トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ

トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ”
https://www.fashion-press.net/news/57048

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ ちょっと、C(Connected)A(Autonomous)S(Shared & Service)E(Electric)どころの話しじゃ無い規模の構想だな…。

 ※ 実際のところ、どの程度が「建設済み」なんだろうか…。

 ※ なるほど、これが「100年に一度の変革」に対処するための、トヨタ流の「テスト・コース」か…。

 ※ 日本じゃ、到底、「公道でテスト」は許可されないからな…。

 ※ 「私有地内に(それとも、借りてるだけ?「東富士工場(静岡県裾野市)の跡地」と言ってるから、私有地くさいな)」、テストできる「公道(法的には、”私道”)」を作ったわけか…。

 ※ まあ、トヨタ以外のメーカーには、真似できない規模だろう…。

 ※ この「実験都市」を拠点に、あるゆる「モビリティ」の可能性を、探るわけだ…。

『トヨタ(TOYOTA)は、静岡県裾野市に「ウーブン・シティ(Woven City)」と呼ばれる、実験都市を開発するプロジェクト「コネクティッド・シティ」をスタート。

ロボットやAI技術を駆使、トヨタが作る未来都市
あらゆるモノやサービスを情報で繋ぐ

2020年1月7日(火)、アメリカ・ラスベガスで開催されている世界最大規模のエレクトロニクス見本市「CES 2020」において発表されたトヨタが開発する「ウーブン・シティ」。同プロジェクトの目的は、ロボット・AI・自動運転・MaaS・パーソナルモビリティ・スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証出来る実験都市を新たに作り上げることだ。

パートナー企業や研究者と連携しながら、技術やサービスの開発・実証のサイクルを素早く繰り返し、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報で繋がることで生まれる、新たな価値やビジネスモデルを見出す。なお、NTTとのタッグにおいては、NTTの通信インフラにおける高い技術力を生かした、新たなサービスの開発も進めていくという。

東京ドーム約15個分の土地に2,000人が入居

トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ”|写真1

建設場所は、2020年末に閉鎖されたトヨタ自動車東日本株式会社 東富士工場(静岡県裾野市)の跡地。東京ドーム約15個分に値する175エーカー(約70.8万m2)の範囲で街づくりを進めていく。

2021年2月より着工し、プロジェクト初期はトヨタの従業員や関係者をはじめとする2,000名程度の住民の入居を想定。将来的には、一般入居者の募集や、観光施設としての運営も期待されるところだ。

建築家ビャルケ・インゲルスが都市設計を担当
トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ”|写真5

都市設計を担当するのは、世界最高の若手建築家として知られる、デンマーク出身の建築家ビャルケ・インゲルス。CEOとして建築事務所「ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)」を率いる同氏は、これまでにニューヨークの新たな第2ワールドトレードセンターやグーグルの新本社屋、レゴ本社に建てられたレゴハウスなど、革新的でユニークなプロジェクトの数々を手がけている建築界の新星だ。

実験都市「ウーブン・シティ」の構想

街を構成する3つの“道”

トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ”|写真4

プロジェクトの核となる実験都市「ウーブン・シティ」は、日本語に直訳すると「編まれた街」の意。これは、街を通る道が網の目のように織り込まれたデザインに由来する。

その道とは具体的に以下、3種類に分類される。

1:スピードが速い車両専用の道として、「e-Palette」など、完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道

2:歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道

3:歩行者専用の公園内歩道のような道

これらが、まるで血管のように、それぞれが街の交通や物流において重要な役割を担う。なお、人々の暮らしを支える燃料電池発電も含めて、この街のインフラはすべて地下に設置される。

ENEOSの知見を活かした、水素エネルギーの利活用を実現へ

2021年5月10日(月)には、ENEOSをコアパートナーに迎えて、水素エネルギーの利活用について検討を進めると発表。四大都市圏において商用水素ステーションを45カ所展開する、水素事業のリーディングカンパニーであるENEOSの知見を活かし、水素を“つくる”、“運ぶ”、“使う”という一連の流れを実現する。

ウーブン・シティ内に定置式の燃料電気(FC)発電機を設置し、ウーブン・シティおよびその近隣における物流車両の燃料電池化を推進を目指すだけでなく、水素需要の実用化に向けての検証および需給管理システムの構築といった目的も兼ねている。

トヨタ社長 豊⽥章男は、2021年10月6日(水)のトヨタイムズ放送部にて「裾野市全体がWoven Cityになるわけではない」と前置きし、「自動運転車の目的は安全。Woven Cityはクルマの安全とともに、道、人を加えた三位一体で安全を確保するためのテストコース。ヒト中心の街をつくらない限り、安全な自動運転はできないと思い、Woven Cityをつくろうと決断した」と、“街”という形のテストコースの必要性を強調した。』


サステイナビリティを前提とした街づくり
トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ”|写真8

街の建物は主にカーボンニュートラルな木材で建設、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど、環境との調和やサステイナビリティを前提とした街づくりが基本。住民は、室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、センサーのデータを活用するAIで健康状態をチェックするなど、日々の暮らしの中に先端技術を取り入れる。また、街の中心や各ブロックには、住民同士のコミュニティ形成やその他様々な活動をサポートする公園や広場も整備される。
トヨタが実験都市「ウーブン・シティ」を静岡に開発へ、ロボットやAI技術を駆使した“スマートシティ”|写真7
「ウーブン・シティ」発表時のコメント

■トヨタ社長 豊田章男コメント

「ゼロから街を作り上げることは、たとえ今回のような小さな規模であったとしても、街のインフラの根幹となるデジタルオペレーティングシステムも含めた将来技術の開発に向けて、非常にユニークな機会となります。バーチャルとリアルの世界の両方でAIなどの将来技術を実証することで、街に住む人々、建物、車などモノとサービスが情報でつながることによるポテンシャルを最大化できると考えています。このプロジェクトでは、将来の暮らしをより良くしたいと考えている方、このユニークな機会を研究に活用したい方、もっといい暮らしとMobility for Allを私たちと一緒に追求していきたい方すべての参画を歓迎します」

■ビャルケ・インゲルス コメント

「様々なテクノロジーにより、私たちが住む街のあり方は大きく変わり始めています。コネクティッド、自動運転、シェアリングのモビリティサービスは、現代の新しい暮らしの可能性を拡げるでしょう。Woven Cityは、トヨタのエコシステムによって幅広いテクノロジーや業界と協業することができ、その他の街も後に続くような新しい都市のあり方を模索するユニークな機会だと考えています」』

トヨタが挑むソフト発の製造業 新産業革命「SDX」

トヨタが挑むソフト発の製造業 新産業革命「SDX」
編集委員 杉本貴司
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK14EB90U1A211C2000000/

 ※ だんだん、「物つくり」の意味が違って来たんだろう…。

 ※ 人は、「物を買う」のでは無い、「物が提供してくれる”価値”をこそ、買うのだ。」という話しなんだろう…。

 ※ まあ、前々から「ぼんやり」とは、言われてきた話しだ…。

 ※ 『「サービス・ドミナント・ロジック」(SDロジック)という論理』という話しなんかは、そういうことを明確に記述したものなんだろう…。

『ソフトウエア・デファインド(SD)による変革の波が押し寄せている。ソフトがモノやサービスを定義するという発想で、伝統的な製造業では従来の常識が一変する可能性を秘める。日本の産業界は、あらゆるものをソフト発で再定義する「SDX」に対応できるか。

 (※ デファイン(define)とは、「定義する」という意味。ソフトウエア・デファインドとは、ソフトウエアによって定義された or ソフトウエアが定義した、特徴づけた…、くらいの意味なんだろう…。)

カイゼンも仮想空間で

純白に映える富士山頂を間近に見据える土地で、未来都市の建設が進んでいる。トヨタ自動車がつくる「Woven City(ウーブン・シティ)」だ。

ウーブン・シティのイメージ図(トヨタ自動車提供)

全容は公開されていないが、完成予想動画では自動運転車が行き交いドローンも飛ぶ。豊田章男社長は「未来のモビリティー用のテストコース」と表現するが、さらにクルマ作りという観点で語ったのが未来都市づくりを託された子会社、ウーブン・プラネットのジェームズ・カフナー最高経営責任者(CEO)の言葉だろう。

「ソフトウエアのプラットフォームで人・モノ・情報がつながった時、我々に何ができるのか。その実証実験の場だ」

未来都市でソフト主体のモビリティーを築こうとしているのだ。カフナー氏が「このプロジェクトを通じて広がる」と指摘するのが「ソフトウエア・ファースト」のクルマ作りだ。

バーチャル空間を利用したデジタルツインと呼ばれる手法により、リアルではなしえない大量のシミュレーションで設計の効率を大幅に高めていく。常にネットワークとつながり文字通り走りながらカイゼンを加えていく――。そんな未来のクルマ作りの先陣を切るのが、この未来都市というわけだ。

ソフトがクルマの価値を生むソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)。自動車産業は100年に一度の大変革にさらされていると言われる。いわゆる「CASE(つながる、自動、シェア、電動化)」で語られることが多いが、SDVはその先にある自動車の本質的な価値変容と言える。

米テスラがソフトのアップデートという概念を自動車に持ち込んだが、クルマ作りそのものをソフト発に切り替える試みはまだ始まったばかりだ。トヨタはその難題に挑もうとしている。14日に公表した急速なEV(電気自動車)シフトに株式市場は目を奪われがちだが、その先にある自動車の本源的な価値を巡る競争を勝ち抜こうとしていることが分かる。
iPhone再現、鴻海は水平分業のクルマ作り意識

