[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力

[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力
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『天然ガスへの需要が旺盛な中国が米国の液化天然ガス(LNG)大手と相次ぎ輸入契約を結んでいる。米中関係は緊張が高まっているが、二大国のエネルギー貿易は拡大している。
中国は今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となる一方、米国は今年1〜9月の中国向けLNG輸出で豪州に次ぐ2位となった(中国・大連にあるLNG輸入施設)=ロイター

20日には米ルイジアナ州で輸出プラントを2カ所建設中の米ベンチャーグローバルLNGが、中国最大のLNG輸入企業である国営の中国海洋石油(CNOOC)と年350万トンを輸出する2つの契約で合意したと発表した。

これにより今年10月以降に米企業と中国の顧客が締結した大型契約は7件となった。一部の契約期間は数十年に及ぶ。アナリストは中国が今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となると見ている。一方、米エネルギー情報局(EIA)によると、米国のLNG輸出能力は来年オーストラリアとカタールを追い越す見込みだ。

新疆ウイグル自治区でのウイグル族の迫害、香港の民主化運動の弾圧、台湾近海での軍事活動など様々な問題をめぐり米中関係は緊迫の度を増している。これに対して中国は、米国が覇権主義的な行動を取り両国間で新たな冷戦を始めようとしていると非難する。
COP26の気候変動対策で合意した米中

その半面で両国はエネルギーや気候変動問題で協力関係にあり、相次ぐLNG契約はその証しでもある。先月開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも、両国は予想に反して気候変動対策で合意した。また原油価格の高騰を抑えるため、各国と協調して戦略石油備蓄を放出した。

「米中関係は多くの面で最悪の状態にある」。米コロンビア大学気候変動研究大学院の院長で、オバマ政権でエネルギー担当の大統領特別補佐官を務めたジェイソン・ボードフ氏はこう述べた。「だが緊張や対立があっても、エネルギーと気候変動は協力を深められる可能性がある分野だ」

ベンチャーグローバルは11月、国営の中国石油化工(シノペック)と年400万トンのLNGを20年間供給する契約を結んだ。また同社の商社部門ユニペックとの間でも計350万トンを供給する複数の短期契約を交わしている。CNOOCとの契約の一つも期間は20年だ。

ベンチャーグローバルのマイク・セイベル最高経営責任者(CEO)は、中国が二酸化炭素(CO2)排出削減のために火力発電所の燃料を石炭からLNGに転換していることが契約の背後にあると述べた。シノペックとの契約はCOP26の前に良いメッセージを発信できるようタイミングが計られたという。

「中国は他のアジア諸国に先駆けて契約すべく素早く動いている」とセイベル氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に述べた。「だが我々が契約を発表している間にも他の国々は対応するだろうし、すでに動き始めている国もある。さもなければ中国がますます有利になるからだ」

「世界中で米国産LNGの需要が高まり、また最も早く手に入るのが米国産LNGという異例の事態が起きている」
ガス供給源の確保急ぐ中国企業
中国海洋石油は20日、米ベンチャーグローバルLNGと年350万トンのLNGを輸入する2件の契約を結んだ。このうち1件は期間20年に及ぶ長期契約だ=ロイター

米LNG最大手のシェニエール・エナジーは中国が成長を下支えしてくれると期待する。同社は最近、国有化学大手の中国中化集団(シノケム)などに合計で年間300万トンを供給する契約を結んだ。

「今後数十年にわたり、アジアのLNG需要が業界の成長を支える原動力になるだろう。中でも中国は最大の顧客だ」とシェニエールのアナトール・フェイギン最高商務責任者(CCO)は10月にFTに述べている。

トランプ政権下では米国による中国製品への追加関税の報復措置として中国が米国産ガスに関税を課したため、LNG契約や輸出は低調だったが、次第に回復しつつある。中国では電力不足により経済活動が停滞し、世界的にガス価格が高騰しており、中国企業はガスの供給源確保を急いでいる。

金融情報会社リフィニティブによると、今年1〜9月の中国向けLNG輸出で米国は2位だった。1位はオーストラリアだが、米国と同様に対中関係は悪化している。

「中国はLNGの半分を米国とオーストラリアから輸入している。中国政府には歯がゆい状況だろう」。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のエネルギー・地政学部門を率いるニコス・ツァフォス氏はこう指摘した。「だが開発案件があれば行かざるを得ないのだから、致し方ない」
米国は重要な燃料供給源

中国外務省が発表した11月の米中首脳電話会談の要旨によると、習近平(シー・ジンピン)国家主席はバイデン米大統領に「天然ガス分野での協力関係を強化したい」と伝えた。中国が米国を重要な燃料供給源とみている証しだ。

しかし天然ガスの米国内価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり6ドル(約680円)を上回り2008年以来の高値を付ける中で、ガス輸出は政治的に慎重な対応が求められる問題になりつつある。

米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米エクソンモービルや英BPなど主要天然ガス企業11社のCEOに書簡を送り、「国内価格の高騰を抑えるため天然ガス輸出の削減、一時中止または終了を検討したことがあるか」と尋ねた。

一部のCEOはLNGを輸出すれば他国が火力発電所の燃料を石炭から天然ガスに切り替えるのを米国が支援する機会になると反論した。
不都合な現実

コロンビア大のボードフ氏は輸出削減に動けば「信頼できるエネルギー供給源」としての米国に対する信頼が低下すると述べた。また欧州各国がロシアへの天然ガス依存に懸念を抱いていることを引き合いに出し、「どちらにも政治的、地政学的側面がある」と指摘した。

米経済を化石燃料への依存から脱却させようとしているバイデン政権にとって、天然ガス貿易の活況は政治的にいたたまれない面もある。CO2排出量が石炭より少ないとはいえ、天然ガスも温暖化ガスの主要な排出源だからだ。

これは世界が依然として化石燃料に大きく依存しており、米国が石油・ガスの主要生産国であるという「非化石燃料への転換を進める際の不都合な現実」を映し出しているとCSISのツァフォス氏は指摘した。「実際、この現実が米中両国を後ろめたくさせている」

By Justin Jacobs and Derek Brower

(2021年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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