習指導部、マカオでも統制強化 カジノ大物幹部を逮捕

習指導部、マカオでも統制強化 カジノ大物幹部を逮捕 
富裕層締めつけ、資金逃避に網 共同富裕を推進
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM07CVB0X01C21A2000000/

『【北京=羽田野主、香港=木原雄士】マカオが20日、ポルトガルから中国に返還されて22年を迎えた。中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部はカジノ業界の大物経営者を逮捕したほか、国家安全部門の常駐ポストを新設した。香港だけでなくマカオへの統制も強めている。

中国政府は11月末、マカオに「国家安全事務顧問」を派遣すると決めた。香港にはすでに派遣済みで、国家安全維持の司令塔になるとみられる。「国家安全技術顧問」も3人置き、スパイ摘発などを担う中国国家安全省の力が強まる。

マカオは香港と同じ「一国二制度」を適用するが、カジノを軸とした娯楽産業が盛んで住民の政治意識は高くない。大規模デモが起きた香港とは異なり、中国共産党に従順な姿勢で知られる。

習指導部がそれでも締め付けるのは、カジノで富裕層を相手に賭博行為を仲介したり資金を貸しつけたりする「ジャンケット」の最大手、太陽城集団(サンシティー・グループ)の周焯華(アルビン・チャウ)最高経営責任者が11月に逮捕されたこととの関連を指摘する声がある。

中国国営新華社によると、周氏は中国人客を違法に組織して越境オンライン賭博に参加させ「国家の社会管理秩序を著しく損なっている疑い」がある。中国では国内から海外の賭博に参加するのは違法で、そのあっせんも罪に問われる。

習指導部による一連の締め付けには3つの狙いが取り沙汰される。

まずは習指導部が掲げる(ともに豊かになる)共同富裕と格差是正の推進だ。すでにIT、ゲーム、教育、芸能などの産業を狙い撃ちにしており、富裕層を相手にするマカオのカジノが新たな標的との見立てだ。今年1~9月に海外の犯罪がらみで起訴された1万3329人のうち、カジノ関連は1376人と全体の1割を占める。

マカオのカジノ業界は、江沢民(ジアン・ズォーミン)元総書記と近い元党高官が強い影響力を保っているとされる。習氏と距離がある江氏に連なる資金源を断つ狙いとの見方も浮上する。

資金流出対策の側面もありそうだ。中国大陸から現金を持ち込み、マカオのカジノで外貨に換金するのは難しくないとされる。米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の縮小を急いでおり、今後は中国からの資金流出圧力が強まりかねない。

中国が将来的にマカオのカジノでデジタル人民元の使用を義務付けるとの観測もある。デジタル人民元は保有者を把握しやすく、大陸の富裕層はマネーロンダリング(資金洗浄)の場としてカジノを利用しづらくなる。

マカオ政府も対応に動き始めた。9月にはカジノの規制強化案を示し、カジノ運営会社に経営を監視する政府代理人を派遣したり、株主配当を制限したりする。マカオのカジノは米ラスベガス・サンズ系の金沙中国(サンズ・チャイナ)など米系企業も参画しており、これまで以上に監視が強まる可能性がある。

一部のカジノ運営会社はジャンケットがかかわるVIPルームを閉鎖する検討に入った。香港の政治リスクコンサルタントのスティーブ・ビッカーズ氏は「ジャンケットは大きなリスクにさらされている。多くは暴力団や腐敗した公務員と共生してきたが、法と秩序を重視する風潮によって違法行為のコストが大幅に上がった」と話す。』