巨大産業のトップに立つトヨタの戦略転換は、部品などサプライヤーのピラミッド構造にも大きな衝撃を与える。それを先取りしたのが台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業だ。

自動車の価値がハードからソフトに移るなら、ハードはコモディティー化していくだろう。ならば業界横断で共通化してはどうか――。そんな発想で打ち出したのが「MIH」というEVコンソーシアムだ。発足からわずか1年で2000社以上が加盟した。3万点もの部品の「擦り合わせの妙」を強みとしてきた自動車産業に、iPhoneで実現した水平分業モデルを持ち込もうとしている。

鴻海を巨大企業に育てたアップルもまた、自動車への参入を企てる。詳細は語らないが5年ほど前に始めた「タイタン計画」がいよいよ実用化を見据える段階に来ているようだ。
米アップルはiPhoneで起こしたイノベーションを自動車に持ち込めるか

アップルは自動車産業に何をもたらすのか――。ヒントになるのが他ならぬiPhoneだろう。07年、故スティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明する」と言ってiPhoneを世に知らしめた。

多くの人々がそのハードの完成度の高さに心を奪われたが、ジョブズ氏の本当の狙いが美しいデバイスにあったわけではないことを、我々は後に思い知ることになった。モバイルインターネットが生み出す巨大なアプリ経済圏を手中にするため、ジョブズはiPhoneを世界中にばらまいたのだ。

では、アップルがトヨタなどと競うのはEVの販売台数だろうか。答えは言うまでもない。巨大産業の価値の源泉となるソフトに、その照準が定められていると考えるべきだろう。
日立の社名から「製作所」が外れる日

ソフトウエア・デファインドは2010年代前半からIT(情報技術)業界で使われ始めた言葉だ。ネットワークならソフトウエア・デファインド・ネットワーク、略してSDN。ストレージならSDSとなる。

その多くが複数のハード機器をソフトによって統合的に動かす「仮想化」という技術を利用したものだ。米シリコンバレーのヴイエムウエアが先鞭をつけて世界に広がった技術だ。

楽天グループが20年に携帯の回線を提供する「キャリア」に参入する際、通信インフラの汎用設備の一部をソフトで置き換えて価格破壊を実現した。これは仮想化技術を活用した成果が大きい。インターネットの世界で戦ってきた楽天ならではのアイデアで、このシステムを海外に輸出する計画だ。

ソフトウエア・デファインドへの転換は、仮想化に限らず「ソフト主導」という、より広い概念で産業界に広がりつつある。人工知能(AI)など新しいテクノロジーの台頭が後押ししている。本稿ではこの動きを「SDX」と呼ぶ。トヨタが目指すソフトウエア・ファーストのクルマ作りが好例だが、自動車業界にとどまらない。
ファナックの「賢い機械」の根幹は「エッジヘビーコンピューティング」の技術だ

ファナックが17年から展開するフィールドシステム。ロボットや工作機械をネットワークでつないで制御したり故障を未然に防いだりする。いわば「賢い機械」の根幹をなすのが「モノ」、つまり機械やロボットの側で大量のデータを即時処理する「エッジヘビーコンピューティング」の技術だ。ファナックはその後に対応アプリを展開しており、工場の機械をソフト主導に変えたと言える。

SDX的な発想は製品やサービスだけでなく企業経営そのものの変革も迫る。

ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正社長は「情報製造小売業」への転換を掲げる。自社で服をデザインし、生産を協力工場に委託する製造小売業(SPA)に進出したのが1980年代末のことだ。重要なのは、我々が足を運ぶ店舗がアジアを中心に展開する広大なサプライチェーン網の末端に位置していたということだ。「こんな服が売れるだろう」が最初にあり、それをアジアで作ってお客に届けていた。

柳井氏はこのサイクルを、店舗から入るデータをリアルタイムにサプライ網へ落とし込んで服をつくるという逆回転に変えるという。大量のデータを服づくりに生かすソフト主導の経営への転換を進めているのだ。

日立製作所はかつて「御三家」と呼ばれた化成、電線、金属を売却する一方で、1兆円で米システム企業を買収した。背景にあるのがネットワーク基盤のルマーダに軸足を置くソフト主導経営への転換だ。御三家のなりわいがいずれもソフトとの相乗効果が低いことを考えれば、大胆な事業入れ替えの狙いが透けて見えるだろう。

1910年に鉱山で使う「5馬力誘導電動機」から始まった日本のものづくりの雄もまた、ソフト主導の経営に舵を切っているのだ。いずれ日立の社名から「製作所」が消える日が来ると予言して本稿を終えよう。

[日経ヴェリタス2021年12月19日号]
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

鈴木智子のアバター
鈴木智子
一橋大学 准教授
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ひとこと解説

近年、「サービス・ドミナント・ロジック」(SDロジック)という論理が提唱されています。

SDロジックの世界観では、経済活動のすべてはサービスです。

製造業と呼ばれている企業は「モノを伴うサービス」を、サービス業は「モノを伴わないサービス」を提供していると捉えられます。

また、サービスとは、自らの能力(知識やスキル)を他者・自身の便益を生み出すために活用すること、と考えられています。

企業活動の目的は価値の創出ですが、そのためには、製造業も情報や知識を蓄え、活用していくことが重要であるということを示しています。

2021年12月21日 10:33 (2021年12月21日 10:34更新) 』

モデルナ、3回目接種「オミクロン型に有効」

モデルナ、3回目接種「オミクロン型に有効」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC20AP20Q1A221C2000000/

『米バイオ企業モデルナは20日、同社の新型コロナウイルスワクチンについて、3回目接種をした場合に新たな変異型「オミクロン型」に対する体内の抗体が大幅に増えたとする臨床研究の結果を発表した。

同社によると、2回接種を終えた人はオミクロン型の感染を防ぐ「中和抗体」の量が少ないが、3回目として1~2回目の接種量の半分にあたる50マイクログラム(マイクロは100万分の1)を接種したところ、29日後に中和抗体が約37倍に増えた。また、1~2回目と同等の100マイクログラムを接種した場合は約83倍に増えたという。

2回接種からどの程度経過した人を研究対象としたのかや、2回接種時点でのオミクロン型への予防効果は明らかにしていない。

3回目接種によりオミクロン型の感染や重症化に対してどの程度の予防効果が得られるかはまだ分かっていない。ただ、スティーブン・ホーグ社長は同日の投資家向け説明会で「中和抗体の増え方と感染や重症化、死亡への予防効果は相関関係にある」と、予防効果が期待できることを示唆した。

モデルナは既にオミクロン型に特化した新たなワクチンの開発に着手している。今後ウイルスの変異がさらに進み人の免疫を回避する可能性があることから、新しいワクチンの開発は継続する。同日、2022年初めにも臨床試験(治験)入りする計画を明らかにした。

オミクロン型へのワクチンの予防効果を巡っては、米ファイザーが8日、ワクチンを接種した人の血液を使った初期調査の結果を発表。3回目の追加接種を受けてから1カ月経過した人の血液は、オミクロン型を防ぐ抗体の量が2回接種した人の25倍に増えたという。ファイザーとモデルナの実験は前提条件が異なるため、単純比較はできない。

【関連記事】
・塩野義のコロナ飲み薬、オミクロン型「有効」 初期分析
・コロナ薬高まる期待 ファイザー、オミクロン型「効果」
・ここまで分かったオミクロン型 感染力は?ワクチンは?
・WHO、「オミクロンは軽症」に警告 医療逼迫懸念 』

香港株式市場、広がる中国企業回帰 米中分断にリスクも

香港株式市場、広がる中国企業回帰 米中分断にリスクも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0892F0Y1A201C2000000/

『【香港=木原雄士】米国に上場する中国企業の香港回帰が広がっている。米中対立が強まり、双方の当局から圧力が強まっているためだ。短文投稿サイトの微博(ウェイボ)や、米上場廃止を表明した配車アプリの滴滴出行(ディディ)に続き、ネット通販大手などの名前が取り沙汰される。資本市場の分断が進めば、企業が十分に資金を得られず投資家側は投資機会を失うリスクもある。

大手会計事務所KPMG中国によると「ホームカミング(本国回帰)」と呼ばれる米上場中国企業の香港上場は今年だけで7社。検索大手の百度(バイドゥ)や動画配信のBilibili(ビリビリ)、旅行予約の携程集団(トリップドットコムグループ)などの有力企業が名を連ねた。

この流れは加速するとみられる。米証券取引委員会(SEC)は12月、中国企業を担当する監査法人が当局の検査を受け入れない場合、2024年にも当該企業を上場廃止にする新規則をまとめた。

中国当局も国家機密や個人情報の国外流出を警戒し、海外上場への監視を強めている。6月末にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した滴滴は、直後から当局の集中砲火を浴び、異例の短期間での上場廃止と香港上場への方針転換を余儀なくされた。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は中国当局が「変動持ち分事業体(VIE)」と呼ぶ仕組みを使った中国企業の海外上場を規制する方針だと報じた。VIEはアリババ集団などテック企業が米上場などで多用してきた経緯がある。

