セルビア、ジョコビッチ選手の国外退去に怒り

セルビア、ジョコビッチ選手の国外退去に怒り
大統領「嘘にまみれた茶番劇」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1703X0X10C22A1000000/

『【ウィーン=細川倫太郎】テニスのノバク・ジョコビッチ選手がオーストラリアから国外退去となった問題で、同選手の母国セルビアが猛反発している。ブチッチ大統領は16日、豪裁判所の判断を「多くの噓にまみれた茶番劇だ」と切り捨てた。スポーツ選手と新型コロナウイルスワクチンの接種をめぐる問題は他国でも起きる可能性がある。

ジョコビッチ選手は同日、参加をめざしていた全豪オープンテニスの開催地、メルボルンの空港から出国した。声明で「非常に失望した」と表明し「これからは私が愛する試合と大会に集中できることを願う」との言葉を残した。

セルビア側は豪政府への怒りが収まらない。ブチッチ氏は「彼らはこの10日間の嫌がらせでジョコビッチ選手に恥をかかせたと思っているが、実際には彼ら自身が恥をかいた」と強調した。

セルビアのブチッチ大統領はオーストラリアの対応が二転三転したことを非難している=ロイター

ジョコビッチ選手はワクチンの接種免除措置を受けたと主張して入国し批判を浴びたが、豪州のテニス協会とメルボルンがあるビクトリア州、連邦政府も連携を欠き、対応が二転三転した。

ジョコビッチ選手は少年時代にコソボ紛争を経験した。逆風下でコートを転々としながら練習を続け、世界的な選手に上り詰めた国民的スターだ。地元のタブロイド紙は16日「スポーツ史上、最大の恥がメルボルンで起きた」などと報じた。

ジョコビッチ選手はワクチン接種の有無を明確にしていない。日ごろから食生活を徹底的に管理し、小麦を使わない「グルテンフリー」の食事をとっていることで知られる。現代医学を敬遠し自然療法を好むとされ、以前から接種義務化に強く反対していた。

東欧諸国は、そもそもワクチン接種率が低い。英オックスフォード大の研究者らでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると、14日時点で接種を終えた人はセルビアが47%、ルーマニアは41%で、欧州平均(62%)を下回る。汚職などを理由に国民の政治家に対する不信が根強く、政府が接種を呼びかけるワクチンへの懐疑心が強いのが一因だ。

男子テニス界では、ジョコビッチ選手とフェデラー選手(スイス)、ナダル選手(スペイン)が「ビッグ3」と呼ばれている。しかし、他の2人に比べると「ファンから愛されていない」との指摘もあり、米紙ニューヨーク・タイムズは「(セルビアでは)多くの人はジョコビッチ選手がもっと豊かな国の出身であれば、同じような扱いを受けなかっただろうと考えている」と伝えた。

ジョコビッチ選手は全豪オープンで、前人未踏の四大大会21度目の優勝がかかっていた。34歳という年齢もあって大会にかける思いは強かったとみられ、豪政府と2度も法廷で争ったが、道は閉ざされた。今後3年間は豪州への入国が禁止されることになり、偉業達成の雲行きは怪しくなっている。

新型コロナの変異型「オミクロン型」がまん延し、各国でワクチン接種を事実上義務化する動きがある。途上国を中心に接種が遅れている国は多く、他のスポーツでも選手の入国問題が再燃する可能性がある。

ジョコビッチ選手は5日にメルボルン空港に到着し、ワクチン接種の有無を明らかにせず大会の主催者らから「免除措置」を受けたと主張していた。豪政府は免除の証拠が不十分としてビザ(査証)を取り消したが、豪裁判所は10日に同選手の入国を認める判断を下した。ホーク豪移民相は14日に再び査証を取り消し、16日に裁判所は政府決定を支持した 。』