コロナ下で世界株高 時価総額、伸び最大の2000兆円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB290ZD0Z21C21A2000000/


『2021年は世界的な株高の一年となった。新型コロナウイルス下でも経済活動の再開が進み景気回復期待が高まった。世界の株式時価総額の年間増加額は約18兆ドル(約2000兆円)と過去最大。22年は米連邦準備理事会(FRB)の総資産の縮小など金融引き締めが視野に入り、変調を懸念する声も増えている。
東京株式市場では30日の大納会で、日経平均株価が前日比115円17銭(0.4%)安の2万8791円71銭で取引を終えた。年末終値としては1989年のバブル期のピーク以来32年ぶりの高値水準となった。
世界全般に「財政出動・金融緩和・経済再開という3つの要因が重なり力強い株高となった」(JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾氏)。「MSCI全世界株指数(ACWI)」を構成する48カ国・地域のうち21カ国で株価指数が最高値を更新した。
米国株の上昇が目立ち29日にはダウ工業株30種平均が最高値を更新した。低金利が住宅などの資産価格を押し上げ消費の力強い回復につながっている。フランス、オランダなど欧州や、インドや台湾といったアジアでも最高値が相次いだ。コロナ後もデジタル化の波や医薬への高い関心が続くとみて半導体やIT(情報技術)、医薬株にマネーが集中している。
経済再開が資源高をもたらし、カナダやノルウェーなどの株価も上がった。下落はインフレに悩むブラジルや、中国政府による統制強化でIT株が下落した香港など8カ国・地域にとどまる。
株式市場の活況ぶりは実体経済に比べても際立つ。世界の国内総生産(GDP)が年央にようやくコロナ前の水準を取り戻したなかで、今年末の時価総額は前年末比18%増の119兆ドルと、コロナ前に比べ4割多い水準となった。業況が苦しい飲食やサービスは中小企業が多い一方、上場企業はITや製造業が多く、インフレでもコスト高を価格転嫁し収益力を落としていない。
もっとも、市場の「フロス(泡)」と呼ばれた過熱した資産からは資金流出がみられる。
米国の家計貯蓄率はコロナ前に戻り、給付金を元手にSNS(交流サイト)で結託した個人が特定の株を買い上げる動きは鳴りを潜めた。コロナ下の株高の象徴だった電気自動車の米テスラ株も11月以降、下落に転じた。債券市場では投資家が企業の債務不履行(デフォルト)を警戒するようになり、低格付けの「ハイイールド債」の価格が11月下旬に約1年ぶりの安値をつけた。
インフレで各国は金融引き締めに転じた。野村総合研究所の木内登英氏は「行き過ぎた金融緩和が株式の膨張を生み出してきたが、この前提が変わりつつある」とみる。
FRBは来年に利上げを見据える。市場では、FRBは利上げ開始からあまり期間を空けずに保有資産を減らす「量的引き締め」に入り、短期から長期まで金利全体の押し上げにつながるとの警戒感が高まり始めた。量的引き締め局面にあった2017~19年は株価が乱高下した経緯がある。
英シュローダーのヨハナ・カークランド氏は世界経済を「よろめく自転車」にたとえ、「財政出動など各国政府が与えた『補助輪』は22年に外される」と指摘する。
米モルガン・スタンレーは「雇用コストの上昇が長引くことを考慮すると、企業の利益率は低下する可能性がある」として22年は米国株の下落を見込む。緩和や財政の支えが弱まり、こうしたショックへの耐性は低下が避けられない。
(古賀雄大、北松円香)
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