金融市場では香港回帰上場の候補リストが出回る。米ゴールドマン・サックスはネット通販の拼多多(ピンドゥオドゥオ)や電気自動車(EV)の上海蔚来汽車(NIO)、動画配信の愛奇芸、音楽配信のテンセント・ミュージック・エンターテインメント・グループなど米上場27銘柄が香港上場の基準を満たすと指摘した。

米調査会社ディールロジックによると、中国企業の米国での新規上場は1~6月の36社に比べて7月以降は2社と激減した。米上場をあきらめて最初から香港をめざす動きもある。香港の貨物運搬仲介サービスのララムーブや新興保険のFWD、中国版インスタグラムと呼ばれる小紅書などが香港上場の方針に転じたと報じられた。

KPMG中国の劉大昌氏は「中国企業の選択肢は中国本土か香港への上場しかない。外国人投資家をひき付けたい企業は香港に来るはずだ」と話す。香港は本土のような資本規制がなく、外国人でも自由に投資できるためだ。

機関投資家の間では、米国と香港に重複上場する銘柄について、米国での上場廃止リスクをにらんで香港株の保有に切り替える動きが出てきた。BNPパリバが決済情報からNYSEと香港に上場するアリババの株主構造を分析したところ、香港株の割合が2年前の2割程度から7割に高まった。

米指数算出会社MSCIは株価指数に組み込むアリババや京東集団(JDドットコム)などの中国銘柄のトラック対象を米国から香港に変えた。米モルガン・スタンレーは「少なくともパッシブファンドは香港株に追随する必要がある」と指摘する。有力企業と投資資金が同時にシフトすれば香港の存在感が高まる。

もっとも米中の資本市場の分断は、米中対立によってサプライチェーン(供給網)を二重につくる動きが出てきたのと同様、世界経済の効率低下につながりかねない。

米市場は投資家の層が厚く、テック企業の評価も香港より高い傾向にある。効率的に資金を集めたい中国企業と、有力企業を呼び込みたい米金融界の利益が一致して米上場ブームが起きていた。

分断が進めば、企業と投資家のニーズは出合いにくくなる。米国市場は新興企業への投資に蓄積があるため赤字企業の上場も受け入れているが、上場基準が異なる香港には上場できない中国企業も出てくる見通しだ。

香港取引所も回帰の動きを手放しでは喜べない。21年の新規株式公開(IPO)調達額ランキングで香港取引所は、ナスダック、NYSE、上海証券取引所に続く4位と20年の世界2位から転落する見込み。

香港の順位を押し上げてきたテック企業の上場が以前より小粒になったためだ。UBSでアジア太平洋の投資銀行部門を統括する金弘毅氏は「投資家が慎重な姿勢のため、22年上期はIPOが減速し、22年半ばから需要が戻る」と予想する。

中国の画像認識大手、商湯集団(センスタイム)は米財務省から証券投資禁止の制裁を受けて香港上場をいったん延期した。こうした投資禁止措置が広がれば、中国企業の上場が増えても、国際的な投資資金をひき付けるのは難しくなる。

【関連記事】中国企業、時価総額トップ10圏外に 米中対立で株安続く

【関連記事】香港取引所、SPAC上場1月解禁 プロ投資家に限定 』

習指導部、マカオでも統制強化 カジノ大物幹部を逮捕

習指導部、マカオでも統制強化 カジノ大物幹部を逮捕 
富裕層締めつけ、資金逃避に網 共同富裕を推進
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM07CVB0X01C21A2000000/

『【北京=羽田野主、香港=木原雄士】マカオが20日、ポルトガルから中国に返還されて22年を迎えた。中国共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部はカジノ業界の大物経営者を逮捕したほか、国家安全部門の常駐ポストを新設した。香港だけでなくマカオへの統制も強めている。

中国政府は11月末、マカオに「国家安全事務顧問」を派遣すると決めた。香港にはすでに派遣済みで、国家安全維持の司令塔になるとみられる。「国家安全技術顧問」も3人置き、スパイ摘発などを担う中国国家安全省の力が強まる。

マカオは香港と同じ「一国二制度」を適用するが、カジノを軸とした娯楽産業が盛んで住民の政治意識は高くない。大規模デモが起きた香港とは異なり、中国共産党に従順な姿勢で知られる。

習指導部がそれでも締め付けるのは、カジノで富裕層を相手に賭博行為を仲介したり資金を貸しつけたりする「ジャンケット」の最大手、太陽城集団(サンシティー・グループ)の周焯華(アルビン・チャウ)最高経営責任者が11月に逮捕されたこととの関連を指摘する声がある。

中国国営新華社によると、周氏は中国人客を違法に組織して越境オンライン賭博に参加させ「国家の社会管理秩序を著しく損なっている疑い」がある。中国では国内から海外の賭博に参加するのは違法で、そのあっせんも罪に問われる。

習指導部による一連の締め付けには3つの狙いが取り沙汰される。

まずは習指導部が掲げる(ともに豊かになる)共同富裕と格差是正の推進だ。すでにIT、ゲーム、教育、芸能などの産業を狙い撃ちにしており、富裕層を相手にするマカオのカジノが新たな標的との見立てだ。今年1~9月に海外の犯罪がらみで起訴された1万3329人のうち、カジノ関連は1376人と全体の1割を占める。

マカオのカジノ業界は、江沢民(ジアン・ズォーミン)元総書記と近い元党高官が強い影響力を保っているとされる。習氏と距離がある江氏に連なる資金源を断つ狙いとの見方も浮上する。

資金流出対策の側面もありそうだ。中国大陸から現金を持ち込み、マカオのカジノで外貨に換金するのは難しくないとされる。米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和の縮小を急いでおり、今後は中国からの資金流出圧力が強まりかねない。

中国が将来的にマカオのカジノでデジタル人民元の使用を義務付けるとの観測もある。デジタル人民元は保有者を把握しやすく、大陸の富裕層はマネーロンダリング(資金洗浄)の場としてカジノを利用しづらくなる。

マカオ政府も対応に動き始めた。9月にはカジノの規制強化案を示し、カジノ運営会社に経営を監視する政府代理人を派遣したり、株主配当を制限したりする。マカオのカジノは米ラスベガス・サンズ系の金沙中国(サンズ・チャイナ)など米系企業も参画しており、これまで以上に監視が強まる可能性がある。

一部のカジノ運営会社はジャンケットがかかわるVIPルームを閉鎖する検討に入った。香港の政治リスクコンサルタントのスティーブ・ビッカーズ氏は「ジャンケットは大きなリスクにさらされている。多くは暴力団や腐敗した公務員と共生してきたが、法と秩序を重視する風潮によって違法行為のコストが大幅に上がった」と話す。』

Huawei社の電話ソフトには何の問題があるのだろうか?

ストラテジーペイジの2021-12-19記事
https://st2019.site/?p=18180

『Huawei社の電話ソフトには何の問題があるのだろうか?

 西側のインターネット・セキュリティ調査機関が発見したのは、複数の国の政府が、Huawei製のルーター・アクセサリーである「ミドルボックス」を経由して、政府に批判的なジャーナリストの通信内容を盗聴しているという実態だった。

 Huaweiが提供する、特殊なミドルボックスに組み込まれたソフトウェア。
 これが、端末ユーザーが検索した特定事項や電話で話した特定分野の連絡を自動探知して、ユーザー本人にはまったく気取られることなく、勝手に当局へ通牒していた。

 69ヵ国について調査したところ、その「四分の一」の国々で、Huawei製の秘密検閲ソフトが稼動しており、多くの場合、その対象はジャーナリストだと分かったという。

 「ミドルボックス」という業界用語は、1999年からある。

 Huewei製の検閲通牒ソフトは、それを輸入した国の機関に通牒するだけでなく、ついでに、中共国内にも同じ情報を伝送する。メーカーではそれは「品質管理のため」に必要なのだと言っている。

 こうした事実が知れ渡り、2019年までに、米国、豪州、NZ、日本、台湾では、Huawai製の電話機は使用が禁じられた。

 他の国々でも、Huawei製の5G機材に、大掛かりなスパイウェアであるミドルボックスが仕込まれていると疑うようになった。

 2020年、Huawei製の電話機器は世界市場の20%のシェアを得たのに、いまでは8%未満に落ち込んでいる。ユーザーが当然の警戒をするようになったからだ。』

韓国、ウィズコロナ(11月1日から)防疫の最終案を決定・発表したのは、施行2日前の10月29日・・どうしてこんなに急ぎすぎたか

韓国、ウィズコロナ(11月1日から)防疫の最終案を決定・発表したのは、施行2日前の10月29日・・どうしてこんなに急ぎすぎたか
https://sincereleeblog.com/2021/12/19/masakatohaomoimasuga/

『韓国でウィズコロナが始まったのは11月1日です。ですが、当時の記事を探してみると、10月27日に「ウィズコロナ時代にどういう防疫措置を取るか、29日に決めて発表します」ということになっています。

普通、11月1日からやるなら、いくらなんでも10月2~3週目あたりには発表がないと、準備とか、当局だけでなく民間側の準備もちゃんとできないではないか、そんな気がしますが。私がおかしいのでしょうか。日本の場合、緊急事態宣言解除のあとに、10月3週~4周目まで段階的に緩和していく、とちゃんと発表がありましたが。以下、イーデイリーの10月27日の記事から引用します。<<~>>が引用部分となります。

