接近してくると、同行する海上保安庁の巡視船が間に割って入り護衛する。停泊中は夜も眠れぬ緊迫状態が2~3日続いた。

尖閣周辺はアオダイやハマダイなどが釣れる豊富な漁場だ。約10年前は鹿児島県から10隻超の漁船が尖閣を目指していたが、20年1月は2隻のみで出港した。宮崎さんは「昔は南シナ海まで航海することもあった。今は行きたくても口に出さない仲間が増えている」と肩を落とす。2年ぶりに再び漁へ向かう計画を練っている最中だが、不安は募るばかりだ。

40年近く尖閣諸島沖で漁をする宮崎卓己さん(61)=尖閣諸島文献資料編纂会提供

中国は海上民兵と呼ばれる準軍事組織も操り、あの手この手で日本の漁船の動きをうかがっている。米戦略国際問題研究所(CSIS)は21年11月、南シナ海へ21年3~4月に押し寄せた中国船について、フィリピンとベトナム当局が海上から撮影した映像や写真を分析し、少なくとも122隻の海上民兵船を特定した。

日本経済新聞がこれらの船舶情報をもとに、世界中の船の位置情報を提供するサイト「マリントラフィック」で海上民兵船の過去1年間の挙動を追ったところ、12隻が台湾や尖閣周辺を航海していたことが分かった。南シナ海以外にも影響力を拡大しようとしている狙いが透ける。

なかには、中国海軍の拠点のある海南島から台湾の北端を通り、21年7月下旬には尖閣諸島の魚釣島から西に25キロメートルの沖合に進出していた例があった。位置や針路などを発信する船舶自動識別システム(AIS)の信号が途切れる船も見つかった。AISは衝突防止や運航管理を目的とした国際条約で、世界を航行する300総トン以上の船舶や全ての旅客船に搭載が義務付けられている。航路を隠すためにAISのスイッチを切った可能性がある。

CSISのグレゴリー・ポーリング氏は「中国の海上民兵船には軍事的機能を備えたプロの船と、政府の補助金制度によって採用された商業漁船の2種類がある」と話す。後者は特に見分けがつきづらく、「表向きは漁師だが、軍からの命令があれば防衛任務などを担う」(笹川平和財団の小原凡司上席研究員)という。

中国政府が周辺海域への実効支配を強めれば、日本の漁場の安全が危ぶまれる。海警局は18年に治安維持を担当する人民武装警察部隊の指揮下に編入されて事実上の「第二の海軍」となった。21年2月施行の海警法では、主権を侵害する外国船舶への武器使用も初めて認められた。

「尖閣周辺に姿を現す中国の巡視船は基本的に4隻で、少なくとも1隻は常に武器を積んでいる」(海保)という。海警局は部隊の増強を進めており、20年時点で満載排水量千トン級以上の船舶は131隻と、8年間で3倍強になった。海保は「常に中国を上回る数の巡視船を派遣し、漁船などの安全確保に努めている」と話す。

日本の領海での活動に萎縮すれば、さらなる中国の増長を招く。「僕らはただ安全に漁がしたいだけなんです」。海警局の威嚇にもひるまず尖閣に漁に向かう宮崎さんはこう理由を教えてくれた。

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大中国の時代

阿部哲也、島田学、岩崎航、原島大介、黄田和宏、桃井裕理、中村裕、土居倫之、小川知世、若杉朋子、多部田俊輔、川手伊織、川上尚志、渡辺伸、比奈田悠佑、山田遼太郎、綱嶋亨、西野杏菜、羽田野主、松田直樹、山下美菜子、本脇賢尚、高橋耕平、遠藤智之、大塚節雄、木原雄士、小林健、大越優樹、金子冴月、高野壮一、佐藤季司が担当します。』

日本も紛争当事国、平和な日常に潜む「非暴力」の脅威

日本も紛争当事国、平和な日常に潜む「非暴力」の脅威
学び×国際紛争(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOKC0699L0W2A100C2000000/

『民族や宗教の違いに端を発した対立から、核兵器の拡散、資源や領土・国境をめぐる国家間の緊張――。「国際紛争」という言葉に、軍事的衝突を思い浮かべる人は多いはず。でも近年では、政治介入やサイバー攻撃など非暴力行為が主流になりつつあります。政府間だけでなく民間人や民間企業に対処が求められる場面もあり、太平洋戦争終結以降、長年にわたって平和を享受してきた日本人にとっても決してひとごとではないのです。

漫画好きで知られる麻生太郎前財務相が番記者に薦めたことで話題になった「紛争でしたら八田まで」(田素弘著、講談社)。地政学リスクの知識を武器に、世界中で様々な紛争や事件を解決する女性コンサルタントの活躍を描いた連載中の漫画です。今回の「学び」編では、この作品を監修している東京海上ディーアールの主席研究員、川口貴久さんに国際紛争について解説してもらいます。


そもそも「戦争」「紛争」とは?

