【人類世の地球環境】カザフスタン 灌漑がつくった国

【人類世の地球環境】カザフスタン 灌漑がつくった国
https://cigs.canon/article/20171004_4514.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

『技術総合誌・OHM9月号に掲載(2017.10.04)

今夏は、中央アジア・カザフスタンの首都アスタナで万博が開かれていて、講演に招かれ訪問する機会があった。カザフスタンは日本の7倍の広大な面積を持つ。東は中国の新疆ウイグル自治区に、北はロシアに接する。西はカスピ海に達する。国土は大半が草原で中央部に砂漠があり、山は南と東の国境付近に限られている。ステップと呼ばれる草原と砂漠はひたすら平坦で、北のシベリア低地に連なる。

 中央アジアの気象はスケールが大きい。カザフスタンの南には7,000m級の天山山脈とパミール高原が連なる。インドの南から吹いてくるモンスーンの雨は8,000m級のヒマラヤ山脈とその西に連なるヒンドゥークシュ山脈に完全にシャットアウトされて、これより北には雨は降らない。カザフスタンの降水は、遙か北極や大西洋からもたらされ、北風が天山山脈に当たって雪となる。天山山脈より南はこの水分もシャットアウトされ、広大なタクラマカン砂漠となる。日本列島は3,000m級の山しかないが、それでも冬は、関東地方はカラカラになる。この倍以上の高さの山が連なるので、中央アジアではさらに徹底的に水分が搾り取られる。

 ロシアのシベリア低地では、寒い湿地に森林が連なっている。それがカザフスタン北部で終わりになり、そこからカザフスタン内には広大なステップが連なり、南に行くにしたがって乾燥し砂漠になる。雨はきわめて少なくなり、ステップでも年間300mmがせいぜい、砂漠はそれ以下である。砂漠は、夏は40度、冬はマイナス20度と、暑さ寒さが極端になる。

 これだけ気象が厳しいとなると、ちょっとした気候変動に人々が翻弄されてきたことは想像に難くない。

 人口ポンプという仮説がある。それは、温暖で湿潤な時期には草原の人口が増加し、逆に冷涼で乾燥した時期には、草原で養いきれなくなった人々が、草原から出て他の地域に移住ないし侵入する、という説だ。

 中国での三国時代から五胡十六国の乱にかけての時期には、華北地域が乾燥して農耕に適さなくなり、食料の奪い合いから戦争が起きて、そこに北方から異民族である五胡が侵入した、という説がある。この説は確証されていないようだが、湖底中の土壌の花粉分析などにより、古気候の復元研究が進められている。

 だが、このような厳しい気象の中にあっても、というよりも、厳しい気象であるがゆえに、やはり人類は環境を大幅につくり変えてきた。

 天山山脈の北側に沿って飛行機で飛ぶと、雪解け水が一筋流れ出した扇状地に緑色の畑があり、その中に集落がある。そのような集落が数㎞から数十㎞置きに点在している。

 ところどころにダムがあり、その下には大きな町がある。その周辺はひたすら乾燥している。水のある所だけ緑があり、作物が育ち、人が住んでいる。

 このあたりは昔のシルクロードの天山北路にあたる場所で、漢代には50国とも80国とも言われたオアシス国家が存在した。

 オアシスでは、カナートと呼ばれる灌漑が、紀元前1000年にはすでに存在したというから驚きだ。これは扇状地の地下水を地下用水路で導いたものである。遊牧民であってもオアシスの定住民と交易して穀物や野菜を得ることは必須だったということから、この地域の人々は皆、灌漑とともにあったことになる。

 カザフスタンで灌漑というと、アラル海での環境破壊が有名になってしまった。アラル海にそそぐアム川とシル川で、綿花等の栽培のために大規模に灌漑をした結果、水量が激減して、アム川はアラル海に到達する前に消滅し、アラル海の8割が干上がってしまった。灌漑の仕方がまずく、土に染み込んだり蒸発する水も多く、大量の化学肥料を投入したせいもあって、塩害が生じた。アラル海には豊かな漁場があり、食品加工工場もあったが、今では町は廃墟になった。

 だが、万博会場でカザフスタンの大学生と話をすると、なおも灌漑を含めて農業開発は良いことだと信じているようだ。アラル海についても、やり方の改善は必要だが、灌漑自体を止めるとは言わない。グーグルアースで見ても分かるが、確かにアラル海は干上がっているが、その上流のアム川とシル川の流域では広大な緑地が広がっている。ここでの農業は重要な産業となっている。人々は昔から、そして今も、灌漑とともに厳しい自然の中を生き抜いている。』

カザフスタンが非常事態宣言 ロシアなどに部隊派遣要請

カザフスタンが非常事態宣言 ロシアなどに部隊派遣要請
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR05CUZ0V00C22A1000000/

『【モスクワ=桑本太】中央アジアのカザフスタンは5日、燃料高を受けた抗議デモの広がりに伴う非常事態宣言を全土に拡大した。インタファクス通信がカザフスタンの国営テレビの報道を引用して伝えた。トカエフ大統領は、ロシアが主導する旧ソ連諸国の集団安全保障条約機構(CSTO)の部隊派遣を要請した。

治安当局とデモ隊の衝突で、当局は200人以上を拘束した。ロシアメディアなどによると、警官ら8人が死亡、300人以上が負傷したという。

非常事態宣言の期間は19日までで、トカエフ大統領は先んじてアルマトイと西部マンギスタウ州、首都のヌルスルタンに非常事態宣言を出していた。年初に発生した抗議デモの動きが広がっており、デモ隊の一部は5日に同国最大都市のアルマトイの国際空港を占拠し、全便の運航が一時的にできなくなったという。

トカエフ氏は同日のテレビ演説で自身が安全保障会議の議長に就任し、これまで議長を務め2019年まで長期政権を敷いていたナザルバエフ前大統領を解任すると表明した。抗議デモは22年からの燃料高を契機に発生したが、デモ隊の一部はナザルバエフ氏を批判していた。デモが沈静化に向かうかどうかは不透明だ。

