[FT]米国、中台統一望まず 「一つの中国」政策なお曖昧

[FT]米国、中台統一望まず 「一つの中国」政策なお曖昧
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『1950年6月、米軍のアジア太平洋地域司令官のマッカーサー元帥は、最高機密の覚書で、中国が台湾を支配することがないように当時のトルーマン米大統領に強く求めた。

米中両国は、台湾周辺での軍事活動を活発化させている=ロイター

台湾島は中国大陸沖にある諸島の中心に位置し、紛争が起きた場合の戦略的価値は大きい。マッカーサーは当時フォルモサとして名が通っていたこの島は「不沈空母」に匹敵すると指摘した。

「フォルモサが(米国が敵対する)大国に支配される事態を許したら、米国の戦略的利益は深刻な危機に直面する」と警鐘を鳴らした。

マッカーサー発言、今なお影響

それから約70年、マッカーサーの言葉は残響音がこだまするように、米中関係になお影響を及ぼしている。

ラトナー米国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は2021年12月初旬、米議会上院で開かれた公聴会で、台湾は「地域の安全保障にとっても、米国の重要な利益を守るためにも不可欠だ」と語った。

さらに、台湾の位置について「(編集注、沖縄から台湾、フィリピンまでを結ぶ、中国の軍事ラインである)『第1列島線』の中心にあり、米国の同盟国と友好国のネットワークを結ぶ、船のいかりのような役割を果たしている」とマッカーサーと似た表現で強調した。

この発言は、米政府が台湾に対する態度を明らかにした瞬間として歴史に記憶されるかもしれない。少なくとも中国では、この発言は米国が中国による台湾の統一を黙認するふりをし続けることはやめた証拠だと受け止められている。

中国の復旦大学米国研究センターの呉心伯所長は、米国の台湾問題に関する戦略的思考はこれまでもずっと、マッカーサーが定めた路線に従っていたとみている。

米国は中国との国交樹立後も「中国と台湾の分断が続くように腐心していた」と呉氏は指摘する。さらに、「米国は、中台統一を望んでいないのか、と我々が問いかけると否定する。だが、米国の実際の行動から判断すると、統一を望んでいないのは明らかだ。ラトナー氏はこれを明確に口に出したにすぎない」と言う。

米国でも、この証言からは、いかなる状況でも米国は台湾が中国の一部になる事態を許すべきではないとしか読み取れないとの指摘がある。

台湾併合なら日本、フィリピンにも甚大な影響

一連の発言が米国が台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策から脱却することを意味しているかどうかは定かではない。この政策は当初から曖昧だった。

米政府は1979年に台湾と断交して中国と国交を樹立した際、「台湾は中国の不可分の領土」とする中国政府の立場を「認めた」。その一方で、第2次世界大戦で敗れた日本が、統治していた台湾を放棄して以降、米国は台湾の主権帰属は「未定」だとし続けてきた。

米政府はその後30年にわたり、台湾が中国政府の支配下に入らないようにするよりも、中国に関与し続けることを優先してきた。中国経済が開放されれば、中国は西側の民主主義国が築いた政治的価値観や国際基準を受け入れるようになると期待していたからだった。
だが、このシナリオを実現する自信が崩れ、米国は台湾政策の目標を、台湾を中国に統一させないことへと再び転換した。中国が急ピッチで軍備の増強を進め、米同盟国を含む近隣国への強硬姿勢を強めていることが大きな要因になった。

米戦略国際問題研究所(CSIS)で「チャイナ・パワー・プロジェクト」を統括するボニー・リン氏は「(編集注、米中関係が緊迫した)90年代半ばの台湾海峡危機で、中国空軍は台湾海峡の中間線を越境するのもやっとだった。しかし、人民解放軍の戦力はこの20年間で大幅に増強された」と指摘する。

同氏はさらに、「中国がいま台湾を併合すれば、勢力をさらに拡張できるようになり、日本やフィリピンなど米同盟国の安全保障にも甚大な影響が及ぶ」と語った。

住民の過半数がずっと中国との統一を拒んできた台湾にとって、米政府の論調の変化はここ数年で台湾に対する西側の民主主義国からの支援がさらに拡大してきたことを反映している。

台湾の事実上の在米大使館の役割を果たしているワシントンの台北駐米経済文化代表処の元政治部長、ビンセント・チャオ氏は「ラトナー氏の発言が過去からの脱却なのか、と問われた場合、5~10年前の状況と比較したらイエスだ。だが、最近の状況と比べるとさほど変わらない」と語った。

さらに、「台湾が直面している脅威は広く認識されるようになっており、地域各国でも台湾と中国に対する態度が変化している」とチャオ氏は続けた。

米中、台湾周辺の軍事活動を活発化

米国の台湾の安全保障への明確な関与を支持する声は、ラトナー氏の発言には、台湾に対する世界の見方が変わったことを映し、また中国をより効果的に抑止する狙いがある、とみている。

実際、こうした抑止がうまくいくかどうかは不透明だ。米中両国は軍事演習や台湾周辺に接近しないよう警告し合うなど、周辺での軍事活動を活発化させている。呉氏をはじめとする中国の観測筋は、ラトナー氏が米中関係の新たな火種をまいたと捉えている。

今後の針路を決める際、米中両政府には、重大な責任がのしかかる。

By Kathrin Hille

(2021年12月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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