レゲエ界に革命を起こしたリズム「スレンテン」は日本人女性が生み出した

レゲエ界に革命を起こしたリズム「スレンテン」は日本人女性が生み出した:カシオ開発者・奥田広子さん
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g02027/

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ ジャコ・パストリアスは、とっくに死んだ…。

 ※ ヨゼフ(ジョー)・ザヴィヌエルも、とっくに死んだ…。

 ※ ウエイン・ショーターは、未だ「訃報」を聞かないんで、まだ存命なんだろう…。「ネイティブ・ダンサー」、今でも時々は聞いてるよ…。

 ※ 確か、娘さんが「障碍者」と聞いたが…。

 ※ 「レゲエ」とくれば、ボブ・マーリー、「ブラック・ウフル」「スティール・パルス」あたりか…。

 ※ ここいらの年代物は、「レコード」で保有しているんで、もう、めったに「針を落とさなく」なった…。

『80年代半ば、レゲエ音楽にデジタル革命をもたらし、“モンスター・リディム”と称される「スレンテン」。その誕生の裏側には、カシオ計算機(本社:東京都渋谷区)の電子キーボードと新卒の女性開発者の存在があった。スレンテンのルーツ・奥田広子さんが、初めてベールを脱ぐ。』

『スレンテンのルーツはカシオトーンの音源

ジャマイカのシンガー、ウェイン・スミスの『Under Mi Sleng Teng(アンダ・ミ・スレンテン)』は、レゲエの世界に革命をもたらしたと言われる。友人のノエル・デイヴィーと2人で、カシオの電子キーボードを使って作曲したダンスホール・レゲエだ。1985年に大ヒットすると、デジタル音の心地よく、常習性のあるリズムは、またたく間に世界中に広がっていく。

レゲエでは、ドラムとベースのリズム体を「リディム」や「バージョン」、「オケ」などと呼び、これを繰り返すことで曲に鼓動を生む。同じリディムで複数のアーティストが曲をリリースするのも特徴だ。曲名にちなみ「スレンテン」と名付けられたリディムは、次々と新しい曲を生み出し、その数は通算450曲にも及ぶという。その影響でレゲエ界にデジタル革命が巻き起こり、ダンスホールの隆盛を生んだことで「モンスター・リディム」とも称される。

リリースから35年以上が経過した今、スレンテンの生みの親は、ウェイン・スミスや発売元のレーベル「ジャーミーズ」だと定着している。しかし元々は、1981年に発売した「Casiotone(カシオトーン) MT-40」に入っていたリズムパターンだ。スミスらは、そのプリセット音源を鳴らして、曲に仕上げたのである。

定価3万5000円で発売された「Casiotone(カシオトーン) MT-40」。写真は奥田さんの私物

つまり、電卓でおなじみのカシオ計算機が、世界の音楽シーンを変えたのだ。しかも、カシオトーンに組み込まれたリズムパターンを作曲し、スレンテンを生み出したのは、入社1年目の女性開発者だった。

そのことは、一部の音楽マニアの間でのみ、伝説のように語り継がれていたが、これまで詳細なプロフィールが公開されることも、顔を出して取材に応じたこともなかった。MT-40の発売から40年を経て、開発者・奥田広子さんが初めてベールを脱ぎ、インタビューに答えてくれた。

カシオの電子ピアノを演奏する奥田さん

新入社員がいきなり任されたMT-40のリズムパターン

世界初のパーソナル電卓「カシオミニ」(1972年)、世界初の名刺サイズ電卓「カシオミニカード」(78年)と、70年代の“電卓戦争”をリードする存在だったカシオが、80年1月、スピーカー搭載の電子キーボード「Casiotone 201」を発売。楽器業界に参入した。

奥田さんがカシオに入社したのはその3カ月後。新人研修を終えるとすぐに、MT-40のプリセット音源の制作を任されたのである。

カシオ本社のショールームに飾られる電子楽器第1号の「Casiotone 201」。29種類もの楽器の音を奏でることができる

カシオは自動伴奏機能付きの商品を開発中だったが、商品化が実現するまでの “中継ぎ” 商品 として、ミニ鍵盤キーボードにリズムパターンを搭載することになったという。奥田さんは「開発部の音大出身者は、新卒の4人だけ。しかも、みんなクラシックが専門で、ポピュラーミュージックに明るいのは私だけだった」と振り返る。

当時はMIDIという統一規格もなく、デジタルの音楽制作環境が現在のように進んでいない。楽譜をプログラムコードに変換し、それを焼き込んだROMを専用の機械に差し込んで、初めて入力したリズムパターンを聴くことができた。手間と時間の掛かる作業を、完成までには何度も繰り返すため、外部の作曲者などに発注するのは難しかったのだ。

取材はカシオ本社で行ったが、普段は羽村技術センター(東京都羽村市)で開発にいそしむ
レゲエに没頭した大学時代、カシオとの出会い

奥田さんは、子どもの頃からピアノを習っていたが、中学時代に全盛期だったブリティッシュロックに目覚め、後にレゲエにはまっていく。「レゲエは、ヒップホップやラップ、DJなどのルーツとも言われ、ブリティッシュロックにも大きな影響を与えていた。何よりも、メッセージ性の強い重い歌詞を、いとも軽やかにさらりと歌ってしまうことに引き込まれた」という。

音楽高校を卒業後、国立(くにたち)音楽大学に進学。演奏家を目指すのではなく、あらゆる音楽のベースとなる楽理(がくり)を専攻し、音楽史や社会学、作曲の基礎となる和声などを学んだ。それでも、あくまでも研究対象はレゲエ。当時の日本の音大は、クラシックを専攻する学生がほとんどで、奥田さんは異色の存在だった。「卒論のテーマもレゲエ。指導教官がいなかったので、バロック専門の教授に無理やり読んでもらい、『文章的には問題ないね…』と無事卒業できた」と笑う。

卒論に取り組み、レゲエを聴きまくっていた1979年、ボブ・マーリーが最初で最後の来日を果たしている。公演会場に何度も足を運んだ奥田さんは、その少し後に、カシオが初めて音大に出した新卒社員募集に目を留めた。「開発者募集」の文言が魅力的だったのだ。面接試験の際に見せられた発売前のカシオトーンの初号機は完成度が高く、電子楽器に大きな可能性を感じる。そして、決め手となったのは、世界市場を視野に入れた、その理念だった。

楽器部門を率いたのは、創業者の樫尾四兄弟の次男・俊雄氏。計算機の発明家として知られ、楽器にも造詣が深い俊雄氏は、「すべての人に音楽を奏でる喜びを」というスローガンを掲げていた。楽理を学び、洋楽に親しみ、楽器開発への興味も強かった奥田さんは、自分にぴったりの仕事だと確信する。

入社半年足らずの奥田さん。この直後にMT-40の開発に携わる(本人提供)

リズムに込められた思いと開発秘話

入社すると間もなく、プリセットの音源制作の仕事が始まった。rockやpops、sambaなど6種類のリズムパターンと、それぞれメジャーとマイナー、セブンスの3つのコードタイプに応じたベースラインを作り、曲調の変わり目などに変化を付けるフィルインも2種類追加した。

スレンテンは、rockとして作曲したリズムだ。それがレゲエの世界で流行した理由を、奥田さんは「当時、頭の中はレゲエ一色。ロックのリズムを考えながら、自然とレゲエに通じるものになったのだと思う」と説明する。

この時代には機能や音数に制約が多く、プリセット音源に使えたのはドラムとベース音のみで、長さも2小節。ドラムに変化を付けるのは難しいため、いかにベースラインを仕上げるのかがポイントだった。

プリセット音源の操作部分。スイッチの数にも制約があるため、その設定にも苦労したという。ノエル・デイヴィーは作曲時に「一度、リズムを見失った」と語っているが、再生までの操作が複雑なせいだろう

コアな音楽ファンの間では、スレンテンの元ネタは、エディ・コクランやセックス・ピストルズだという説が広まっているが、奥田さんは否定する。「ブリティッシュロックを聞いていたので、インスパイアされた曲があるのは確か。でも、それとも別物の完全オリジナル」と付け加える。

レゲエのリズムは特に意識していなかったが、「トースティングが乗せやすいように」とは心掛けたという。レゲエのトースティングとは、リズムに乗って語り掛ける行為で、ラップやDJスタイルに大きな影響を与えたもの。あまり音を詰め込み過ぎないように単純化したことで、アレンジがしやすく、レゲエ独特のコードパートも入れやすかったのだろうと奥田さんは推測する。

スレンテン・ブームを知るが、仕事に没頭

カシオの楽器事業は滑り出しから好調で、新商品を出せば世界中でドンドン売れた。常に複数の開発案件を抱えていた奥田さんは、「とにかく忙しかった」ため、レゲエとも縁遠くなっていく。営業部から「MT-40が中南米で人気だ」と聞いても、それがジャマイカと関係があるなどとは全く想像しなかった。

雑誌『ミュージック・マガジン』の1986年8月号を読んでいると、「スレンテンの氾濫~」と副題がついたレゲエの記事に「カシオトーンのビートが延々と続く」と書いてある。その音を文字で「ブブブブ、ブブブブ、ブブブブ、ブッブ」と再現しているのを見て、自分が産み落としたrockのリズムがジャマイカのみならず、世界の音楽シーンでブームになっていることを知った。

すぐに『アンダ・ミ・スレン・テン』のレコードを購入。「まさにカシオトーンのプリセットのリズム。ある程度は予想していたが、曲のイントロまでフィルインの音がそのまま使われていた」と、驚いたそうだ。そして、同時に「そうだよね」と妙に腑に落ちた。

「レゲエを聴き続け、卒論まで書いた私が生み出したリズムを、レゲエの音楽と共に暮らすジャマイカの人がちゃんと見つけて、受け入れてくれた。でも、それは輸出企業のカシオが楽器開発を始め、新入社員に大役を任せてくれたから。全ては偶然ではなく、必然だったのかもしれない」

スレンテン・ブームを知った頃。勤務先の羽村技術センターで(本人提供)

