「蜜月」から「対抗」へ 反中に傾く欧州、3人の実力者

「蜜月」から「対抗」へ 反中に傾く欧州、3人の実力者 
潮流2022・動かす力①
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR23EMA0T21C21A2000000/

『2022年は米中が対立を深める中で、アジア各国や欧州のスタンスがさらに問われることになる。秋の米中間選挙や中国共産党大会も国際政治の変動要因だ。外交当局者の注目を集める世界各地の実力者たちの動きから国際政治の流れを占う。

欧州は1年前には「蜜月」が目立った対中姿勢を「対抗」へと転換させた。欧州連合(EU)の欧州議会は人権問題を巡って中国との制裁合戦を繰り広げ、20年末にEUと中国が大筋合意した投資協定の承認手続きを凍結させた。2月開幕の北京冬季五輪も加盟国に外交ボイコットを呼びかける決議を可決し、かつてない存在感をみせた。

同協定のとりまとめを主導したドイツのメルケル政権は21年12月に退陣。ショルツ新政権は中国に対する姿勢を徐々に硬化させている。台湾問題で中国を激怒させたリトアニアは小国でも中国の経済圧力に屈服しないことを示し、地域の反中機運を高めた。

英国では相次ぐ不祥事などでジョンソン首相が率いる保守党の支持率が急落し、労働党が支持率でトップに躍り出ている。同党は中国の人権侵害や中国資本の英国企業への投資には、かつて「親中」と自称したジョンソン氏以上に厳しい目を向けている。

環境族の重鎮、圧力屈せず

「北京がEU加盟国に経済的嫌がらせをするのは許せない」。ドイツ緑の党に所属し、欧州議会の「環境族」の重鎮であるラインハルト・ビュティコファー欧州議員(68)は12月7日、中国が経済的手段で圧力をかけてきた場合に、EUが貿易関連の制裁を科せるようにすべきだと訴えた。

欧州議会は条約や協定などEUの外交政策の決定の承認権限を持つ。ビュティコファー氏は欧州議会で「欧州緑の党」の共同党首も歴任。対中関係代表団の団長も務める。21年12月に発足したドイツのショルツ政権で緑の党が連立入りすると、さらに同氏の影響力は高まった。

ビュティコファー氏は長年、人権や民主主義の観点から中国懐疑論を抱いてきた。中国が神経をとがらせる台湾問題でも「欧州は台湾に民主主義の友として連帯のメッセージを発信し続けることが重要だ」と説く。それが中国の軍事力の抑制につながり、EUの利益に資するという考え方だ。

親・台湾、追随求める

リトアニアのギタナス・ナウセーダ大統領=ロイター

12月初旬、中国の関税当局がリトアニアとの貿易の通関手続きを止めているとの報道が伝わった。同国での台湾の代表機関の開設を認めたことへの経済的な報復措置とされた。だが人口約280万人のリトアニアのギタナス・ナウセーダ大統領(57)は台湾との関係強化の方針を変えない姿勢を貫いた。

周辺国の服属を前提にした中華思想を抱く中国の指導部は、どの主権国家とも対等に付き合うという国際社会のルールに慣れておらず、小国への威圧的な姿勢が目立つ。ただ、リトアニアには旧ソ連による併合を経て1990年に独立回復を宣言した歴史があり、強権国からの圧力への反発は強い。

ナウセーダ氏は8月、英紙フィナンシャル・タイムズに「相互尊重の原則に基づく対中関係を築きたい。でなければ対話は一方的な最後通告になり、受け入れられない要求になる」と語った。米国はリトアニアに「鉄壁の支持」(ブリンケン国務長官)を表明して後ろ盾につく。欧州メディアによると、ナウセーダ氏はリトアニアの対中政策に追随するよう水面下で他のEU加盟国に働きかけているという。

政権追及で注目

英国の最大野党・労働党のアンジェラ・レイナー副党首=ロイター

英国で労働党が政権を奪取した際に要職入りが確実で、主要国の外交筋からの注目度が高まっているのがアンジェラ・レイナー副党首(41)だ。多くの英国のブックメーカー(賭け屋)がスターマー党首の後継候補の2番手と評価している。

公営住宅で育ち、介護士として働く中で従事した労働組合活動が政治への道を開いた。歴代首相のような名門大卒のエリート層と一線を画しており、ジョンソン政権への厳しい追及で頭角を現した。労働党は左派とスターマー氏などの中道左派の内紛が絶えないのが弱点だが「ソフト左派」とされるレイナー氏は双方と話ができるのも強みだ。

外交分野は専門ではないが、中国の新疆ウイグル自治区でのウイグル族に対する暴力について「ジェノサイド(民族大量虐殺)」との認定に慎重なジョンソン政権の姿勢を批判したこともある。人権侵害に関与した中国系企業への出資者と保守党議員の癒着疑惑が浮上した際にも厳しく追及した。今年も対中政策で政権を突き上げ続けるとみられている。(ロンドン=中島裕介)』