現代の国際紛争の特徴を理解するため、国際紛争の典型である「戦争」の位置づけの歴史的な変遷をおさえておきましょう。

まず、戦争を論じるうえで欠かせないのが「正戦論」です。目的や理由によって戦争を「正しい」「正しくない」と区別する理論で、17世紀までに西欧で確立しました。キリスト教の教義が起源で、自己防衛や攻撃者への制裁・処罰、財産権を回復するための戦争は正しいものとされました。中世から続く際限なき戦争の発生を制限することが目的でした。

一方、キリスト教新旧両派の宗教対立による30年戦争を終わらせたウェストファリア条約が1648年に締結され、欧州では主権国家体制が成立しました。これを契機に西欧の絶対的な権威のキリスト教の影響力は低下し、正戦論は単なる観念論として廃れていったのです。

18~19世紀には「無差別戦争観」が主流になりました。全ての主権国家は戦争を行う自由・権利があるという考え方です。「戦争論」で知られるプロイセンの軍人クラウゼヴィッツが「戦争は他の手段による政治の延長」と主張するように、近代を代表する戦争観とされ、帝国主義の列強が戦争を繰り広げました。

その結果、20世紀前半~半ばに第1次、第2次世界大戦が勃発しました。多くの犠牲を払う悲劇を二度と繰り返さないために、国際連盟規約(1919年)やパリ不戦条約(28年)、国際連合憲章(45年)といった条約で戦争を違法化する動きが広がりました。さらに核兵器の誕生、米ソ冷戦下の同盟関係による勢力均衡、経済的相互依存の深化で、大国間の全面戦争は現実的ではなくなっていったのです。


「ハイブリッド戦争」の台頭

では現在、戦争はなくなったのでしょうか? 答えは「ノー」です。世界各国に異なる利益がある限り、火種は決してなくなりません。もし伝統的な全面戦争となれば両当事者とも大損害は免れず、国家の存亡に関わる事態にもなりかねません。

米ペンシルベニア州立大などが調査した、国家間武力衝突データセットによると、確かに21世紀以降、大国間戦争はほとんど確認されていません。それでも、戦争「未満」の武力行使や軍の動員は20世紀後半と同水準にあります。

国際紛争の新たな形として注目されているのが「ハイブリッド戦争」です。軍事戦略の一つで、正規戦や非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせていることが特徴です。言い換えるなら、①正規軍の戦争行為には至らない軍事活動②軍事以外のあらゆる手段による準戦争行為――で相手を弱体化させて領土拡張などの現状変更をしかけようとする考え方です。
主流は「非正規」な戦闘に

2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合は、ハイブリッド戦争の典型例とされています。クリミア危機の初期、クリミア議会や空港を占拠した武力勢力はロシア軍とみられていますが、彼らは正規軍の制服や腕章を身につけていなかったため外形的には正体不明でした。

その後、プーチン政権はロシア系住民の保護を目的にクリミアに派兵します。この状況下でクリミアのロシア編入に関する住民投票が実施されました。クリミア併合は国際法で禁じられた侵略行為によってではなく、クリミア住民が望んだものだと国際社会に印象付ける狙いがあったとされています。

このように国家の戦略目標を達成する手段としては、正規軍同士による戦争よりも非正規の戦闘が現代の戦争の主流になりつつあります。


際限なく拡大する領域・手段

中国では1999年に「超限戦」が提唱されました。軍事と非軍事、戦場と非戦場、戦闘員と非戦闘員の間に境はなく、平時から競争相手にあらゆる手段で戦争を遂行すべきだという考え方で、ハイブリッド戦争よりも広い概念として捉えられています。


中国は台湾への軍事的・経済的手段での影響力行使を展開している=ロイター

近年注目される台湾をめぐる問題は国際紛争の伝統的側面と新しい側面を備えています。中国は東沙諸島の制圧や台湾島の封鎖といった伝統的な軍事行動を起こす場合、同時にサイバー攻撃や偽情報の流布を実行することはほぼ確実です。平時においても、経済的手段による影響力行使が繰り広げられています。中国が大陸から台湾への旅行者数を「絞る」ことは、台湾経済への打撃を狙った典型例といえます。

国際紛争は、戦車、艦船、戦闘機、ミサイルだけで繰り広げられるのではありません。経済的相互依存やデジタル技術の革新が進むなか、国際紛争の領域や手段は際限なく拡大しています。日本は朝鮮半島や台湾海峡といった伝統的な意味での軍事衝突に巻き込まれるリスクにさらされながら、新しい国際紛争においてはすでに当事者でもあります。

平時であっても何かしらの形で損害を被るような脅威にさらされているのです。正確に言えば、常に「平時」とは断定できず、有事と平時の中間にある「グレーゾーン」という見方もあります。しかも攻撃の対象は政府や軍の関係者だけでなく、民間企業や一般市民まで無差別に広がっています。

次回からは、認知空間やサイバー空間における戦争、経済的手段による戦争を紹介します。

(井上航介が担当します)

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