奥田さんが制作したリズムが大ブームを巻き起こしたと分かっても、会社での日常に変化はなかった。「カシオ計算機」の社名が示す通り、保守本流は電子機器の開発であり、楽器部門は傍流にすぎない。特許取得は評価されても、音楽の世界に革命を起こし、文化を生み出したことが社内的に注目されることはなかった。奥田さん自身も、そんなことを気にする余裕がないほど開発に没頭。スレンテンに関する記事などを目にする機会があれば、ひそかに誇りに思うだけだった。

著作権を申告した方が良かったのではないかとの意見もあったが、「多くの人に使ってもらうことで、カシオトーンを有名にする」ことの方が大切だった。そして、世界中の人がカシオトーンで気軽に音楽に触れ、簡単にレコーディングできるようになってほしいと願っていた。最近でも、スレンテンのオリジナルはMT-40の音源だと探し当て、わざわざカシオに使用許諾を申請する音楽関係者がたまにいる。その場合も、「自由に使っていいので、クレジットには『MT-40の音源を使用』と入れてほしい」と伝えるだけだ。

そして奥田さんは、何度も「少しでもレゲエに恩返しができたとしたらうれしい」と繰り返す。

現行の「Casiotone ミニキーボードSA-76」には、「MT-40リディム」が組み込まれており、rockのリズムパターンを聞くことができる(写真提供:カシオ計算機)

すべての人に音楽を奏でる喜びを

現在、奥田さんが開発に力を注いでいるのが「Music Tapestry」という技術。楽器の演奏の強弱や曲調を解析し、リアルタイムで絵に変換しながら、最後は1枚のアートに仕上げる。ピアノを弾いたことがない人でも、どんな絵ができるかと鍵盤に触れ、少しでも音楽を楽しんでほしいという思いで取り組んでいる。今でも創業者の「すべての人に音楽を奏でる喜びを」という理念が、奥田さんの中に生き続けているのだ。

「MT-40のリズムが世界中に広まり、いまでも愛され続けていることは、自分の子どもを産んだことに匹敵するぐらいの喜び。最初に生み出した子の出来が良すぎたので、なかなか超えることができてない。でも、電子楽器が演奏者を助けられることは、まだまだあるはず」

奥田さんは新しい音楽文化を生み出すため、まだまだ開発者人生を歩むようだ。

Music Tapestryでの演奏後に生まれるアート作品
Music Tapestryのデモ演奏後に生まれたアート作品。公式インスタグラムでは、多彩な作品が見られる(写真提供:カシオ計算機)

写真・動画=ニッポンドットコム編集部 』

ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地

ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220103-00275457

『昨年12月25日、新疆ウイグル自治区の書記に広東省の馬興瑞省長の就任が決まった。深圳をハイテク都市にした馬興瑞の辣腕を、今度は新疆で発揮させ、アメリカから制裁を受けている分野を逆手に取っていく戦略だ。

◆馬興瑞が新疆ウイグル自治区の新書記に

 中国政府の通信社である新華社は12月25日、中共中央が「新疆ウイグル自治区の党委員会のトップに関して職務調整を行った」と発表した。それによれば、これまで新疆ウイグル自治区の書記を務めていた陳全国に代わって、馬興瑞が新しい書記になるとのこと。同日、中共中央組織部副部長が出席する形で新疆ウイグル自治区は幹部会を開催し、陳全国や馬興瑞などがスピーチを行っている。

 馬興瑞のスピーチで注目すべきは「私は習近平総書記の熱意を込めた依頼をしっかり心に留め」という言葉と、「苦労して勝ち取った新疆の安定を決して逆転させないことを誓う」および「そのために人民を中心として質の高い経済発展を促進する」という決意だ。
◆馬興瑞が持っている特殊な才能

 馬興瑞(62歳)は工学博士で教授、国際宇航(宇宙航行)科学院の院士でもあり、「若き航空元帥」という綽名さえ持っていた。そのため2007年から2013年3月まで中国航天科技集団公司の総経理を務めていただけでなく、中国有人航天工程副総指揮や中国月探査工程副総指揮(2008年11月から2013年3月)をも兼任していた。

 2013年には目まぐるしい変化があり、3月に突然、中央行政省庁の一つである「工業と信息(情報)化部」の副部長(副大臣)や国家航天局(宇宙局)局長など、行政方面への職位を与えられた。だというのに11月になると習近平は突如、馬興瑞を広東省(中国共産党委員会)副書記に任命したのだ。

 異常な人事異動だ。

 2015年から2016年までは深圳市の書記なども兼任しながら、2017年には広東省(人民政府)の省長に任命されている。途中はあまりに細かく複雑で兼任が多すぎるので省略する。

 広東省にいる間に最も注目しなければならないのは、馬興瑞は広東省の凄まじい経済発展に貢献しただけでなく、中国のシリコンバレーといわれるほどの深圳を、さらにハイテク化に向けて磨きをかけ、アメリカに脅威を与えるレベルにまで成長させたことだ。

 広東省が如何にすさまじい発展を遂げたかに関して、おもしろいYouTube「中国各省区市 歴年GDP変化」がある。1978年から2020年までの中国の省や自治区および直轄市などの各行政地区におけるGDPのランキングを追っている。最後は広東省が中国一になっていく様子をご覧いただきたい(出典は「史図書」、個人の動画投稿者が作成)。

◆「中国製造2025」発布時期と一致

 一方、2012年11月15日に中共中央総書記に就任した習近平は、翌12月に最初の視察先として深圳を選んだ。そこは父・習仲勲が「経済特区」と命名して開拓した地。鄧小平の陰謀によって16年間に及ぶ監獄・軟禁生活を強いられたあとの習仲勲の仕事への奮闘ぶりはすさまじかった(詳細は拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』)。

 その深圳で誓いを立てたかのように、習近平は北京に戻るとすぐにハイテク国家戦略「中国製造2025」に手を付け始めた(詳細は拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平は何を狙っているのか』)。

 思うに、おそらくこの線上で、突如、馬興瑞を広東省に派遣することを習近平は決めたのだろう。だから異動のさせ方が尋常でない。

そしてこのたびの新疆行きで、馬興瑞は「質の高い経済発展を促進する」と言っている。これはいったい何を意味しているのだろうか?

◆新疆デジタル経済の急成長

 2021年1月21日、新華網は<新疆デジタル経済は去年の10%増で、新疆GDPの26%を占める>と発表している。そこには以下のようなことが書いてある。

 ●5GやAIあるいはビッグデータなどの次世代情報技術と実体経済を融合発展させたことが奏功した。

 ●新疆では昨年(2020年)、長城(科技)集団(中国最大の国有IT企業グループ。深圳)や中科曙光(中国スーパーコンピュータ大手)が投資してウルムチ工場が稼働し、(新疆)ウルムチの情報技術イノベーション産業基地の構築を加速させた。

 ●(新疆)コルガス市の半導体チップ・パッケージング・テストプロジェクトの大規模生産が実現した。

 ●新疆ソフトウエア・パーク第1期に230企業がパーク入りした。

 ●新疆における5G基地局数はこれまでに6272カ所となり、5Gユーザー数は275万世帯に達した。新疆における産業インターネットの活用は新エネルギー、石油・天然ガス採掘、電力、設備製造など20余りの重点産業に広がり、デジタル化設計やスマート製造、ネットワーク連携などの新モデルが急速に普及している。

 ●デジタル経済大発展を推進することは、新疆の経済社会デジタル化を全面的に転換させる重要な転換点であり、エネルギーと化学、繊維と衣服、機械と設備、採掘産業などの主要産業で両者の深い統合を促進する(概略引用はここまで)。

 このように新疆ウイグル自治区は、実はデジタル経済に関して意外なほど力を注ぎ、急成長しているのである。

◆アメリカが制裁対象とした新疆の太陽光パネル企業

 それだけではない。

 2021年6月24日、アメリカ商務部は太陽光パネルの材料などを生産する新疆ウイグル自治区の企業5社について、「強制労働や監視活動など、人権侵害に関わった疑いがある」という理由で、制裁リストに入れた。これら5社は今後、アメリカ企業との取り引きができなくなる。

 中国は太陽光パネルの世界最大の生産地だが、パネルの材料の1つであるポリシ

リコンの多くが新疆ウイグル自治区で生産されていることがアメリカ議会で問題視された。つまり「新疆の太陽光パネルが廉価なのは、強制労働をさせているからだ」ということが問題になったのだ。

 世界のシリコン生産量は中国が最大で、世界の67.9%を生産している。

 工業用シリコンは、中国の中でも水資源などが豊富で水力発電が進んでいる四川省や雲南省が半分ほどを占め、20%を新疆ウイグル自治区が占めている。

 なぜなら工業用シリコンは莫大な電気量を消耗するので、埋蔵量以外に、電力供給が豊潤な地域でないとコストが高すぎて採算が合わない(雲南:数百本の川がある。四川省:長江など水資源が豊富。新疆:もともと石炭埋蔵量が多く、イリ川などを利用。加えて中国最大の石油・天然ガス中継点)。

 工業用シリコン生産過程の総コストの30~40%は電力である。

 新疆産の太陽光パネルが安価なのは電力が安価だからだ。

 新疆・四川・雲南の電気代は1kWh当たり(日本円に換算すると)「5.44円」であるのに対し広東省は「10.8円」、上海は「17.58円」だ。中国国内でも差がある。それが太陽光パネルの価格に反映している。ちなみに東京電力の業務用電力は1kWh当たり「 17円前後」だ。上海と変わらない。

 新疆では特にポリシリコン製造に特化し、太陽光パネルを大量に生産している。

となると、その太陽光パネルによる電力をポリシリコン製造に使えるので、まるで自己増殖的な生産サイクルが出来上がり、安価な太陽光パネルを生産できるのである。

 アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「アメリカで販売されている太陽光パネルの約85%は輸入品で、その多くは中国企業が製造している」とした上で、「2035年までに電力網をカーボンフリーにしたいと考えているバイデン政権にとって、中国の太陽光パネル産業を制裁ターゲットにするのは難しいのではないか」と報道している。

