台湾防衛ためらう米国Z世代 民主主義の先導役難しく

台湾防衛ためらう米国Z世代 民主主義の先導役難しく
アメリカン・デモクラシー③癒えぬ分断
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2113G0R21C21A2000000/

『2021年秋、米中西部ウィスコンシン州ウォーソー。薬用のアメリカニンジン畑で台湾の駐米大使に相当する駐米台北経済文化代表処の蕭美琴代表が農作業に参加していた。台湾は22年秋にも米国から生のアメリカニンジンの輸入を認める見通しだ。同州の業界団体が約15年間にわたり要望してきた悲願が実現する。

【前回記事】「第2ホワイトハウス」に異端児 議会分極化、力の源泉

「台湾の消費者が心待ちにしている」。蕭氏が農家らを前にウィスコンシン州からの輸入拡大を訴えると、駆けつけたウィスコンシン州のトニー・エバーズ知事は22年4月に経済使節団を台湾へ送ると応じた。

台湾は対米関係強化を急ぐ。中国による台湾侵攻阻止には米国との協力が不可欠だからだ。米国は台湾防衛を確約せず、そもそも国と認めていない。有事に対し、米国が軍事介入するのかどうかは米国民の台湾支持がカギを握り、全米で草の根の活動も重要になる。

ウィスコンシン州のアメリカニンジン生産団体トップ、ロバート・カルダンスキ氏は私見としながらも「米国は民主主義や自由を進めてきた」と強調する。多数の米兵が犠牲になるリスクがあっても、台湾を防衛する選択肢を排除すべきでないとする。

米シンクタンクのシカゴ国際問題評議会によると、米国が台湾を防衛すべきだとの回答は21年に52%。20年に比べて11ポイント上がった。1982年の調査開始後で初めて過半数を上回った。

バイデン米政権は「台湾は民主主義の成功物語」(ブリンケン国務長官)と持ち上げ、台湾を民主主義防衛の最前線とみなす。バイデン大統領は米歴代政権の政策に反し、台湾の防衛義務に2回触れ、軍事介入に前向きな姿勢をにじませた。

一方、若者の多くは軍事力の行使に慎重だ。政治団体に勤めるクラウディア・サレムさん(23)は世界で民主主義が広がるべきだとしつつ「米国がコントロールできない」とみる。「台湾には金銭的支援にとどめ米軍を送るべきではない」と訴える。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の20年の調査は米国が他の国や地域を守るべきかどうかについて、世代別に支持の度合いを10段階で聞いて平均値を出している。10に近づくほど支持が強いことを示す。

日本と台湾の防衛をめぐる67歳以上の平均値はともに7.4前後で同水準。「Z世代」や「ミレニアル世代」と呼ばれる18~30歳では6.62の日本防衛に対し、台湾防衛は5.9にとどまり差が生じている。

米中競争は長期にわたる。若者の姿勢が現状のまま変わらなければ、将来は台湾有事に米軍が介入しないと中国がみなす可能性がある。中国に対する抑止力は弱まりかねない。

米国の若者には自らの民主主義の修復を優先すべきだとの思いもある。Z世代のヨセフさん(18)は連邦最高裁判所への保守派判事の相次ぐ任命などを挙げて「米国の民主主義に数多くの懸念がある」と語った。

若者の民意は無視できず、バイデン米政権も中国と台湾の間で揺れ動いているとみられる。米国が21年12月にオンライン形式で開いた「民主主義サミット」。台湾が招かれ、中国は招かれなかったため、中国は激しく反発した。

台湾代表で参加したオードリー・タン(唐鳳)デジタル担当相の登壇の途中、映像がカットされ、音声のみに切り替えられた。米政府は否定するが、ロイター通信によると台湾と中国を異なる色に塗り分けた地図が映像で使用され、驚いた米当局が削除したという。

米国が民主主義のリーダーであり続けるため、強権化を加速する中国とどう向き合うか。台湾防衛を巡る民意や政権の揺らぎは、米国の迷いを映している。

(ワシントン=中村亮)

【関連記事】
・米教育現場に新たな火種 「批判的人種理論」で亀裂
・米議会占拠1年、癒えぬ分断の傷痕 揺らぐ民主主義 』