燃料として幅広く使われる液化石油ガス(LPG)の価格が年初から21年比で約2倍に引き上げられ、2日に西部で抗議デモが発生し、その後にアルマトイなどに広がった。

デモの沈静化と経済安定のため、カザフスタンはLPGに加えてガソリンなどにも一時的に統制価格を導入し、燃料価格を21年並みに抑制することを決めた。トカエフ氏はこのほか、生活必需品である食品の価格上昇を抑えるための規制の検討などを表明した。

CSTOの集団安全保障会議議長を務めるアルメニアのパシニャン首相はフェイスブックへの投稿で、CSTOの部隊をカザフスタンに一定期間派遣することを決めたと明らかにした。同国の「状況を安定させ正常化させるため」と説明している。

【関連記事】カザフスタン内閣総辞職 燃料上げでデモ、大統領宅占拠

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

旧ソ連の一員でありロシアと国境を接するカザフスタンの政変については、ウクライナ情勢などを巡り今週開催される米国とロシアの協議への間接的な影響も注目点になる。

英経済紙フィナンシャルタイムズは6日、モスクワのジャーナリストらが今回の政変に関し、西側との勢力画定をロシアが目指す協議を控える中で国外の勢力がカザフスタンの暴徒を扇動したと非難しているという。

仮にロシアの東側の国境が不安定化すれば、そちらも警戒する必要があり、ロシアは米国との妥協に傾くかもしれない。一方で、国境を巡る安保体制構築の重要性を再認識したロシアが西側への強硬姿勢を強める結果、妥協は難しくなるとも考えられる。動向を注視したい。

2022年1月6日 8:20

岩間陽子のアバター
岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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ひとこと解説

アルマトイの混乱が最もひどいようで、すでにロシアの空挺団が入っているという報道もあります。

ただ、ロシア側はこの件に関して公式には表明していないので、今のところはなんとか静かに処理したいのでしょうが、事態がその程度で収まるかどうかです。

カザフスタン国内ではインターネットや携帯が通じないところが多くなっているようで、正確な情報が伝わってきません。現地アメリカ大使館はアラート情報を出していますがhttps://kz.usembassy.gov/demonstration-alert-u-s-mission-kazakhstan-4/ 日本大使館の情報は年初より全く更新されていません。

場合によっては邦人退避などにつながる可能性もあり、外務省と現地大使館は、正確な情報の迅速な発信を心がけて頂きたいです。

2022年1月6日 18:46

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秋田浩之
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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別の視点

カザフスタンで起きている反政府デモを一歩引いてみると、「ソ連帝国」の解体プロセスがいまも続いていると言えるでしょう。

ソ連という連邦国家は20年前に崩壊しましたが、盟主のロシアは今も旧ソ連諸国を自分の裏庭とみなし、時には軍事的に脅してでも影響下に置こうとしています。

典型例がウクライナです。そのロシアが最も嫌うのが、西側的な民主化運動が広がること。

今回の抗議デモがどこまで過熱するのかわかりませんが、ロシアとっては気が気ではないはず。

同時に、近隣の中国もカザフの民衆デモが自国民にどのような影響を及ぼすか、心配でしょう。今夜のBSテレ東『日経ニュース プラス9』でも詳しく解説します

2022年1月6日 17:23 (2022年1月6日 17:38更新)

志田富雄のアバター
志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点

カザフスタンは有力な産油・産ガス国です。

現在、原油相場が高止まりしている理由のひとつに「一部の産油国の生産能力が低下し、OPECプラスが計画通りに生産を増やせない」ことがあり、政情不安がカザフフスタンの原油の生産・輸出に影響してくるようだと、市場が強材料ととらえる可能性があります。

2022年1月6日 11:32 (2022年1月6日 11:39更新) 』

第193回 細胞の分化を「巻き戻す」技術? iPS細胞の持つ可能性

第193回 細胞の分化を「巻き戻す」技術? iPS細胞の持つ可能性
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge/193

 ※ ips細胞、よく耳にするが、イマイチ「全体像」が分からんかった…。

 ※ いい資料に当たったんで、貼っておく…。

『 2012年10月、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞されることが決定しました。今月のテクの雑学では、山中教授が研究する「iPS細胞」について解説します。

生物はもともと一つの細胞だった

生物はもともと一つの細胞だった

植物や動物などの多細胞生物のからだは、多数の細胞からできています。たとえば、ヒトであれば体重1㎏あたり約1兆個、体重60㎏の成人であれば60兆個の細胞があります。細胞は、その種類によって特化した機能を持っており、つながりあって体内の組織や器官を形成しています。しかし、元をたどればこれらの細胞はたった一つの「受精卵」という1つの細胞が分裂したもので、分裂の過程でさまざまな機能を持つ細胞に分かれていきます。細胞が特定の機能を持つ細胞に変化することを「分化」といいます。

 生物の体内の細胞は、生物が生きている間は入れ替わっており、新しい細胞を供給する役割を持つのが「幹細胞」と呼ばれる細胞です。ヒトやマウスなど多くの生物では、からだの場所ごとにその場所の細胞を供給する幹細胞があります。幹細胞の種類により、作れる細胞には制限があります。たとえば、「造血幹細胞」であれば、リンパ球や赤血球、血小板、白血球などに分化することはできますが、皮膚細胞や心筋細胞などには分化できません。

幹細胞とは

 さて、すべての細胞の大元になっている受精卵には、すべての種類の細胞に分化できる可能性(全能性)を持っています。体内の幹細胞は受精卵と同じ遺伝子を持っていますから、遺伝子だけを見れば、どのような細胞に分化してもおかしくありません。しかし、実際には特定の細胞にしか分化できないのは、遺伝子に特定のたんぱく質が作用することが原因です。たんぱく質の働きによって、細胞の中で活発に働く遺伝子の組み合わせが変化して、特定の細胞にしか分化できなくなっているのです。

