中国、過熱する忠誠心競争 党大会控え

中国、過熱する忠誠心競争 党大会控え
潮流2022・動かす力②
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM263MU0W1A221C2000000/

『中国では秋に共産党指導部の人事を決める5年に1度の党大会が控える。習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の側近らが最高指導部入りを目指してしのぎを削っている。習氏の権力が強まるあまり、忠誠心競争の様相を呈している。

2021年11月の米中首脳によるオンライン協議。中国側の会場となった北京の人民大会堂で、習氏の右隣に座り身じろぎ一つしないのが日本の官房長官に相当する丁薛祥・共産党中央弁公庁主任だった。習氏がバイデン氏にほほ笑みかけると丁も首を傾け微笑をみせる。「習氏の側近中の側近」といわれ、挙措動作も一心同体だ。

党序列25位以内の政治局員で1962年生まれと比較的若い。習氏が2007年に上海市トップの上海市共産党委員会書記に就任した際に秘書長として支えた。17年に中央委員候補から中央委員を飛び越えて政治局員に2階級特進した。

黒子に徹するが、習氏の「危機」には迅速に動いてきた。18年夏に習氏の個人崇拝キャンペーンに党内で反発が強まった際には「旗幟(きし)を鮮明にして政治にこだわらなければならない」と党と政府機関に伝達し、習氏への忠誠を求めた。

21年7月には小中学生の塾への規制を強める習氏肝煎りの教育改革を巡り、国務院(中国政府)とともに、中央弁公室の名前で徹底を求める通知を出した。批判を招きかねない政策には自ら泥をかぶる姿勢もみせる。

丁氏の弱点は最高指導部入りの登竜門とされる地方のトップをひとつも経験していない点だ。1強を固める習氏が「慣例破り」で引き上げるのか関心が集まる。
陳敏爾・重慶市書記=新華社ホームページより

12月17日。重慶市で模範的な道徳を示した市民を表彰する会議が開かれた。主催した重慶市のトップ陳敏爾・重慶市党委員会書記は「ここ数年、我々は習氏が道徳心の向上を巡り示した指示を深く学んでいる」とあいさつした。

「あえて目立たず、とことん忠誠を尽くすのが一貫した政治姿勢だ」。重慶市のベテラン党員がこう評するのが陳氏だ。

習氏が浙江省トップのときの宣伝部長で、習氏が地元紙の浙江日報に連載したコラム「之江新語」のゴーストライターといわれる。習氏がお気に入りのコラムで、書籍にもなった。いまでも党の最高指導部が執務室を構える中南海の近くの書店で平積みで置かれる。

陳氏が注目されるようになったのは15年7月に貴州省トップの貴州省党委員会書記に就任したためだ。貴州省は中国で所得の低い世帯の多い地域で知られる。それだけに将来有望な幹部候補生を鍛える場として位置づけられてきた。

陳氏はいま最高指導部入りが「当落線上」といわれる。重慶、貴州と2カ所のトップを務め、最高指導部入りの資格は満たしつつある。

重慶は前のトップの孫政才氏、その前の薄熙来氏ともに逮捕されるという「政変」が相次いで起きている因縁の地だ。かつて公安(警察)部門で絶大な権力を振るい、失脚した周永康氏の影響力がいまもなお残っているとされる。陳氏が周氏の影響力を断ち切った
と習氏が判断するかが注目点になる。(北京=羽田野主)』