オミクロン型が問うエンデミックへの移行(NY特急便)

オミクロン型が問うエンデミックへの移行(NY特急便)
米州総局 白岩ひおな
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN033G40T00C22A1000000/

『3日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、前週末比0.7%高で過去最高値を更新した。米景気の回復基調は続くとの期待が買いにつながり、景気敏感株が上昇したほか、ハイテク株の一角も買われた。アップルが一時3%上昇し、世界の上場企業で初めて時価総額3兆ドルを突破した。昨年10~12月期の販売台数が市場予想を上回った電気自動車のテスラは14%上昇した。

足元では新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大が続く。感染者の急増による人材不足で、クリスマスから年末年始にかけて航空便のキャンセルが相次ぐなど影響も広がった。公衆衛生の専門家や市場関係者は、オミクロン型の広がりが、新型コロナがインフルエンザのように「エンデミック(特定の地域で普段から繰り返し発生する状態)」に移行する兆候なのかどうかという問いに直面している。

ボストン大のエレノア・マレー博士は「1人の感染者が感染させる人数が安定して1となれば、その病気はエンデミックとして定着したといえる」と説明し、爆発的な感染拡大が続くオミクロン型はその段階に至っていないとみる。カナダのサスカチワン大のアンジェラ・ラスムセン博士は「医療システムへの負担次第だ」と述べ、入院率や死亡率、医療システムの逼迫度合い、治療法の有無などを考慮すべきだと指摘する。

2日の米国の新規感染者数(7日移動平均)は40.3万人で、6日連続で過去最多を更新した。オミクロン型は感染力が高い一方で無症状や軽症の例も多く報告されているが、短期間に感染者が増えれば医療システムが危機に陥る恐れも残る。新規入院患者数も足元で約1年ぶりの高水準を記録し、予断は許さない。

一方で米国の非営利団体、カイザー・ファミリー財団は「驚異的な人数が集団レベルの免疫を構築している」とみる。毒性が比較的弱いウイルスに置き換わり、集団免疫の獲得とパンデミックの収束につながるとの見方だ。

いずれにしても、前提となる重症化防止には、ブースター接種を含むワクチン普及の徹底が欠かせない。とりわけリスクにさらされているのが、ワクチンへのアクセスが限定的だった子どもたちだ。

米疾病対策センター(CDC)によると、17歳までの新規入院患者数(7日移動平均)は12月26日~1月1日の平均で1日当たり574人と前週から倍増し、過去最高を更新した。米食品医薬品局(FDA)は3日、12~15歳までの子どもたちに製薬大手ファイザーと独ビオンテックのブースター接種を許可した。

3日にはニューヨーク市の学校で対面授業が再開された。感染者が出たクラスの生徒らに検査キットを配布し、継続的な検査や隔離でまん延を防ぐ。教室に来る前に陰性結果の提出を求めたり、対面授業を見送ったりする地域もある。

規制やワクチンの地域差も懸念材料だ。米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2022年の世界の「10大リスク」の首位に「No zero Covid」(ゼロコロナ政策の失敗)を挙げた。中国やワクチンの普及が行き届かない発展途上国は大きな打撃を受けるとみる。手探りが続く中、一人一人もウイルスとの向き合い方を今一度問われている。(ニューヨーク=白岩ひおな)』