「反中」を攻撃、稼ぐ愛国ブロガー(The Economist)

「反中」を攻撃、稼ぐ愛国ブロガー(The Economist)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB090IT0Z00C22A1000000/

 ※ 「ネット右翼」は、中国にもいる…、という話しだな…。

 ※ いや、もっと「過激」なのかもしれない…。

 ※ 当局は、そういう「うねり」を、コントロールできるのだろうか…。

『中国の庶民、特に若者がナショナリズムの台頭によって抑えきれなくなった怒りをいつか爆発させるのではないかと世界はずっと案じていた。だがここ数カ月の状況からすると、外部の観察者はひそかに深刻化していた脅威に気付いていなかったようだ。排外的な被害妄想は、今や陰湿でもうけ目当てのゲームにかたちを変えている。
北京での中国共産党のプロパガンダビデオの撮影風景。中国に批判的と取れる活動に対する風当たりが激しくなっている=ロイター

内外の橋渡しをする役目を果たす中国の市民活動家や非政府組織(NGO)、民間企業にとって、今は恐怖に満ちた時代だ。中国共産党系や人民解放軍系のメディアを後ろ盾にしたナショナリストのブロガーらが、外国から補助金を受けたり、中国の影響力拡大に関する海外の懸念を伝えたりしただけで、数カ月にわたって団体や個人の活動家を糾弾する。環境など比較的無難にみえる分野も例外ではない。

科学関連の人気動画をつくり、ネットで発信していた「ペーパークリップ」は2021年、ネットナショナリストから激しい攻撃を受け、閉鎖に追い込まれた。アマゾンの森林破壊と関係があるブラジル産大豆を中国が大量に買い付けていると指摘した動画や、肉の消費量を減らすことは地球のためになると説いた動画が、中国への憎悪を拡散したとして攻撃された。

中国の漁船の乱獲ぶりを取り上げた動画を作成して裏切り者扱いされたインフルエンサーも複数いる。その一部は英環境保護団体向けに作られたもので、中国人にもっと責任ある魚介類の消費を訴えていた。中国のナショナリストはそこに、欧米人が自分たちの分を確保するために中国人のたんぱく質摂取を認めないという「悪意」を感じ取って攻撃した。

上海の社会起業家が運営するチャイナハウスはアフリカの持続可能な開発を推進し、発展から取り残された人を支援するボランティアの機会を中国の若者に提供しているが、ネットナショナリストから攻撃を受けている。中国南部におけるアフリカ人差別の問題を提起し、象牙の違法購入に携わる中国人を調査したとして標的になった。
クリックを集めるナショナリズム投稿

このような最近の排外運動でしばしば火付け役になっているのはブロガーのサイ・レイ氏だ。同氏は、チャイナハウスの創業者を「二鬼子」と呼んだ。これは1930~40年代に日本の支配者の手先を指した蔑称だ。サイ氏の動画は共産党の青年組織「中国共産主義青年団(共青団)」によって再投稿され、再生回数は合わせて500万回に上っている。

NGOの世界に長く身を置くある人物は、今は中国の市民社会にとって(天安門事件が起きた)89年以降で最悪の時代だと指摘する。

だが、恐怖は政府の新たな政策や、相次ぐ逮捕によって広がったわけではない。最も悪質な攻撃の多くはそれまでほぼ無名だったSNS(交流サイト)の起業家が発端になっている。非常に気がかりな傾向だ。しかも、驚くべきことに、こうしたブロガーは、排外的な偏見を面白おかしく仕立て上げるのを常とう手段としている。

そうしたブログを見ているのは、主に18~25歳の若い男性だ。「反中の裏切り者」を非難する動画にネットユーザーが食いつくと、ナショナリズムに満ちたミーム(写真や短文などを組み合わせた主にSNS向けの面白画像)や陰謀説、敵意むき出しの内輪向けジョークを繰り出して、来訪者をひきつけ続ける。