 さらに業界団体や関係者は「世界で販売されている太陽光パネルの大半は、中国の技術に依存している。中国はサプライチェーンのすべての部分、特に太陽光パネルの原料となるシリコンウエハーの生産において、リーダー的存在だ」と言っていると、WSJは懸念を伝えている。つまり、中国の太陽光パネル関連企業を制裁リストに入れることによって最も困るのはアメリカではないかという疑念を呈しているのだ。

◆習近平は馬興瑞に「新疆デジタル経済と太陽光パネル基地」建設を期待

 アメリカからの制裁を受ける中、習近平は新疆ウイグル自治区を経済発展させることによってアメリカの対中非難に勝とうとしていると推測される。

 それもハイテク国家戦略「中国製造2025」に沿ったもので、深圳が「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでに成長したのと同じように、馬興瑞の実力を頼りに、新疆ウイグル自治区を「デジタル経済」と「太陽光パネル生産」の基地として発展させようと狙っていると思われるのである。

 そうでなくとも中国は国土面積が広く、1990年代から遠隔教育を推進させていた。雲南省にいても新疆ウイグル自治区にいても、北京や上海の大学で行っている講義をリモートで聞くことが出来るシステムを、世界銀行などの支援を得て構築していたし、時にはスタンフォード大学の講義を中国で聞くこともできるシステムさえ進めていた。

 ネット通信が発達し、特にコロナによりリモート勤務が世界的に進んだ今、中国におけるデジタル経済のニーズは増している。

 デジタル社会を可能ならしめるには、大量の電力が必要になる。

 その電力もクリーンエネルギーが奨励される中で、太陽光パネルは願ってもない手段だ。

 中国には「西気東輸」とか「西電東送」といった言葉があるが、これは西部大開発において1990年代から唱えられ、2000年前後に始まった、「西部にある石油や天然ガスなどのエネルギー源や電力を、経済発展著しい東沿海部の都市に運ぶ」という中国全土を覆ったネットワークである。これによって電力不足を補い、停電などによって生産ラインが止まるのを防いでいた。特に「西気東輸」の起点は新疆ウイグル自治区にあるタリム盆地だ。
 クリーンエネルギーが叫ばれる今、新疆ではレアアースが埋蔵しているだけでなく、太陽光パネルが生み出す、有り余る電力を、「西気東輸」や「西電東送」の考え方と同じように中国全土の電力補給に使っていこうという戦略が、このたびの新疆ウイグル自治区トップ交代の意味である。

 アメリカが新疆にある太陽光パネル企業に下した制裁は、「アメリカへの輸出を禁じる」という内容だ。習近平としては、アメリカに輸出できないというのは大きな痛手ではなく、むしろ中国国内における電力不足からくる社会不安を緩和する方向に電力を振り向けていこうというのが、馬興瑞を新疆に送った事実から見えてくる国家戦略なのである。

 国内で使うのに、「それは強制労働による電力だろう」という批難をアメリカから受ける可能性はゼロで、むしろウイグル族の人々がクリーンエネルギー生産に従事してデジタル経済を推進していくことになれば、世界からの批難が少なくなるだけでなく、新疆に経済的繁栄をもたらすので、テロなどイスラム教徒が起こす傾向にある反乱を和らげる働きをするだろうと、同時に計算している側面がある。

◆「新疆‐アフガン列車」でイスラム圏アフガンの統治能力を世界に示す

 というのも、2021年9月8日に王毅外相がアフガニスタンの外相と話し合い、「新疆―アフガニスタン専用貨物列車」の復活を提唱したのだが、11月20日には、実際に開通したと、中国共産党の機関紙「人民日報が報道した。アメリカはイスラム教圏であるアフガニスタンの統治に失敗したが、中国は同じくイスラム教を信じるウイグル族とアフガニスタンの経済を成長させることによって、中国の方がアメリカの統治能力を凌駕するというメッセージを発信したいものと位置付けることが出来る。

 習近平は米中覇権競争を、経済で絡め取って、中国の勝利に持って行こうとしているのだ。

 ただ、本来ならば2022年秋に開催される第20回党大会あたりで発表するはずの人事異動を前倒ししたのは、停電や不動産開発産業が招く社会不安を回避するだけでなく、西安政府の管理能力の欠如によるコロナ再感染を防ぐための不手際に対する中国政府への不信感を払拭する狙いもあるのではないか。

 2022年に開ける新たな幕のゆくえを見逃さないようにしたい。

 本稿は

中国問題グローバル研究所のウェブサイトからの転載である。』

参院選へ逆風の公明 敵基地攻撃で対応に苦慮

参院選へ逆風の公明 敵基地攻撃で対応に苦慮
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022010200133&g=pol

『参院選が控える2022年を、公明党は逆風の中で迎えた。昨年末、党に所属していた元衆院議員が融資口利き事件で在宅起訴され、党の看板であるクリーンなイメージは失墜。10年近く歴代閣僚を出してきた国土交通省では、不正な統計書き換えを防げなかった。敵基地攻撃能力保有をめぐる議論も公明党の意に反して具体化する見通しで、党の存在意義が問われかねない事態に直面しつつある。

「敵基地攻撃」検討本格化へ ミサイル防衛、重層化図る―政府

 「公明党のいる連立政権だからこそ政治が安定し、課題を着実に乗り越えていける。その先頭に立つ」。2日、東京・新宿駅前で新春恒例の街頭演説に臨んだ山口那津男代表は党のアピールに力点を置き、不祥事には触れずじまいだった。
 公明党は参院選で、現職のいる兵庫、福岡など7選挙区全勝と、比例代表での7議席維持に向けた800万票獲得を目標に据える。昨年の衆院選では、国政選挙で下落傾向にあった比例票を5年ぶりに700万の大台に回復させ、公示前29だった議席を32に増やした。

 だが、12月28日には党の「ホープ」と称された遠山清彦元財務副大臣が貸金業法違反の罪で在宅起訴された。連立を組む自民党に「政治とカネ」の問題が起こるたび自浄作用を促してきた公明党のイメージは損なわれた。参院選に向け、ただでさえ弱体化が指摘される支持母体・創価学会の動きにも響きかねない。「いくら実績を訴えても、かすんでしまう」。党関係者は声を落とす。

 これに先立つ臨時国会では、国内総生産(GDP)の算出にも用いられる基幹統計を国交省が書き換えていた問題が発覚。17日召集見通しの通常国会では、党幹事長まで務めた斉藤鉄夫国交相が追及の矢面に立たされそうだ。党幹部は「省内の問題」として党への影響をかわしたい考えだが、「これまでの国交相にも責任論が出かねない」(関係者)との懸念も拭えない。

 岸田文雄首相が国家安全保障戦略改定の課題に挙げる敵基地攻撃能力の保有も悩みの種だ。公明党は与党協議を参院選後に先送りさせる構えだが、自民党は5月に提言を取りまとめる方針。安全保障法制整備では「ブレーキ役」を自任した公明党だが、首相や自民党の現執行部とは太いパイプがなく、対応に苦慮しそうだ。

 秋には2年に1度の党大会を控え、代表任期を迎える山口氏の去就が焦点。山口氏は12月、就任あいさつに訪れた立憲民主党の泉健太代表らに「われわれも若返りしないと」と漏らし、交代をにおわせた。その場合、後任には石井啓一幹事長(63)が有力視されるが、「官僚的で発信力が弱い」との評価もあり、不安の種は尽きない。 』

政権交代なら対中揺り戻しも

政権交代なら対中揺り戻しも コロナ対応で与党支持低迷―豪、5月までに総選挙
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022010200105&g=int

『【シドニー時事】オーストラリアで5月までに総選挙が行われる。与党勢力の保守連合を率いるモリソン首相は、インド太平洋地域で台頭する中国に対抗するため「親米色」を鮮明にしたが、与党勢の支持率は低迷。一方、約9年ぶりの政権奪還を目指す最大野党・労働党は「親中色」をのぞかせており、政権交代なら揺り戻しもありそうだ。

太平洋3カ国に海底ケーブル 日米豪、中国対抗で資金支援

 昨年12月の世論調査によれば、政党支持率は労働党が38%で保守連合の36%を上回った。新型コロナウイルスへの対応でワクチン接種が遅れ、昨年半ばにシドニーなどでロックダウン(都市封鎖)が導入されたことが、モリソン政権の人気の足を引っ張っている。
 豪国立大のイアン・マカリスター教授は、与党勢の支持率低迷について「経済に対する人々の懸念」が背景にあると分析した。新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大で、景気の先行き不透明感が増している。
 ただ、2019年の前回選挙では事前の調査結果に反し、保守連合が土壇場で逆転勝利した。選挙戦は終盤まで競り合いとなる可能性もある。
 外交では、最大の貿易相手国である中国が「経済的威圧」を強めて豪州産品に事実上の貿易制裁を科し、両国関係が悪化。モリソン政権は米国に接近し、昨年9月には原子力潜水艦を調達するため、米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設を発表した。今年2月の北京冬季五輪でも、「外交ボイコット」でいち早く米国と足並みをそろえた。
 一方、労働党の外交姿勢に関し、クイーンズランド大のマリアン・ハンソン准教授は「中国にはそれほど敵対的ではない」と指摘する。同党出身の歴代首相からは、親中的な発言も目立つ。キーティング元首相は、台湾有事の際に米国への軍事協力も辞さないとした現政権の閣僚の発言に対し「台湾は豪州にとって重要な利益ではない」とけん制している。 』

中国恒大株、取引停止 香港市場

中国恒大株、取引停止 香港市場
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022010300187&g=int

『【北京時事】香港証券取引所は3日、経営危機に陥っている中国不動産開発大手・中国恒大集団の要請を受け、同社株の取引を停止した。恒大は声明で「内部情報」を公表すると説明しており、巨額債務問題などで何らかの動きがあった可能性もある。

中国恒大、利息再び払えず 猶予期間入り―米報道

 恒大は約190億ドル(約2兆2000億円)の外貨建て債務を抱えているが、一部社債の利払いが滞り、デフォルト(債務不履行)の瀬戸際にある。同社は債務再編に向けて債権者との協議に入る意向を示す一方、地元の広東省政府の実質的な管理下で経営再建を目指している。

