尖閣・台湾侵攻を実際に想定、中国が危険な軍事行動

尖閣・台湾侵攻を実際に想定、中国が危険な軍事行動
https://ameblo.jp/neko3no2ku9/entry-12720139837.html

『前回の記事(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68108)では、中国が、広大な西太平洋上の米空母を発見し、その位置を特定するために、エリント偵察衛星を打ち上げて情報収集を行ってきたことを述べた。

 今回は、日本と台湾周辺で、爆撃機を囮として接近させることにより、日米台の軍事態勢を解明しようとしていることについて解説する。

 中国軍の爆撃機や情報収集機は、中国に面した側ではなく、日本の背後となる太平洋側の経済水域に侵入し、領土に接近している。

 台湾に対しては、中間線を越え、南と北側から台湾の背後の海域まで侵入してきている。

 国家に対するこれらの軍事的威嚇は、極めて異常な行為であり許されるものではない。

 これらの行動は、軍事的な威嚇と広く認識されているが、ほかにもう一つ隠された狙いがあった。

 それは、日本・台湾との戦いを想定(準備)するための行動だ。この狙いを解明するために、

①中国軍の情報収集の要は何か

②中国軍爆撃機等による日本・台湾への軍事的威嚇行動

③爆撃機を日台に接近飛行させた時の日台がとる防空行動

④爆撃機と行動を共にする情報収集機の狙い

⑤台湾のどの地域の情報を収集しているのか

⑥日本のどの地域の情報を収集しているのか

⑦威嚇しつつ日本の軍事情報を収集する狙い、の順に考察する。

1.中国にある4か所の通信傍受機関が要

 中国では、軍の動向や態勢に関する情報を総合的に収集するために、大掛かりな通信傍受施設が情報機関の要として存在している。

 大型のアンテナが円形(直径200メートル前後)に配列されている施設(俗称:ゾウの檻)は、中国本土内の各地に設置されている。

 この施設は、ボイス通信、モールス通信、機械通信およびレーダー波などを傍受できる各種アンテナから構成されている。

 個々の受信用のアンテナは、円形(360度)に配置されており、発信源が放出する電波の方向を測定する。2つの通信所が、電波の強度が強い方向を測定すれば、その交点が発信源の位置である。

 例えば、日米台の通信している部隊や兵器の位置を特定できる(交信内容や兵器の種類=艦種や艦番号などの解明については、その情報機関の能力と技術力によるので、詳細は不明である)。

米国サンディエゴ付近の海軍ウーレンウェバ―アンテナ(像の檻)

© JBpress 提供 出典:https://www.navy-radio.com/rcvrs/frd10/imp-beach-DN-SC-04-09292.jpeg

「The Project 2049 Institute」のリポート「An Organizational Overview of Unit 61398」(2015年7月27日)によれば、中国情報機関は、中国軍総参謀部隷下の第3部第2局(unit 61398)が総括している。

 この隷下には、衛星からの情報を受信する上海の情報所(office)や海南島の通信所(work station)や4か所の円形のアンテナが、北から、黒竜江省、上海、香港、雲南省に設置されている。

