米欧、「一帯一路」対抗へ新戦略 構想先行の途上国支援

米欧、「一帯一路」対抗へ新戦略 構想先行の途上国支援
編集委員 西村博之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK28ARB0Y1A221C2000000/

『主要国が途上国のインフラ支援へ相次ぎ新戦略を打ち出している。中国が2013年に広域経済圏構想「一帯一路」を始動して以来の政策の空白を埋める動きだ。日本のインフラ輸出への追い風も期待されるが、具体策はこれから。加えて各国に足並みの乱れもみられる。
欧州勢が打ち出す中国「債務のワナ」対策

「一帯一路への真の代替案だ」。21年12月1日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は、肝煎りのインフラ支援戦略「グローバル・ゲートウェー」を発表した。民主主義、法の支配、人権、環境といった価値観に沿って途上国を支援する内容で、27年までに官民で最大3000億ユーロ(約39兆円)の投資をめざす。

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21年11月25日には英トラス外相が、政府系開発金融のCDCグループを「英国際投資(BII)」に衣替えし、国外でのインフラ支援体制を拡充すると発表した。アフリカや南アジアの英連邦の国々から東南アジアや太平洋の諸国まで支援対象も広げ、向こう5年にわたり年15億~20億ポンド(約2360億~3140億円)を投じる。

「専制的な国からの融資で借金漬けになった国に代替策を提供する」とトラス外相は言う。中国が借金のかたとして港湾などの重要施設を手中に収める「債務のワナ」を意識した発言だ。

21年サミットでインフラ支援連携も

米研究機関エイドデータによると、中国が165カ国で手がけた1万3400件の一帯一路事業のうち35%は汚職や環境汚染、労働問題などを抱える。主要国はこれらの問題に対応しつつ、途上国での経済、政治的な影響力を取り戻そうとしている。

2021年6月のG7サミットではバイデン米大統領主導で新たなインフラ支援の連携を決めた(英コーンウォール)=ロイター

21年6月の英コーンウォール・カービスベイでの主要7カ国(G7)サミットではバイデン米大統領が自らの看板政策の名を冠した「ビルド・バック・ベター世界版」(通称B3W)を提唱、債務の持続性や環境に配慮したインフラ支援で連携すると決めた。欧州勢の新戦略を踏まえ12月3日には改めて結束を確認する声明「インフラと投資のためのパートナーシップ」まで出した。

連携の先行例はある。南太平洋パラオ。沖合では海底通信ケーブルの敷設作業が進む。23年に米国とシンガポールを結ぶ幹線から100キロメートルの支線を延ばす事業だ。

国際協力銀行(JBIC)など日米豪の政府系機関は18年にインド太平洋地域のインフラ支援で連携する覚書を交わしており、その1号案件。パラオの経済発展に不可欠な通信インフラの構築を支える目的だが、同国への中国の影響力浸透をけん制する狙いも透ける。

インフラ支援〝大国〟日本に追い風

インド太平洋地域への一帯一路の伸長を警戒する米国は、支援強化へ19年に米国際開発金融公社(DFC)を新設した。豪政府も太平洋諸国のインフラを支援する新制度(AIFFP)を創設。日米豪は第2、第3の協調案件を検討中だ。

インフラ支援で外交上の得点と企業の需要創出を狙う一石二鳥の政策は日本のお家芸で、09年以降は成長戦略の柱にもなった。近年は中国に競り負ける場面も増えたが、各国との連携は追い風になりうる。贈与も含めた好条件の資金拠出が事業費を下げ、中国と競いやすくなるからだ。

主要国が唱えてきた「質の高いインフラ」を裏打ちする支援の枠組みが増えれば、中国への過度の依存を警戒する途上国を引き寄せられる、と期待する声もある。

各国の連携に課題

ただ、今のところ米欧やG7の構想は絵に描いたもち。米欧間の戦略をどう擦り合わせるかなど先行きは読みにくい。

6月のG7でも、裏では米主導の「B3W」をめぐる議論が紛糾し「一向にまとまらなかった」(政府関係者)。トランプ前政権が国際協調に背を向けた影響が尾を引き、各国とも米提案にどこまで乗るべきか測りかねているという。

主要国が一帯一路への有効な手立てを欠いたことが、中国の影響力を強めたのは否めない。これが資本主義とは異質の経済体制を浸透させる余地も生んだ。

インフラ支援は良くも悪くも「国の形」を左右する鋳型になる。支援の機運を保つためにも、ノウハウをもつ日本が各国と連携し成功例を重ねるのが大事な局面だ。』