 恒大は先月上旬に猶予期限が切れた子会社発行のドル建て社債の利息8250万ドルを支払えなかったとされ、格付け大手のフィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングは恒大が部分的なデフォルトに陥ったと認定した。』

インドネシア、石炭輸出を一時禁止 国内発電向けを優先

インドネシア、石炭輸出を一時禁止 国内発電向けを優先
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0113H0R00C22A1000000/

『【ジャカルタ=地曳航也】インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は1日、石炭の輸出を同日から31日まで1カ月間、禁止すると発表した。国内の石炭火力発電所で石炭の需給が逼迫しており、発電所への供給を優先させる。インドネシアは一般炭の世界最大の輸出国で、日本や中国へも輸出している。今後の輸出先国の石炭調達や市場価格への影響が懸念される。

同省は声明で「輸出禁止が強制されない場合、1万850メガワットの電力を供給する20の発電所が危機に陥り、国家経済の安定を乱す」と説明した。インドネシアでは電力を安定的に確保するため、石炭事業者に年間生産量の25%を電力企業などに回す国内供給義務を課しているが、守られていないとしている。

インドネシアは発電の6割を石炭火力に依存している。ただ、世界的な電力用の一般炭の需要拡大を受けて、輸出が伸び、国内への供給が追いつかなくなっている。インドネシア政府は2021年8月にも、石炭事業者34社が国内供給義務を順守していないとして、輸出禁止の制裁措置を科していた。

インドネシアは20年に4億トン超の石炭を輸出した。輸出先は中国が3割を占め最大で、インドが24%で続く。日本、韓国、台湾などにも輸出する。ロイター通信はアナリストの見方として「今後、数週間で世界の石炭価格が上昇し、インドネシアの顧客がロシア、オーストラリア、モンゴルに流れる可能性がある」と伝えた。』

東南アジア、経済回復へ輸出主導 22年5.1%成長予測

東南アジア、経済回復へ輸出主導 22年5.1%成長予測
オミクロン型拡大で下振れも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM23BUO0T21C21A2000000/

『【シンガポール=中野貴司】東南アジア経済は2022年、輸出主導の回復基調が続く見通しだ。主要国の中央銀行も相次ぎ政策金利の引き上げに踏み切る可能性が高まっている。ただ新たな変異型「オミクロン型」など新型コロナウイルスの感染状況次第では成長率が下振れするほか、利上げの遅れで通貨安を招くリスクもある。

「直近の洪水の半導体業界への影響は極めて限定的だった。22年は21年に比べ、業況はさらに良くなる」。マレーシア半導体産業協会のウォン・シューハイ会長は先行きに自信を示す。

マレーシアの21年11月の輸出額は1122億リンギ(約3兆円)と前年同期比で32%増加した。輸出全体の4割弱を占める電機・電子製品に加え、石油製品や化学製品の輸出が大きく伸び、単月としての輸出額が過去最高だった10月に続いて力強さが目立った。シンガポールの11月の輸出が前年同月比で24.2%増と、約10年ぶりの伸び率を記録するなど、東南アジアの主要国で輸出が景気回復をけん引する構図が鮮明になっている。

アジア開発銀行(ADB)は東南アジアの22年の成長率が5.1%と、21年の3%から高まると予測する。21年夏には新型コロナの感染拡大を契機としたマレーシアやベトナムの工場の生産停止や減産が世界のサプライチェーン(供給網)混乱の一因になった。

その後、ワクチン接種率が高まり、新規の感染者数も減少に転じたため、各国は経済活動の正常化を進めた。証券会社メイバンク・キムエンは「東南アジアでロックダウン(都市封鎖)のリスクは薄れ、22年は新型コロナとの共生に転換する年になる」と指摘する。

景気回復の見通しを受け、東南アジアの中銀は政策金利の据え置きから利上げへの転換を模索する。シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は22年中に、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの中銀が利上げを決めると予想する。中でもインドネシア中銀は22年後半に計4回利上げし、政策金利は今の3.5%から22年末には4.5%に上がるとみる。

21年10月に為替レートの誘導目標を通じて、いち早く金融引き締めに転じたシンガポールも、22年4月に再び引き締めに動く可能性がある。UOB以外でも22年後半に東南アジアの主要中銀が利上げを検討すると予測するエコノミストが増えている。

東南アジアの中銀の多くは新型コロナの感染が世界で拡大した20年に連続して利下げに踏み切った後、21年は政策金利をほぼ据え置いてきた。それが22年に利上げに転じるのは、先進国で今後金利の上昇が進むことが大きい。米連邦準備理事会(FRB)が22年中に3回程度の利上げに踏み切る見込みとなり、英国の中銀も21年12月に利上げを決めた。

金利上昇によって、先進国の金融商品の魅力が高まれば、投資マネーが東南アジアから流出し、各国通貨の下落を招く恐れがある。通貨安は輸入品価格の上昇を通じてインフレを誘発し、国内消費を冷やす要因にもなる。

タイ中銀は21年12月下旬の声明で「タイバーツの変動率は先進国の金融政策などの要因で、引き続き大きい」とバーツ安への警戒感を示した。調査会社フィッチ・ソリューションズはマレーシアリンギが22年平均で1ドル=4.20リンギと、21年(1ドル=4.15リンギ)より通貨安が進むとみる。先進国との金利差縮小で通貨安が加速する事態を防ぐために、東南アジアの中銀は利上げを検討せざるをえなくなる構図だ。

ただ、こうした景気回復や金融政策のシナリオは、オミクロン型の感染拡大が長期化すれば変更を余儀なくされる可能性がある。東南アジアは今のところ、欧米に比べオミクロン型の感染者数は少ないものの、各国は感染拡大を防ぐために隔離なしの入国制度の停止などに踏み切っている。観光関連産業の回復の遅れは21年の成長率を下げる要因となったが、国境を越える移動の再開が遅れれば、22年も輸出増加による押し上げ効果をそぐことになりかねない。

ブラジルやロシアなどインフレ基調が続く新興国は既に21年から、繰り返し利上げに踏み切っている。ADBの予測では東南アジアの物価上昇率は22年も2.5%と比較的低く、インフレが利上げを急ぐ主因にはならないとみられる。中銀は自国通貨の相場や新型コロナの状況を注視することになる。』

22年に米仏豪韓で選挙 対中戦略に影響、日本も参院選

22年に米仏豪韓で選挙 対中戦略に影響、日本も参院選
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA216GD0R21C21A2000000/

※ 世界的に、「政治の年」だ…。

※ 特に、豪の選挙は注目だ…。

※ 労働党が勝つことになれば、クアッドとかオーカスとかの行く末が不透明になる…。

※ 米国の世界戦略にも、影響が及ぶだろう…。

※ そのご本人の米国も、中間選挙があるわけだしな…。

『2022年は主要国で大型選挙が相次ぐ年だ。米連邦議会中間選挙や韓国大統領選などの結果は各国の対中国戦略を左右しかねず、日本外交にも影響がある。今年を「首脳外交の1年にする」と表明した岸田文雄首相は夏の参院選が試練になる。

首相は21年の12月21日の記者会見で「できるだけ早く日米首脳会談は実現したい」と述べていた。発言からもうすぐ2週間になるがいつ首脳会談をするかは決まっていない。

今年は夏に参院選、11月には米中間選挙がある。日米の選挙を考えれば夏~秋に訪米する時間はとりにくい。選挙が外交日程を決める。

米中間選挙で下院は選挙区割りが変わる。共和党が地盤とするテキサスなどの州で定数が増える。民主党出身のバイデン大統領は足元の支持率が下落傾向だ。中間選挙で民主党が上下両院で過半数を失うとの観測がある。

前嶋和弘・上智大教授は「バイデン政権が外交に注力できるのは中間選挙後になるだろう」と指摘する。選挙を意識すれば、米国は秋まで内政一色になる可能性がある。

中国への圧力は維持する。一方で前嶋氏は「ウクライナへの侵攻が取り沙汰されるロシアへの対処にも向き合わなくてはいけない」と話す。

民主党が中間選挙で敗れればバイデン政権の求心力は落ちる。選挙結果次第で中国やロシアが間隙を突いて挑発行為をとる恐れがある。

中国も今秋、5年に一度の共産党大会がある。選挙ではないものの党最高指導部の人事がある。習近平(シー・ジンピン)国家主席は3期目の党総書記を務める公算が大きい。党大会前は体制への支持を求めて外交・安全保障で強硬になる懸念がある。

日本周辺では3月の韓国大統領選が重要になる。文在寅(ムン・ジェイン)氏の後継を選び、新政権が発足するのは5月になる。

韓国内の世論調査では革新系与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏と保守系野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が競う。

小此木政夫・慶大名誉教授は「どちらが勝つかで対日政策はかなり変わる」と語る。李氏は「日本はいつでも信用できる友好国なのか」と述べる。中国に傾斜するとの見方がある。

尹氏は文政権で日韓関係が悪化したと指摘し「歴史問題と経済、安全保障協力などを網羅した包括的解決を模索する」と説く。小此木氏は「尹氏になれば、日本の参院選後に日韓の関係改善の動きが活発になる展開もある」と分析する。

主要7カ国(G7)ではフランス大統領選が4月にある予定だ。世論調査の支持率は現職のマクロン氏が首位を保つ。中道右派の統一候補・ペクレス氏が対抗馬に浮上してきた。

ペクレス氏はイスラム過激派の国外追放や移民数の上限設定を唱える。極右「国民連合」党首のルペン氏、極右評論家のゼムール氏らも立候補を表明した。

フランスは22年上半期、欧州連合(EU)の議長国だ。フランス政治が右傾化で混沌とすれば、EUでの指導力にも影を落とす。

オーストラリアの総選挙は5月が有力とされる。モリソン首相は連立与党内の抗争で政権基盤が弱まっている。21年12月上旬の世論調査では「総選挙でモリソン首相が率いる保守政権が労働党に敗れる」との見通しも出た。