中国国内の通信傍受施設

 発信源の位置を特定するためには、三角測量と同じ原理を用いる。

 黒竜江省と上海の通信所が得られた方向線の交点、上海と香港の通信所から得られた交点、香港と雲南省の通信所から得られた交点により、発信源が特定できる。

中国通信傍受施設が軍事目標の位置を標定するイメージ

© JBpress 提供 出典:中国国内の通信傍受施設を基に筆者作成

2.爆撃機による日本・台湾への軍事威嚇

 中国爆撃機・戦闘機には、情報収集機(エリント機やシギント機)が行動を共にしている場合が多い。その軍事的威嚇飛行には、下記のパターンがある。

①宮古海峡を越えて、西太平洋上に進出し、先島諸島や台湾背後の海域に進入する。

②爆撃機の編隊(6機)が宮古海峡を越えて、南西諸島の太平洋側を北上し、紀伊半島付近まで接近する。

③中国とロシアの爆撃機が共同で、東シナ海~対馬海峡~日本海の往復飛行を行う。

④無人機と情報収集機が宮古海峡を越えて、西太平洋上に進出する。

⑤台湾との中間線を越え、台湾の背後に進入する。

⑥台湾海峡や東シナ海から台湾や南西諸島(尖閣諸島)に接近する。

中国軍機による日・台への軍事的威嚇飛行パターン

© JBpress 提供 出典;統合幕僚監部報道発表を基に筆者作成

 これらの接近行動は、「日本や台湾に対する軍事的威圧・威嚇飛行」として説明されることが多い。

 だが、実際の狙いはこれだけではない。

 爆撃機・戦闘機だけが接近飛行するのであれば、威圧・威嚇的な行動であると評価されるが、これらにはほとんどの場合、情報収集機が随伴し、また、本土の4つの傍受通信所が、日米台の動きをキャッチしている。

