中国外商投資法への実務対応とVIEストラクチャーへの影響

中国外商投資法への実務対応とVIEストラクチャーへの影響
https://www.businesslawyers.jp/articles/684

 ※ 『VIEの正式名称は、Variable Interest Entities(変動持分事業体)である。すなわち、出資の方式によらずに、関連の契約書の締結により、中国国内の中核会社を実質的に支配し、連結するというスキームである。』、というものだ…。

 ※ 詳細について、説明できるほどの知識も、力量も持ち合わせていない…。

 ※ ごく一般的な、素人的な感想・印象及び理解の助けとなるような話しを、語っておく…。

 ※ まず、あらゆる「企業体」は、「利益の獲得」と「獲得した利益の構成員への分配」を目的とする。

 ※ そして、その「分配(配分)」の基準は、出資した価額の多寡に従うことになる。  株式会社を例にすれば、出資者は株主(構成員)となり、株主総会での議決権や利益配当を受ける権利を有し、その基準は、「持ち株数(=出資額)」によることになる…。


 ※ 別に、企業体の仕組みは、「株式会社」形態に限らない…。「合名会社」「合資会社」「有限会社」「合同会社」なんて形態もある。しかし、いずれも企業体の運営に必要な「出資」を行って、「構成員」となり、企業経営の意思決定に参画し、利益の配分を受ける権利を有するわけだ…。そういう企業体に対する権利の総体を、「持分(もちぶん)」と称する。
 平たく言えば、出資しているわけだから、その出資分に応じて、経営にも口を出させろ、利益も応分に配分しろ…、ということだな…。

 ※ しかし、「外国人による投資の規制」の網がかけられると、持分を有しているということは、逆に具合が悪くなる…。

 ※ そこで、法的には直接的に「出資」しているわけでは無い(持分、というわけではない)というような「体裁」をとりながら、「実質的には」出資した場合と「同等の」「支配(影響を及ぼす)」という方策を探ったわけだ…。

 ※ それが、直接には「出資」していないが、各種の「契約」でガチガチに固めることによって、「中核会社」を「実質的に支配する」スキーム…、ということなんだろう…。
 ※ 物権と債権という視点から比喩的に捉えれば、「所有権」ではないが、契約でガチガチに固めることによって、「債権の総体」として、「所有権」みたいなものにできるだけ近づけるという感じか…。

『 目次

「外商投資法」の適用範囲
VIEストラクチャーとは
    VIEストラクチャーの概念
    VIEストラクチャーの契約スキーム
    税金面の考慮
外商投資法がVIEストラクチャーに与える影響

 2019年3月15日、「中華人民共和国外商投資法」(以下、「外商投資法」という)が、中国全国人民代表大会第2回会議により可決され、2020年1月1日より正式に施行される。

 2011年から、中国において外商投資法の起草・研究が行われ、公布されるまで約8年がかかった。外商投資法が公布されるまでは、外商投資に関する主な法律は、いわゆる「外資三法」だった。すなわち、1978年12月鄧小平氏が外国人投資法の作成を指示したあとに公布された「中華人民共和国中外合弁経営企業法」(1979年)、「中華人民共和国外資企業法」(1986年)、「中華人民共和国中外合作経営企業法」(1988年)の3つの法律である。外商投資法の公布は、外資三法時代の終了および新しい外商投資基本制度枠組の確立を意味する。

 外商投資法では、参入前内国民待遇およびネガティブリストという外資による参入の法律制度、各政策の平等適用、知的財産権の保護強化、中国国内企業および外資企業の組織機構の統一、外商投資の保護体制、情報報告制度、独占禁止審査および国家安全審査制度を確立させた。同法の全文につき、弊事務所の翻訳をご参照いただきたい。

 本稿は、外商投資法の実施によりVIEストラクチャーに与える影響を分析していく。

「外商投資法」の適用範囲

 外商投資法2条の規定によれば、同法は、中国国内における外商投資に適用される。すなわち、本法に定められる「外商投資」とは、外国の自然人、企業またはその他の組織が直接または間接的に中国国内において行う投資活動とされている。そして、外商投資の具体例につき、以下のように列挙している。

