コロナで「売れた」「売れなくなった」商品TOP30

コロナで「売れた」「売れなくなった」商品TOP30
強心剤「売り上げ6割減」の実に意外な事情
(2020/05/08 12:00)
https://toyokeizai.net/articles/-/349029

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ 「漢方薬」の売り上げを支えていたのは、実は「中国人観光客」だった…、という  興味深い話しが語られている…。

 ※ 本国よりも、「高品質だ。」ということと、やはり「馴染み深い。」ということで  、人気だったらしい…。

 ※ まあ、それも「過去の話し」となった…。

『緊急事態宣言に伴う巣ごもりが本格化して1カ月。食料品や医薬品、化粧品など生活必需品の売れ筋は大きく変わった。

市場調査会社のインテージは、消費動向への新型コロナ禍の影響を示すデータとして、2月3日以降、品目別に売上金額の前年同期比の増減率を週単位で公表している。直近は4月27日公表の4月13~19日分だ。
ファミリー層の動向が大きく影響

増加率トップはうがい薬で、対前年比は359.1%。5位の殺菌消毒剤(228.3%)、13位の体温計(183.7%)、19位のマスク(161.2%)なども含め、ドラッグストア店頭ではすでに3月の段階で品薄もしくは品切れで入手が困難になっていたことを考えると、商品がもっと供給されていれば、伸び率はもっと上がっただろう。

ランキング上位に顔をそろえたのは、子どもが家にいることで必要量が激増し、なおかつ店頭で買える品目だ。

お菓子作りに欠かせないバニラエッセンスなどのエッセンス類が2位(251.9%)、ホットケーキミックスや唐揚げ粉などのプレミックス製品が3位(245.5%)、小麦粉が6位(210.8%)、ホイップクリームが7位(205.6%)に入った。ほかにも鍋つゆなどの鍋補完材が11位(189.0%)、メープルシロップなどのシロップ類が14位(176.3%)、スパゲティが15位(173.0%)、パスタソースが16位(166.4%)といった具合だ。

飲食店が夜8時以降のアルコール類提供を自粛している影響からか、25位にスピリッツ・リキュール類が登場。前年比で155.6%となっている。

一方、減少率トップは鎮暈剤(ちんうんざい)。要は酔い止め薬だ。前年同期比で22.2%と、8割近い減少である。3月1週目で前年比5割を切り、4月に入って下落幅が拡大した。

平時なら子ども連れで長時間乗り物に乗る機会が増える、大型連休中のデータが出てくれば、さらに下落幅は拡大するのだろう。マイカーでのレジャーや帰省自粛ゆえか、眠気防止剤も20位(60.0%)に入っている。

このほか、口紅(2位、27.5%)、日焼け止め(3位、33.3%)、ほほべに(7位、46.3%)、ファンデーション(8位、49.0%)など、女性の外出が減ると使用頻度が極端に落ちるものが上位を占めた。

19位(59.8%)に鼻炎治療薬が入っているのは、今春は花粉の飛散量が東京で昨年の4割、大阪で3割(いずれも気象庁公表値)と少なかったことが影響しているのだろう。マスクが極端に不足する中で迎えた花粉シーズンだっただけに、花粉症の人にとっては不幸中の幸いだったといえる。』

『興味深いのは4位の強心剤である。4月13〜19日では前年比で40.7%だが、2月1週目の時点ですでに前年比73.6%と、3割近く減少していた。時期からすると、外出自粛を原因とみるには無理がある。

強心剤というと、循環器系の疾患を抱える人が持ち歩く西洋薬、それも処方薬を連想しがちだが、この調査の集計対象は市販薬。売り上げが大きく落ちているのは、実は漢方薬なのだ。
市販の漢方薬が売れなくなったワケ

漢方薬メーカーの業界団体である日本漢方生薬製剤協会のホームページには、日本の漢方医学は、奈良時代以降に日本に伝来した「中国起源の伝統医学を基に、日本で独自の発展を遂げた伝統医学」とある。

日本の漢方薬は品質への信頼度が高く、世界シェアは8割とも9割とも言われている。本家本元でありながら数%にとどまる中国を大きく凌ぐ数値だ。

中国人にも人気が高く、処方箋なしで買える漢方の市販薬は、訪日中国人観光客が爆買いしていく製品の1つだった。

厚生労働省が毎年公表している「薬事工業生産動態統計」で、過去25年間の漢方製剤等(漢方製剤+生薬+その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品)のうち、一般用の生産金額を集計したものが下のグラフである。

2019年度分の公表は今年夏まで待たねばならないので、集計できたのは公表済みの2018年度分まで。2018年度の漢方製剤等の生産金額は1927億円で、このうち一般用はわずか404億円にすぎない。それでも、2014年度から2018年度までの5年間での伸び率は66%。医薬品全体ではおおむね横ばいであるのに対し、驚異的な伸び率だ。

公表済みの月次実績は4月17日公表の今年1月分が直近のもの。この時点では、医療用も含めた生産金額は前年同期比で3割増だった。訪日中国人観光客の爆買い需要喪失の影響が生産金額に本格的に表れるのは、これからだろう。』

漢方薬の国内需要動向と中国の状況

漢方薬の国内需要動向と中国の状況
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/yakuyou/attach/pdf/190130sinnpojiumu-13.pdf

