[FT]アルゼンチン、IMFとの債務再編が膠着

[FT]アルゼンチン、IMFとの債務再編が膠着 3月期限
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※ 今日は、こんなところで…。

『アルゼンチンが国際金融市場から断絶され、孤立する恐れが再び高まっている。同国は国際通貨基金(IMF)に対する数十億ドルの債務を再編する期限が3月に迫っている一方で、左派の与党・正義党(ペロン党)政権が新たな取り決めについて議会の支持を得られないためだ。

グスマン経済相は一貫して、IMFの支援が海外への資本流出の穴埋めに使われ、民間債権者を救済したと主張してきた=ロイター
現政権で対IMF交渉を担当するグスマン経済相は先週、首都ブエノスアイレスで各州知事へのプレゼンテーションで、IMFとの1年半に及ぶ交渉は結論が出ておらず「何の合意も成立していない」ことを明らかにした。

グスマン氏が知事たちに提示した案では、2027年までの財政均衡を目指し、より迅速な支出・補助金の削減を求めるIMFの要請に抵抗している。同氏はまた、少なくともあと5年間は中央銀行の通貨発行によって財政赤字を補填する方針を示したが、これはインフレの加速につながる。

グスマン氏によると、IMFとは、財政収支を均衡させるための支出額と時期を決める「財政健全化への道筋」について意見が食い違ったという。27年までに財政均衡を実現する方法については詳細を明かさなかった。

米金融大手モルガン・スタンレーのエコノミスト、フェルナンド・セダノ氏は、このプレゼンについて「赤字を縮小するための支出削減に、アルゼンチン当局が消極的であることを裏付けている」と指摘した。「目標達成」のために埋めなければならない「ギャップがかなり大きい」ことも浮き彫りにしているという。

返済滞ればIMFの評判にも打撃

IMFとの協議が続いている一方で、政府はIMFに対する約400億ドル(約4.6兆円)の債務の再編計画を承認するよう、野党優位の新議会を説得する方法も見いださねばならない。この債務は、18年に合意した570億ドルという記録的な規模の金融支援の一環だ。

野党の有力政治家を話し合いの場に呼び出すことさえ難しくなっている。3人の州知事とブエノスアイレス市長は先週、債務借り換えに関する協議への政府の招待を断った。会合は経済相との記念撮影にしかならない、とフェルナンデス大統領を非難した。

アルゼンチンは3月下旬にIMFへ28億ドルを返済しなければならないが、政府には支払いに必要な外貨準備がないため、IMFと新たな取り決めを結ぶ以外に選択肢はないとアナリストらはみている。モルガン・スタンレーによると、同国の純外貨準備高は69億ドルを下回っており、そのうち流動性資金に分類されるのは4億ドルにとどまる。

大半のエコノミストは、IMFへの返済が滞れば壊滅的な事態になるとの見方で一致している。そうなれば、他の国際金融機関からアルゼンチンに割り当てられる融資枠は打ち切られ、信頼できる債権者としてのIMFの評判にも深刻な打撃が及ぶ恐れがある。

20年に一時的なデフォルト(債務不履行)に陥ったアルゼンチンはすでに個人投資家から敬遠されている。20カ国・地域(G20)に加盟する主要な穀物輸出国であり、60年間で21回も救済されている同国は、これ以上国際機関との対立が続けば、国際金融界で「のけ者」扱いされる可能性もある。

グスマン氏は一貫して、IMFの支援が海外への資本流出の穴埋めに使われ、民間債権者を救済したと主張してきたが、5日にも再びIMFを非難した。IMFは実体経済を立て直すことよりも、投資家の信頼を回復することに重点を置いていると責め立てた。

「もちろん、わが国は市場の信頼が高まるよう取り組んでいるが、何よりも優先すべきは、実体経済の状況を改善することだ」と同氏は強調した。

議会の野党、政権内の強硬派もハードル

41年償還の国債価格は、債務再編の合意が間近ではないことがグスマン氏のプレゼンで明らかになったことを受け、額面1ドルあたり33セントを割り込み、1週間の下げ幅は21年9月以来最大に達した。その翌日、アルゼンチン中央銀行は主要政策金利を1年ぶりに2ポイント引き上げ、40%に設定した。これはIMFに対するアピールと広く受け止められた。

フェルナンデス政権がIMFとの問題を解決できたとしても、昨年の選挙で躍進した野党が優位な議会の批准がさらなるハードルとなる。

合意の形成は一筋縄ではいかない。特に、正義党は18年のIMF支援に署名した野党を繰り返し攻撃しており、野党連合は再交渉の政治的コストを分担することに消極的であるためだ。

政府と議会の対立を示す一例として、下院は21年12月、政府の22年予算について、現実的な経済成長とインフレの目標が示されていないとして、19時間に及ぶ審議の末に否決した。

フェルナンデス政権はまた、支出や政府補助金の削減案に抵抗する政権内の強硬派とも戦わねばならない。強硬派は18年のIMF支援がIMFのルールを破るものであり(IMFはこれを否定している)、新たな取り決めにおいてIMFはアルゼンチンを優遇すべきだと考えている。

エコノミストらは審判の時が近づいているとみている。米金融大手ゴールドマン・サックスの中南米担当チーフエコノミスト、アルベルト・ラモス氏は、アルゼンチンのIMFへの返済が滞る可能性は今や「かなり高い」と指摘する。

適切な財政政策を巡り、フェルナンデス政権内で緊張がくすぶっていることから、IMFの信頼できる支援計画の基盤となる構造的な財政調整や改革の「余地は非常に限られている」ことがうかがえるとラモス氏は付け加えた。

アルゼンチン国立銀行の元トップ、カルロス・メルコニアン氏は「経済相は自分が何をやるべきなのか、何を目標とすべきなのか分かっていない」と苦言を呈す。議会には「多くの連合勢力」が存在するため、今後2カ月の間に挙国一致して、信頼できる計画を策定する可能性はなくなったという。

コラムニストで教授のカルロス・パグニ氏は、アルゼンチン紙「ラ・ナシオン」への寄稿で、5日の政府のプレゼンは「国際機関が当局に課した制限よりも、政権内部が設けた制限」を反映しているとの考えを示した。

経済も低迷

国際政治リスクの調査会社、米ユーラシア・グループのダニエル・カーナー氏によると、アルゼンチン政府とIMFが合意を望んでいるとしても、「経済見通しに関して両者の間にはまだ重大な意見の相違がある」という。IMFは12月、「適切な」金融政策を実施するとともに、支出削減や赤字削減、年率50%を超えるインフレの抑制に取り組むよう同国に求めていた。

ブエノスアイレスを拠点とするエコノミストのフェルナンド・マルール氏は、12月に小さな進展の兆しが見られたと指摘する。アルゼンチン政府は同月22日、IMFに19億ドルを支払い、21年の返済額を上積みした。「これらの支払いに応じてきた政府にとって、デフォルトを決断すれば、非常に大きな痛手になるだろう」

正義党と野党の間のムードが冷え込むなか、経済も低迷している。

中央銀行のバランスシートは著しく悪化している。公式および市場のデータによると、準備預金は70億ドルを下回り、過去2カ月間だけで民間銀行システムから10億ドル余りが流出している。

推計によれば、21年の赤字の少なくとも70%は、IMFが同国に縮小を求める通貨発行でまかなわれている。ブエノスアイレスで英調査会社メドレー・グローバル・アドバイザーズの上級アナリストを務めるイグナシオ・ラバキ氏は「政府は時間も蓄えも尽きつつある」と語った。

By Lucinda Elliott

(2022年1月11日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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