日本の外務省幹部は「労働党の一部には中国とのつながりを重視する傾向がある」と話す。豪州は日米印と「Quad(クアッド)」の枠組みがある。フランスと同様、日本が対中国の安保面で協力を期待する国だ。

クアッド首脳会議は22年に日本で開催する。参院選と米中間選挙を避けて春か冬が候補とされる。豪州の総選挙の時期を除くなら日本の外務省にとっては難しい日程調整になる。』

ロシア大統領「国益と安全保障確保」 新年メッセージ

ロシア大統領「国益と安全保障確保」 新年メッセージ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB010JN0R00C22A1000000/

『【モスクワ=共同】ロシアのプーチン大統領は12月31日深夜(日本時間1月1日早朝)、新年に当たっての国民向けメッセージを発表した。新型コロナウイルス問題などの困難を克服するため、国民が力を合わせたことが「最も重要だった」と2021年を振り返り「われわれは一貫して国益を守り、安全保障を確保した」と強調した。

「難しい課題に直面したが、連帯して問題を解決した。市民の努力の結果だ」と謝意を表明。「このような困難な時には、一人一人の計画を実現することで社会と祖国に貢献することが大切だ。それが新たな可能性を開くことにつながる」と述べた。』

原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針

原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0204G0S2A100C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は1日、原子力と天然ガスを脱炭素に貢献するエネルギーと位置づける方針を発表した。一定の条件下なら両エネルギーを「持続可能」と分類し、マネーを呼び込みやすくする。世界の原子力政策にも影響を与える可能性がある。

「EUタクソノミー」は、どんな事業が持続可能(サステナブル)かを分類する制度だ。EUが掲げる「2050年までに域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」ことを柱とする環境関連の目標に、貢献する経済活動かどうかを示す基準と言える。

この基準に沿った事業には投資家は安心して投資できる一方、EUには民間マネーを呼び込み、排出削減目標の達成を後押しする狙いがある。欧州委は排出削減目標の達成には30年までの毎年、官民合わせて少なくとも3500億ユーロ(約46兆円)の追加投資が必要とはじく。

持続可能と分類されない事業が禁止されるわけではないが、資金集めなどで不利になる可能性が高い。EUは企業や金融機関にタクソノミーの基準を満たす事業や商品の売上高に占める割合などの情報開示を求める構えで、同制度を前提としたルール作りがすでに始まっている。環境配慮をうたっているにもかかわらず、実態は伴っていない「グリーンウオッシュ」を排除する狙いもある。

自動車の二酸化炭素(CO2)排出など気候変動関連の基準は公表済みで、一部は適用が始まった。だが原子力と天然ガスは関係者の対立から合意に至っていなかった。原子力発電は稼働中にCO2を排出しないが、有害な放射性廃棄物が出る。天然ガスは石炭に比べればクリーンだが、CO2を出すのには変わりない。

欧州委は1日の発表文で未来へのエネルギー移行を促進する手段として「天然ガスと原子力の役割がある」として、両エネルギーを持続可能と位置づける考えをにじませた。

日本経済新聞が入手した原案によると、原子力は生物多様性や水資源など環境に重大な害を及ぼさないのを条件に、2045年までに建設許可が出された発電所を持続可能と分類する方針を示した。

天然ガスは①発電1キロワット時あたりのCO2排出量が270グラム未満②CO2排出の多い石炭の代替とする③30年までに発電所の建設許可を得る――などを条件に持続可能と認める。

原子力依存度の高いフランスやフィンランドに加え、石炭への依存度が高い東欧諸国が原子力やガスをタクソノミーに含めるよう訴えていた。ポーランドは電源構成に占める石炭の割合が約7割を占め、排出減には原子力とガスが欠かせないと主張していた。

欧州委は昨年12月31日から加盟国や専門家との協議を始め、1月中にも欧州委案を公表する考えだ。その後、加盟各国との議論や欧州議会での審議を経て成立する流れだが、曲折がありそうだ。

例えば脱原発を決めたドイツやオーストリアなどが原子力を持続可能と分類することに反対しているほか、欧州議会でも緑の党を中心に根強い反発がある。欧州では環境系の非政府組織(NGO)の発言力も大きい。

EUタクソノミーは域内で事業をする企業などが対象になる。だが影響は日本を含む世界に及ぶ可能性がある。EUの基準を満たさない事業や商品はEUでは価値が下がるのは確実で、EUに売り込みにくくなるばかりか、EUの投資家からの資金を集めにくくなる。

【関連記事】

・EUタクソノミーとは 環境配慮の経済活動を認定
・欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で、日本は停滞 』

台湾・蔡総統、中国にクギ「軍事衝突は絶対避けるべき」

台湾・蔡総統、中国にクギ「軍事衝突は絶対避けるべき」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM010GQ0R00C22A1000000/

『【台北=中村裕】台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は1日、新年の談話を発表した。最大の懸案である中国について「(中台の)両岸問題の解決には、軍事的な衝突は絶対に避けなければならない」と語った。さらに「中国が状況を見誤らず、軍国主義の拡大に突き進むことも防ぐように注意を促していく」と述べた。

蔡氏の談話は例年に比べると、中国への直接的な批判は抑えられ、中国に自制を促すことに重点を置く内容となった。

蔡氏は談話で「軍事衝突は(中台の)経済の安定に影響を与える」と指摘した。そのうえで「(中台が)人々の生活に配慮し、国民感情を安定させる努力をしてこそ、双方が平和的に問題に直面する土壌ができ、解決策を見いだす余地と雰囲気が生まれる」と述べた。

中国は2021年、台湾への軍事的圧力を強め、防空識別圏に延べ約1000機の戦闘機など軍機を送り込んだ。侵入回数は1年で230日以上となり、台湾人の中国に対する感情が一段と悪化した。

こうした状況も踏まえ、蔡氏は「我々は苦労して手に入れた民主的な自由を大切に守らなくてはならない。そうすることで台湾はより良くなり、世界は中国の影から抜け出す勇気を台湾が持っていること、圧力に屈しないことも知ることができる」と述べた。

蔡氏は、中国に依存する経済からの早期脱却を念頭に、国際社会との連携についても言及した。「米国との対話を深め、将来の自由貿易協定(FTA)締結に向けた基盤を作っていく。環太平洋経済連携協定(TPP)加盟への支持が得られるように最大限の努力もしていく」と述べ、国際社会にアピールした。

一方、中国の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は、12月31日に公表した年頭所感で、国際社会から関与が強まる台湾問題には、一歩も譲らない考えを改めて強調した。「祖国の完全統一の実現は、(中台)両岸の同胞にとって共通の願いだ」と述べた。

【関連記事】台湾・ウクライナに防衛支援 米国防権限法が成立 』

習氏、天安門弾圧を称賛 「国家守った英断」と演説

習氏、天安門弾圧を称賛 「国家守った英断」と演説
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0227G0S2A100C2000000/

『【北京=共同】中国で1989年に民主化運動が武力弾圧された天安門事件について、習近平(シー・ジンピン)国家主席が昨年11月の演説で、共産党と国家を守るための歴史的な英断だったと称賛していたことが分かった。米国と戦った朝鮮戦争と並ぶ国家的危機を切り抜けたと位置付けた。党の政治理論誌「求是」が1日伝えた。

演説は昨年11月11日に党が40年ぶりに「歴史決議」を採択した際に行った。習氏は80年代末から東欧や旧ソ連で次々に社会主義体制が崩壊し「中国でも89年に深刻な政治風波(騒ぎ)が発生した」と天安門事件に言及。「党は断固とした措置で、党と国家の生死存亡がかかる闘争に打ち勝った」と述べ、弾圧を正当化した。

習氏は、当時の最高実力者の故鄧小平氏が「中国の社会主義が倒れさえしなければ、社会主義は世界で生き残れる」と語ったと紹介。「あの時のドミノ倒しのような変化の中で中国共産党による指導体制が崩れれば、中華民族復興の歩みは断たれただろう」と述べた。

50年代の朝鮮戦争も、国力で圧倒的に勝る米国による武力の脅威に直面した国家的危機だったと指摘。「各世代にそれぞれの歴史的責任がある」と強調し、今後も党や政権を脅かすリスクと闘うべきだとの考えを示した。』

レイ・ダリオ氏「中国は国力上昇のサイクルにある」

レイ・ダリオ氏「中国は国力上昇のサイクルにある」
Foresight 2022 (1)ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN304BA0Q1A231C2000000/

『新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」が猛威をふるう中で、世界の政治や経済の混迷が続くまま迎えた2022年。世界や市場はどこへ向かうのか、有識者に意見を聞く。第1回は世界最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏。米中関係を聞いたところ「国の歳入が歳出を上回り、教育水準や生産性も向上している」などと中国の国力上昇を予想した。

――米国の国力低下を指摘しています。

「実質金利がマイナスの状態で国がお金を印刷して市場にお金があふれ、インフレ懸念も高まっている。世界の基軸通貨ドルの購買力が低下し、ドル建て債券を保有する世界各国の投資家にとっても弊害であり、米国の国力の弱体化を反映している」

「これに100年に一度しか起こらないパンデミックや洪水、干ばつといった自然災害も相次ぎ、米国の国政へのリスクが拡大している。国内の秩序を保つシステムもうまく機能していない。歴史を振り返るとこうした問題に直面する国家は内戦や戦争に突入するのが常だ。米国は内戦・戦争の段階にまでは達していないが、その前の財政上のリスク、政治的リスク、社会的リスクに直面している最中だ」

――一方で中国の覇権拡大を予想するのはなぜですか。

「国の歳入が歳出を上回り、教育水準や生産性も向上している。国内の社会的秩序も落ち着いており、紛争も少ない。社会主義が資本主義よりも優れているといった議論をするつもりはない。ただ、米国の民主主義が試練に直面していることは確かだ」

「私は紀元600年代の唐時代以降の中国の歴代王朝を研究をした結果、中国人は歴史から教訓を得るのが得意だということを知った。皇帝や指導者の興隆は国の浮き沈みのサイクルの一舞台を担うのにすぎない。現在の習近平(シー・ジンピン)氏もサイクルの1つにいるわけだが、そのサイクルは国力の上昇傾向の段階にある」

