22年の10大リスク、「中国のゼロコロナ失敗」が首位

22年の10大リスク、「中国のゼロコロナ失敗」が首位
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN032ZX0T00C22A1000000/

『【ニューヨーク=宮本岳則】米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2022年の世界の「10大リスク」を発表した。1位に「No zero Covid」(ゼロコロナ政策の失敗)を挙げた。中国が新型コロナウイルスの変異型を完全に封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘した。

報告書は冒頭で、米中という2つの大国がそれぞれの内政事情から内向き志向を一段と強めると予測。戦争の可能性は低下する一方で、世界の課題対処への指導力や協調の欠如につながると指摘した。

国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる同社は年頭に政治や経済に大きな影響を与えそうな事象を予測している。21年の首位にはバイデン米大統領を意味する「第46代」を選び、米国民の半数が大統領選の結果を非合法とみなす状況に警鐘を鳴らした。予測公表の2日後、トランプ前大統領の支持者らが選挙結果を覆そうと米連邦議会議事堂に乱入した。

22年のトップリスクには新型コロナとの戦いを挙げた。先進国はワクチン接種や治療薬の普及でパンデミック(感染大流行)の終わりが見えてくる一方、中国はそこに到達できないと予想する。中国政府は「ゼロコロナ」政策を志向するが、感染力の強い変異型に対して、効果の低い国産ワクチンでは太刀打ちできないとみる。ロックダウン(都市封鎖)によって経済の混乱が世界に広がりかねないと指摘する。

先進国はワクチンの追加接種(ブースター接種)を進めている。ブースター需要が世界的なワクチンの普及を妨げ、格差を生み出す。ユーラシア・グループは「発展途上国が最も大きな打撃を受け、現職の政治家が国民の怒りの矛先を向けられる」と指摘し、貧困国はさらなる負債を抱えると警告する。

2番目に大きいリスクとして挙げたのは、巨大ハイテク企業による経済・社会の支配(テクノポーラーの世界)だ。米国や欧州、中国の各政府は規制強化に動くが、ハイテク企業の投資を止めることはできないとみる。人工知能(AI)などテクノロジーの安全で倫理的な利用方法を巡って、企業と政府が合意できていないため、米中間、または米欧間の緊張を高めるおそれがあるという。

米議会の中間選挙後の混乱もリスクに入れた。11月の同選挙では野党・共和党による上下院の過半数奪還が「ほぼ確実視されている」と指摘する。与党・民主党は共和党系州知事が主導した投票制限法に批判の矛先を向ける一方、共和党は20年の大統領選で不正があったとの主張を強めると予想する。共和党がバイデン大統領の弾劾に動き、政治に対する国民の信頼が一段と低下する可能性にも言及した。

【関連記事】
・中国、「ゼロコロナ」にくすぶる不満 初感染から2年
・22年版「びっくり予想」 しぶといインフレ、利上げ4回

多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

野崎浩成のアバター
野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
コメントメニュー

分析・考察 ユーラシア・グループが年初に発表するトップリスク・リストは、その年発生する重大イベントの予想というよりは、現時点で政治的、経済的に留意すべきポイントという位置づけで捉えたほうがいいと思います。

ちなみに、昨年のリストは、①米国の分断、②コロナ長期化、③グリーン化、④米中緊張関係、⑤データを巡る競争、⑥サイバーリスク、⑦トルコ危機、⑧産油国の経済財政的困難、⑨メルケル退陣、⑩中南米危機、でした。

その大半が今年も継続する留意点であることが確認できます。

2022年1月4日 7:27 (2022年1月4日 7:28更新)
いいね
74

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー

ひとこと解説 ゼロコロナそのものの問題というよりも、ロックダウンにともなって、食料品の供給が間に合わなくて、とくに現場の幹部の「管理」は乱暴で逆に問題を大きくしてしまっている感じ。

公式メディアの報道が少ないが、SNSなどの情報をみると、現場では、行き過ぎた「法の執行」があったように見受けられる。

とくに、西安市の例をみると、1000万人以上の大都市を丸ごと封鎖してしまうやり方は明らかに行き過ぎ

2022年1月4日 8:14いいね
34

滝田洋一のアバター
滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
コメントメニュー

ひとこと解説 西安で実施中の厳格な都市封鎖は、2年前の武漢の都市封鎖の記憶を呼び覚ましています。

オセロゲームの白石と黒石がひっくり返るような、中国のゼロ・コロナ政策の失敗。ユーラシア・グループが筆頭に挙げるリスクは、習近平指導部の体制リスクにほかなりません。

コロナの徹底的な封じ込めを政権の功績としてきたのですが、感染力の強いオミクロン型の登場でもはや限界に。

アキレス腱は中国製ワクチンの有効性の低さ。オミクロン型への効果が極めて低いとの研究報告が相次ぐなか、いったん市中感染が広まれば感染が爆発しかねない。

北京五輪まであと1カ月。ゼロ・コロナの自縄自縛に陥った政権は、土俵際に立たされています。

2022年1月4日 8:14 (2022年1月4日 9:47更新)
いいね
57

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
コメントメニュー

ひとこと解説 目下の世界のリスクと言えば、米国と中国の2大超大国による「衝突」が時候のあいさつのように語られますが、ブレマー氏が率いるユーラシア・グループはそうした見方と一線を画します。

1位の「ゼロコロナの失敗」の余波を含め、一見して盤石に思える中国の習近平体制のもろさが世界で意識される年、ということでしょうか。

とはいえバイデン政権への支持率が低迷する米国も中間選挙で民主党が大敗し、混迷の時代に突入するとの見立てです。

少なくとも米中では軍事衝突のような表面的な大混乱の可能性は薄いが、世界秩序の不安定化はますます進み、摩擦を収拾する担い手を欠く。ランキングからは、そんな新年の構図が見えてきます。

2022年1月4日 9:18いいね
28

高橋徹のアバター
高橋徹
日本経済新聞社 アジア総局長兼論説委員
コメントメニュー

分析・考察 1位~4位がすべて米中モノで占められていることが、いまの世界の現状を投影しているように思います。

米中の対立を、バイデン米大統領は「民主主義と強権主義の闘い」と表現してきました。
1位の「(中国の)ゼロコロナ政策の失敗」は強権主義の、2位の「(米国の)巨大ハイテク企業による支配」は自由主義(民主主義)の限界と課題をそれぞれ如実に示しています。

2022年1月4日 8:47 (2022年1月4日 8:49更新)』