<<金富謙(キム・ブギョム)国務総理は27日、段階的日常回復(ウィズコロナ)と関連して「マスク着用など基本防疫規則と、新たな防疫基準を遵守し、感染リスクの高い施設については接種証明、陰性確認制度を導入する」と明らかにした。キム総理はこの日午後、ソウル光化門政府ソウル庁舎で開かれた第3次日常回復支援委員会で、「段階的日常回復履行計画の最終案は金曜日(29日)中に確定した後、国民の皆さんに詳細に報告する」と述べた・・

・・金総理は「早急な日常回復を望む期待感がこれまで以上に大きいのは事実だが、防疫緩和を心配する声も少なくないことを留意しなければならない」とし「国民的期待と懸念まで念頭に置いて、これまで分科委員会などで議論された結果を基に、最大限のバランスの取れた代案を導きだしたい」と伝えた・・・・K防疫のサクセス・ストーリーがK-回復につながるように、もう一度力を集めてくれることを強く要請すると強調した・・>>

27日に最終案を発表したとしても遅いのに、29日に決めると言っています(27日のソース記事に書いてあることの中には、最終案には反映されなかったものもあります)。最終的には、大幅な緩和が行われ、中央日報など大手は10月30日に報じています。でも、メディアによっては、11月1日(ウィズコロナ施行後)に「~なことになります」と報じるところも少なくありませんでした。どう考えても、無理をして急ぎすぎたのではないでしょうか。

それに、「統制」によって成り立っていたK防疫は、10月に入ってから段階的に緩和された部分があり、10月の3週目あたりから不安な姿を見せていました。規制緩和が部分的に行われたのが10月に入ってからなので、時期的にも大まかに一致します。11月になってから、ご存知、重症患者、及び死亡者が急激に増えました。ウィズコロナというのは、もともと、新規感染者の数はそこまで重要ではありません。もちろん、無視していいというわけではありませんが、重症患者及び死亡者の比率が、ウィズコロナの決め手となります。
それでも、政府は、11月1日からのウィズコロナをやめようとせず、K防疫は成功したからウィズコロナを遅らせる理由などないと、ウィズコロナを強行しました。10月29日まで最終案も用意できなかったというのに。なにをこんなに急いでいたのか?何を気にしていたのか。

韓国はいままで、感染被害においてもワクチン接種率においても、常に日本と比較しててきました。日本が9月になって「緊急事態宣言を解除し、10月末までは段階的に緩和していく」と方針を発表した直後、韓国でもウィズコロナに関する議論が急激に高まり、韓国政府は10月から段階的緩和、11月1日からウィズコロナを施行すると決めました。

詳しく政府内でいつから議論が始まったかまでは分かりませんが、関連報道などが出てくるようになったタイミングは、概ねそうなります。これは、「日本を意識しすぎで、急ぎすぎたのではないか」。そう思ってしまうのは、私の心が曇っているからでしょうか。』

K防疫の基本「3つのT」、次々と崩壊・・感染経路を把握できた感染者が40%から25%に急減

K防疫の基本「3つのT」、次々と崩壊・・感染経路を把握できた感染者が40%から25%に急減
https://sincereleeblog.com/2021/12/20/ttt/

『まず、昨日の韓国新型コロナ禍関連データをお伝えします。昨日の夜までは「日曜(月曜の朝 発表)なのに、6000人を超えそうだ」と言われていましたが、今回『も』、なぜか21時以降に感染者増加がほぼ止まり、新規感染者は5318人となりました。

重症患者は現状997人、死亡者は54人です。最近毎日の朝エントリーで紹介している韓国コロナ数値は、「もうわざわざ特記するほどではないかな」と思われたら、やめることにします。臨時コーナーかなにかだと思ってください。

それでは、本題に入ります。K防疫の「統制による防疫」たる側面。その中でも特に重要だったのが、3Tです。とりあえず全員検査の検査(Test)、追跡(Trace)、そして治療(Treatment)です。Traceの場合、韓国では感染者の「防疫網内管理」といい、感染者の感染経路を徹底的に追跡し、その動線上にある人たちを全員(自宅などに)隔離し、検査結果を待ち、もし陽性だったら防疫当局の手が届く範囲内で管理すること、となっています。ほどの差はあれど、日本で言う「感染経路不明」と趣旨は同じものだと言えるでしょう。

K防疫の場合、このTraceのための情報を集める過程、処罰の強度などが、日本など自由民主主義国家とは差がありますが、それについてはK防疫の人権関連側面についての過去エントリーを御覧ください。その3Tですが・・検査についてはドライブスルー閉鎖や検査所の飽和問題(スタッフが足りなくて午後になると打ち切り)、治療については医療崩壊が話題になりましたが、実は「追跡(疫学調査)」もちゃんと機能しないでいます。以下、国民日報から引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

<<段階的日常回復(※ウィズコロナ)が止まっているが、コロナ19重症患者数は連日最多記録を更新している。人手不足と確診者の急増が重なり、感染の連鎖を遮断するための疫学調査も、ちゃんとできていないのが実情だ。『防疫網』の外で、「不明感染」が増える状況では、いまの流行を押さえ込むことは難しいと指摘されている。

自家隔離し、検査して、感染が確認される割合である「防疫網内管理比率」が、11月第1週(10月31日~11月6日)40%から今月第3週(12月12日~15日)24.7%に急減したことからも分かるように、防疫網の外での感染が増えている。この割合は昨年、テグの「シンチョンジ」感染事態の時は80%水準だった。この割合が低いほど、感染経路が把握できない患者が多く発生しているという意味だ。

ジョン・ギソク ハンリム大学聖心病院呼吸器・アレルギー内科教授は、「防疫網内管理比率が30%台を下回るのは、流行が簡単には終わらないと予測できる要因の一つとなる」と話した。これは国内防疫戦略の核心である検査・追跡・治療の3Tが正しく機能していないことを示すわけだ。3Tのうち治療に穴ができた状況で、追跡部門さえも揺れているのだ。ジョン・ウンギョン疾病管理庁長も去る16日、「疫学調査のための人力も不足し、防疫網内管理割合が20%台に下がった」と懸念していた。

現実的には、疫学調査のためのスタッフを短期間内に大幅に増やすのは難しい。確診者の規模も7000人を超え、もう正確な追跡も容易ではない。ジョン教授は「国内の疫学調査能力は、昨年、シンチョンジ事態の時にとどまっている。調査官の充員・補強をおこなっていなかった」とし、「現在では、疫学調査のための人力が行政業務まで引き受けているのので、分業体系を再点検し、集中度を高めなければならない」と強調した。チェ・ジェウク高麗大予防医学教室教授は「(経路不明感染の)懸念は事実だが、避けられない側面もある」とし、「防疫措置の強度を高めていくのが、流行を遮断できる唯一の方法だ」と話した・・>>

相変わらず、オチが書きづらいコロナエントリーでした。 』

[FT]中国、国際機関に貢献しつつ支援受ける異例の存在に経済大国かつ途上国の二つの立場をフル活用

[FT]中国、国際機関に貢献しつつ支援受ける異例の存在に
経済大国かつ途上国の二つの立場をフル活用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB201XK0Q1A221C2000000/

『ブルガリア出身のエコノミストで、国際通貨基金(IMF)の専務理事を務めるゲオルギエバ氏に、世界銀行の前職で中国に便宜を図るためにデータを操作していたという疑惑が持ち上がった。この騒動で専務理事の地位が危うくなった。

中国の李克強首相(左)とIMFのゲオルギエバ専務理事=AP

疑惑の真偽はどうあれ、中国が世界の金融システムを支える国際機関における影響力の拡大を狙っていることは疑いの余地がない。

英王立国際問題研究所「チャタムハウス」の上級リサーチフェロー、余杰氏は「中国は発言権を拡大し、より多くの理事を送り込みたいと考えている。グローバル・サウス(主に南半球の途上国)のリーダーとしての立場を確かにしようとしている」との見方を示した。

中国はここ数カ月、地政学的な野心を強めている。デジタル人民元を推進しつつ暗号資産(仮想通貨)の取引を禁止し、自国の方針と意見を異にする国との貿易は制限している。リトアニアが首都ビルニュスに台湾の代表機関の開設を認めたことを受け、今月、リトアニアからの輸入を停止したのがその一例だ。

国際機関で目立つ中国の野心

そうした動きと並行して、中国は国連や米ワシントンにあるIMFや世銀などの国際機関でも経済面、外交面で野心を強めている。これらの国際機関は、第二次世界大戦後に西側諸国が設計した国際制度の根幹となっている。

特筆すべきは、中国が、途上国であると同時に超大国であるという異例の立場を利用して野心を追求している点だ。

米ワシントンのシンクタンク、世界開発センター(CGD)のスコット・モリス氏は「今、我々が目にしている中国のような例はこれまでなかった。国際機関において、他に例のない重要性を持っている。特に世銀では中国は出資国で資金を出すと同時に、資金提供を受ける立場でもある」と説明した。

世界の最貧国との2国間融資では、中国は今や世界最大の債権国だ。それどころか、中国の債権は他の債権国の合計を上回っている。

中国の野心的な広域経済圏構想「一帯一路」で進める海外でのインフラ投資も縮小され、習近平(シー・ジンピン)国家主席が国連総会で9月に提唱した、表現も穏やかな「全球発展倡議(グローバルな発展の取り組み)」(GDI)に置き換えられた。
「両方の手」を使う