――中国政府によるハイテク企業の規制強化や子供のビデオゲーム使用時間の制限など政府のコントロール強化への批判もあります。

「中国国内の問題は外国人には理解が難しいだろう。私は過去34年間にわたり中国政府幹部との関係を築いてきた立場から、彼らの言い分は米国が個人主義の国であるのに対し、中国は国家が家族の延長であり、指導者はしつけの厳しい親だと説明するのがわかりやすいと考える」

「だからこそ、ビデオゲームの使用時間に干渉したり、データを扱うハイテク企業に対して規制が追いつかないほどのスピードで金融サービス事業を拡大することを統制したりしようとしている。馬雲(ジャック・マー)氏といった億万長者の起業家が力をつけすぎて国に害を及ぼすような間違いを犯さないように親の立場で監督している。もっとも、国家の共通の繁栄を享受することが、鄧小平氏以前の共産主義に戻るということではない」

――中国政府による人権侵害への批判もあります。

「人権問題が重要でないと言っているわけではない。儒教思想に裏付けられた厳しい親としての中国政府を私が支持しているわけでもない。私は米国人であり、アメリカンドリームを体現し、我が国の政治システムを信奉している。ただ、彼らのシステムもよく理解している」

「中国の人権問題はわがヘッジファンド会社だけが直面している問題ではなく、中国に投資する世界の4万人超の投資家、数え切れない銀行や米国内外の企業が直面する問題でもある。しかし、米国人と中国人がビジネスで相互につながりを持っているのは現実であり、それを引き離すのは双方に有害だ。米中の相互理解はモノを生産する直接的な相乗効果に加え、世界の平和と繁栄につながると信じている」

――米国が国内秩序を回復し、中国に対峙する国力をつけるためにはどうすべきですか。
「両極が歩み寄る超党派の政策が重要だ。それには政治的中立派が力をつけなければならない。政治的分断をこれ以上進めてはならない。政治システム以上に人の力が重要であるという原理を私は信じている」

「同時に教育システムの向上が必要だ。教育水準は国力に反映する。学校で学ぶ科目だけでなく、文化・教養、礼儀など広義にわたる教育を意味する。最高の才能は世界のどこから輩出されるかわからないだけに、できるだけ多くの人材を国外から受け入れることも重要だ。国内のシステムが公正で教育水準が高い国に世界の優秀な才能が集まる」

「米国は世界に名だたる素晴らしい大学がある一方で、国内の教育の質の格差は大きい。富裕層は子供の教育にお金をかけて質の高い教育を施すことができるが、低所得層はそれができない。公的教育は州ごとの不動産税で賄われるだけに、富裕層の住む地域の公立学校の水準は高い一方で、貧困層の地域の公立学校は恵まれない。公的教育を取り巻く構造問題を解決することも重要だ」

(聞き手はニューヨーク=伴百江)

Ray Dalio 世界最大のヘッジファンド運用会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者。昨年末に新著「Principles for Dealing with the Changing World Order(変化する世界秩序への対応原則)」を出版した。「現在起きていることは、過去に何度も起きている」という事実をベースに、歴史から現在にかけて、国家が直面している問題を解決しようという狙いで執筆したという。72歳。』

Twitter、米議員アカウント永久停止 コロナ誤情報拡散

Twitter、米議員アカウント永久停止 コロナ誤情報拡散
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN022HS0S2A100C2000000/

『【シリコンバレー=白石武志、ニューヨーク=大島有美子】米ツイッターは2日、新型コロナウイルスの誤情報の拡散に関する規約に繰り返し違反したとして、米南部ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党)のアカウントの1つを永久停止したと明らかにした。同議員側は「ビッグテックは真実を止めることはできない」と反発している。

ツイッターの広報担当者は声明で「我々の新型コロナ誤情報規約に繰り返し違反した」ことを理由に、グリーン議員がもっとも頻繁に投稿していたアカウントを永久停止したと明らかにした。米メディアによると、同氏は「コロナワクチンによる死亡者数が極めて多い」など反ワクチンの投稿や、肥満や高齢者でない限りコロナは危険ではないといった誤情報の投稿を繰り返していた。同議員が持つ米議会の公式アカウントは使用できる状態となっている。

グリーン氏の米議会公式アカウント

ツイッターは新型コロナの誤情報に関する規約に違反した場合、違反内容の重大さと種類などに応じて、アカウントを凍結する措置を取っている。凍結期間は違反回数に応じて段階的に引き上がり、違反を繰り返すと永久停止の措置を適用する仕組みを導入している。
グリーン氏は2日、「ツイッターは米国の敵で、真実を扱うことができない」と反論する声明を出した。「私は真実と人々の側に立つ。我々は克服する」と述べ、対抗姿勢をあらわにした。

ツイッターは2021年1月6日の米連邦議会議事堂での暴動事件で、暴力を扇動したとして、事件直後にトランプ米大統領(当時)をツイッター上から永久追放した。8800万人のフォロワーがいた現職大統領のアカウント停止は大きな論争を巻き起こした。現職の連邦議会議員や政府要人のアカウント停止は、トランプ氏以来とみられる。

米南部フロリダ州は21年5月、州議会候補者らのアカウントをSNS運営企業が永久凍結した場合に罰金を科す新法を制定。IT(情報技術)大手のらの業界団体は違憲として同州を提訴するなど法廷闘争に発展している。

SNSの運営企業は、通信品位法230条によって、利用者の投稿に対する責任を原則問われずに済む一方で、削除する権利も認められている。米議会では、同法律を改正しようとする動きがある。グリーン議員のアカウント停止によって、議会でSNSの扱いを巡る論争が広がる可能性がある。』

米大統領、ロシアに改めて警告 ウクライナと電話会談

米大統領、ロシアに改めて警告 ウクライナと電話会談
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL030CM0T00C22A1000000/

『【ワシントン=共同】バイデン米大統領は2日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、ロシアがウクライナに侵攻した場合には「米国と同盟国、友好国は断固とした措置を取る」と伝え、ロシア側に改めて警告した。ホワイトハウスが発表した。9日から米ロの戦略的安定対話など欧米とロシアの協議が始まるのを前に、ウクライナ側と対応などを擦り合わせたとみられる。

【関連記事】
・米ロ首脳異例の再協議 プーチン氏「制裁なら関係断絶」
・プーチン氏、動かぬ米欧にいら立ち 危機打開見えず

ホワイトハウスによると、電話会談で両首脳は、米国や北大西洋条約機構(NATO)などのロシア側との対話について、緊張緩和に向けた外交努力として支持する考えで一致した。
その上でバイデン氏は「ウクライナのことをウクライナ不在の場では決めない」との立場を強調した。NATOの東方不拡大の法的保証を求めるロシアに対し、ウクライナなどの意向を無視して決めることはないとの見解を重ねて示した。

親ロシア派武装勢力が実効支配するウクライナ東部ドンバス地方を巡り、親ロシア派とウクライナ軍との停戦や紛争解決の手順を取り決めた2015年のミンスク合意履行の重要性も指摘した。

バイデン氏は昨年12月30日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナに侵攻した場合「重い代償を払うことになる」と警告していた。』

中国、過熱する忠誠心競争 党大会控え

中国、過熱する忠誠心競争 党大会控え
潮流2022・動かす力②
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM263MU0W1A221C2000000/

『中国では秋に共産党指導部の人事を決める5年に1度の党大会が控える。習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の側近らが最高指導部入りを目指してしのぎを削っている。習氏の権力が強まるあまり、忠誠心競争の様相を呈している。

2021年11月の米中首脳によるオンライン協議。中国側の会場となった北京の人民大会堂で、習氏の右隣に座り身じろぎ一つしないのが日本の官房長官に相当する丁薛祥・共産党中央弁公庁主任だった。習氏がバイデン氏にほほ笑みかけると丁も首を傾け微笑をみせる。「習氏の側近中の側近」といわれ、挙措動作も一心同体だ。

党序列25位以内の政治局員で1962年生まれと比較的若い。習氏が2007年に上海市トップの上海市共産党委員会書記に就任した際に秘書長として支えた。17年に中央委員候補から中央委員を飛び越えて政治局員に2階級特進した。

黒子に徹するが、習氏の「危機」には迅速に動いてきた。18年夏に習氏の個人崇拝キャンペーンに党内で反発が強まった際には「旗幟(きし)を鮮明にして政治にこだわらなければならない」と党と政府機関に伝達し、習氏への忠誠を求めた。

21年7月には小中学生の塾への規制を強める習氏肝煎りの教育改革を巡り、国務院(中国政府)とともに、中央弁公室の名前で徹底を求める通知を出した。批判を招きかねない政策には自ら泥をかぶる姿勢もみせる。

丁氏の弱点は最高指導部入りの登竜門とされる地方のトップをひとつも経験していない点だ。1強を固める習氏が「慣例破り」で引き上げるのか関心が集まる。
陳敏爾・重慶市書記=新華社ホームページより

12月17日。重慶市で模範的な道徳を示した市民を表彰する会議が開かれた。主催した重慶市のトップ陳敏爾・重慶市党委員会書記は「ここ数年、我々は習氏が道徳心の向上を巡り示した指示を深く学んでいる」とあいさつした。

「あえて目立たず、とことん忠誠を尽くすのが一貫した政治姿勢だ」。重慶市のベテラン党員がこう評するのが陳氏だ。

習氏が浙江省トップのときの宣伝部長で、習氏が地元紙の浙江日報に連載したコラム「之江新語」のゴーストライターといわれる。習氏がお気に入りのコラムで、書籍にもなった。いまでも党の最高指導部が執務室を構える中南海の近くの書店で平積みで置かれる。

陳氏が注目されるようになったのは15年7月に貴州省トップの貴州省党委員会書記に就任したためだ。貴州省は中国で所得の低い世帯の多い地域で知られる。それだけに将来有望な幹部候補生を鍛える場として位置づけられてきた。