 ※ 中国との「経済関係」は、こういうところにもある…。

 ※ 「デカップリング」と言っても、なかなか難しいのは、そういうところの話しだ…。

 ※ 「現地法人」も、あるしな…。

クラシエ製薬、中国で漢方薬の新工場 生産能力1.4倍

クラシエ製薬、中国で漢方薬の新工場 生産能力1.4倍
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC11E840R11C21A1000000/

『クラシエホールディングス(HD)傘下のクラシエ製薬は、中国・山東省で漢方薬の素材となるエキスを生産する新工場を建設する。国内外の既存工場と合わせて生産能力は1.4倍の年間1300トンに高まる。高齢化などで国内の需要が拡大する見込みで、日本でも原料の保管機能などを拡張し供給体制を整える。総投資額は100億円。

漢方薬は原料の生薬を煮出してエキスを抽出し、乾燥して粉末にしてから、錠剤や顆粒(かりゅう)などの製品に仕上げる。クラシエ製薬は漢方の大衆薬で国内最大手だ。現在は中国・山東省青島市と大阪府高槻市の工場でエキス抽出を、富山県高岡市の工場で製剤を手がけている。

同社は約40億円を投資し、中国で2つ目となるエキス抽出用の新工場を山東省威海市に建設する。生産能力は年間400トンで、国内外の既存工場と合わせると1300トンに高まる。23年後半の稼働を目指す。

国内では高槻市のエキス抽出用工場に約30億円をかけて原料の保管機能を拡張し、容量を従来の1.5倍にあたる年間400トンにした。また、高岡市の製剤工場では25年までに約30億円を投じ、各工場から集まるエキスを製品に仕上げるラインの速度を上げる設備などを導入し、生産能力を高める。

クラシエHDの製薬事業は20年12月期の売上高が300億円規模だった。高齢化で国内市場の需要は今後も拡大すると見られている。供給体制の拡大に加え、医師やドラッグストアに製品情報を提供したり、消費者向けに専用アプリを用意したりして販売を促進する。』

米人口0.1%増、過去最低の年間伸び率 21年7月時点

米人口0.1%増、過去最低の年間伸び率 21年7月時点
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21E4E0R21C21A2000000/

『【ワシントン=大越匡洋】米国勢調査局が21日発表した2021年7月1日時点の人口推計によると、米人口は1年間で0.1%増え、3億3189万3745人となった。同局は「増加率は過去最低」としている。高齢化の進展と出生数の低迷で自然増が鈍り、移民の流入も細った。人口鈍化を上回る生産性の向上がなければ経済成長の土台が揺らぐ。

1年間の人口増加数は39万3000人弱となった。自然増が約14万8000人、移民の純増が24万5000人弱だった。1990年代は人口が年1%以上伸び、2010年代も年間200万人前後、0.5~0.8%程度の増加を続けてきた。新型コロナウイルス危機で移民増にブレーキがかかった。コロナ禍前の19年7月までの1年間の移民増は60万人近かった。

白人層の高齢化で出生数が停滞したことも大きい。全国の年間出生数は358万2000人弱で、死亡数は343万4000人弱だった。

地域別ではニューヨークやカリフォルニア、首都ワシントンなどで人口が減った一方、テキサスやフロリダなどの人口は大きく増えた。

米国の白人数は今世紀半ばに人口の半数を割り込む。主流から少数派へと転じる恐れは強硬な移民規制を唱えるトランプ前政権を生んだ。さらに新型コロナの感染拡大に伴い、移民の流入は鈍っている。先進国のなかでも人口が安定的に増え、新たな経済成長と競争力向上の源泉としていく循環が崩れつつある。

米国の65歳以上の高齢者人口の比率は全体の約16%。3割近い日本や20%前後の欧州先進国よりは低いものの、合計特殊出生率は人口維持に必要な2強を下回っている。

人口動態は国際秩序の将来にも影響を与える。中国は14億人の人口を抱え、経済がデジタル化するなかで膨大なデータを集められる優位を生かしている。ただ中国は一人っ子政策を続けてきた結果、急速に高齢化が進み、すでに生産年齢人口(15~64歳)は減っている。人口減に転じる現実味が増し、国を挙げてロボット導入などを急ぐ。

米中ともに労働力の投入量が鈍る分、次世代に向けた成長分野への積極投資など、生産性をいかに引き上げるかが長期にわたる覇権争いを決するカギを握る。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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大槻奈那
マネックス証券 専門役員チーフ・アナリスト
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ひとこと解説

人口学者も”驚異“とする「0.1%増」は、これまでの最低記録の1918~19のインフルエンザ大流行や第一次世界大戦時を下回り、合衆国の建国以来最低。

パンデミックの特殊要因があるとしても、長期に亘る出生率の減少傾向をみると、今後も人口は伸びないことを所与とせざるを得ません。

これに対する施策は世界共通で、文中のロボット等の力を借りることや成長分野への投資もあるでしょう。

しかし、同時に知恵を絞るべきは、今後一層”希少資源”となる人々の持つ能力をいかに引き上げるか。日本でいえば、例えば教育、リスキリング、働き手の適材適所等をもっと危機感を持って検討すべきではと思います。