■ 立ちはだかった「命の重さ」

 それでは、受精卵が分裂し始めたばかりの頃の細胞であればどうでしょうか。受精卵が分裂を開始してから胎児になるまでの細胞の塊を「胚」といい、胚から取り出した幹細胞をES細胞(胚性幹細胞)といいます。1981年にマウスのES細胞が発見され、1998年にはヒトのES細胞も発見されました。

 ES細胞は、胎盤以外のすべての細胞に分化できることがわかり、受精卵のような「全能性」はありませんが、ほぼすべての細胞に分化できるということで、ES細胞は「万能細胞」と呼ばれるようになりました。万能細胞を使えば、体内のすべての器官を再生できるなど、医療に飛躍的な進歩があるのではないかと期待が膨らみました。

 しかし、ここで立ちはだかったのが「ヒトのES細胞はヒトの受精卵を壊して取り出す細胞である」という事実です。そのまま育てばヒトになる可能性があるものを壊すのは、ヒトをヒトの手で殺す研究であると考え、反対する人も大勢いました。宗教的にもカトリック教会がES細胞を宗教的に認めないと公式に声明を出すなど、大きな問題になったのです。

 また、ES細胞を使った移植・再生医療を考えるとき、想定されるもう一つの問題が、「拒絶」です。ヒトの体は自分とは違う遺伝子が体内に入ると拒絶反応を起こし、場合によっては命にかかわります。

 「それなら、受精卵や胚を使わずに、患者自身の体細胞をどのような細胞にでも分化できる状態に戻す『初期化』によって、万能幹細胞を作ればいい」というのが山中教授のアイデアでした。このアイデアは、マウスの体細胞とES細胞を電気的に融合させたときに初期化が起こったという実験結果からひらめいたものです。「ES細胞の中に細胞を初期化する何かがあるかもしれない」という思いつきから遺伝子を調べ、2006年に最終的に初期化必要4つの遺伝子を特定しました。

iPS細胞の作り方

 4つの遺伝子それぞれが、細胞の中でどのような働きをして初期化が発生するのか、その原理はまだ完全には解明されていません。しかし、ES細胞とは異なり、iPS細胞は「ヒトの胚を壊す」という生命倫理の問題を回避することができ、また移植や再生医療に応用する場合も患者自身の細胞を使うことで拒絶反応を抑えられます。また、作成の方法も、遺伝子の特定さえできてしまえば比較的簡単だったことで、一気に注目を集めることになったのです。

■ iPS細胞の応用が期待される分野

 マウスのiPS細胞の誕生から6年が経過し、現在はヒトの細胞からのiPS細胞作成、血小板や神経細胞などの細胞や、肝臓、膵臓などの特定の臓器を作る細胞、インスリン分泌器官など特定の機能を持つ体内の器官を作成することに成功するなど、大きな進展がありました。多くのベンチャー企業がiPS細胞から作成した体細胞を製品化しており、今後の成長産業として期待されています。

 では、iPS細胞はどのように役立つのでしょうか。分野としては、以下のようなものがあげられます。

○新薬の開発

 効果を調べたい薬剤をiPS細胞から作った細胞にかけることで、効果や副作用を正確に調べられます。2009年には、iPS細胞から作った心筋細胞に心臓に悪影響を与える薬剤をかけることで、不整脈と同様の波形が検出されることが確認されています。

iPS細胞から作成した心筋細胞を利用した薬剤の効果測定

 心臓への副作用は従来動物実験で検証することが難しかったため、ヒトへの臨床試験を行わなくては確認できませんでしたが、この手法を使えばもっと早い段階で、患者に負担をかけることなく調べることができます。新薬開発にかかるコストを抑えることができ、製薬会社が多くの新薬開発にチャレンジしやすくなることが期待できます。

○再生医療

 患者自身のiPS細胞から作成した器官や細胞を移植することで、失われた機能を回復する効果が期待できます。理化学研究所などにより、間もなく臨床実験が進められる予定で準備が進められているのが、年齢とともに網膜が変化して視力を失う「加齢黄斑変性症」の治療です。患者自身の皮膚細胞を初期化して作成したiPS細胞から分化させた「網膜色素上皮細胞」を網膜裏に移植し、効果と安全性を確認します。

 患者自身の細胞を使えば拒絶反応は抑えられますが、早急に移植治療が必要になるようなケースでは、必要になってから患者自身のiPS細胞を作成し、分化させていたのでは治療が間に合いません。山中教授自らが構想しているのが、「iPS細胞バンク」です。拒絶反応が起こるかどうかを決める「HLA型」という免疫の型のうち、拒絶反応を起こしにくいタイプの型を持つiPS細胞をあらかじめストックしておき、患者のHLA型に応じて適合したiPS細胞から目的の細胞を分化させることで素早く目的の細胞を入手できるようにします。HLA型は数万種類ありますが、そのうち150種類をそろえれば、日本人の9割はカバーできる見込みだということです。

○病態解明

 「細胞の初期化」は、いわば細胞の成長を巻き戻すことであり、初期化後の細胞が分化する過程を観察することで、病気がどのようなメカニズムで発病するのかを明らかにできます。どの遺伝子が作用しているのか、どのようなタンパク質が作用しているのかなどがわかれば、薬を作るヒントが得られます。

 2012年8月には、京都大学iPS細胞研究所で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者の細胞から作成したiPS細胞から分化させた運動ニューロン(脳から骨格筋に指令を伝える神経細胞)を用いて、細胞レベルでどのような異常が発生しているのかを明らかにしました。その結果、特定のタンパクを合成するRNAの代謝に作用する化合物が、異常の改善に役立つことがわかりました。

 ALSは運動ニューロンが変性することで全身が動かなくなり、やがて死にいたる難病です。しかし、この研究で治療薬を探す手がかりが得られました。

○遺伝子治療

 遺伝性の病気を持つ患者からとったiPS細胞をもとに細胞培養する時に、病気の原因となっている遺伝子を正常なものとおきかえる「遺伝子治療」が可能になると考えられています。2011年にマウスを使った動物実験では、先天性肝疾患を持った患者のiPS細胞から肝細胞に分化させる過程で、原因の遺伝子を正常な遺伝子に置き換えて同じ肝硬変の遺伝子を持ったマウスに移植したところ、肝硬変が治ったという成果が得られています。