陳氏はいま最高指導部入りが「当落線上」といわれる。重慶、貴州と2カ所のトップを務め、最高指導部入りの資格は満たしつつある。

重慶は前のトップの孫政才氏、その前の薄熙来氏ともに逮捕されるという「政変」が相次いで起きている因縁の地だ。かつて公安(警察)部門で絶大な権力を振るい、失脚した周永康氏の影響力がいまもなお残っているとされる。陳氏が周氏の影響力を断ち切った
と習氏が判断するかが注目点になる。(北京=羽田野主)』

再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示

再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231B10T21C21A2000000/

『政府は再生可能エネルギーの普及のために次世代送電網を整備すると打ち出す。都市部の大消費地に再生エネを送る大容量の送電網をつくる。岸田文雄首相は2022年6月に初めて策定する「クリーンエネルギー戦略」で示すよう指示した。総額2兆円超の投資計画を想定する。政権をあげて取り組むと明示して民間の参入を促す。

【関連記事】北海道―本州に海底送電網構想 「洋上風力銀座」現実味

日本は大手電力会社が各地域で独占的に事業を手掛けてきた。送配電網も地域単位で地域間の電力を融通する「連系線」と呼ぶ送電網が弱い。

再生エネの主力となる洋上風力は拠点が地方に多く、発電量の変動も大きい。発電能力を増強するだけでなく消費地に大容量で送るインフラが必要だ。国境を越えた送電網を整備した欧州と比べて日本が出遅れる一因との指摘がある。

①北海道と東北・東京を結ぶ送電網の新設②九州と中国の増強③北陸と関西・中部の増強――を優先して整備する。①は30年度を目標に北海道と本州を数百キロメートルの海底送電線でつなぐ。

平日昼間に北海道から東北に送れる電力量はいま最大90万キロワット。新たに北海道から東京まで同400万キロワットの線を設ける。合わせて30年時点の北海道の洋上風力発電の目標(124万~205万キロワット)の3~4倍になる。

九州から中国は倍増の同560万キロワットにする。10~15年で整備する。

送電網を火力発電が優先的に使う規制を見直し、再生エネへの割り当てを増やす。送電方式では欧州が採用する「直流」を検討する。現行の「交流」より遠くまで無駄なく送電できる。

新規の技術や設備が必要になり、巨大市場が生まれる可能性がある。一方で国が本気で推進するか不透明なら企業は参入に二の足を踏む。

菅義偉前首相は温暖化ガス排出量の実質ゼロ目標などを表明し、再生エネをけん引した。岸田氏も夏の参院選前に「自身が指示した看板政策」として発表し、政権の公約にする。国の後押しを約束すれば企業も投資を決断しやすい。

電気事業者の関連機関の試算では投資は総額2兆円超になる。主に送配電網の利用業者が負担する。必要額は維持・運用の費用に利益分を加えて算定する。欧州と同様、コスト削減分を利益にできる制度も導入して経営努力を求めながら送電網を整える。

英独やスペインは再生エネの割合が日本の倍の4割前後に上る。欧州連合(EU)は復興基金を使って送電網に投資し、米国は電力に650億ドル(7.4兆円)を投じる。

【関連記事】
・エネ転換で製造業後押し 経産省、6月に工程表
・再生エネ活用へ火力発電抑制 経産省、供給超過時に 』

『 多様な観点からニュースを考える

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高村ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター 教授
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別の視点

2020年8月から、電力広域的運営推進機関(OCCTO)で、送配電網=系統をより長期的な視野をもって効率的に「プッシュ型」の系統整備を行うためのマスタープランが検討されている。

2021年5月の中間整理 https://www.occto.or.jp/iinkai/masutapuran/2021/files/masuta_chukan.pdf にもあるように、複数のシナリオ、想定を置いて検討を行い、これらの増強候補案は複数のシナリオで費用対効果が大きいとされた。

広域融通の促進は、再エネ導入拡大、CO2削減効果だけでなく、上記の費用便益分析には含まれていないが、需給逼迫時、災害時などのレジリエンスも高めることが期待できる。事業コストの精査は不可欠だが、事業と投資の経済効果を含め、長期でマクロな観点から国は明確な方針を早く示してほしい

2022年1月3日 14:45

竹内純子のアバター
竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

日本は小さな系統の集合体なので送電線のボトルネック解消は重要ですし、再エネを活用する良いことのようにみえるのですが、無駄な設備投資をしそうな匂いがかなり強い。

電力広域的運用推進機関でマスタープラン検討することになっているので、その場を利用してオールジャパンで、様々なシナリオに対するシミュレーションや費用便益評価をやり、それを踏まえた投資計画であるべき。

本来、再エネは「地産地消」をうたい文句にしていたのであり、そうした動きも徐々に生まれつつある。そうした動きにこそ新しい産業の芽がある。安定供給とコスト低減を両立するかに知恵を絞ることが大切で、まずは費用便益評価に基づいた議論をすべき。

2022年1月3日 11:49 』

「心の資本」は十分ですか さらばテイラーシステム

「心の資本」は十分ですか さらばテイラーシステム
成長の未来図②
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL066RJ0W1A201C2000000/

『「他人のいいところを探しましょう」「15分だけ昼寝をしてみては」。毎朝、スマートフォンやスマートウオッチにメッセージが届く。日立製作所の子会社、ハピネスプラネット(東京都国分寺市)のサービスだ。

ベースになるのは「人の幸福度を測る」という独自技術。人が幸せを感じているかは呼吸や心拍数、筋肉の微妙な伸縮など無意識の変化に表れる。スマホアプリに搭載したセンサーが10秒ごとにデータを取得する。

幸福度を改善

約15年間にわたって集めた延べ1千万日分の実証データを活用する。人工知能(AI)が個人別にはじきだす幸福度に応じ、その改善に役立つメッセージを自動的に作成して送信する。

実証実験では「心の資本」と呼ぶ指標が平均33%向上した。米ネブラスカ大のフレッド・ルーサンス名誉教授らが編み出した指標で「自信を持つ」「楽観的に考える」など複数の要素を数値化する。指数の33%向上は営業利益の10%ほどの押し上げに相当する。

自動車などに代表される大量生産手法の確立により歴史上でも類を見ない経済成長を謳歌した20世紀。原動力の一つとなったのが同世紀初頭に米経営学者フレデリック・テイラーが提唱した「科学的管理法」だ。ストップウオッチなどを用いて生産工程を科学的に分析し、運営者や作業員の経験と勘に頼っていた工場運営を大幅に効率化させることを提唱した。

「テイラーシステム」とも呼ばれる手法の導入で製造業の生産性は飛躍的な改善を遂げた。しかし経済の主役がモノからアイデアやノウハウといった「知」に移るにつれ従来のやり方では成長の実現が困難になった。

典型が20世紀の製造業の競争で優位に立っていた日本だ。モノづくりの現場が中国など新興国に移る中、「知」の競争に対応できる企業システムの構築に出遅れた。

熱意を持って仕事をする社員は5%。米ギャラップの調査で日本は世界の最低水準に沈む。30%を超える米国、20%前後の北欧諸国を大幅に下回る。「考える力」が問われる時代に社員が仕事に情熱を持てない状況では企業の成長は望めない。

パーソル総合研究所と慶応大の前野隆司研究室の調査では幸せの実感が低い人が多い企業は減収が多かった。社内の幸福度の低さが企業の成長を阻み、それが社員の不満をさらに高めかねない。

そうした状況を避けようと、三菱UFJ銀行など有力企業が相次ぎ社内の幸福度を調べる仕組みを取り入れ始めた。従業員の「気持ち」の領域にまで踏み込むことに賛否はあるかもしれないが、「心の資本」の再構築なしには成長の未来図が描けないという危機感がある。
知の競争へ改革

知の競争の時代にふさわしい職場のあり方や社員の働き方、報酬体系をどう確立していくか。求められるのはテイラーシステムに代わる21世紀のシステムの構築だ。

米グーグルは一人ひとりの働く喜びを重視するよう唱えたアリストテレスにちなみ、「プロジェクト・アリストテレス」と呼ぶ社内調査を10年前から実施して企業風土改革を進めてきた。

生産性が高くイノベーションを生む職場とそうでない職場との違いや要因を調べると「心理的安全性」が影響するとわかった。自由にものが言えたり組織に認められて安心感を覚えたりすることを指す。グーグルは社員のパフォーマンスに関係するこうした要素を重視する仕組みを磨いた。

企業収益が低迷し社員の賃金も増えない。それが社員の仕事への意欲を萎えさせ生産性も上がらない――。そんな悪循環から抜け出す第一歩は挑戦が報われる仕組みを整え働き手のやる気を覚醒させることから始まる。

【前回記事】資本主義、創り直す 解は「フレキシキュリティー」に

【ビジュアルデータ】豊かさの現在地 経済成長、日本と世界

成長の未来図特集ページはこちら https://www.nikkei.com/theme/?dw=21122702&n_cid=DSREA_NY2022 』

資本主義、創り直す 解は「フレキシキュリティー」に

資本主義、創り直す 解は「フレキシキュリティー」に
成長の未来図①
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL065U70W1A201C2000000/

『資本主義が3度目の危機にぶつかっている。成長の鈍化が格差を広げ、人々の不満の高まりが民主主義の土台まで揺さぶり始めた。戦前の大恐慌期、戦後の冷戦期と度重なる危機を乗り越えてきた資本主義は再び輝きを取り戻せるのか。成長の未来図を描き直す時期に来ている。

【ビジュアルデータ】豊かさの現在地 経済成長、日本と世界

北欧の新陳代謝

スウェーデン北部シェレフテオ。静かな町に新産業が立ち上がる。立役者はノースボルトという名の新興電池メーカー。今年は大規模工場を本格稼働させ、豊富な水力発電を生かしたグリーンな電池を量産する。

北欧は医療や教育の無償化など福祉国家のイメージが強いが、国民が挑戦しやすい環境も備える。ピーター・カールソン最高経営責任者(CEO)はスウェーデンのエリクソンや米テスラなどを経て2016年にノースボルトを設立。こうした人材を生み出す土壌が北欧にはある。