2021年12月22日 8:37

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

米国経済には、移民を含む人口増加・それを背景とする旺盛な消費需要、世界各地から流入する多様な才能の持ち主が導く技術革新という2つの強みが、長く伴ってきた。

だが、それらの強みが続きにくくなっている。記事にある「先進国のなかでも人口が安定的に増え、新たな経済成長と競争力向上の源泉としていく循環が崩れつつある」という部分がポイント。

トランプ前政権の政策運営に顕著に表れた排外主義の強まり、コロナ禍をうけた出生率の低下などが、米国の人口動態に影響を及ぼしている。世界経済の先行きを考える際、人口面の視点は欠かせない。

2021年12月22日 7:55

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石塚由紀夫
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説

先進国が少子化に悩むなか、米国は最近まで高い水準の出生率を誇ってました。

その一因は移民労働者の存在です。家事・育児を廉価で担う労働力があったからこそ、家庭責任を移民に任せて、仕事と子育てを両立しやすい環境にあったのです。

その要であった移民が減少すれば、仕事と子育ての両立は困難になり、米国でも今後少子化がさらに進むかもしれません。

少子化は文明・経済の発展に伴い避けられない現象だといわれています。人口減少を前提として社会構造を再構築することが先進国の急務です。

2021年12月22日 12:33 』

NHL選手、北京五輪に不参加へ オミクロン型拡大で

NHL選手、北京五輪に不参加へ オミクロン型拡大で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN220DO0S1A221C2000000/

 ※ こういう「実質ボイコット」「選手のボイコット」が、広まらないかが、北京当局の最も懸念しているところだろう…。

 ※ 都合がいいことに、「オミクロン株の感染拡大」が生じているんで、「各国選手」  及び「各国IОC」「各国政府」は、それを口実に使うことができる…。

『【ニューヨーク=中山修志】北米プロアイスホッケーNHLと選手会が、来年2月に開く北京冬季五輪に参加しない方針であることが21日、明らかになった。米スポーツ専門局ESPNが報じた。NHL所属の選手は北京五輪に参加する意向だったが、新型コロナウイルスの新たな変異型「オミクロン型」の感染拡大を受けて不参加の方針に傾いたという。

NHLはアイスホッケーの世界最高峰リーグ。2018年の韓国・平昌五輪への選手の参加を見送ったが、22年と26年の冬季五輪には参加することで選手会と合意していた。五輪出場のため中断する予定だった来年2月6~22日に公式戦を行う可能性があるという。

選手ら関係者に新型コロナの陽性者が増えており、オミクロン型の影響とみられる。現地メディアによると、米国とカナダを拠点とする32チームのうち11チームが感染拡大を理由に一時的に活動を停止した。NHLは21日までに、22~25日に公式戦50試合を中断すると決定した。

【関連記事】NHLシーズン中断へ コロナ拡大で、練習も停止 』

中国、米政府機関の幹部らに制裁 対抗措置で

中国、米政府機関の幹部らに制裁 対抗措置で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM21A7P0R21C21A2000000/

『【大連=渡辺伸】中国外務省の趙立堅副報道局長は21日の会見で、米政府系機関、米国際宗教自由委員会(USCIRF)の幹部ら4人に制裁を科したと発表した。 米財務省は10日「人権侵害に関与した」との理由で中国の新疆ウイグル自治区政府の幹部らへの米入国禁止などの措置を発表した。中国の制裁はその対抗だ。

中国は4人に香港・マカオを含む中国への入国を拒否する。中国に保有する資産を凍結し、同国の市民や団体との取引も禁じた。中国の反外国制裁法に基づくという。

趙氏は「米国は新疆の人権問題を口実に、中国の役人に不法な制裁を科した」と非難した。「新疆の業務は中国の内政に属し、米国に干渉する権利はない。制裁を撤回すべきだ」と訴えた。

米財務省は10日の対中制裁発表で「新疆の幹部らが在任中、100万人以上のウイグル族やムスリムらが(当局に)拘束された」と指摘した。USCIRFは米連邦政府系の機関で、海外の宗教や信仰の自由を監視し、政策を提言する。』

[FT]公開ソフト、課題は保守 脆弱性克服へ技術・法支援

[FT]公開ソフト、課題は保守 脆弱性克服へ技術・法支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB204P40Q1A221C2000000/

 ※ 「オープンソース」の「死角」は、こういうところにもある…。

 ※ 大手または有名どころのソフトは、少なくとも「問題が生じた場合」の「交渉の相手方」は、明確だからな…。

 ※ それも、「事前の承認」で、「放棄させられている」ことが多いが…。

 ※ まあ、最後は「保険」に頼る他は無いんだろう…。

 ※ おそらく、その「保険」すら、「責任限定の特約」まみれなんだろうが…。

『世界はオープンソースのソフトウエアで動いている。社会で幅広く使われるソフトを、ボランティアのプログラマーが自主運営する集団を通じて、無償で開発・保守するのがオープンソースの大まかな運用手法だ。
オープンソースのソフトウエアは世界のインターネットを支える重要な位置を占めている
一見するととんでもない、社会実験として始まったこの手法は今やIT(情報技術)の中心的存在となった。最近の平均的な応用ソフトにはオープンソースで開発されたソフトが500以上も組み込まれている。