 遺伝子治療による長期的な影響などについてはまだ未知であり、ヒトの臨床応用にはまだ明らかにすべき課題がたくさんありますが、従来は治療が難しかった遺伝的疾患の根本的な治療につながる可能性があります。

遺伝子治療(マウスによる治療)

 さまざまな可能性があるiPS細胞ですが、臨床治療手法を確立するためには、iPS細胞そのものを効率よく作るための技術や、目的の組織に分化させるための技術、培養した組織をヒトに移植したときの影響の解明など、まだまだ課題はたくさんあります。ノーベル賞受賞の記者会見で山中教授は、「この研究ではまだ、たった一人の患者さんも救っていない」と語りました。多くの研究者や企業が有望な技術として研究に取り組むことで、これから多くの人を救える技術になるのです。

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■ 医療機器用デジタル制御電源

医療機器用デジタル制御電源

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著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)

1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)』

「Z世代」を定義したのは誰か 世代とITの深い関係

「Z世代」を定義したのは誰か 世代とITの深い関係
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC274GS0X21C21A2000000/

『「Z世代に人気の商品」「Z世代で大流行」など、Z世代を売り文句にした広告や記事をよく目にする。筆者は一般にはZ世代に分類されるが、自覚もなければ、Z世代の定義もよく分からない。

最近ではZ世代の次の「α(アルファ)世代」も誕生しているというし、このままでは世代の進化に置いていかれてしまう。早速、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏に取材を申し込み、世代について解説してもらった。

――本日は「世代」について詳しく教えてください。

「はい、よろしくお願いします。何でも聞いてください」

牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)氏
1968年東京生まれ。91年日本大学芸術学部・映画学科(脚本)卒。大手出版社に勤務したのち、2001年にマーケティングを中心に行うインフィニティ(東京・豊島)を設立、同代表取締役。19年立教大学大学院で経営学修士号(MBA)取得。世代・トレンド評論家のほか、マーケティングライター、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授などマルチな肩書を持ち、官公庁の審議会などの委員も多数務める。著書やテレビ出演を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの言葉を世に広めた。

――まず知りたいのは世代の区切りです。世代にはバブル、団塊ジュニア、ミレニアル、ゆとり、Z世代などありますが、世代の明確な区切りはあるのでしょうか?

「私が代表を務めるインフィニティでは、多くを5年区切りで世代分けしています。有名なのは、団塊、バブル、団塊ジュニア世代ですが、シンクタンクなどによるもっと数多くの世代区分が存在します」

「団塊ジュニアまでは、ある程度共通認識があるのですが、それ以降は調査会社などによって見解にずれが見られます。弊社は40代後半以降を団塊ジュニア、ロスジェネ、草食系、ゆとり、Z世代の順番に区切っています」

主な世代区分

「最近の脳科学などの研究からも、人間の価値観は17~23歳の頃の時代や経験から影響を受けやすいとされています。各世代が17~23歳だったときのはやりや流行語を見てみましょう」

「例えば、真性バブル世代が17~23歳だった1986~90年には『3高』『アッシー・メッシー』『ワンレンボディコン』などが流行しました。ゆとり世代なら2013~19年に『一億総活躍』『ブラック企業』『インスタ映え』などがはやりましたね。これだけでも青春時代をどのような時代背景の中で過ごしたかがよく分かります」

「海外では、ロスジェネと団塊ジュニア世代がジェネレーションX、草食系とゆとり世代ぐらいがミレニアル世代、あるいはジェネレーションYと呼ばれています」

世代とIT普及の関係

――年齢を区切るきっかけは何でしょうか? 例えば、ゆとり世代は1988~94年生まれ、Z世代は1995~2004年生まれですね。

「価値観の変化ですね。世代論は、各世代の何が価値観に関係しているかを調査します。今までは、景気・経済や社会現象による影響が大きいと思われていましたが、最近の研究では人生のどの段階でデジタル技術に触れたかが価値観に大きく影響することが分かってきました」

「デジタル技術への接触時期や頻度は、コミュニケーションや情報収集の仕方、感性などに影響を及ぼします。そのため、世代を語る上でIT(情報技術)の普及度合いが重要な役割を果たすのです」

――世代の分け目に関係するということですか?

「その通りです」

――牛窪さんの定義では、Z世代は1995~2004年生まれです。95年に何かあったのでしょうか?

「95年は、阪神大震災や地下鉄サリン事件など大きな事件が相次いだ年ですが、それより、その後のデジタル化ですね。98年には子ども向け携帯電話や米マイクロソフトの基本ソフト(OS)『ウィンドウズ98』が家庭に普及し始めました。2000年がITバブルといわれ、ITが職場だけではなく、家庭にも浸透したのです」

「これにより、1995~2004年に生まれた人たちは、物心ついたころにはITが身近になりつつありました。例えば、親や先生など周りの人と電話ではなく、主にメールでやりとりするなどの変化が挙げられます」

――ITが進化するスピードを考えると、今後はもっと短いスパンで新しい世代が出てくる可能性がありそうですね。

「そうですね。価値観や考え方が変化するスピードは明らかに加速しています。以前は、世代を細かく区切りすぎても分かりづらくなるので、5~7年区切りで考えていました。しかし、今ではむしろ細かく見なければ分析できなくなってしまうほどです」

「バブル世代とZ世代が異なるのは当然ですが、ゆとり世代とZ世代でもはるかに違うほど価値観が多様化しています。その背景には、SNS(交流サイト)や動画配信サイトの影響が相当あるでしょう」

誰が世代を定義しているのか

――世代は価値観の違いによって区切られ、その背景にはITの普及があることは分かりました。では、一体誰が、何のために世代を定義しているのでしょうか。

「見方は2つあります。まずは、マーケティングに携わる人たちがターゲティングのために定義している場合。企業が商品開発をするとき、どのような人をターゲットにするのか明確にしないといけません」