 ここが注目すべき点であり、中国の狙いがあるのだ。

3.爆撃機の接近飛行で日台が取る防空行動

 なぜ、中国は、爆撃機や戦闘機を接近飛行させ、軍事的威嚇を行うのか。

 それは、情報収集機だけが接近してきても、脅威が少ないため、防衛行動を取らない可能性が高いからだ。

 他方、実弾の対地ミサイルや空対空ミサイルを搭載している爆撃機や戦闘機が接近してくれば、日台軍は、これらのミサイルが撃ち込まれる場合のことを想定して行動する。

「中国軍機からミサイルを撃ち込まれました、対応していませんでした」では、済まされないからだ。

 当然、空からの接近に対しては、防空兵器のレーダー、戦闘機の捜索レーダー、空中警戒管制機の捜索レーダーなどを作動させることになる。

 水上からの接近に対しては、対艦ミサイルの捜索レーダーを作動させる。

 中国軍の爆撃機などが日台の領土近くにまで接近すれば、日米台国軍のレーダーサイト、陸上配備の防空ミサイル部隊、軍艦の防空レーダーは、電波を発信する。

 また、司令部、防空指揮所、防空部隊の間で、無線交信を行う。さらに、戦闘機が防空のためにスクランブルを行い、その機と空中警戒管制機がデータ交換を行う。

 中国は、これらの対応の折に発信された、レーダー波や通信内容を傍受し、分析している。これらの情報を入手して、日米台軍の動向や態勢を確認しているのだ。

4.爆撃機と一緒に飛ぶ情報収集機の狙い

 情報収集機については、部隊間の無線通信などを取るシギント機とレーダーの電波を取るエリント機がある。

 情報収集機の特色は、無線通信やレーダー波の発信源に接近できることだ。

 また、無線通信の到達距離が短いものでも、受信し録音して帰投できることにある。

 ただし、機内で通信内容を分析することはできないので、持ち帰って本部の分析官が分析を行う。

 したがって、収集した成果をリアルタイムに使用できないことが欠点でもある。

 シギント機は、部隊司令部、防空司令部と防空部隊の通信や陸上部隊間の通信を傍受し、録音することができる。

 特に、中国本土まで届かない電波情報を取れるという利点がある。だたし、通信を傍受できるが、どこから発信されたのかについては、正確に突き詰めることが難しい。

 また、対象国軍が有線通信機器を使用し無線を使用しなければ、通信を傍受することはできない。

 エリント機は、爆撃機に向けて発せられる防空部隊や火器管制レーダーの電波を受信し、録音して持ち帰る。

 そして、地上の分析部署で他の情報と照合し解析することによって、どの地点に、どの種類のレーダーが配備されているかが分かるのだ。

 これらは、弾道ミサイルや対地ミサイルの射撃目標として、記録・保存され、将来、中国軍の作戦戦闘のために使用される。

5.台湾のどこの情報を収集しているのか

 中国は、爆撃機などを囮として台湾に接近させ、台湾の部隊が電波を発信するように仕向けている。

 台湾軍が電波を発信すれば、その位置が解明される。

 このため、反対に情報収集機が頻繁に活動する範囲を分析すれば、中国がどこの何を焦点に情報収集しているのかが推測できる。

 情報収集の焦点と作戦の焦点は一致することから、中国の作戦正面を推測することができるのだ。

 台湾の太平洋側は、4000メートル級の山地が電波を遮蔽するために、中国本土の通信所が台湾の太平洋側からの電波を傍受するのが難しい。

 そのため、中国が最も頻繁に実施しているのは、台湾の中国側ではなく、台湾南部から台湾の太平洋側だ。

 具体的に爆撃機などが多く飛行している範囲は、日本の宮古海峡を経て、北側から台湾の太平洋側から引き返す場合と台湾を周回して南に戻る場合である。

 いずれの場合も、台湾の太平洋側に配備されている兵器と部隊の状況を把握するためだ。

 ここには、台湾軍の配備が弱い背後を衝く作戦案があり、台湾の背後に回って攻撃するその案を重視していることが分かる。

6.日本のどの地域の情報を収集しているのか

 最も頻繁に実施しているのは、宮古海峡を経て、太平洋側から先島諸島に向かうコースだ。

 先島諸島への接近飛行は爆撃訓練の可能性があるが、他方、爆撃機を囮として、先島諸島に配備されている防空兵器や対艦ミサイルの電波を収集するという目的もある。

 この狙いは、台湾侵攻の時に、尖閣・先島諸島を経由して、台湾の背後から迂回攻撃を行う場合、日本からの妨害を想定し、先島諸島の攻撃能力を破壊するために、弾道ミサイルや対地ミサイルの目標を定めるためである。

 次に多いのは、宮古海峡から太平洋へ出て、同じコースを帰投するパターンだ。

 これで、沖縄配備の米軍や自衛隊の配備の実態と反応を確認している。先島諸島の次に、沖縄の部隊からの対応に強い関心があるようだ。

 対馬から日本海に入り、帰投するパターンがある。釜山基地および佐世保基地配備の軍艦、岩国基地配備のステルス機の対応を見ている。

 宮古海峡を越えて北上し、紀伊半島付近まで接近したことがあったが、南西諸島に部隊が配備されていないかについて、また、太平洋側から宮崎県新田原基地および岩国基地配備の戦闘機の反応、九州福岡に配備されている防空兵器の反応を見ている。

 中国は、囮行動の狙いが、日本側に見破られたと判断すれば、今後、欺編や陽動として、軍事作戦とは関係がない地域に対して、爆撃機や情報収集機を運用する場合もあるので、注視する必要がある。

7.威嚇しつつ日本の軍事情報を収集する狙い

 中国軍は、爆撃機等とともに情報収集機を接近させ、中国本土で活動する通信所と連携して、特に、日本本州の南半分の在日米軍、自衛隊の配備と対応の情報を収集している。
 日本の領土に接近した経済水域にまで爆撃機や情報収集機を侵入させ、恫喝し、情報収集を行っている。

 これは、何の目的なのか。ただの情報収集ではないはずだ。

 ミサイルを搭載した爆撃機が日本に接近すれば、それだけでミサイル攻撃されるという大きな脅威となる。

 脅威を受けた自衛隊や米軍は、防空レーダーを作動させ、また関連する部隊が警戒態勢をとることになる。

 これらの情報を取ることによって、台湾有事・尖閣有事に中国軍機が日本に接近したとき、日米がどのような行動を取るのかを分析しているのである。

 日本の先島諸島、沖縄周辺、さらにここから台湾への情報収集を活発化しているということは、台湾有事や尖閣有事に、本州の南半分、特に先島諸島、沖縄、九州(佐世保や新田原など)、呉や岩国などに配備されている軍用機や軍艦がどう行動を起こすのかが、ある程度判明する。

 ということは、中国は台湾侵攻や尖閣での衝突を想定して、地図上の検討ではなく、ミサイルを搭載した戦闘機や爆撃機を囮にして、実際、戦場となる可能性がある場所で、日米がどのように対応するかという情報を収集しているのである。

 日本人には、中国軍が台湾有事や尖閣での衝突を想定して、爆撃機などが囮となって、我が国の防衛態勢を詳しく調べていること、そして作戦準備を着々と進めているということを知ってほしい。

 外交的にも大問題として捉え、中国に対して強く訴えるべきだと考える。』