「年寄りは退け」カザフ血を流しながら立ち上がる

「年寄りは退け」カザフ血を流しながら立ち上がる…残酷な30年独裁
https://news.yahoo.co.jp/articles/7d98da27674e4a92daaba6dac9a46f2e0cf908ed

『「年寄りは退け」。

数千人が逮捕され少なくとも50人の死傷者が出たカザフスタンの反政府デモは燃料価格急騰で触発されたが、デモ隊からはこうしたスローガンが出てきた。2019年に退任したナザルバエフ前大統領(82)をデモ隊が再び召還した。現地ではナザルバエフ氏が3人の娘を連れてすでに海外に逃避したという報道まで出ている。

ナザルバエフ氏はソ連解体直前の1990年から2019年まで29年間にわたりカザフスタンを統治した独裁者だ。彼の銅像は第1の都市アルマトイと首都ヌルスルタンをはじめとする全国各地に立てられている。外信では今回のデモをめぐり長期独裁の疲労感が累積した状況でパンデミックによる経済難が重なりエネルギー価格急騰を契機に爆発したという分析が出ている。

◇30年執権…最大野党解散

鉄鋼労働者だったナザルバエフ氏は1962年にソ連共産党に加入し政界入りした。1984年にカザフスタン閣僚会議議長、1989年に最高統治者であるカザフスタン共産党第1書記を務め、1990年にソ連からの独立後カザフスタンで行われた初の大統領選挙に単独出馬し当選した。通常の独裁者と同じように、それはやはり不正選挙と野党弾圧、不正疑惑が絶えなかった。1999年の再選時の81%を除きすべての選挙で90%台の圧倒的な得票率を記録した彼は、2005年に政府転覆容疑で最大野党「民主選択党」を解散させた。ロンドンに1億800万ドル規模の不動産も保有している。

彼の不正疑惑は家族内部からも飛び出してきた。長女ダリガ氏の夫が義父であるナザルバエフ氏の不正を暴露してだ。野党関係者を拷問したり殺害し、数兆ドルに達する秘密資金を海外に持ち出していたという内容だ。カザフスタンの情報機関と外務省などを経て駐オーストリア大使を務めた彼は2007年に強制離婚させられ、オーストリアに身を寄せていた状態で欠席裁判を通じ政府転覆容疑により懲役40年の刑を宣告された。オーストリアで横領と殺人などの容疑で裁判にかけられ、2015年に拘置所で自ら命を断った。

ナザルバエフ氏の孫であるアイスルタン氏もロシアとカザフスタンの政府間での大規模不正に関する情報を持っていると主張した。英陸軍士官学校卒業後カザフスタン国防省総偵察局で勤めた彼は、祖父が自身に圧力を加えているとして2020年2月に英国政府に政治的亡命を申請したが、6カ月後に30歳の誕生日を控えてロンドンで心臓まひにより死去した。アイスルタンの母でありナザルバエフ氏の長女であるダリガ氏は2020年5月に上院議長(国家序列2位)から突然解任された。

◇後任大統領に最側近補佐官

ナザルバエフ氏は在職当時から事実上終身大統領の道を整えていた。2010年には彼が退任後も国政に参加できるようにし免責特権を与える国家指導者法制定を主導して議会を通過させ、2017年4月には大統領の権限を大幅に縮小する憲法改正を主導した。彼が大統領から退いた後を念頭に置いた事前措置だった。彼は後任の大統領を自身の補佐官出身である最側近のトカエフ氏を担ぎ出した。2019年3月に自ら早期退任してからは国家安全保障会議(NSC)議長を務めて「国家指導者」を自任した。トカエフ大統領は5日、デモが激化すると結局ナザルバエフ氏をNSC議長から解任した。政治的後ろ盾であるナザルバエフ氏を抱えて行くには国政運営の負担があまりに大きかっただけにひとまず線を引くことにした。

ニューヨーク・タイムズは7日、カザフ情勢をめぐり「ストロングマンのジレンマ」と分析した。「独裁者は政治システムの無力化を通じて自身をなくてはならない存在に仕立て上げるが、競争者のいない後継者を立てても新しい政府は強力な政治システムを必要とする」という点からだ。同紙は「ストロングマンの権力継承は実現の可能性が低そうだ」と評価した。独裁が終わればその国はすぐに崩壊するものということだ。』