批判の対象を「二鬼子」と呼ぶのはほんの序の口だ。中国の公安当局は外国勢力のスパイに関する情報を提供した人に最高50万元の報奨金を出している。このことから、非愛国的というレッテルを貼られた中国人はネット上で、スパイとして通告されるのを前提に、「歩く50万」、もしくは単に「50万」と呼ばれている。

ナショナリズムは今やエンターテインメント産業と化しているのだ。昨年、自分の勤務先が批判の標的になったあるリベラルな中国人の言葉を借りると、ナショナリストは「反中」の裏切りを取り上げた動画に閲覧数を稼ぐ力があることに気付いたのだという。この人物は「閲覧数が増えれば影響力が高まる。その影響力は収入を生み出す」と説明した。
ブロガーの証言

本誌(The Economist)はサイ氏への電話インタビューで、何年も科学や車についての解説動画を作成していたのに、なぜナショナリスト動画を投稿するようになったのかと尋ねた。本名をリ・シルイ氏というこの30歳の男性はインタビューに応じる前に本誌に質問を提示するよう求めた。外国メディアに対して不信感を持っているためだという。

同氏は、20年以降、中国への批判の高まりの裏には隠された意図があると感じるようになったという。新型コロナウイルスに関するトランプ前米大統領のコメント、新疆ウイグル自治区の綿産業での強制労働疑惑を巡る英公共放送BBCの報道、中国が他国に寄贈したマスクに「(中国の通信機器大手)華為技術(ファーウェイ)のチップが仕込まれている」など「どこかで読んだ」出所不明のニュースの断片など、衝撃を受けたという多くのことがらを同氏はごちゃ混ぜに話した。

取材のなかで、こうした情報は「紛れもなくフェイクニュースだ」と断じ、「私たち中国人はその裏の意図を警戒する必要がある」と訴えた。また、自らの活動は当局と事前調整していないと主張し、「自分たちは民間企業であり、政府とは無関係だ」と述べた。

厳しい状況で、非難を浴びている人たちは、クリック目当てのナショナリズムがどの程度共産党の政策に沿ったものなのか、頭を悩ませている。1980~90年代には、海外のNGOや基金は外国人のエコノミストや法学者を連れてきたり、西側諸国への留学費用を支援したりしていたため、歓迎された。だが、そんな時代は終わった。中国のリーダーは今や、西側諸国は知識の源として役に立たなくなったと考えており、敵対姿勢を取りがちになっている。

国際的な活動に取り組むNGOの一部は、中国国内の改革派と協力する機会が減るなかで、中国が国際社会の一員としてより大きな責任を果たすことの重要性を訴える方針に転じている。扱うテーマには気候変動や遠く離れた海域での不法操業などの問題が含まれる。
ネット右翼とタカ派の相乗効果

中国以外の個人やグループがこうした役割をすれば、もっと大きな反発を招きがちだ。中国に対する批判に反論するかたちで、クリックを稼ぎたいネットナショナリストと、外国人が見返りを求めずに中国を支援するはずがないと思い込んでいる安全保障のタカ派の間で、相乗効果が高まるかたちになる。

中国の警察当局は昨年11月、中国沿岸の海洋汚染について調査しているNPO「仁渡海洋」に対し、スパイに利用されるおそれがある海洋データを収集しているとして非難した。

同じ11月、共産党系メディアの環球時報は、環境NGOで働く中国人は、例えば気候変動の交渉での中国の意図を扱う学会を開催するなどすれば、気付かないうちに外国の「スパイ活動」に手を貸している可能性があると警告を発した。

こうした活動を敵視する行動は、「生態文明(エコ文明)」で世界をリードするという習近平(シー・ジンピン)国家主席が掲げるスローガンに反している。

外国とつながる批評家の威信を失墜させる行為は、共産党にとって今は好都合かもしれない。だがいずれ、こうした力学は容易に覆せなくなり、結果的に中国共産党自身を苦しめる問題となる可能性がある。

(c) 2022 The Economist Newspaper Limited. January 8, 2022 All rights reserved.

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