それだけに、オープンソースの時代が始まってから20年以上たった現在、専門家ですら驚くような情報セキュリティーの欠陥がみつかることは憂慮すべき事態だ。
従来と異なるインセンティブが必要に

オープンソースの世界では既存の管理体制が通用しない。品質と安全性を担保するにしても、開発者の集め方や、報酬などは従来と異なるインセンティブ(動機づけ)が必要になる。

現在、ブロックチェーン(分散型台帳)技術がITにおける新たな分散化の潮流となりつつあるなか、自主運営のプログラマー集団が必ずしも常に社会に幅広く恩恵をもたらすとは言えなくなっている。

オープンソースの基本ソフト(OS)を手がけるリナックス財団エグゼクティブディレクターのジム・ゼムリン氏の一言が正鵠(せいこく)を射ている。「権限が分散している自主運営の集団の中で、誰が責任を取れるのか」

我々をはっと気づかせた直近の例は、11日に明らかになった「Apache Log4j(アパッチログフォージェイ)」のセキュリティー上の欠陥だ。

Log4jはあまり知られてはいないが幅広く使われているソフトで、オンラインのサービスや応用ソフトの利用状況の記録管理という目立たない仕事をする。

だが、この無害そうにみえるソフトウエアが突如、この10年ではオンラインセキュリティー上の最大の脅威となった。このソフトを搭載している世界中のコンピューターが100万回以上ハッキングされ、これまで知られていなかった脆弱性が明らかになったのだ。

Log4jの保守は、普段は米データ分析大手パランティア・テクノロジーズや米IT大手オラクルなど企業の開発者がパートタイムで担っている。

世間的に注目される知名度の高いプロジェクトではないため、外部から多額の資金を集めてはいない。ある開発者はツイッターで、資金を提供する支援者が3人しかいないと嘆いた。
組み込まれていることを知らない場合も

このように資金を含め支援を十分に受けていないソフトが世界のインターネットのインフラを支える重要な位置を占めているとすれば、Log4j以外にもセキュリティーに欠陥のある「時限爆弾」はどれほどあるのだろうか。

これは当てずっぽうな答えを口にすることさえはばかられる、厄介な疑問だ。

Log4jを公開している米アパッチソフトウエア財団(ASF)だけでも約350件のオープンソースプロジェクトを抱えている。こうしたプログラムを他の多数のプログラムと組み合わせて、利用者が最終的に購入する応用ソフトが作られる。

つまり、多くの組織の中で、Log4jなどのプログラムが、組み込まれていることさえ認識されずに使われている可能性がある。オープンソースのサプライチェーン(供給網)の透明性と統制を強化する取り組みは最近始まったばかりだ。

アパッチには以前にも同様の不祥事があった。2017年に米消費者信用情報大手エクイファクスから史上最大規模の個人情報が流出した問題はアパッチのプロジェクトの一つ「Apache Struts(アパッチストラッツ)」の脆弱性が悪用されたことが原因だった。

だからと言ってオープンソースのソフトの方が、設計図のソースコードが非公開のソフトに比べてセキュリティーが低いというわけではない。両者は本質が異なるのだ。その違いを理解した上で、どう使いこなすかは今なお模索している段階だ。

問題の一つは開発者の動機づけだ。ソフトウエア開発者のエリック・レイモンド氏はオープンソース時代の初頭に出版された影響力の大きい著書「伽藍(がらん)とバザール」の中で「(監視する)人の目が十分にあれば、どのようなバグも深刻ではない」と記した。

同氏はソフトの透明性を高めれば理論上は欠陥をみつけやすくなるとも論じた。だが、Log4jなどの地味なプログラムについて、バグをみつけるために訓練を受けたいという開発者はいるのだろうか。

懸念すべき一つの点は、安全なプログラムを書き、欠陥をみつけることに対する金銭的対価が低すぎることだ。

だが、これは杞憂(きゆう)かもしれない。IBM傘下の米ソフトウエア大手レッドハットのクリス・ライト最高技術責任者によると、最重要なオープンソースソフトウエアの大半は、自社製品でそれらを使っている企業で働く専業の開発者が保守しているという。

また、大企業はオープンソースの開発者を支援できるだけの資力は十分にあり、問題はむしろ多数の小さなプログラマー集団をみつけだして関係を維持することだという見方もある。同時に、ボランティアのプログラマーは金銭が目的ではなく、誰にも邪魔されず独りで自由に開発したいという人が多い。


オープンソースという手法をアップデート

金銭で解決できないとすれば、それ以外の支援が必要となる。開発者がセキュリティーの高いプログラミング技術を進んで身につけるような動機づけも必要だ。Log4jなどの失敗がもたらす悪評はプログラマーたちに対する警鐘となる。

アパッチ財団は他のオープンソース団体と同様、自らの傘下で公開しているプロジェクトの運営と資金調達を個々のプログラマー集団に委ね、そのための技術インフラや法的支援を用意している。

一方、リナックス財団は約300人の従業員を抱えて開発者のためのトレーニングを実施したりプログラムの品質維持に使うツールを開発したりしている。アパッチにはこうした経営資源がない。より多くの開発者がこうした支援を受けられるようにすべきだ。