(1)外国投資者が単独または他の投資者と共同で中国国内において外商投資企業を設立すること。

(2)外国投資者が中国国内企業の株式、出資持分、財産持分またはこれらに類似する権益を取得すること。

(3)外国投資者が単独または他の投資者と共に中国国内において新設プロジェクトに投資すること。

(4) 法律、行政法規または国務院が規定するその他の方法による投資。

 以上の(4)でその他の外商投資につき、包括的な定めとなっているが、VIEストラクチャーが含まれるかは明確ではない。

また、2015年には、「外国投資法パブリックコメント」のなかで、VIEストラクチャーは外国投資法に適用されると明確に規定され、中国国内で広く議論された。

しかし、最終公布された外商投資法では、VIEストラクチャーについて言及せず、同法がVIEストラクチャーに適用されるかについては不明確のままとなった。

VIEストラクチャーとは
VIEストラクチャーの概念

 VIEの正式名称は、Variable Interest Entities(変動持分事業体)である。すなわち、出資の方式によらずに、関連の契約書の締結により、中国国内の中核会社を実質的に支配し、連結するというスキームである。

 VIEストラクチャーは当初、新浪(Sina)が米国上場する際に利用されていた。このスキームを利用する有名なインターネット企業は、たとえば、アリババをはじめ、バイドゥ、テンセント、Sohuなどがあり、さらに、21st Century Education Group、 Nio(蔚来)、Bilibili、iQIYIなど、教育産業から電気自動車産業まで、多様な業界で利用されている。

 海外スキームの部分につき、特に中国国内であまり用いられていない優先株または転換社債等の形式で資金調達できる。また、VIEストラクチャーには、いくつかの種類があり、以下の図を例として説明する。

VIEストラクチャーとは
VIEストラクチャーの契約スキーム

 VIEストラクチャーの核心は、実質的支配および利益移転である。よって、VIEストラクチャーに関する契約は主に2種類あり、1つは、運営に関する実質的支配契約、主に「ローン契約」「持分に関する質権設定契約」「コールオプション契約」「投票権契約」等であり、

もう1つは、利益移転に関する契約、主に「独占的技術コンサルティングおよびサービス契約」等が含まれる。

ローン契約

主に経営陣とWFOE(Wholly Foreign-Owned Enterprise、外資独資企業)の間で締結される。WFOEは、経営陣に対し、無利息のローンを提供し、中核会社の資本金またはWFOEが同意する使用目的に使用される。

独占的技術コンサルティングおよびサービス契約

WFOEおよび中核会社の間で締結される。WFOEは中核会社に対し、技術コンサルティングおよびサービスを提供し、中核会社はWFOEに対し、技術コンサルティングおよびサービス費用を支払う。

持分に関する質権設定契約

経営陣、WFOEおよび中核会社で締結される。経営陣は、中核会社の持分のすべてをWFOEに質権を設定し、関連の質権登記をし、中核会社によるWFOEへの技術コンサルティングおよびサービス費用の支払を担保する。

投票権契約

WFOE、経営陣および中核会社において締結される。中核会社の投票権は、すべてWFOEにより行使されることが定められる。投票権には、主にWFOEに以下の権利行使の授権を与えることが含まれる。

(1)中核会社の株主会に参加し、経営陣を代表し、株主会決議を署名すること。

(2)法律および中核会社の定款に定められている、経営陣が株主としてのすべての権利を行使すること。

(3)経営陣の授権代表として、中核会社の法定代表者、董事長、董事、監事、総経理およびその他の高級管理人員等を指名及び任命すること。

コールオプション契約

WFOE、経営陣および中核会社で締結される。将来、中国法が改正され、外資には、中核会社の業務領域に資本参加が認められる場合を想定し、経営陣は、WFOEの指示に従い、中核会社の一部またはすべての持分を、当時中国法に認められる最低の価格でWFOEに譲渡することが求められる。同時に、コールオプション契約には、持分譲渡の手続きを詳細に定め、持分譲渡に必要な持分譲渡契約書が附属書として添付され、さらに、中核会社の経営陣が持分譲渡に同意し、優先買取権を放棄し、持分譲渡の登記および中核会社の工商変更登記に関する承諾書も添付されなければならない。

