中国、インドネシアに資源開発の中止要求 南シナ海

中国、インドネシアに資源開発の中止要求 南シナ海
領有権主張、尖閣式で揺さぶり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM151KG0V11C21A2000000/

『【ジャカルタ=地曳航也、北京=羽田野主】インドネシアが南シナ海の排他的経済水域(EEZ)で進める資源開発について、同海域の主権を主張する中国が中止を求めていることがわかった。インドネシアは中国との間に南シナ海の領有権の問題は存在しないとの立場だが、中国が揺さぶりをかけている。

インドネシアは南シナ海の南にある自国領ナトゥナ諸島の周辺のEEZにある「トゥナ・ブロック」と呼ばれる海域で、7月から海底の石油と天然ガスの状況を調査する掘削作業を進めている。

インドネシア政府関係者は日本経済新聞の取材に、中国政府から「インドネシアの掘削作業が中国の主権を侵す」として複数回、抗議と掘削中止要求を受けたと明らかにした。作業現場周辺で中国海警局とみられる船の目撃情報も確認したという。

ただ、インドネシア政府は中国による抗議と中止要求を公表していない。中国との間に南シナ海に関する領有権の争いはないとの立場で、抗議を公にして反応すれば、領有権問題の存在を国際社会に認めることにつながる可能性があるためだ。

同国海上保安機構のアアン長官は22日、当面の掘削作業を11月下旬に完了したと明らかにした。

中国は南シナ海のほぼすべての沿岸国・地域と領有権を争っている。これまでにフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を主張している。

ナトゥナ諸島周辺のインドネシアのEEZをめぐっては、南シナ海で主権が及ぶ範囲として中国が独自に主張する「九段線」と一部が重複する。2019年末ごろから周辺海域で中国船の動きが活発化し、インドネシアとの対立が目立ち始めた。

20年5月下旬、インドネシアは九段線や中国が域内で主張する歴史的権利を否定する書簡を国連に送った。中国も南シナ海での主権を訴えつつ、交渉による解決を求める書簡を国連に送り返した。インドネシアは交渉を拒否した。

中国が一方的に領有権の問題を訴えて力を背景に実効支配をうかがう構図は日本の沖縄県尖閣諸島をめぐる日中の対立と似る。海上保安庁によると21年1月から12月26日までで、尖閣諸島周辺の領海に中国の海警局の船が計40日間、侵入した。

日本政府は尖閣諸島は固有の領土で領有権の問題は存在しないとの立場だが、中国側が領海侵入するたびに抗議をせざるを得ない。中国には日本に反応させることで、日中に領有権の問題があると国際社会に印象づけようとする狙いがある。

「習氏は自ら戦略と戦術の配置をして、さらには自ら参与した」。中国国営の新華社は11月8日、中国海警局の尖閣諸島周辺の領海侵入を巡る指示や、南シナ海の仲裁裁判所の判決などへの対処方針について習近平(シー・ジンピン)国家主席が深く関与していると明かしている。

インドネシアは中国がナトゥナ諸島周辺の実効支配の機会を探ろうとしているとみて、周辺の防衛・警備体制の強化を急いでいる。国軍は同諸島にある基地の滑走路を拡張し、戦闘機の配備を増やすほか、潜水艦の基地も建設する。地元漁民による中国船の早期通報システムも整備している。

米国との安全保障協力も進めており、周辺の海域では共同で沿岸警備の訓練施設を建設している。8月には離島防衛を念頭に、国内の3カ所で両国の陸軍が過去最大規模の軍事演習を実施した。

ナトゥナ諸島をめぐる対立も影響し、インドネシアの一部国民の対中感情は悪化している。ジャカルタ特別州警察によると、12月8日、首都ジャカルタにある在インドネシア中国大使館前で、市民20~30人が抗議集会を開いた。

ただ、インドネシアにとって中国は最大の貿易相手国だ。経済面の依存も深まっており、政府は偶発的な衝突は避けたいのが本音だ。新華社によると、11月30日に中国とインドネシアの国防相はオンラインで協議し、プラボウォ国防相は中国軍と信頼醸成に向け人的交流を拡大したい考えを示したという。』