「このとき、世代ごとにある程度特徴が定義されていれば、ターゲットをはっきりと説明しやすいですよね。商品開発や広告、プロモーションのために世代をマーケターが明確にせねばという使命感があります」

「次に、ジェネレーションギャップ(世代間格差)を研究する学者が定義している場合です。中国に比べると欧米では、指摘されていたのはミレニアル世代くらいで、従来『世代』はそれほど意識されてこなかったと聞いています」

「しかし、携帯電話やインターネットの普及により、コミュニケーションの取り方が変わり、コミュニティーのつくり方も変化しました。これにより、企業内や家庭内で世代を超えたコミュニケーションがうまく取れなくなり、ジェネレーションギャップから違いを読み解いて、ギャップを解消しなければという意識が高まったのでしょう」

「相互理解のために、各世代の特徴やコミュニケーション方法などを読み解いて定義し、研究する学者が増えてきたのです」

――ステレオタイプがつくり出されるのではないかと、少し抵抗を感じます。

「世代を定義するメリットは2つあります。まず、歴史認識がしやすくなります。時代は、過去の出来事に基づいて成り立っていますよね。若い世代は、『過去にこういうことがあったから、今の自分たちがあるのか。だから上の世代は自分たちに対してこのように思うのか』と、納得することができます。世代の定義を含めて相手を見ると『あぁ、あの世代ね』と理解しやすいですよね」

――確かに。バブル世代は「24時間戦えますか」が流行語になった時代を経ているから、今の若い世代が仕事よりプライベートを優先したがることを理解し難く感じる人もいるのだろうと、納得はしやすいです。世代ごとの時代背景を理解しやすいのは大切なメリットですね。2つ目のメリットは何でしょうか?

「年月がたつと『あの世代はこうだったよね』と共通の文化や時代の話ができます。『私は違ったけどね』でもいいので、共通の認識で過去を振り返ることができるのはメリットの1つです」

「世代を定義することは、ステレオタイプの視点をつくってしまう一面もありますが、企業や家庭で歴史認識の共有や同世代の共感を得られるのは、対話上の大きなメリットだと思います」

(日経ビジネス 藤原明穂)

[日経ビジネス電子版 2021年12月27日の記事を再構成]』

Ruchir Sharma

Ruchir Sharma
https://en.wikipedia.org/wiki/Ruchir_Sharma

『(※ 翻訳は、Google翻訳)

Ruchir Sharmaは、インドの投資家兼ファンドマネージャーであり、世界の経済と政治について幅広く執筆しています。世界中の新聞や雑誌の長年のコラムニストであるシャルマは、成功した国の10のルール(WWノートン&カンパニー、2020年3月)、国の興亡:危機後の世界における変化の力(ノートン)の著者です。 / Allen Lane、2016年6月)およびBreakout Nations(Norton / Allen Lane、2012年4月)。

ルチルシャルマ
RuchirSharma.jpg
生まれ
ウェリントン、 タミルナードゥ州、インド
母校
デリー公立学校、RKプラム、シュリラム商工大学
職業
投資家、ファンドマネージャー
雇用者
モルガンスタンレー[1]

で知られている
ブレイクアウトネーションズ:次の経済的奇跡を追求して
Webサイト
www .ruchirsharma .com

シャルマは、モルガンスタンレーインベストメントマネジメントの新興市場投資家です 』

『キャリア編集

シャルマはインタビュアーに、幼少期をムンバイ、デリー、シンガポールで過ごしたと語った。

彼はニューデリーのシュリラム商科大学で学部課程を修了し、その後証券商社に加わり、1991年にFor Exというコラムを立ち上げました。

最初はオブザーバー、後にはインドのエコノミックタイムズでした。

彼の著作は、1996年にムンバイオフィスに彼を雇ったモルガンスタンレーの注目を集めました。2002年に彼はニューヨークオフィスに移り、現在も彼の拠点となっています。[2]
2003年、彼はモルガンスタンレーインベストメントマネジメントの新興市場チームの共同責任者になりました。 2006年に彼はチームの責任者になりました。[3]2016年、彼はMSIMのチーフグローバルストラテジストとして追加の役割を果たしました。2021年11月、彼は2022年1月31日に会社を辞めると発表された。[4]

『 経済および金融市場の見解
賞編集

2012年、SharmaはForeignPolicy誌で世界のトップ思想家の1人に選ばれました。[29]
2013年6月、OutlookはSharmaを世界で最も賢いインド人25人の1人に指名しました。[30]
Breakout Nationsは、インドでNo.1のベストセラーとしてデビューし、Sharma the TataLiteratureLiveを獲得しました。2012年の最初の本賞。[31]
ブレイクアウトネイションズはウォールストリートジャーナルのハードカバービジネスのベストセラーリストを作成し、外交政策によって「2012年に読むべき21冊の本」の1つに選ばれました。[32]

2015年、シャルマはブルームバーグマーケッツから、世界で最も影響力のある50人の1人に選ばれました。[33]

2016年、「The Rise and Fall of Nations」は、ニューヨークタイムズのベストセラーリストに2週間掲載されました。

私生活編集

常に旅行者が家にいると感じる場所を尋ねられたシャルマは、インタビュアーに「私は世界中から来ましたが、インドは家にいます」と語っています。インド南部のタミルナードゥ州のニルギリス地区にあるウェリントンで生まれた[34]シャルマは、デリー、ボンベイ、シンガポールで教育を受け、ニューヨークに20年近く住んでいます。

シャルマはインタビュアーに彼の情熱は政治、映画、そして全力疾走であると語った。[35] 1998年以来、彼はインドの総選挙と主要な州議会選挙に続いて、バックグラウンドでトップのインドの政治家にインタビューした後、ロードトリップで約20人のトップインドのジャーナリストのグループを率いてきました。[36]

シャルマは、旅行中かどうかにかかわらず、週に6日スプリンターとしてトレーニングしようとしていると言います。2011年、彼はカリフォルニア州サクラメントで開催された35歳以上のアスリートのための国際大会であるワールドマスターズでインドを代表する100メートルと4 x100のリレーイベントに出場しました。彼は独身でニューヨーク市に住んでいます。 。[2] [37]

