プーチン氏、動かぬ米欧にいら立ち 危機打開見えず

プーチン氏、動かぬ米欧にいら立ち 危機打開見えず
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『【モスクワ=石川陽平】米ロ首脳による12月30日の電話協議は、ロシアのプーチン大統領の方からバイデン米大統領に開催を提案した。ロシア側は、12月中旬に提案した欧州安全保障の新たな合意案に対し、米欧側には消極的な姿勢が見えるとのいら立ちを募らせている。欧州安保を巡る1月の話し合いを前に、協議の進展を米欧に迫った。

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12月7日のオンライン形式に続いて米ロ首脳が月内に2回の話し合いをするのは異例だ。プーチン氏は今回、欧州安保の提案を詳細に説明し、米欧主導の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大やロシア国境近くへの軍事力配備の停止を強く求めた。ウクライナ国境地域へのロシア軍集結による緊張緩和をまず要求する米国との深い溝は今回も埋まらなかった。

ロシア側には、米欧が新たな欧州安保体制を巡る協議にきちんと向き合うのか、疑念がある。交渉担当者のリャプコフ外務次官は12月28日、「米国は協議のテーマを際限なく出すべきではない」と指摘した。1月に始まる米ロ、NATOロシアなどの協議ではロシアが求める安保の法的保証の問題に集中すべきだと主張した。

ロシアが提案した欧州安保の合意案は、米欧にはそもそも受け入れがたい内容が少なくない。NATOの東方拡大停止は、ロシアが自らの勢力圏とみなすウクライナなど旧ソ連諸国のNATO加盟にも「今後も扉は開かれている」(ブリンケン米国務長官)と言明している欧米にとって原則的に譲れない問題だ。東欧からのNATO軍撤退も実現がほぼ不可能だ。

プーチン氏も米欧がロシアの要求に応じるのは簡単ではないと理解しており、だからこそ、協議のカギを握るバイデン氏に、合意案を自ら説得に乗り出す必要があると判断した。ロシアが欧州安保の問題で譲歩することはなく、「共同作業の結果は確固たる法的保証でなければならない」(プーチン氏)と圧力をかけた。

ロシア大統領府は12月31日、米ロ協議では「真剣で内容の濃い対話」をする意思が双方から示されたと指摘したが、1月からの協議は難航が必至だ。ロシアは米欧の対応は制裁にとどまり軍事介入することはないと見透かし、ウクライナ国境付近での軍事圧力もかけ続けるとみられる。プーチン氏は今回の協議で、大規模な対ロ制裁を掲げたバイデン氏に「米ロ関係の完全な断絶」をもたらすと強硬な姿勢で応じた。

「キューバ危機が再来する恐れがある」――。リャプコフ外務次官は今回の米欧とロシアの緊張激化を、キューバへのソ連のミサイル基地建設を巡って米ソが激しく対立した1962年の出来事に例える。当時、米ソが核戦争寸前の危機を迎えたといわれた。

ロシアのウシャコフ大統領補佐官によると、バイデン氏も電話協議で核戦争を始めてはならないと危機感を示した。キューバ危機は、冷戦期に米ソがデタント(緊張緩和)を探るきっかけになったが、今回はまだその糸口が見えない。』