余氏は中国が「両方の手」を使っている例だと説明した。その一つは、特に新興国における自国の計画推進や支援確保のために国連などの国際機関の同意を求めている点だ。GDIは「中国が提唱する計画らしくない」と同氏は言う。

同時に中国は世銀などで自国の野心が行き詰まると、新開発銀行(通称BRICS銀行)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立するなど、素早く代替の機関を立ち上げてきた。

中国の不満も理解できる。2009年の金融危機の対応で20カ国・地域(G20)が存在感を増したのは、遅ればせながら西側諸国がグローバル統治で中国などの主要新興国の発言権を認めることの重要性を認識したことの反映だった。だがその後、IMFや世銀で目立った変化は見られなかった。

中国の経済規模は世界の2割に近いが、中国のIMFと世銀への出資比率は6%程度に過ぎない。日本より低く、米国の3分の1程度にとどまる。IMFの出資比率の改革は、改革が自らのデメリットになる欧州などの反対に遭って暗礁に乗り上げている。

世銀では、金融危機後に中国の出資比率を倍の12%に引き上げる案が示された。しかし、この案はトランプ米前政権下で米中関係が悪化していた時期に協議されたため、優先順位が下げられて先送りされ、中国の野心には待ったがかかった。

CGDのモリス氏は、「あなたが米国の立場なら、中国を喜ばせるために(同盟国の)怒りを買うことを望みますか」と問うた。「状況から判断して、米国がそうするとは考え難い」

こうした緊張関係がひとつの頂点を迎えたのは、18年に世銀が増資したときだ。当時、世銀の最高経営責任者(CEO)だったゲオルギエバ氏が、各国の事業環境を順位付けする世銀の重要報告書「ビジネス環境の現状」で中国の順位を上げるためにデータの不正操作に関与したとされる時期だ。

ゲオルギエバ氏は今年9月にIMFの専務理事に選出されたが、同じ月に、世銀時代に中国に出資金の引き上げを求めるために統計の操作に関与したという疑惑が浮上した。しかし、同氏は弁明書のなかで、中国は「世銀への増資を長年、明確に支持していた」と反論している。

彼女を攻撃する批判派は、中国の出資比率引き上げに他国が反対したため、中国をなだめるために恣意的な統計の操作に及んだと訴える。

ゲオルギエバ氏はいかなる不正も働いていないと疑惑を否定しており、IMF理事会は調査実施後に同氏が不適切な役割を果たしたことを示す証拠は不十分という結論を出した。
低コストで影響力を得られると認識

世銀に比べると、中国は国連ではより大きな成果を上げている。影響力を高めたい中国の意向を反映するように、同国の国連予算の分担率はこの20年で1%から12%まで上昇、世界2位に浮上している。その一方で、米国の分担率は25%から22%に低下している。

中国人がトップに立つ国連機関は国連食糧農業機関(FAO)や国際電気通信連合(ITU)など4つに上り、その数は米国と肩を並べる。

こうした影響力を得るためのコストは比較的低い。グローバル・ガバナンス・フォーラムのエグゼクティブ・ディレクター、アウグスト・ロペス・クラロス氏は「国際機関では、比較的少額で重要なプレーヤーになれるということを中国が認識したことは評価すべきだ」と言う。「米国よりもその点をよく理解している」

CGDが国際機関や他の開発銀行における中国の影響力拡大について調査したところ、中国はこうした機関で機会を捉えては自らの立場を主張しているという。一方で、中国は正式にはまだ「途上国」に分類されており、こうした機関から経済的・技術的支援も受けている。

CGDのモリス氏はこう指摘する。「中国は途上国という立場を一切放棄していない。この点は他に例がない。インドなどの経済規模の大きい新興国は多額の融資を受けているが、グローバルリーダーの地位は得ていない」

By Jonathan Wheatley

(2021年12月19日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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【関連記事】
・「中国、なお発展途上国」 李克強首相の記者会見要旨
・IMF専務理事、残る火種 世銀首脳時に中国へ便宜疑惑
・[社説]IMF・世銀は信頼の回復を
・中国に「借り手」卒業促す、融資拡大警戒 アジア開銀
・アジア開銀、中国向け融資の金利引き上げ 2021年1月から 』

Galaxyは国内のiPhoneに代わる存在となれるのか? オリンピックモデルやネトフリ韓ドラに起用

Galaxyは国内のiPhoneに代わる存在となれるのか? オリンピックモデルやネトフリ韓ドラに起用
(8/11(水) 7:10配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/00635f3d5defdbbedec4ccf3f7a7a481742a9f7b

『サムスンはスマホ市場に広大な銀河を形成した。幅広いラインアップは、世界各地から支持されている。ユーザーが求めるスマホを開発し、カルチャーを軸にしたマーケティングで、現在の地位を手に入れたのだ。

【写真】「Galaxy S21」オリンピックモデル

 しかし、日本では、依然としてiPhoneのシェア率が高い。そこで今回は、サムスンの現状、そして特徴的なマーケティングを通して、「Galaxyが日本国内のiPhoneに代わる存在となれるのか」を考察していきたいと思う。

・世界に広がるGalaxy

 毎年バルセロナで開催される世界最大級のモバイル展示会「MWC(Mobile World Congress)」。サムスンは、今年開催の「MWC Barcelona 2021」で行われた権威ある賞、「GLOMO Awards」で大きな存在感を見せつけた。

 スマートフォン部門では「Galaxy S21 Ultra 5G」「Galaxy 20 FE 5G」、イヤホン部門では「Galaxy Buds Pro」がノミネートされたのだ。最終的に「Galaxy S21 Ultra 5G」は、スマートフォン部門の大賞を受賞し話題になった。

 現在サムスンは、スタイラスペンの付いたNoteシリーズ、ブランドの顔となるSシリーズ、コスパ重視のAシリーズ、諸外国向けのM・Fシリーズ、折りたたみスマホのZシリーズを展開し、盤石の布陣を形成している。

 加えて、サムスンは、スマホの性能やデザインだけではなく、マーケティングにも力を入れている。

・カルチャーを巻き込んだマーケティング

 サムスンは、カルチャーを巻き込んだマーケティングが得意だ。とりわけ、世界に向けての発信はK-POP同様、目を見張るものがある。ここでは、限定モデル、韓国ドラマ、YouTubeを利用したマーケティングを紹介していく。

 Galaxyは、新製品とともに限定モデルを発売するケースが多い。これまで、韓国のアイドルグループ「BTS(防弾少年団)」や「BLACKPINK」の限定モデルを発売してきた。ファンとの関係性が深い韓国のアイドルグループだからこそ、彼らを起用した限定モデルは支持を得やすい。

 東京2020オリンピックでは、出場選手全員に「Galaxy S21」の限定モデルを配布した。開催期間中にSNSを通じて、限定モデルの感想をアップする選手も多く、自然なマーケティングにつながったといえる。

 同じく自然に宣伝できる機会として有用なのは“韓国ドラマ”の存在だ。

 現在、NETFLIXで人気の「わかっていても」では、「Galaxy S21」が登場している。ほかにも、「梨泰院クラス」や「サイコだけど大丈夫」などの人気作でもGalaxyのスマホが使われた。

 世界に配信されることが当たり前となった今、作中で宣伝する手法は、高いマーケティング効果を得られる施策といえるだろう。

 最後に、“YouTube”を利用したマーケティングを紹介しよう。

 サムスンは、各国に専用のチャンネルを作成し、国ごとにコンテンツを変えている。各国の市場を徹底的に調査し、その国のニーズにあった動画を配信しているのだ。

 日本では「Galaxy Mobile Japan」という名称でチャンネルが開設されており、Galaxyを使ったハウツーやリアル店舗である「Galaxy Harajuku」からのライブ配信など、さまざまな日本向けのコンテンツを配信している。

 サムスンは、あらゆるカルチャーを巻き込むマーケティングを展開し、世界トップクラスのブランドに成長した。しかし、日本では依然としてiPhoneのシェア率が高い。

・Galaxyは日本のiPhoneに代わる存在になれるのか

 日本のiPhoneシェア率は、世界的に見ても高い傾向にある。

 総務省の「情報通信白書 令和2年版」によれば、2019年の世界シェア率は、1位がサムスンの21.2%、2位がHuaweiの17.3%、3位がAppleの14.1%。これに対して、日本シェア率は、1位がAppleの59.8%、2位がSHARPの10.6%、3位がサムスンの8.8%となっている。

 サムスンが日本市場に適したスマホを開発し、カルチャーを巻き込んだマーケティングを展開しても、日本のiPhone市場を制することは難しい。

 そもそも日本では、「スマホ=iPhone」という認識がある。これには、スマホ黎明期の動きが大きく関係してくるだろう。

 当時、iPhoneを独占販売していたソフトバンクは、実質ゼロ円キャンペーンを展開した。その結果、多くの人にiPhoneが行き渡り、「スマホ= iPhone」という流れを作ったように思える。

 また、スマホ黎明期の国産Android端末は、お世辞にも良い仕上がりとはいえなかった。このとき、Androidに対して否定的な印象を持ったユーザーは多いはずだ。度重なる不具合やトラブルは、数多くのユーザーを手放した原因ともいえる。

 以上のように、日本のスマホ市場は根本から成り立ちが違う。では、日本のiPhone市場を制するカギはどこにあるのだろうか。

・攻略のカギは新たなイノベーション

 近年、サムスンは「折りたたみスマホ」に力を入れている。2019年の「Galaxy Fold」を皮切りに、2020年には「Galaxy Z Fold 2」「Galaxy Z Flip」を発売した。今月行われる発表会「Galaxy Unpacked 2021」では、新たな後継機種が登場する予定だ。