オープンソースの開発者は自らの独立性を重んじる。だが、彼らが開発するソフトは今やビジネスや社会で中心的な役割を果たしている。オープンソースという手法そのものを最新版にアップデートしなければいけない。

By Richard Waters

(2021年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
英フィナンシャル・タイムズ(FT)と日経新聞の記者が、アジアのテクノロジー業界の「いま」を読み解くニュースレター「#techAsia」の日本語版をお届けします。配信は原則、毎週金曜。登録はこちら。

https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B009&n_cid=BREFT053 』

習近平氏を無視、鄧小平路線絶賛する重鎮論文の不穏

習近平氏を無視、鄧小平路線絶賛する重鎮論文の不穏
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK191AX0Z11C21A2000000/

 ※ これ、石平氏のネット動画でも、やっていた…。

石平の中国週刊ニュース解説・12月18日号
https://www.youtube.com/watch?v=BM20Jm8Iv0Y

 ※ 取り上げて論じている問題は、2つ。

 1、中国上層部間に、実は「深刻な路線対立」が生じているのではないか。

 2、中国の国内市場において、「外資叩き」が始まっているのではないか。

 その2点について、考察している。

『中国で異変が起きている。揺るぎない権威を固めたはずだった総書記(国家主席)、習近平(シー・ジンピン)の名前を一度も挙げずに無視した不穏な論文が、共産党機関紙である人民日報に堂々と載ったのだ。奇妙なことに、これは「中央委員会第6回全体会議(6中全会)の精神を深く学ぶ」と題した文章なのである。

人民日報の理論ページのトップに大きく掲載された「改革開放は党の偉大な覚醒」と題した高官の論文

論文が習の代わりに最大限、評価したのは鄧小平だった。その名に9回も触れて「改革開放は共産党の偉大な覚醒」と絶賛し、「長期にわたる『左』の教条主義の束縛から人々の思想を解放した」と思想路線面での賛辞も惜しまない。

これは悲惨な文化大革命(1966~76年)までの毛沢東路線の誤りを痛烈に批判した表現だ。毛に対する個人崇拝への厳しい視線も感じるが、習への権力集中に絡む敏感な問題だけに「寸止め」になっている。

中国を世界第2位の経済大国に引き上げ、第1位の輸出大国とし、世界の工場にした……。鄧小平路線を引き継いだ歴代国家主席である江沢民(ジアン・ズォーミン)、胡錦濤(フー・ジンタオ)時代の業績も事細かに挙げている。 

この論文を単独で読めば、上中等収入国の仲間入りをした2010年までに「歴史的な突破」と名付けた中国の経済的台頭は一段落し、12年以降の習近平時代は鄧、江、胡がこしらえた素晴らしいごちそうの食べ残しで食いつないでいるような錯覚にとらわれる。

あらわになった「鄧・江・胡」vs「毛・習」の構図

注目すべきは、書き手である曲青山のポストである。中央党史・文献研究院院長という共産党の過去・現在の歴史解釈の要となる重鎮なのだ。当然ながら「鄧小平超え」を演出した「第3の歴史決議」取りまとめにも関わっていた。

「改革・開放」政策で自らの時代をつくった鄧小平氏(広東省深圳で)

しかも曲青山は現職の中央委員(閣僚級)だ。中央委員197人、中央委員候補151人が大集合した6中全会にも出席している。今の党内の雰囲気を熟知したうえでこの論文を提起した意味は重い。

「(共産党内で)今後の中国を左右する2つの考え方がなおぶつかっている。歴史的な観点からみれば、論争があるのはむしろ健全な動きだ」。ある共産党の関係者は、必然性を指摘する。

論争の存在を浮き彫りにしたのは早速、曲青山論文に対する反撃が出たことだ。掲載からわずか4日後、人民日報は同じ理論面に、中央政策研究室主任の江金権による正反対の論調の文章を載せた。

タイトルは「党による全面的指導の堅持」。こちらは、習時代より前の分散主義、自由主義を攻撃する第3の歴史決議が醸し出す雰囲気に忠実な習礼賛トーンだ。党の絶対指導、党への絶対忠誠は、突き詰めれば習への権力集中を是とする論理に他ならない。

中国共産党の歴代指導者、左から毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平の各氏

鄧小平、江沢民、胡錦濤の3人は無視。あえて毛沢東を2回登場させ、習の名を6回も挙げた。鄧、江、胡がセットであるように、毛と習もまたセットなのだ。その2グループは思想路線を巡って対峙している。

党の喉と舌といわれる党機関紙に対峙する論調が載ったのは、歴史決議自体が解釈上、巨大な矛盾を含んでおり、引き続き党内で議論がある実態を象徴している。とはいえ江金権は20年に中央政策研究室トップに抜てきされた新進の幹部で、まだ中央委員でもない。いわば格下である。これでは、どちらが主流なのかさえ曖昧だ。

来年の経済政策も左右する路線闘争

見逃せないのは、政治的な路線闘争が、現実の経済政策づくりに密接にリンクしている構造だ。曲青山論文が載った12月9日は習、首相の李克強(リー・クォーチャン)も出席して来年の経済政策を議論した中央経済工作会議の真っ最中だった。中国を成長に導いた改革開放こそが取るべき道だと圧力をかけているのである。