【関連記事】「心の資本」は十分ですか さらばテイラーシステム

代表はデンマークの「フレキシキュリティー」。「柔軟性(フレキシビリティー)」と「安全性(セキュリティー)」を組み合わせた政策は解雇規制が緩やかで人員削減がしやすい一方、学びなおし(リスキリング)や再就職の支援など保障を手厚くする。1990年代にデンマークが導入し2000年代後半から欧州各国に広がった。

北欧の失業率は5~8%で推移し2~3%の日本より高いが、次に働く機会が見通しやすいため不安は小さい。いま貧しくても豊かになれるチャンスも多い。所得下位20%の家庭に生まれた人の最終的な所得水準をみると、生まれたときより上位に上がれる人の割合はスウェーデンで73%と、米国(67%)より高いといった研究もある。

00年から19年の実質国内総生産(GDP)の年平均成長率をみると、スウェーデンは2.2%、フィンランドは1.4%、デンマークは1.3%伸びた。一方、所得格差の大きさを示すジニ係数(最大は1)は直近で0.26~0.28にとどまる。「個人主義と共助がよいバランスにある」(京都大学の内田由紀子教授)。競争を促しつつ再挑戦を容易にすることで格差を抑えながら成長する好循環だ。

一方、米国は矛盾を抱える。GDP成長率は2.0%だが、ジニ係数が0.40と高く格差が広がる。所得別人口の上位1%が稼いだ額の合計が全体の所得に占める比率は過去30年で14%から19%にまで上昇した。それに対し、下位50%は16%から13%に下がった。富める者が富み、持たざる者が貧しくなる結果、幸福度は北欧を下回る。

寿命の延びが止まったのは象徴的だ。薬物・アルコール中毒や関連自殺で10年以降、計100万人以上が「絶望死」に至った。寿命は14年の78.9歳で頭打ち。アンガス・ディートン米プリンストン大学教授は製造業の衰退が「人々のプライドと自尊心を奪った」とする。絶望死の4割弱は30~50代の白人男性。製造業を支えた中間層が多い。

世界の資本主義は歴史的に何度も危機に見舞われた。初めは1929年の米株価暴落を引き金とする大恐慌だ。英経済学者ケインズの理論に沿って「大きな政府」が需要を作り出し、景気を刺激する方法で乗り切った。

米国とソ連の対立を軸とする冷戦期に「第2の危機」に襲われる。財政膨張や過度な規制など「大きくなりすぎた政府」が経済の活力を奪い、ベトナム戦争など共産主義勢力に対抗するコストが資本主義の疲弊に拍車をかけた。新自由主義が登場し、レーガノミクスやサッチャリズムの「小さな政府」が民間の競争を促して成長力を取り戻すと、ソ連は崩壊し民主主義に勝利をもたらした。

「第3の危機」に

いま直面するのが「第3の危機」だ。過度な市場原理主義が富の偏在のひずみを生み、格差が広がる。格差は人々の不満を高め、それが民主主義の危機ともいわれる状況を生み出した。資本主義と民主主義の両輪がうまく回らなくなり、世界では中国を筆頭とする権威主義が台頭する。

混沌とする世界で日本は生き残れるのか。現状は心もとない。GDP成長率は年平均0.7%と北欧を下回るのに、ジニ係数は0.33と北欧より高く、幸福度は低い。

「何度も聞かれてバカバカしい」「私は好奇心にフタをしています」

将来の夢を聞くと、こう答える若者が多い。ときに「ドリハラ(ドリーム・ハラスメント)だ」と不快感を示す。中高生を調査する多摩大学勤務の高部大問氏は「多くの若者は人生を窮屈に生きている」と話す。

バブル崩壊から30年、日本経済は低空飛行が続く。雇用の安全を重視しすぎた結果、挑戦の機会を奪われた働き手はやる気を失う。行き過ぎた平等主義が成長の芽を摘み、30年間も実質賃金が増えない「国民総貧困化」という危機的状況を生み出した。

それなのに民間企業を縛る多くの規制が温存され、社会保障改革の遅れで財政膨張にも歯止めをかけられない。日本は世界から周回遅れで「第2の危機」にはまり込んだままだ。北欧のフレキシキュリティーと比べれば、安全性はあっても柔軟性が決定的に欠ける。この弱点の改革にこれから進むべき道がある。

資本主義の苦悩を横目に中国は急成長を遂げてきた。GDP成長率は日米欧をはるかにしのぐ年平均9.0%に達する。だが成長の裏で格差が広がり、幸福度は日米欧を下回っている。習近平(シー・ジンピン)指導部は文化大革命をほうふつとさせる「金持ちたたき」に動き、最新のデジタル技術も総動員した「統制」で資本主義と一線を画そうとし始めた。

一人ひとりの個人が自由に富と幸福を追求することで社会全体の発展を支えてきた資本主義は21世紀の新たな挑戦に打ち勝てるか。世界は大きな岐路に立っている。

西岡貴司、江藤俊也、押野真也、北爪匡、茂木祐輔、高橋元気、松井基一、村岡貴仁、松尾洋平、井上孝之、藤田祐樹、松浦奈美、真鍋和也、須賀恭平、宗像藍子、鈴木菜月、加藤宏志、吐田エマ、大島裕子、仙石奈央、木原健一郎、横山龍太郎、前田健輔、斎藤一美、松島春江、湯沢華織、碓井寛明、小滝麻理子、清水石珠実、芦塚智子、川手伊織、花田亮輔、深尾幸生が担当します。

【関連インタビュー】

・三密から「三散」の時代へ 作家・五木寛之氏
・幸福度は社会の「体温」 キャロル・グラハム氏
・成熟社会の土台づくり 内科医・占部まり氏

成長の未来図特集ページはこちら
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多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

今村卓のアバター
今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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分析・考察

労働集約型の製造業は質の高い雇用を創出しやすいために、各国が育成に力を入れ国家間の競争を招きやすく、労働コストが上昇した先進国ほど敗れやすい。

国や労働者にとってはこの製造業は安定的でなく、むしろ持続性を欠く。米国、日本、韓国と製造業の拠点が移り、最近の中国も賃金上昇から競争力を失いつつあると聞くと、そう考えます。

2010年代に米国の労働者の苦難の議論を現地で頻繁に見聞きしたため、ディートン氏の主張には納得します。ただ、持続性を欠く製造業に頼る社会の安定も無理だったと思います。米国も日本も製造業復活を求める主張は郷愁も混じり支持を得やすいですが、その持続性の欠如を厳しく問うべきだと思います。

2022年1月1日 15:42 (2022年1月1日 15:44更新)

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竹中治堅
政策研究大学院大学 教授
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分析・考察

日本の低成長・所得伸び悩みの原因として他の方々の指摘に歴史的要因と政治構造的要因を加えたい。

歴史的遠因としては85年のプラザ合意以降のバブルと崩壊、その後の金融不況、デフレがある。不況・デフレは財政赤字を悪化させ、財政支出組み替えによる、職業訓練などの現役世代向け社会保障の充実や科学技術研究関連予算などの投資予算の増額を困難にした。
政治構造的要因としては、日本の国会は一部利益集団が新規の政策立案を阻止することを容易にする仕組みになっており、このため、成長につながる様々な規制緩和が困難になっている。

また国政選挙の頻度が諸外国に比べあまりにも多く、税制改革や社会保障制度改革を困難にしている。

2022年1月1日 17:40 (2022年1月1日 22:38更新)

永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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別の視点

日本経済はかねてから総需要の低迷から生じる低インフレ・低成長の問題を抱えており、コロナ化はそれをさらに悪化させ、回復には他国よりも時間がかかっています。

このため、政府は効果的な需要喚起策を実現して、マイルドなインフレを目指すことを明確にする必要があり、そのために財政収支改善のペースを落としてでも、効果的な財政政策で総需要とインフレを後押しすることを優先すべきでしょう。

2022年1月1日 15:23

岩間陽子のアバター
岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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ひとこと解説

日本はいろんな面で、アングロサクソンの自由主義と北欧系の保障政策がごった煮になっているのですが、北欧系のセキュリティーを実現するためには、税制改革も必要です。

北欧諸国では軒並み間接税は20%以上です。それを自分たちの住みたい社会を維持するコストとして受け入れるだけの社会的コンセンサス形成が必要です。

いいとこどりのばら撒き政策で将来世代につけを回すのではなく、コストとベネフィットをきちんと議論して、パッケージとして国民の合意を促していく政治過程を望みます。

2022年1月1日 12:27

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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今後の展望

世界では感染症、気候変動、格差、インフレ、高齢化、債務拡大など沢山の課題を抱え、経済構造は大きく変化している。

そのため経済政策もフレキシビリティが重要になっている。従来の考え方にこだわり過ぎて根本的な変化をとらえきれない政策では民間活動を下押しすることになりかねない。

今後の世界で重要になる政策は、「財政政策」では気候変動・環境に対応する税・補助金体系・公共投資・環境債の発行、およびコロナ危機のような危機時に迅速に発動できるターゲットを絞ったデジタル型の給付であろう。

「金融政策」では物価安定化のもとで気候変動対応とサステナブル市場の拡大のために中央銀行として最大限努力していくべきでしょう。

2022年1月1日 11:39

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室橋祐貴
日本若者協議会 代表理事
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分析・考察

「フレキシキュリティ」の特徴としては、柔軟な労働市場(低水準の雇用保護)、包括的な社会保障制度(寛大で高水準の所得保障)、そして積極的労働市場政策(職業訓練と再教育)という三つの要素の積極的な相互関係、「ゴールデン・トライアングル」にあると言われています。

端的に言うと、経営者が被雇用者を解雇しやすく、競争力を失った企業は守らないが、失職者には生活保障の上で多種多様なタイプの職業訓練などを用意し、次の職に移れるよう手厚く支援するというものです。

これが日本で受け入れられるかは、財源はもとより、一定の「失業」と「倒産」を認められるか、一時的な失業率や企業倒産数で一喜一憂しないのがキーでしょうか。

2022年1月1日 11:52 』