書かれた本編集

ブレイクアウトネーションズ(2012)
国家の興亡:危機後の世界における変化の力(2016年)
道路上の民主主義(2019)
成功する国の10のルール(2020)』

[FT]2022年の経済トレンド10 人口減からデジタルまで

[FT]2022年の経済トレンド10 人口減からデジタルまで
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB042G50U2A100C2000000/

『2年に及ぶ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は世界を大きく変化させた。全てを変えたわけではないが、人口減少からデジタル革命まで、多くの変化を加速させた。2022年を特徴付ける可能性がある潮流として以下の10のポイントに注目したい。
パンデミック前、中国経済は世界のGDP成長率の3分の1を占めていたが、2021年には4分の1に落ち込んだ。中国が成長エンジンとしてのピークを迎えたという見方も出ている=ロイター

筆者のルチル・シャルマ氏は、米モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジストで、「The 10 Rules of Successful Nations(成功する国の10の法則)」(邦訳未刊)の著者。

少子化の加速:カップルには十分な機会があったが、閉鎖された世界に子どもを迎え入れる気にはならなかったようだ。世界的な出生率の低下は、世界経済の成長を鈍化させてきたが、パンデミック下で一段と加速した。なかでも中国が顕著だった。長期的にみれば、少子化の加速は世界の労働力人口をさらに縮小させることになる。生産年齢人口が減少している国の数は00年の17カ国からすでに51カ国に増加している。

ピークを過ぎる中国:少子化、債務の増加、政府の干渉が中国経済の足を引っ張り、全世界の国内総生産(GDP)の成長に占める中国の割合は、パンデミック前の3分の1から、21年には4分の1に低下した。中国は貿易から自給自足体制に急転換を進めるなかで、他国との経済的な結びつきを弱めている。5年前には中国と他の新興国とのGDP成長率は強く連動していたが、現在では相関関係が弱まっている。中国は世界の成長エンジンとして絶頂期を過ぎたのかもしれない。

債務の罠(わな):全世界の債務総額は過去40年増え続けてきたが、パンデミックの間に政府が借り入れを増やしたことで、急速に膨張した。GDPの3倍を超える債務を抱える国は1990年代半ばにはゼロだったが、今では米国や中国など25カ国に上る。中央銀行が刷った通貨は金融資産の価値を膨らませ、債務の罠を深刻化させ続ける。社会が債務に依存すると、倒産や波及効果への恐れから債務の縮小に踏み切ることが難しくなることは明らかだ。

70年代とは異なる:労働力人口の減少、財政支出の拡大、国債残高の増加はどれもインフレ率の上昇につながる。とはいえ、一部の専門家が危惧するような1970年代並みの2桁インフレにはおそらくならないだろう。22年は財政出動が落ち着き、技術革新が価格の上昇を抑制し続けるだろう。より大きなリスクをはらんでいるのは資産価格だ。金融市場の規模は世界の実体経済の4倍に膨れ上がっており、資産価格が急落した場合、その後デフレに陥ることが多い。

グリーンフレーション:地球温暖化対策が銅やアルミなど、脱炭素化に必要な「グリーンメタル」の需要を押し上げていることはよく知られている。その一方で、脱炭素政策があらゆる燃料や原材料の供給を減少させていることはあまり知られていない。炭鉱や油田への投資額はここ5年で大幅に減っている。その結果、コモディティー(商品)価格に「グリーンフレーション」が起こり、1973年以来で最高の年間インフレ率を記録した。

生産性のパラドックス:パンデミック期にデジタルサービスの導入が進み、世界の生産性が長年の低迷を脱するという期待は裏切られた。20年にみられた生産性の改善は米国に限られ、その勢いも21年末には衰えた。これまでの統計を読み解くと、在宅勤務の社員は(出社した社員に比べて)作業時間が長く、成果は小さいという傾向がみられる。技術革新の加速にもかかわらず生産性が向上しないというパラドックス(逆説)に変わりはないだろう。

データのローカル化:新型コロナは世界を内向きに変え、ヒト・モノ・カネを含むあらゆる往来を減らしたが、データだけは例外だ。22年のインターネットのデータ流通量は16年までの総量を上回る可能性が高い。ただ、逆の動きも見逃せない。インターネットは政府の統制に妨げられることなく発展するという期待に反して、当局がデータの越境を制限し始めている。最も厳格な規制の発信地は、中国、サウジアラビア、インドなどの新興諸国だ。

しぼむ「特定資産のバブル」:昨今はあらゆる資産の価値が高騰する「エブリシングバブル」の時代だと言われるが、一部の資産では、12カ月で価格が倍増したり取引が過熱したりといった典型的なバブルの兆候がみられる。こうした「特定資産バブル」の影響は暗号資産(仮想通貨)、クリーンエネルギー、黒字化していないIT(情報技術)企業、特別買収目的会社(SPAC)で顕著だ。いずれもこの1年で価値がピークから35%以上減少した。過去の経験則から、これを超えるとバブルの復活は望み薄とされる減少幅だ。明るい兆しがあるとすれば、こうしたITバブルとその崩壊を生き延びた企業の中から一握りの大企業が生まれる可能性があることだ。

冷める個人投資家熱:13年続いた世界的な上げ相場に個人投資家が殺到している。遅れてきた個人が押しかけるのはしばしば宴が終わる合図となる。米国や欧州では数百万人が初めて証券口座を開設し、多くが借金をして猛烈なペースで株式を買い漁った。この熱狂はまず続かない。株式市場全体がリスクにさらされているわけではないにしろ、個人投資家にもてはやされた銘柄はリスクが高いと考えるべきだ。

有形物の重要性:仮想空間「メタバース」が派手に宣伝され、物理的なモノの経済が衰退しそうな予感がある。しかし、現実の価格動向をみれば、そうではない。デジタルネーティブ世代も実際に住む場所は必要だ。21年は(20〜30代の)ミレニアル世代やZ世代の需要で住宅価格が上昇した。未来の技術も物理的な資源を不要にするわけではない。電気自動車(EV)にはガソリン車よりはるかに多くの銅が使われている。仮想空間上のアバター(分身)の裏には人間がいる。労働力不足は、自動化の脅威にさらされるトラック運転手のような職業の賃金すら押し上げている。形ある資産に鎮魂歌を捧げるのは時期尚早だ。