オンライン形式で記者会見する李克強首相(3月)=AP

12月上旬にも、これに絡む重大な発言があった。「中国経済は向こう何年か、かなり厳しい状態に置かれる。これからの5年間は、改革開放から40年余りで最も困難な時期になるだろう。決して楽観すべきではない。第1の問題は内需の後退だ……」。李克強のブレーンである著名な経済学者、李稲葵の経済フォーラムでの発言は、時期が時期だけに波紋を広げた。

これから5年間とは習が6中全会を経てトップを維持する方向性が大筋、固まった期間にピタリと重なっている。不動産の構造的な値下がり、地方財政の逼迫、教育・エンターテインメント産業への規制、頭打ちの自動車市場など具体的問題に触れつつ、厳しい予想を公開の席で語ったのは興味深い。そして内需喚起に向けた長期的な処方箋として示したのは、李克強式の「都市と農村の一体化」政策だった。

当局の姿勢を批判した中国の楼継偉元財政相=共同

58歳になった気鋭の学者、李稲葵は全国政治協商会議委員も務める清華大学中国経済思想・実践研究院院長であり、発言力は強まりつつある。

もう一つ、気になる発言があった。元財政相の楼継偉による暴露である。「中国の統計数字は経済のマイナスの変化を反映していない」。中央経済工作会議の終了直後だけに反響が大きかった。年明けに発表される21年の成長率といった経済統計もマイナス面が省かれていると言っているに等しいのだ。

楼継偉は元首相、朱鎔基の周りを固めていた「改革派」である。その朱鎔基は鄧小平に抜てきされて、1990年代に国有企業改革を断行した実績がある。改革開放路線の系譜を継ぐ楼継偉は、習の経済路線とは微妙な距離があっただけに、今回の発言にも意味があるとみられている。

先の中央経済工作会議の発表では「安定」を意味する文字を25回も使った。直接、言いにくい中国経済の不安定さを暗に示す表現である。これと李稲葵、楼継偉の発言を合わせれば、厳しさの度合いを推し量ることができる。年末が近づく中国で20日、1年8カ月ぶりの利下げが発表されたのも同じ流れにある。

「長期執政、長治久安」 習氏が引き締め

「改革開放を偉大な覚醒と持ち上げた論文は、(習の)静かな怒りを買ったのではないか」。そんな噂も飛び交う中、習は早速、党内引き締めの動きに出た。再び権力集中の意義と長期にわたる執政の重要性を訴える重要指示を全党に発したのだ。そこで使った習独特の用語は「集中統一指導」「長期執政」「国家の長治久安」だった。

習の重要指示を久々に開かれた全国党内法規工作会議で伝達したのは、習側近の能吏で中央弁公庁主任の丁薛祥だ。会議で演説したのは思想・イデオロギー担当の最高指導部メンバー、王滬寧(ワン・フーニン)である。こちらは曲青山論文に反撃した江金権を、自らも務めていた中央政策研究室トップに引き上げた人物だ。

権力集中を志向する「毛・習」と、改革開放を旗印にする「鄧・江・胡」の路線闘争。野心的な「鄧小平超え」に踏み込んだ第3の歴史決議は、闘いに再び火をつけてしまった。そこには減速著しい現下の中国経済にどう対処するかという主導権争いも絡む。今後5年余りを左右する22年秋の共産党大会に向けた闘いは、簡単には終わらない。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)

1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。』

中東・アフリカ、「脱炭素」が汚染招く 石油投資が撤退

中東・アフリカ、「脱炭素」が汚染招く 石油投資が撤退
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2302M0T21C21A1000000/

『中東やアフリカの石油産業がグリーン化に逆行する懸念が強まっている。「脱炭素」で欧米企業のダイベストメント(投資撤退)が加速し、温暖化ガス削減に必要な技術の移転が進まないためだ。多くの場合、事業を引き継ぐのは産油国の国営会社や中国、ロシアの企業。株主や国際社会の監視の目が届かず、目先の利益優先で地球環境をさらに汚してしまう恐れがある。

イラク南部の石油都市バスラ。石油の生産や精製に伴って発生するフレアガス(随伴ガス)の燃焼による煙が影を広げ、硫黄のにおいが立ちこめる。「外から来た人はひどい環境に驚くが、われわれは慣れてしまった。文句を言う相手もいない」と住民のアッバス・イブラヒムさんは言う。

バスラの環境悪化を訴えてきたイラク人研究者は「環境問題への人々の関心は低い。あっても職を失うことを恐れて声を上げられない」と語る。

欧米メジャーが手掛ける油田ではフレアガスは製品化するのが一般的だ。温暖化ガスを減らせるだけでなく、事業の付加価値を高め収益にもつながるからだ。フレアガスには有毒な硫化水素が多く含まれ環境への負荷がきわめて大きい。

世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は6月、バスラのフレアガス削減のための期間5年、3億6000万ドル(約410億円)の融資を決めた。中国銀行やシティバンク、ドイツ銀行、三井住友フィナンシャルグループなど8つの国際金融機関が参加した。IFCはこれを「グリーン・ローン」と名付け、脱炭素ファイナンスの一環と位置づけようとしている。

