日豪「準同盟」の防衛協力強化 共同訓練推進へ協定署名

日豪「準同盟」の防衛協力強化 共同訓練推進へ協定署名
対中抑止を念頭
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA05CJT0V00C22A1000000/

『日本とオーストラリアは6日、自衛隊と豪軍が共同訓練をしやすくする「円滑化協定」に署名した。日本が他国と交わす防衛協力に関する主要協定は豪州との間で結び終えた。中国への抑止強化に向けて「準同盟」の関係を強化する。

岸田文雄首相は同日、モリソン豪首相とのオンライン協議で「日豪の安全保障協力を新たな段階に引きあげる画期的な協定だ」と述べた。モリソン氏は「この協定により両国の責任はますます重要になる」と語った。

両首脳がまとめた共同声明は中国への懸念を強調する内容になった。

中国軍や海警局が活発に活動する東シナ海について「現状を変更し緊張を高めようとする威圧的な一方的行動に対する強い反対」を表明した。台湾海峡の平和と安定の重要性を訴え、新疆ウイグル自治区での人権侵害にも触れた。

こうした安全保障環境を踏まえ、豪軍と自衛隊のより大規模で複雑な訓練を円滑に進めるため協定を署名したと説明した。

協定は互いの国を訪れる際の手続きや、相手国内に入った部隊の法的な立場を規定するものだ。

滞在先の国の法令を尊重する義務を明記したうえで、船舶や航空機で部隊が入国する際の手続きを省略する。活動中に車両を運転したり武器を使用したりする際のルールも定める。

滞在中に事件や事故を起こした場合の対応も盛り込む。豪州は死刑制度を廃止しており、日本で豪軍の兵士が凶悪事件を起こした場合の扱いが壁になっていた。公務中なら裁判権は豪州がもち、公務に従事していない間は日本の法律を適用する形で決着した。

米軍が日本で活動する際の法的扱いは日米地位協定が定めている。日本が米国以外の国とこうした協定を持つのは初めてだ。「準同盟国」と位置づける豪州との防衛協力強化の象徴にする。

日本が英国と交渉中の円滑化協定も日豪の協定が基礎となりえる。豪州とは交渉開始から署名まで7年半かかった。日本の外務省は日豪協定をひな型にして他の国との交渉をより迅速に進められるとみる。

日豪は防衛協力の機会を増やしている。陸上自衛隊の離島防衛部隊「水陸機動団」は2021年6~8月に豪州へ渡って豪陸軍、米英の海兵隊との訓練に加わった。広大な演習場を使い、敵艦による離島侵攻を防ぐための戦術を確認しあった。

豪軍の兵力は陸海空あわせて6万人弱だ。22万人超の自衛隊に比べて規模は小さいものの、戦地での活動実績がある。03年に始まったイラク戦争は開戦時から実戦部隊を派遣した。自衛隊は豪軍の経験を学び対処力を高める。

日本は豪州と防衛協力に関する協定を整備してきた。10年に訓練の際に燃料などを融通しあう「物品役務相互提供協定(ACSA)」に署名した。機密情報をやりとりする「情報保護協定」は12年に合意した。

防衛技術の輸出や共同開発に必要となる「防衛装備品・技術移転協定」も14年に結んだ。安全保障問題について協議する外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)は07年に始め、これまでに9回開いた。

21年には自衛隊が外国の艦艇や航空機を警護する「武器等防護」を豪軍に対して実施した。米国以外では初の事例となった。日本にとって豪州は米国を除くと最も防衛協力の整備が進んでいる国といえる。

日本は英国やインド、フランス、ドイツなどとも安保上の交流を深めている。米国以外の国と積極的に関係をつくるのは中国の軍事力に対処するためだ。

中国は21年後半、台湾が設定する防空識別圏に多数の戦闘機を接近させるなど活発な軍事活動を展開した。太平洋上で空母から艦載機を発進させる演習も実施した。

中国が台湾に侵攻すれば南西諸島が戦域に入るとの見方は多い。日米は豪州やインド、欧州各国と結束する姿勢を示して抑止力向上を狙う。

特に豪州はインド太平洋地域への関与拡大で先行する。日米豪印の「クアッド」や米英豪の「オーカス」など多国間の枠組みに積極的に参画する。日本は豪州との関係を「先駆的なモデルケース」として他国にも防衛協力を呼びかける方針だ。』