By Ruchir Sharma

(2022年1月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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米教育現場に新たな火種 「批判的人種理論」で亀裂

米教育現場に新たな火種 「批判的人種理論」で亀裂
アメリカン・デモクラシー①癒えぬ分断
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN193XS0Z11C21A2000000/

『米国の連邦議会占拠事件から1年が過ぎた。事件後に米国の民主主義(アメリカン・デモクラシー)はどうなったのか。

「教室から政治を排除し、学問に立ち返るべきだ」。首都ワシントンの西50キロメートルほどのバージニア州ラウドン郡。大学生と高校生の子供を育てる母親シェリル・オンダーチェインさん(53)は郡の教育方針を「批判的人種理論」が盛り込まれていると批判する。

批判的人種理論とは人種差別の根源は社会のしくみや制度に組み込まれているとの考え方。民主党支持者に多いリベラル層が支持し、共和党支持者に目立つ保守層は白人に罪悪感を抱かせ、分断をあおると攻撃する。オンダーチェインさんはもともと熱心な共和党支持者だったわけではないが同理論に批判的だ。

こうした批判に抵抗感を抱く親たちは対抗するグループをつくった。中高生の母親アマンダ・バビットさん(44)は「人種差別を残そうとする勢力だ」と断じる。

米国では1950年代に高まった公民権運動の際にも教育問題に焦点が当たった。54年に最高裁が下したブラウン判決は制度化されていた「白人校」「黒人校」の差別を違憲とし、黒人校の劣悪な条件は教育格差を生んでいると断じた。

それから68年。批判的人種理論を契機に米国になお残る人種意識が教育現場でも浮かんできた。理論への姿勢が政治の火種にもなる雲行きだ。

「皆さんは子供たちのために立ち上がり全米の注目を集めた。ここはグラウンド・ゼロ(爆心地)だ」。2021年11月13日、ラウドン郡の駐車場で数百人の支持者に語りかける男がいた。州知事選に当選したばかりの共和党候補、グレン・ヤンキン氏(55)だ。

知事選でヤンキン氏は教育など身近な政策を訴える戦術をとった。それが政治に関心が薄かった層に響き、最近は民主党が優勢だったバージニア州での勝利につなげた。批判的人種理論に違和感を持つ白人中間層を取り込んだとみられる。

民主党のバイデン政権は「歴史の良い面だけでなく困難も学ぶべきだ」(サキ大統領報道官)との立場だが、共和党支持者に多い保守層は「白人の子供に罪悪感を抱かせかねない」と反発する。

批判的人種理論を学校で教えることを禁止や制限する州が相次ぐ。米ブルッキングス研究所によると21年11月下旬までに全米50州のうちテキサスなど9州で法案が可決。フロリダなど4州が禁止する指針をつくった。

批判的人種理論を巡ってはトランプ前大統領が20年9月、政府職員に反米的な研修を受けさせるのを禁じる大統領令を出し、バイデン大統領が撤回した。トランプ氏は「バイデン政権は最も有害で反米的な理論を子供に教え込もうとしている」と非難する。11月の連邦議会中間選挙の争点に浮上する可能性がある。

「USA、USA……」。21年10月、アイオワ州デモインの集会にトランプ氏が登場すると会場は熱気に包まれた。「米国を再び偉大な国にしなければならない」。数千人の支持者に「Make America Great Again」と繰り返し、続けた。「それは上下両院を取り戻す22年11月に始まる」

中間選挙で共和党が過半数を奪還し、24年の大統領選に弾みをつける――。自身の出馬を視野に中間選挙で自らの息のかかった候補を送り込もうとするトランプ氏の戦略が浮かび上がる。

米ピュー・リサーチ・センターの21年9月の調査によると、共和党支持層の67%がトランプ氏が今後も大きな政治的役割を果たすことを望む。21年1月6日の連邦議会占拠事件直後の調査の57%から10ポイント上昇した。共和党指導部にはトランプ氏との対立を避けようとする空気が広がる。

トランプ氏が復権すれば米国民の対立や分断をさらにあおる恐れがある。戦後米国の自由と平等の礎だった教育が分断の新たな舞台になれば、米国の亀裂はさらに深まりかねない。(ワシントン=坂口幸裕、芦塚智子)

▼批判的人種理論 法律や制度など米国社会に人種差別を生む要因が組み込まれているとの考え方。1970~80年代に議論された概念で、米ハーバード大法科大学院の故デリック・ベル教授が提唱者の一人とされる。

2020年にミネソタ州で黒人男性が白人警官の暴行で死亡した事件を受け「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動が拡大し、同理論が再び脚光を浴びる契機になった。

【関連記事】米議会占拠1年、癒えぬ分断の傷痕 揺らぐ民主主義

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

米国では居住地域によって義務教育の質が異なっておりアフリカ系アメリカ人等の子供などがなかなか社会的に上昇していくのが難しい問題がある。

このためESG経営への意識が高まる大企業の間ではそうしたマイノリティや障害を持つ方などへのデジタルデバイドを減らす行動が増えている。

私自身も米国に住んでいるときに差別的発言を何度か受けたことがある。批判的人種理論は米国社会に内在する差別を見直す機会ともなるが、クオータ制度の導入などもあって一部の白人に罪悪感の意識を高めた面もあったかもしれない。

ただ多人種国家が共存していくためには機会の均等を目指し既存の仕組みに改善の余地がないか不断の見直しは必要ではないか。

2022年1月6日 7:47 (2022年1月6日 7:51更新)

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

取り上げられた「批判的人種論(クリティカル・レース・セオリー)」、略称「CRT」は、教育の現場を通じて米国社会の分断を一層深刻化させる恐れのある、重い問題である。
CRTを禁止・制限する州として例示されたテキサスやフロリダは、共和党支持が強い州である。