しかし、湾岸の金融関係者はこうした化石燃料の関連事業に今後も民間資金が集まることには悲観的だ。「たとえ環境負荷を下げる事業でも化石燃料に関わるものは一緒くたで『悪い事業』と見なされる」と話す。年金ファンドなどの社会的責任投資を重視する組織であればなおさらだ。

欧米メジャーには「脱炭素」へ株主の圧力が強まる。英BPや米エクソンモービルはイラクの石油生産事業からの撤退を検討している。

売却資産の受け皿となる中国やロシア、中東の国営企業も環境重視を掲げる。しかし、株主や環境団体、政府からの圧力は欧米に比べずっと小さい。サウジアラビアのサウジアラムコやアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)など一握りの例外をのぞき、中東の石油会社には欧米のような環境技術がない。

化石燃料ビジネスの売却は個々の企業単位ではグリーン化の成功といえるが、こうした資産を買って事業を引き継ぐ企業は環境意識が低い可能性が大きい。世界の石油ビジネスの大半を担うのは産油国の国営企業や未公開企業だ。

再生可能エネルギーや水素といった新エネに「バブル」といわれるほどマネーが殺到する一方、既存事業の環境負荷を下げるという課題は忘れられがちだ。

ボツワナのレフォコ・モアギ鉱物資源相は日本経済新聞の取材に「われわれのベースロード電源を支えるのは石炭だ。水力も原発もない。化石燃料をグリーン経済に生かせるような技術が必要だ」と語った。

米国による制裁で石油施設が老朽化するイランは自力で増産や新規開発を目指すものの、環境配慮で欧米との意識の格差は大きい。石油省の元高官は日本経済新聞の問いに対し「石油産業のグリーン化とはどういう意味か」と尋ね返したほどだ。 

10月末から英北部グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では各国が、競うように「カーボンゼロ」の目標を掲げたが、エネルギー転換に向けた具体的な道筋の議論は不十分なままだ。

中東やアフリカは、干ばつや砂漠化など気候変動の打撃を真っ先に受ける地域でもある。その場しのぎの脱炭素目標や上辺ばかりの環境宣言は、問題を解決しないばかりか、事態を悪化させかねない。 

(ドバイ=岐部秀光)

【関連記事】
・イラクや中東で空白埋める中ロ、ほくそ笑むイラン
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・「投資撤退」は効果的なのか

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鈴木一人
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分析・考察

環境問題に関する南北問題は、単に先進国の勝ち逃げといった問題だけでなく、脱炭素に向けて必要な技術移転や、脱炭素に向けた設備への投資といったことが途上国だけでは賄いきれないため、支援のないまま脱炭素と言われても、出来ることが限られている、ということもあるのだろう。

一つの普遍的な価値を、環境や条件の異なる国々で実現することは、容易ではない。

2021年12月22日 11:23

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松本裕子
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ひとこと解説

米ブラックロックは非上場企業も含めて気候変動関連の情報開示をするべきだとしています。

この記事で指摘しているような市場の監視の目が行きわたらない企業が化石燃料事業の主体になれば、気候変動対応が進まなくなるとの懸念が背景にあります。

化石燃料関連の事業が将来的に収益を生まない「座礁資産」になると言われるなか、こうした事業をどうやって終わらせるのか、誰が最後まで責任を持つのかについては、もっとしっかり議論しなければいけない点だと思います。

2021年12月22日 10:50 』

プーチン氏、欧米が敵対的行動継続なら「軍事的措置」

プーチン氏、欧米が敵対的行動継続なら「軍事的措置」
年明けに米国・NATOとロシアが欧州安保で協議へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21D7F0R21C21A2000000/

『【モスクワ=桑本太】ロシアのプーチン大統領は21日、北大西洋条約機構(NATO)が敵対的な行動を続ければ、ロシアは軍事的な対抗策をとると警告した。ロシアは2022年1月以降、米国やNATOとウクライナ情勢を巡って協議する見通しで、交渉を有利に進める思惑とみられる。

プーチン氏は同日のロシア国防省の会合で「西側諸国が明らかに攻撃的な政策を続けるなら、ロシアは適切な軍事的・技術的対抗策をとる」と語った。16日までに米国などに文書で示した欧州安全保障の合意案について「法的義務をともなう長期的合意がなくてはならない」とも述べた。

合意案はNATOの東方への拡大停止や東欧からの事実上の軍撤収を求めており、協議は難航しそうだ。タス通信によると、プーチン氏は21日、合意案について「最後通告ではない」とも語った。軍事行動をちらつかせ、交渉のカードにしたい考えとみられる。

ロイター通信によると、NATOのストルテンベルグ事務総長は21日、来年初めにロシアと協議すると述べた。米国務省のドンフリード国務次官補(欧州・ユーラシア担当)は同日、22年1月に米国とロシアの2国間協議が開かれるとの見通しを示した。

【関連記事】
・ロシア、米欧と緊張緩和遠く 一方的提案で「取引」狙う
・ロシア、米国に安全保障案を提示 ウクライナ情勢巡り

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分析・考察

アメリカはロシアが軍事的圧力を続けるなら経済制裁を行うと言い、その喧嘩を買ったプーチン大統領はNATOが攻撃的な姿勢を続けるのであれば、軍事的行動も辞さないという姿勢を見せている。