 現在、サムスンは、高価格路線はAppleに、中・低価格路線は中国ブランドにユーザーを奪われている。幅広いラインアップで対抗しているが、徐々にポートフォリオは崩壊に向かっているといえるだろう。

 そこで現状を打破し、新たなイノベーションを起こすために、折りたたみスマホをプッシュし始めたのだ。

 折りたたみスマホが一般化すれば、黎明期から力を入れてきたサムスンは当然有利となる。前述した日本のiPhone市場に攻勢できる可能性は高い。特に、低価格化や薄型・軽量化が実現すれば、カルチャー重視のマーケティングを通して、日本の若者を中心に訴求することは十分に可能だろう。

 しかし、折りたたみスマホの普及には、まだまだ時間がかかる。一般的なスマホに比べて高い値段設定、万人には扱いづらい厚さや重量、画面割れなど耐久性の心配……。こうした課題をクリアしなければ、一般層に普及するのは難しい。現状では、ガジェットオタクを中心に話題を集めている程度だ。

 とはいえ、サムスンはむやみに折りたたみスマホを作っている訳ではない。現在、折りたたみスマホは、モトローラやHUAWEI、シャオミなどから発売されており、今後も中国ブランドを中心に続々と登場する噂がある。

 こうした中、サムスンとしては数年以内に決定的な製品を生み出し、「折りたたみスマホ=Galaxy」のイメージを定着させる必要があるだろう。その上で、他社にノウハウを提供できれば、企業として理想的な形といえる。

 ただし、日本のiPhone市場に関しては、Appleの折りたたみスマホ市場への参入が何よりの課題だ。当然、市場が激化すれば、Appleが参入してくるケースも考えられる。中国ブランドの台頭、そしてAppleの参入。サムスンに残された時間はあまりにも少ない。

・Galaxyのイノベーションに期待

 今月行われるサムスンの新製品発表会「Galaxy Unpacked 2021」では、折りたたみスマホの後継機種の登場が予想されており、その全容が注目されている。

 スマホ市場は入れ替わりが激しい。数年単位で情勢が変化し、それまで地位を築いてきたブランドは、あっという間に陥落する。

 サムスンは、数多くの企業が失敗してきた流れを断ち切れるのだろうか。そして、折りたたみスマホがイノベーションを起こし、世界はもちろん、日本のiPhone市場を制することができるのだろうか。今後の動きに要注目だ。

菊池リョータ 』

サムスン、中国市場挽回へ新組織 スマホ低迷に危機感

サムスン、中国市場挽回へ新組織 スマホ低迷に危機感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM202CH0Q1A221C2000000/

『【ソウル=細川幸太郎】韓国サムスン電子は販売低迷が続く中国市場をテコ入れするため、社内に専門部署を新設した。スマートフォンと家電を統括する部門トップ直轄組織とし、主にマーケティング戦略を担当する。スマホで世界シェア首位も中国市場では1%未満と低迷しており、最大市場の中国で再起を図る。

サムスンはスマホとテレビ、家電などを担当する「デバイス・エクスペリエンス(DX)部門」を12日付で発足。部門トップに就いた韓宗熙(ハン・ジョンヒ)最高経営責任者(CEO)の意向で中国市場の挽回を担う専門チームを立ち上げた。

新設した組織「中国事業革新チーム」は中国国内のブランディングや販売代理店戦略などを手掛ける。独特の商慣習や消費者の嗜好を分析し、スマホやテレビ、家電の各分野で地元ブランドとの競争に備える。

香港の調査会社カウンターポイントによると、サムスンの中国市場でのスマホシェアは2014年に20%と首位だった。その後、華為技術(ファーウェイ)や小米(シャオミ)、OPPO(オッポ)など地元勢が台頭し、直近のシェアは1%未満に落ち込んでいる。19年には中国国内でのスマホ生産から撤退し、さらに存在感が低下した。

サムスンはスマホやテレビのほか、幅広い家電製品を手掛けているものの、中国ではシェア低迷が続く。消費者の購買力が高い最大市場で、一定のシェアを維持できなければ成長は難しいとの危機感から、テコ入れ策が必要と判断した。

サムスンの20年の地域別売上高を見ると、米州が33%と最も多く、欧州が19%、中国16%、韓国16%と続く。新設した組織はマーケティング戦略のほか、中国内のサプライチェーン(供給網)管理も担当するという。』

中国、北京冬季五輪に韓国大統領招待 韓国は慎重検討か

中国、北京冬季五輪に韓国大統領招待 韓国は慎重検討か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM205UY0Q1A221C2000000/

『【北京=羽田野主】2022年2月の北京冬季五輪の開会式を巡り、中国政府が韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に招待状を出したことがわかった。中韓外交筋が明らかにした。韓国は国内世論を見極めつつ慎重に検討する見通しだ。

文氏は対立を深める米国と中国の間で一方に偏らない外交を展開してきた。中国は韓国を取り込むことで、米英豪などが表明した外交ボイコットが広がらないようにする思惑がありそうだ。

韓国側は20日時点で返事をしていない。文氏は13日に外交ボイコットについて「韓国政府は検討していない」と述べた。韓国では対中感情が悪化しており、韓国が長年要請する習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪韓も実現していない。文氏の3度目となる訪中には慎重論も強い。

開会式にはロシアのプーチン大統領が出席を表明済み。北京の外交筋によると中国は中央アジアや東欧諸国の首脳にも招待状を出している。』

『多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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木村幹
神戸大学大学院国際協力研究科 教授
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ひとこと解説

韓国では朴槿惠政権末期にTHAAD配備問題を巡って経済制裁を受けてから中国に対する感情が大きく悪化、世論調査では習近平に対する好感度は、関係の悪化する日本の首相や、対話が頓挫する北朝鮮の金正恩と同じレベルにまで低下しています。

他方、経済的には中国への依存度は依然大きく、李在明・尹錫悦の次期大統領有力候補も、中国に対する姿勢を明確にできずに現在に至っています。

仮に現在の状況で文在寅が北京五輪に出席すれば、習近平・プーチンと天安門上に並びたち、アメリカから大きな批判を浴びた朴槿惠前大統領と同じ状態になりかねません。

大統領選挙の僅か1か月前の北京五輪は、韓国にとって悩ましい問題になっています。

2021年12月20日 19:57

峯岸博のアバター
峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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分析・考察

この記事を読んで、ソウルに駐在していた2015年、中国での軍事パレードに招待された朴槿恵大統領が米国や日本の懸念を振り切って参加したのを思いだしました。

ただ、今回ばかりはさすがに韓国も米国の意向を無視できないというのが韓国政府内にある見立てです。当時とは米中対立の厳しさが異なります。

万一、文在寅大統領の参加があり得るとすれば、習近平氏が北京での南北首脳会談カードを示した場合ではないかと。レガシーを遺したい文氏の心は揺れるはずです。

ただ新型コロナウイルスの状況次第で南北をはじめ外国首脳が出席できるかというそもそもの問題が残ります。中国の手の内も探りながら、韓国政府は最終決定するのでしょう。
2021年12月20日 20:02

北川和徳のアバター
北川和徳
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点

そもそも五輪の開会式に招待状を出すのは、IOCと組織委員会なのですが、その辺りのルールはどうなっているのでしょうか。

中国が五輪をどう考えているか分かります。五輪の政治利用そのもので、IOCは怒ってもいいはずなのですが。

2021年12月20日 19:13 』

香港議会選、低投票率が示す「民意」 議席99%が親中派

香港議会選、低投票率が示す「民意」 議席99%が親中派
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM167A40W1A211C2000000/

『【香港=木原雄士】19日投票の香港立法会(議会、定数90)選挙は20日、開票が終了し、親中派が99%にあたる89議席を得た。中国が選挙制度を見直して、事実上民主派を排除。議会は親中派一色になり、政府は統制強化の政策を進めやすくなる。投票率は過去最低に落ち込んだものの、中国政府は「香港の民主制度の新たな一歩」と正当化した。

【関連記事】
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・香港選挙委員、「民主派」ゼロ 中間派1人のみ
・香港映画、検閲で存続危機 公開数はピーク比8割減

「自由な選挙を装っているだけの偽物選挙。支持できる候補者は一人もいない」。会社員の男性(25)は「時間を無駄にしたくない」として棄権した。

今回は習近平(シー・ジンピン)指導部が「愛国者による香港統治」を掲げて見直した新制度のもとで、初めての選挙となった。投票率は30.2%と前回2016年選挙の58%を大幅に下回った。

定数90議席のうち40議席は親中派で構成する選挙委員会が選び、30議席は多くが中国に近い業界枠。一般市民の投票で決まるのはわずか20議席だけだ。しかも親中派からの推薦を得て、当局に「愛国者」と認定されなければ立候補できない。

民主派政党は候補者の擁立を見送り、自ら親中派でないと主張する「自称民主派」は全敗した。

立教大の倉田徹教授は「候補者が審査され、結果が事前に分かる中国式選挙だった」と話す。複数の候補者は日本経済新聞の取材に、中国政府の関係者とみられる人物から繰り返し出馬の意向を尋ねられたり、立候補する選挙区を誘導されたりしたと証言した。中国が選挙の「競争」を演出した可能性がある。

