東南アジア、経済回復へ輸出主導 22年5.1%成長予測

東南アジア、経済回復へ輸出主導 22年5.1%成長予測
オミクロン型拡大で下振れも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM23BUO0T21C21A2000000/

『【シンガポール=中野貴司】東南アジア経済は2022年、輸出主導の回復基調が続く見通しだ。主要国の中央銀行も相次ぎ政策金利の引き上げに踏み切る可能性が高まっている。ただ新たな変異型「オミクロン型」など新型コロナウイルスの感染状況次第では成長率が下振れするほか、利上げの遅れで通貨安を招くリスクもある。

「直近の洪水の半導体業界への影響は極めて限定的だった。22年は21年に比べ、業況はさらに良くなる」。マレーシア半導体産業協会のウォン・シューハイ会長は先行きに自信を示す。

マレーシアの21年11月の輸出額は1122億リンギ(約3兆円)と前年同期比で32%増加した。輸出全体の4割弱を占める電機・電子製品に加え、石油製品や化学製品の輸出が大きく伸び、単月としての輸出額が過去最高だった10月に続いて力強さが目立った。シンガポールの11月の輸出が前年同月比で24.2%増と、約10年ぶりの伸び率を記録するなど、東南アジアの主要国で輸出が景気回復をけん引する構図が鮮明になっている。

アジア開発銀行(ADB)は東南アジアの22年の成長率が5.1%と、21年の3%から高まると予測する。21年夏には新型コロナの感染拡大を契機としたマレーシアやベトナムの工場の生産停止や減産が世界のサプライチェーン(供給網)混乱の一因になった。

その後、ワクチン接種率が高まり、新規の感染者数も減少に転じたため、各国は経済活動の正常化を進めた。証券会社メイバンク・キムエンは「東南アジアでロックダウン(都市封鎖)のリスクは薄れ、22年は新型コロナとの共生に転換する年になる」と指摘する。

景気回復の見通しを受け、東南アジアの中銀は政策金利の据え置きから利上げへの転換を模索する。シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は22年中に、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの中銀が利上げを決めると予想する。中でもインドネシア中銀は22年後半に計4回利上げし、政策金利は今の3.5%から22年末には4.5%に上がるとみる。

21年10月に為替レートの誘導目標を通じて、いち早く金融引き締めに転じたシンガポールも、22年4月に再び引き締めに動く可能性がある。UOB以外でも22年後半に東南アジアの主要中銀が利上げを検討すると予測するエコノミストが増えている。

東南アジアの中銀の多くは新型コロナの感染が世界で拡大した20年に連続して利下げに踏み切った後、21年は政策金利をほぼ据え置いてきた。それが22年に利上げに転じるのは、先進国で今後金利の上昇が進むことが大きい。米連邦準備理事会(FRB)が22年中に3回程度の利上げに踏み切る見込みとなり、英国の中銀も21年12月に利上げを決めた。

金利上昇によって、先進国の金融商品の魅力が高まれば、投資マネーが東南アジアから流出し、各国通貨の下落を招く恐れがある。通貨安は輸入品価格の上昇を通じてインフレを誘発し、国内消費を冷やす要因にもなる。

タイ中銀は21年12月下旬の声明で「タイバーツの変動率は先進国の金融政策などの要因で、引き続き大きい」とバーツ安への警戒感を示した。調査会社フィッチ・ソリューションズはマレーシアリンギが22年平均で1ドル=4.20リンギと、21年(1ドル=4.15リンギ)より通貨安が進むとみる。先進国との金利差縮小で通貨安が加速する事態を防ぐために、東南アジアの中銀は利上げを検討せざるをえなくなる構図だ。

ただ、こうした景気回復や金融政策のシナリオは、オミクロン型の感染拡大が長期化すれば変更を余儀なくされる可能性がある。東南アジアは今のところ、欧米に比べオミクロン型の感染者数は少ないものの、各国は感染拡大を防ぐために隔離なしの入国制度の停止などに踏み切っている。観光関連産業の回復の遅れは21年の成長率を下げる要因となったが、国境を越える移動の再開が遅れれば、22年も輸出増加による押し上げ効果をそぐことになりかねない。

ブラジルやロシアなどインフレ基調が続く新興国は既に21年から、繰り返し利上げに踏み切っている。ADBの予測では東南アジアの物価上昇率は22年も2.5%と比較的低く、インフレが利上げを急ぐ主因にはならないとみられる。中銀は自国通貨の相場や新型コロナの状況を注視することになる。』