最終的にプーチンが求めているのは、何らかの法的措置によるウクライナのNATO加盟阻止ということであろうと思われるが、そのための駆け引きがエスカレートしていくことで、コントロールできない状況になるという恐れもある。

言葉と行動は必ずしも一致するわけではないが、言葉にすることで、特定の関係性を作り上げていく効果が生まれ、対立を前提にした行動が続けば、思わぬ結果になるかもしれない。

2021年12月22日 11:15 』

日米同盟の質転換を象徴 駐留経費「強靱化予算」に

日米同盟の質転換を象徴 駐留経費「強靱化予算」に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA208N20Q1A221C2000000/

『日米両政府が21日、2022~26年度の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に実質合意した。駐留費用の「肩代わり」一辺倒をやめ、共同訓練など日本の抑止力強化につながる分野を重視した。日本は自前の防衛力強化をめざしており、駐留経費の新合意は日米同盟の質の変化を象徴する。

【関連記事】
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・米軍駐留費、抑止力底上げ 日本が100億~200億円増案
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岸信夫防衛相は21日の記者会見で「厳しい安全保障環境に日米が肩を並べて立ち向かっていく決意を示すことができた」と語った。これまでの「思いやり予算」という通称を「同盟強靱(きょうじん)化予算」に改めるとも主張した。

今回の駐留経費の負担増を自前の防衛力強化に向けた「投資」とできるかどうか、引き続き支出の検証は必要となる。

思いやり予算は人件費や光熱水費など米軍の駐留経費の一部を肩代わりし、日本側が金銭面から米軍の活動を補完するものだった。これを共同で実質的な抑止力の強化につなげていくというのが新たな合意の狙いだ。

例えば新たに設けた「訓練資機材調達費」は自衛隊と米軍が一体で活動するのに必要な経費に充てる。日米双方の能力を高めるための投資を駐留経費負担から拠出するのは初めてとなる。

仮想空間で日米が共同訓練するための「シミュレーター」を導入する。人工知能(AI)がつくる仮想敵との戦闘訓練が可能で、基盤となる米軍のシステムに自衛隊の機器もつなぐ。大量の戦闘機を飛ばす大規模訓練を再現し共同作戦能力を高める。

米軍は日本にステルス戦闘機「F35」などの最新鋭装備を配備、展開する。米軍と協力する機会が増えれば自衛隊の能力を高める契機にもなる。

日本側は米側との協議で負担の増額要求を受け入れる代わりに負担内容の質を変えるよう求め、米側も光熱水費などの減額を認めた。

光熱水費は在日米軍基地に暮らす兵士や家族の光熱水費も含み、安全保障上の運用との関わりは薄い。

レーダーを起動する際の電気代など運用に直接関わる部分に絞る。現行の年間234億円から段階的に減らし25~26年度は年133億円とする。

今回の駐留経費を巡る合意は4月に当時の菅義偉首相とバイデン米大統領が共同声明で言及した「新たな時代における日米同盟」の考え方に沿ったものだ。

特に22年は日米同盟の転換点となる。

日本政府は国家安保戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書の同年末までの改定をめざしている。米国は中国に対抗するため同盟国に応分の負担を求めており、日本も3文書の改定を通じ自国の防衛力強化に道筋をつける。

防衛費の増額もその一環だ。日本は21年度補正予算と22年度予算案で合計6兆円超を計上する。これからは「1年6兆円台」が目安となり5年前と比べて1割以上増やす。中期防でこうした方針を盛り込む。

駐留経費の一部を日本が負担する仕組みは1978年に始まった。円高の進行で基地内の従業員の労務費が高騰し、米軍が日本に肩代わりを求めた。当時の金丸信防衛庁長官は国会審議で「思いやりがあってもいい」と発言し日本の費用拠出に理解を求めた。

当時は米ソ冷戦期で、日本にとって在日米軍はソ連を抑止するのに不可欠だった。日本が米軍の駐留を費用面で支える仕組みはこの時から定着した。

思いやり予算は90年代まで増え続け、99年度は歳出ベースで2756億円を計上した。米軍が使うボウリング場やゴルフ場の整備などにも使われ批判の的になった。2000年代からは無駄を削減し人件費や光熱水費などに限定していった。

米軍は日本の防衛費の伸びに連動させて日本側の駐留経費の負担増も求めていた。在韓米軍の駐留経費を一部負担する韓国にも同様の理由で増額を迫っている。

韓国の場合は19年に支出した1兆389億ウォン(980億円)のうち基地で働く韓国人の人件費が5割、施設整備費が3割を占める。

駐留経費を肩代わりする構図は同じだが日本の負担割合は高い。米国防総省が04年に発表した米軍経費負担率は日本が74%で、韓国の40%やドイツの32%より突出した。防衛省の試算によると15年度も86%にのぼった。

米国には急速に軍事力を強める中国への危機意識がある。国防費を最近6年で26%増やしたが、それでも中国の5割増にはとどかない。

米議会が15日可決した22年会計年度(21年10月~22年9月)の国防予算の総額は7780億ドル(88兆4千億円)で前会計年度から上乗せできたのは5%程度だった。中国に対抗するため同盟国に負担の分担を求めざるをえない状況となっている。

(安全保障エディター 甲原潤之介)』