香港のテレビ局アイケーブルの調査によると、投票所に足を運んだ有権者のうち30代以下は10%。自由で民主的な教育を受け、19年のデモを主導した若者の多くは棄権した。香港紙・明報の調査では棄権した人の43%は「選挙制度に不満」、40%は「適切な候補者がいない」と回答した。

「私の候補者を釈放して」。投票日の19日、活動家らのSNS(交流サイト)で呼びかけが広がった。選挙制度見直し前、立法会選に出馬意思を表明した民主派47人は国家政権転覆罪で起訴され、いまも出馬禁止か収監されたままだ。

香港の選挙制度はもともと親中派に有利な仕組みだったが、市民のデモや民主派の抵抗によって統制強化や愛国教育を阻んできた。今回の選挙で議会から「抵抗勢力」が消え、こうした政策を進めやすくなる。

中国政府は20日、香港の一国二制度に関する白書を公表し「新しい選挙制度はさまざまな背景を持つ人をひき付け、多様で前例のないものだ。決して単一の声ではない」と主張した。倉田氏は「米国の民主主義サミットに対抗し、香港がうまくいっているという勝利宣言だ」とみる。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は20~23日に北京を訪問する。習氏と会談し、選挙の正当性のお墨付きを得るとみられる。

米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国の外相は20日、立法会選を受けて「香港の選挙制度の民主的な要素の侵害に深刻な懸念を表明する」との共同声明を発表した。「選挙制度の見直しによって、政治的な反対意見が封じられた」と指摘。言論の自由の制限など市民社会の締め付けにも懸念を示し、中国に香港で権利や自由を尊重する国際的な義務を果たすよう求めた。』

中国の不動産市場、需要は安定 厚朴投資・方董事長

中国の不動産市場、需要は安定 厚朴投資・方董事長
経済観測 不確実性高まる中国経済
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM135A80T11C21A2000000/

『高騰してきた不動産価格が下降基調に転じるなど、中国市場の不確実性が高まっている。米国との経済対立も続く。今後の中国経済はどう動くのか。中国で「最初のインベストメント・バンカー」と呼ばれ、投資ファンド「厚朴投資」の董事長を務める方風雷氏に見通しを聞いた。

――2021年第3四半期の国内総生産(GDP)成長率は4.9%と失速しました。

「原因は3つある。第1の要因は素材価格の上昇と電力不足だ。素材価格の上昇により卸売物価指数が上昇した。卸売物価指数が消費者物価指数よりも10ポイント以上高い今の状況は歴史上なかったことだ。第2に新型コロナウイルスの影響だ。米欧や日本に比べて感染者数は少ないが、ゼロコロナ政策をとっているため人の流れや経済活動に影響が生じた。第3に不動産分野で政府が投機の抑制策をとった影響が出た。不動産は産業連関が大きく、建築や素材、家具、家電製品などの産業にも幅広く影響した」

――2022年の景気見通しは。

「現在の状況は短期的だと考える。12月初旬に中国人民銀行は預金準備率の引き下げを通じて1兆2000億元(約21兆円)の長期流動性を供給した。素材価格は下落し始めており、新型コロナの感染も抑制できている。不動産市場も一時的な影響はあったが、需要は安定している」

――恒大集団など不動産開発企業の債務問題は不動産市場に不安を与えています。バブル崩壊の可能性はないでしょうか?

「中国にとって不動産問題は重要だ。他の産業への影響も大きい。不動産分野は政府や地方政府の主要な財源でもあり、銀行貸し出しでも大きな比率を占める」

「中国の不動産市場の問題は、中国の人々がまるで株を買うように投機や投資のために住宅を買っていたことにあった。中国には相続税がないため子供にすべて遺産として相続でき、投資性、投機性が高まってしまった。政府が『住宅は住むためのもの』として投機の抑制に乗り出したのは正しい」

「価格の急落を防ぐことも含め、政府の管理下で市場の調整が始まった。中国政府にはとりうる手段が多く、市場が制御できない状態になる可能性は小さい。『住む需要』も安定的にあり、今後は投機ではなく実需が市場を支える。これまで不動産に向かっていた投資資金は製造業や商業など資金を必要とする他の産業に向かい始めている」

「そもそも中国の不動産市場は『天井』を迎えつつあった。このような状況下で恒大問題が起きたのも必然だ。恒大は投資拡大にのめり込み、2兆元もの債務を抱えている。中央政府にマクロ政策をコントロールする能力がない国家にとっては大変な問題だが、中国にとっては解決可能な問題だ。中央政府が銀行や関連産業、全国の司法機関と連携し、一括して問題を処理することができる」

――最近は中央政府によるIT企業などへの規制強化も経済への将来的な不安定要因としてみられています。

「金融市場は透明性や予測可能性を重視し、不確実性はもっとも嫌がる。様々な政策が一度に出てきてしまったため、彼らに失望を与えてしまったのは事実だろう」

「ただ、中国のネット企業には米国のプラットフォーム企業とは異なる点もある。中国ネット企業の事業はビジネスモデルの応用であり、グーグルやアマゾン・ドット・コムのように革新的な技術力はない。商業サービスが未発達だった中国市場において低コストで急成長を果たした後、独占的地位を利用して他のベンチャー企業の成長や消費者利益を阻害するようになり、メディアもコントロールするようになった。これは不健全な状況といえる」

「政府は彼らをつぶそうとしているわけではない。新たな技術開発に導くのが目的だ。最近では百度(バイドゥ)による自動運転やアリババ集団による半導体産業への進出などの動きがある。3~5年後にはこれらのプラットフォーム企業は革新的なハイテク企業に変貌していると確信する」

――日本企業には対中投資に慎重な姿勢も出始めています。

「日本企業の中国における収益率は20年で14.9%に達する。全世界では7%台、東南アジア諸国連合(ASEAN)主要地域合計でも 10%に達しない。それにもかかわらず、日本企業は中国市場において米国や欧州、台湾企業ほどの積極性はない。原因は外交や国際問題だけではないと思う」

「日本企業の中国市場における問題の一つは資本金の不足だ。日本企業は国内では銀行貸し付けに依存して事業を展開している。中国ではその資金を獲得することができない。大企業だけでなく、中小企業も海外の新市場を開拓しようとすると同じ問題が立ちふさがる。もし中日両国で新たなファンドを設立し、日本の中小企業が中国市場を開拓できるようにしたら大きな機会が生まれるのではないか」

「もう一つの問題は、日本企業は大企業ですら中国での事業展開が遅いことだ。理由は『現地化』の遅れにある。米国企業をみてほしい。中国の米国企業はみな中国人がマネジメントに携わっている。日本企業は中国の人材を採用して現地化を進めなければ重要な市場機会を失うだろう」

――米中対立の激化を背景に、日本企業は対中投資を積極化すれば経済安全保障問題で米国から制裁を受けるのではないかと心配しています。

「私は米国人と多くのビジネスをしてきた。米国人が『何を言うか』ではなく『何をしているか』をみるべきだ。いま米国企業の対中投資は減るどころか増加している。彼らは中国市場を失いたくないのだ」

「中国の小売市場は毎年7~9%成長している。米国は3~4%だ。21年は中国の小売売上高が6兆ドルに達すると予測している。米国は5兆8000億ドルだ。この成長が続けば27年には中国の小売売上高は10兆ドル規模に達すると予測されている。米国はそのころ8兆ドル弱だ。日本はこの市場機会を捨て去るのか」

「中東を訪問した際、イラン・イラク戦争中に唯一現地にとどまってビジネスをしていたのは日本の商社だったと聞いた。日本企業は本来、粘り強く対応能力も高い。新しい市場環境に対応しながらビジネスチャンスをつかむべきだ」

(聞き手は中国総局長 桃井裕理)

ファン・フォンレイ 1993年に中国初の合弁投資銀行「中国国際金融」の設立に参加し、実質トップと言われた。中国企業の大型買収や上場案件を手掛け、初の不動産証券化にも携わった。米ゴールドマン・サックスの中国進出のパートナーとなり、現地法人の董事長も担った。69歳。』

G7、香港議会選に「深刻な懸念」 高度な自治を侵害

G7、香港議会選に「深刻な懸念」 高度な自治を侵害
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR20D7Q0Q1A221C2000000/

『【ロンドン=中島裕介】日米欧の主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)の外相は20日、19日投票の香港立法会(議会、定数90)の選挙結果を受けて、「選挙制度の民主的要素が侵害されていることに深刻な懸念を表明する」とした共同声明を発表した。中国と香港当局に対し政治への信頼を回復させ、自由や権利を擁護する人への不当な弾圧を終わらせるよう求めた。

共同声明では一般市民の選挙で選ばれる議員数が削減された点や、親中派の推薦を得ないと立候補できない点など新たな選挙制度の問題点を指摘した。そのうえで「一国二制度のもとでの香港の高度な自治を傷つけた」と批判した。

19日の香港の選挙は、中国が制度を見直して行われ、親中派が議席の99%にあたる89議席を得た。議会は親中派一色になり、政府は統制強化の政策を進めやすくなる。投票率は過去最低に落ち込んだものの、中国政府は「香港の民主制度の新たな一歩」と正当化している。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