子どもの頃に教え込まれたことが成人してからの考え方や行動様式を規定する部分は少なくないように思う。

たとえば、西側流の民主主義は歴史に根差した崇高なものだというような教育を、中国の若者は一切受けていない。

そうした草の根の状況があるがゆえに、たとえ経済面でリンクが強くなっても、政治面で中国の民主化が進む可能性は小さい。米国の分断は、深まる公算が大きい。

2022年1月6日 7:51

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竹内薫
サイエンスライター
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貴重な体験談

前にも書いたかと思いますが、幼少時、ニューヨークのクイーンズに住んでいました。中間所得層が住むマンションでしたが、アフリカ系アメリカ人は半地下にしか入居できず、マンションのプールも利用不可でした。1970年頃ですが、明らかに、社会制度による差別が残っていました。

その後、徐々に状況は改善されてきましたが、特に警官などがあからさまな差別をする事件が後を絶ちません。

ただ、残念なことに、家庭で差別意識を醸成してしまえば、教育現場でできることは限られます。アメリカは、州によって教育のあり方も違い、差別をなくす教育を全体で行うのは難しいですね。

2022年1月6日 13:01

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ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング 社長
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分析・考察

批判的人種理論(CRT)はアメリカの政治で話題になっていますので、日経の読者の皆さんにはぜひ知っていただきたい概念です。

しかし、この記事の説明だけでは、十分理解することが難しいかもしれません。

ぜひ皆さんに知って頂きたいのは、CRT自体は学校では教えられていないということです。学問的な分野で、学術界で研究されたり討論されたりはしています。その言葉が恐ろしい響きを持つせいで、人種差別の存在について疑問を持つ保護者を引き寄せるため、そして分断を推進する武器として、共和党によって利用されています。

CRTに関してもっと知りたい方には、こちらの日本語記事をお勧めします。https://yojo-soul.com/critical-race-theory-what-it-is-and-the-background/
この英語記事もお勧めします
https://www.npr.org/2021/06/20/1008449181/understanding-the-republican-opposition-to-critical-race-theory

2022年1月6日 12:07 (2022年1月6日 12:09更新)

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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分析・考察

半世紀も前に唱えられた「批判的人種理論」が脚光を浴びた契機はBLT運動ですが、反発した保守派の政治家やメディアが同理論は白人差別、学校で教えるなといった批判を集中させたことで社会に広まった面もあります。

民主党やリベラル系メディアは保守派の言いがかり、同理論を学校で教える州はないと反論していますが、今は保守派の有権者の危機感を煽って結束を促す効果に分があり、無党派層の白人の一部にも浸透しつつある模様です。

とはいえ、過去の米国はこの種の論争を乗り越え続けてきました。今、分断が深刻化してしまっているのは、分断の理由の存在よりも分断を乗り越えて結束を促す要素や訴えを欠いているからでしょう。

2022年1月6日 11:09 』

リトアニア大統領、「台湾」名称使用は過ちと表明

リトアニア大統領、「台湾」名称使用は過ちと表明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB059BE0V00C22A1000000/

『バルト3国のひとつであるリトアニアのナウセーダ大統領は4日、同国に台湾の代表機関の開設を認めたことをめぐり、「台湾」という名称を使ったのは「過ちだった」と表明した。代表機関の設置自体は正しいとの認識を示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。

リトアニアは台湾との関係を強化しており、台湾の事実上の大使館となる代表機関を2021年11月に開設した。名称も欧州に置く代表機関で初めて「台北」ではなく「台湾」の表記の採用を認めた。中国はこれに猛反発し、リトアニアとの外交関係を格下げするなど、中国とリトアニアの関係は冷え込んでいる。

台湾外交部(外務省)の欧江安報道官は1月4日、リトアニア大統領の発言を受け、「中国が卑劣な手段でリトアニアに対し、圧力をかけている」と非難した。そのうえで「勇敢で毅然としたリトアニアが外部圧力に屈することがないように」と、国際社会にもリトアニアへの支持を呼び掛けた。

中国外務省の汪文斌副報道局長は5日の記者会見で、リトアニア大統領の発言について「間違いを認識したのは正しい一歩だ。だが、さらに重要なのは一つの中国に一つの台湾という誤った状況をただす行動をとることだ」と強調した。(佐堀万梨映)』

北朝鮮「極超音速ミサイルを試射」 朝鮮中央通信

北朝鮮「極超音速ミサイルを試射」 朝鮮中央通信
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM05CEG0V00C22A1000000/

『【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の朝鮮中央通信は6日、兵器の開発機関である国防科学院が音速の5倍以上の速さで飛ぶ「極超音速ミサイル」の発射実験を5日に実施したと報じた。「700キロメートル先の標的に誤差なく命中した」と主張した。極超音速型のミサイル発射実験は2021年9月に「火星8」を撃って以来2回目となる。

朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が掲載した写真には、ミサイルが移動式発射台から発射される様子が写っている。同通信はミサイルは発射後に分離され、弾頭部が「初期の発射方位角から目標方位角へ120キロメートル側面機動した」と伝えた。

ミサイルの「多段階滑空跳躍飛行」と弾頭部の安定的なコントロールを確認し、冬の気候条件下での燃料系統の信頼性を検証したとも報じた。発射には党の軍需工業部と国防科学院の幹部が立ち会った。金正恩(キム・ジョンウン)総書記を指すとみられる「党中央」は「試験発射の結果に大きな満足を示した」という。

韓国軍によると北朝鮮は5日午前8時10分ごろ、ミサイル1発を内陸部の慈江道(チャガンド)から日本海に向けて発射した。日本の防衛省は、通常の軌道であれば約500キロメートル飛行したと分析していた。

岸信夫防衛相は6日、北朝鮮が5日発射したミサイルが「発射されたことのない新型の弾道ミサイル」だったとの見方を示した。最高高度50キロメートル程度の低い軌道を飛んだとの分析結果を説明した。国連安全保障理事会決議に違反するとして非難した。防衛省で記者団に語った。』