対中抑止へ次世代迎撃技術 防衛省がレールガン開発計画

対中抑止へ次世代迎撃技術 防衛省がレールガン開発計画
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA131H30T11C21A2000000/

『防衛省はミサイル防衛の立て直しに乗り出す。電磁力で砲弾を発射してミサイルを迎撃する技術を中核に据える。中国などが研究を進める変則軌道で飛ぶ極超音速兵器を打ち落とせるようにする。相手の発射基地まで届く長射程ミサイルなどの開発とあわせ、2030年までに体制を刷新する。

レールガンと呼ぶ技術を20年代後半に実用化する計画だ。リニアモーターカーのように電磁力を使って弾を発射する。実用に近い試作機をつくる費用として22年度予算案に65億円を計上した。

火薬の燃焼を利用するミサイルより高速なうえ、理論上はもっと低いコストで連射もできる。一般的なミサイルの初速は秒速1700メートル程度だが研究段階で同2300メートル近くを達成した。

念頭にあるのは音速の5倍超で軌道を変える極超音速兵器だ。従来の弾道ミサイルが放物線を描いて飛び、経路が予測しやすいのと比べて迎撃が難しい。中ロや北朝鮮が開発で先行する。

既存のミサイルも同時に複数が飛来すると守るのが困難だ。防衛省はミサイルでミサイルを撃ち落とす現在の体制は限界があると判断した。

①現行システムの強化②レールガン③離れた位置から反撃できる長射程ミサイル――の3段階で防ぐ体制にする。相手のミサイルを探知する能力を上げるため小型衛星網の整備も検討する。

長射程ミサイルは攻撃を受けた際に相手拠点をたたく「敵基地攻撃能力」として保有を検討する。迎撃用ではなく相手に攻撃を思いとどまらせる目的だ。いずれも22年末につくる国家安全保障戦略などに記す案がある。

いまはミサイルをミサイルで陸海から撃ち落とす体制をとる。発射まで時間がかかり1発の単価が高い。短時間で迎撃弾を連射して撃墜の確率を上げる装備が必要だ。

中国は21年の国防費が1兆3553億元(24兆7千億円)に上る。10年で2.3倍に増え日本に届くミサイルも大量に配備する。日本の防衛費は補正予算込みで初の6兆円台に乗せるが圧倒的な差がある。厳しい財政下で選択と集中も不可欠なため、最も手薄になるミサイル防衛を重視する。

レールガンは各国が研究するが配備例はない。実用化には電気を通しやすく丈夫な材料がいる。耐久性や大電力の制御が課題だ。防衛省は素材産業が強い日本が優位に立つ可能性もあるとみる。

極超音速兵器は実用化が近い。英紙フィナンシャル・タイムズによると中国は21年7月下旬、南シナ海上空で極超音速滑空体を空中で分離させる実験をした。北朝鮮は同9月に日本海へ発射したミサイルが極超音速型だと主張した。ロシアは22年に配備する方針を示す。
▼レールガン 火薬を使わずに電磁力の原理で弾を高速で撃つ技術。電気を通しやすい素材で作ったレールの間に弾を置き、電流と磁界を発生させて発射する。磁場のなかで電気を流すと力が発生する「フレミングの法則」で弾を動かす。モーターや発電機など身近に使われる技術が基礎になっている。

電力と磁力を使ってものを動かす技術にはリニアモーターカーがある。リニアは電流をコイルに流して磁力を発生させ、磁石の反発力で車両を動かす。一方、レールガンは磁界の中を電気が流れると物体が動くという別の仕組みを応用する。

防衛省は中国や北朝鮮、ロシアが開発を進める極超音速ミサイルを迎撃するための次世代技術として研究する。音速の5倍超の極超音速兵器と比べると、音速の6倍近い秒速2000メートル以上で飛ばせる。砲の内部の磁界が強くなるようレールの配置を工夫し、電気を通しやすく頑丈な金属素材を選定する必要がある。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

レールガンの難しさは、洋上艦では賄いきれない巨大な電力を必要とすること、また、そのエネルギーを制御することが困難であるということがある。

しかし、これまで基礎研究は積み上げられており、ここから様々な実験を通じて実用化に向かっていく段階に入っている。本件については、今晩放送される、BSテレ東の日経プラス9でも解説します。

2022年1月4日 18:19 』