税金面の考慮

 VIEストラクチャーの場合、海外での上場を想定するケースが多く、税金面において、かなり工夫されている。

 香港会社により、WFOEに100%を出資する理由は、一定の条件が満たされれば、WFOEは香港会社に配当する場合、10%の税率ではなく、5%が適用されることである。

 また、香港会社の上に100%のBVI親会社を置く理由は、合法的に香港税法の規定を回避することにある。すなわち、香港会社の株式を譲渡する場合、株式価値の1,000分の2に相当する印紙税を回避することができる。たとえば、将来、BVI会社の親会社であるケイマン会社が中核会社の権益を処理する場合、ケイマン会社が保有するBVI会社の株式を譲渡すれば、香港に対して印紙税を納付する必要がない。

 さらに、通常、香港会社は、親会社のBVI会社に対し配当する場合、BVI会社は、親会社のケイマン会社に対し配当するとき、免税される。

外商投資法がVIEストラクチャーに与える影響

 VIEストラクチャーに関する業務領域は、禁止または制限類の外商投資領域に属するものが多く、外商投資法がVIEストラクチャーに適用されるとなれば、実質的支配の具体的な状況により、VIEストラクチャーは外商投資法に抵触する可能性がある。

 その場合、外商投資法36条1項の規定によれば、外商投資参入ネガティブリストに定められている投資禁止分野に投資した場合、関係主管部門に投資活動の停止が命じられ、期限付きの持分、資産の処分またはその他必要な措置を講じられ、投資実施前の状態に回復するようと命じられると定められているため、VIEストラクチャーの解消が求められる可能性が高い。

 また、外商投資法36条1項の規定によれば、外商投資参入ネガティブリストに規定される投資制限のある参入特別管理措置に違反した場合、状況により、オフショアスキームおよびVIEストラクチャーの解消が求められる可能性がある。上述の 2-1で述べたとおり、VIEストラクチャーにより上場している会社が多く、違法性が認められれば、資本市場に大きな影響を与えることが予想される。

 しかし、実務上、中国国内において、いくつかの規定により、VIEストラクチャーに対する制限がなされているものの、立法の角度からは、これらの規定は、法律よりレベルが低いものにとどまっている。よって、現在の法的枠組の下、VIEストラクチャーによる投資は依然として行われると予想される。ただし、将来、中国は関連規定を公布し、VIEストラクチャーの性質を明確にし、たとえば、実質的支配人がオフショアの主体である場合には外商投資と認定し、実質的支配者が中国国内の主体である場合には非外商投資と認定する可能性が否定できない。

 また、状況が変化すれば、VIEストラクチャーは明確に規制される可能性もある。さらに、2019年11月14日、U.S.-China Economic and Security Review Commission(USCC)がアメリカ連邦議会に対して提出した報告 1 のなかに、VIEストラクチャーを使用する中国企業によるアメリカ証券取引所での上場を禁止する法律を公布すべき内容があった。中国がVIEストラクチャーを規制する可能性がある一方で、アメリカにおいてもVIEストラクチャーが規制される可能性がある。

2019 Report to Congress of the U.S.-China Economic and Security Review Commission, One Hundred Sixteenth Congress, P24, P170, P537を参照。 ??

唐 紅海

T&K法律事務所
2006年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科修了。2010年中国弁護士登録。日本の法律事務所、企業での8年間の法務経験、北京市天元法律事務所上海事務所のパートナー5年経験、GVA法律事務所を経て2020年T&K法律事務所に入所。主な業務分野は、クロスボーダーM&A、中国独占禁止法、訴訟、仲裁など。』