米、対中シフトで増派難しく 見透かすロシア強硬貫く

米、対中シフトで増派難しく 見透かすロシア強硬貫く
ウクライナめぐり、にらみ合う米欧・ロシア
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN130MH0T10C22A1000000/

『欧州安全保障を巡る米欧とロシアの協議が難航している。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大停止など一方的な要求に固執し、歩み寄りの姿勢を見せない。プーチン政権は米国が「対中国シフト」で欧州への軍部隊の増派には慎重だと見透かし、今後も米欧やウクライナとの軍事的緊張を高めていくとみられる。

米欧とロシアの協議は、ロシアが2021年12月中旬、新たな欧州安全保障体制に関する条約案を米国に、同様の協定案をNATOにそれぞれ提案して開催が決まった。1月10日の米ロの戦略安定対話、12日のNATOロシア理事会に続き、13日にはウクライナも加盟する欧州安保協力機構(OSCE)の会合を終えた。

一連の協議では、双方の間の溝が鮮明になった。ロシアは協議でNATOの東方拡大の停止や、軍配備を拡大以前の1997年までの状態に戻すことなどを求めた。米国の交渉役のシャーマン国務副長官は「絶対に実現できない提案には断固として反対する」などと拒否した。

米欧は譲歩案も示して話し合いによる解決に軸足を置く。米国は双方の国境周辺で軍事演習やミサイル配備を制限する案を提示した。国務省のプライス報道官は「(制限対象には)すでに失効している米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約に沿った欧州でのミサイル配置と特定のミサイルシステムを含む」と説明した。

ロシアは強硬な姿勢を崩さない。米ロ交渉を担当するリャプコフ外務次官は13日、「近いうちに交渉の席につき、全く同じことを議論する意味が分からない」と、交渉の棚上げや決裂の可能性を示唆した。

ロシアはウクライナ情勢を巡る緊張状態を維持し、米欧やウクライナへの圧力を強めようとしている。一連の協議のさなかにも、ロシア軍はウクライナ国境近くでの軍事演習を活発にした。これに対し、米欧はロシア軍が2014年に続いてウクライナに再侵攻しかねないとみて警戒を一段と強めている。

ロシアの強気の背景には、バイデン米政権がロシアの軍事的脅威に対抗するための欧州への米軍増派には慎重で、中ロ両国との「二正面作戦」は望んでいないと見透かしていることがある。

バイデン大統領は14年に続きウクライナに侵攻すればロシアの金融・経済に大きな打撃を与える制裁に踏み切るとの警告を繰り返すが、防衛義務のないウクライナへの米軍派遣も早々に封印した。21年12月に記者団からウクライナに米軍を駐留させる可能性を問われ「それはテーブルの上にない」と明言した。

バイデン政権には、「唯一の競争相手」と位置付ける中国の存在がロシアよりも大きく映る。欧州との関係も一枚岩ではなく、強力な措置を打ち出しにくくなっている。欧州連合(EU)は「欧州の安保環境を議論するには欧州の関与が必要だ」(ボレル外交安全保障上級代表)と、米ロ主導での協議に警戒感を示している。

一方で、軍事的圧力をかけて交渉を迫るロシアの主張を受け入れれば、台湾などに威嚇を続ける中国を増長させかねないとの懸念もある。

(ワシントン=坂口幸裕、モスクワ=石川陽平、ブリュッセル=竹内康雄)』