1997年、イギリスの植民地だった香港が中華人民共和国に返還されたとき、政治学者と経済学者の間で、香港の中国化、または中国の香港化、の論争があった。

それから25年しか経っていないが、香港の中国化が明らかになった。

想定内の結末といえる。中国は西側の民主主義を受け入れない以上、中国の一部になった香港は中国化する道しかない。

2021年12月21日 7:22 』

米政権「造反」1人で窮地に 200兆円法案の実現不透明

米政権「造反」1人で窮地に 200兆円法案の実現不透明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN202XM0Q1A221C2000000/

『【ワシントン=大越匡洋】バイデン米政権が与党・民主党内の内紛で窮地に陥った。子育て支援や気候変動対策への財政拡大をめざす看板政策について、党内で保守層に近いマンチン上院議員が19日、反対を表明した。共和党に近い富裕層からも献金を受けるマンチン氏の造反を止められなければ、2022年の中間選挙に向けて政権運営は大きな打撃を受ける。

「この法案はノーだ」。ウェストバージニア州選出のマンチン氏は19日、保守系メディアのフォックス・ニュースで、10年で1.75兆ドル(約200兆円)規模の資金を子育て支援や気候変動対策に費やす歳出・歳入法案に反対すると断言した。

20年の大統領・議会選を経て、民主党は南部ジョージア州での決選投票を制して上院の半数50議席を握った。賛否同数なら上院議長のハリス副大統領が票を投じることができるため事実上の多数派だ。下院でも過半数を占めた。

格差縮小や気候変動対策といった「民主党らしい政策」を実現する絶好の機会とリベラル層は期待を高めた。実際は政権の看板政策をめぐり、民主党は夏から延々と内紛を繰り返してきた。

内紛の震源地は上院議員3期目のマンチン氏だ。中道派と呼ばれる政治スタンスは財政拡大や増税を嫌う保守派に近い。民主党内では「右端」に立つ少数派だが、民主、共和両党が50議席ずつで拮抗する状況が大きな力を与えている。

上院で法案を通すためには民主党議員の全員が一致する必要があるため、マンチン氏は「造反」をちらつかせ、まず自身が推す超党派インフラ投資法案を実現。歳出・歳入法案の規模を当初案の3.5兆ドルから半減させることにも成功した。

今回、マンチン氏は法案に反対する理由にインフレや債務拡大への懸念を挙げたが、額面通り受け止める向きは少ない。なぜ与党議員が政権を追い込むのか。

まず地元事情がある。ウェストバージニア州はアパラチア山脈の石炭産業で栄えた地域だ。民主党を支持する「ブルーステート(青い州)」だったが、いまは低所得の白人労働者層がトランプ前大統領を支持し、共和党が強い「レッドステート(赤い州)」となった。生き残るには保守層を取り込むしかない。

気候変動対策の拡充や富裕層増税など、民主党政権の「左傾化」を阻むことで多額の政治献金も集まる。米調査サイトの「オープンシークレッツ」によると、マンチン氏は21年に入って9月末までに300万ドル超の政治資金を集め、19~20年実績の4倍を超えた。

民主党左派が気候変動対策の拡充をめざす歳出・歳入法案に反対するマンチン氏は石油・ガス、石炭などエネルギー業界からの献金が上院議員のなかで最高を誇る。大口献金者には税務コンサル事務所も名を連ね、米紙報道によると、そのトップはテキサス州を本拠に共和党に献金し、トランプ前大統領にも税制について助言したという。

バイデン政権は焦りを隠せない。サキ大統領報道官は19日の声明でマンチン氏に対し「何度も『誠意をもって』交渉すると約束したはずだ」と批判した。「決して諦めない」としたものの、打開策は見えない。

政権支持率は低迷を続けている。看板政策の実現が不透明になり、22年秋の中間選挙への挽回策が見当たらない。年が明ければ共和党との対立色は今以上に強まり、法案成立のために共和党議員の協力を得ることは一段と現実味が乏しくなる。

1.75兆ドルの規模をさらに縮小するなど妥協すれば、今度は民主党内の主流であるリベラル派や左派の不満が爆発する。上院議員を36年務めたバイデン大統領は自らマンチン氏との調整にあたってきた。その失敗は大統領の力量への不信に直結する。

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大阪ビル火災、ガソリン虚偽申告で購入か 規制に限界も

大阪ビル火災、ガソリン虚偽申告で購入か 規制に限界も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF200RP0Q1A221C2000000/

 ※ こういうものも、「日本社会の一断面」だ…。

 ※ 都会生活には、こういう「剣呑な人」が「何食わぬ顔」をして、ウジャウジャ歩き回っている…。

 ※ いや、「都会」だけでは無い…。「限界集落」の中にも、「何食わぬ顔をして、紛れ込んでいる」…。

 ※ ご用心、ご用心…。

『大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階から出火し、24人が死亡した事件で、殺人と放火の疑いが持たれている男が事前に虚偽の使用目的でガソリン約10リットルを購入していたとみられることが20日、捜査関係者への取材で分かった。クリニックで紙袋に入れたガソリンをまき、火をつけたとみられる。京都アニメーション放火殺人事件後、ガソリンの販売規制が強化されたとはいえ、今回を含め同様の事件が後を絶たない。規制の抜け道もあり、実効性が課題だ。

捜査関係者によると、住居・職業不詳、谷本盛雄容疑者(61)は11月下旬、大阪市西淀川区のガソリンスタンドでガソリン約10リットルを購入。関係先の住宅からもガソリンとみられる液体が入った容器を押収したという。消防関係者によると、ガソリンは引火性が高く、少量でも爆発につながり、一気に炎が広がって被害が拡大する恐れがある。

火災は約30分で受付や待合室周辺など約25平方メートルを焼いた。クリニック内では瞬く間に一酸化炭素(CO)が広がり、犠牲者24人の全員がCO中毒で亡くなったとみられる。

携行缶に詰め替えてガソリンを販売する際は、現在の消防法令で購入者に対し身分証明書の提示や使用目的の確認を求めるよう、ガソリンスタンドに義務付けている。販売日や購入量の記録も作成し、1年間保管させる。違反した場合には罰則が科される可能性がある。使用目的が答えられないなど不審な客がいれば警察へ通報してもらう。

捜査関係者によると、ガソリンを購入する際、谷本容疑者はスタンド側に身分証を提示していた。「バイクに使う」と使用目的を伝えていたが、実際には所持していなかったとみられ府警は虚偽とみている。

直近で規制を強化したきっかけは、2019年7月に起きた京アニの事件だ。殺人罪などで起訴された男がガソリンスタンドで購入したガソリンを携行缶に入れてまき、36人もの犠牲者を出し、省令が改正された。各消防本部が定期的に立ち入り検査し、販売記録などを作成しているか確認している。

もっとも、販売現場からは実効性を問う声が上がる。まず、申告通りに使うかどうかは不明で、「悪意」まで見破るのは困難だ。大阪市内のあるガソリンスタンドでも使用目的などを記入してもらっているが、店舗の責任者は「本当のことを書いているかは確認しようがない」という。責任者は「我々ができるのは身分証の確認まで。それ以上はもうお客さんを信じるしかない」と話す。

規制強化以降も、ガソリンによる放火事件は後を絶たない。徳島市では3月、ビルのエレベーターホールに男がガソリンをまいて放火した事件があった。ガソリンスタンドで買ったとされる。

大阪市内の他のスタンドでは、顔見知りの客以外には原則販売をしない。同店の従業員は「今回のような事件もあるし、見知らぬお客さんに販売するのは怖い」と話す。

ホームセンターやインターネット通販での販売時の対策も強化された。消防庁はこうした販売業者に対し20年3月、10リットル以上の販売を目安としてガソリンスタンドと同様の顧客記録の作成を要請した。千葉市消防局の担当者は「特にネット通販は指導が難しい」という。本拠地と別の倉庫でガソリンを保管していたり、販売の仲介のみ請け負ったりしている業者があるためだ。

ネットでガソリンを販売する神奈川県のある業者は「購入者に使用目的の確認はしていないが、消防から指導を受けたことはない」と明かす。

総務省の20年の家計調査によると、1世帯(2人以上)あたりのガソリンの年間購入量は約407リットルに上る。自動車用以外にも、家庭で発電機や農業用機械などに使われ、日常生活に欠かせない。通常の使い方をすれば生活に役立つ一方で、一歩間違えると「凶器」にもなり得る恐れがあり、規制のあり方が問われる。

日本大の福田充教授(危機管理学)は「今回の事件を検証し、さらなる規制強化について議論すべきだ」と指摘する。

元埼玉県警刑事で警備会社を経営する佐々木保博さんは「自動車に入れたガソリンをポンプで携行缶に詰め替えることもできる。規制には限界がある」と強調。「出先で階段の場所や消火器の有無を確認するなど、一人ひとりが自分の身を守る意識を持つことが何よりも重要だ」と話している。

(渡辺夏奈、菊池喬之介)

【関連記事】

・死亡24人CO中毒か 新たに7人身元公表、大阪ビル火災
・無差別襲撃リスク、対策強化へ合意急務 大阪ビル火災 』

山口の限界集落で起きた5人連続殺人事件。その複雑で、面倒で、しばしばつまらない「事実」を丹念に見つめていくこと【高橋ユキ『つけびの村』】
https://finders.me/articles.php?id=1584

『2013年7月、14人が暮らす山口県の集落で5人の遺体が見つかった。5人は全員撲殺。そのうち3人が住んでいた家屋2軒は放火され、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という犯行声明のような奇妙な張り紙も見つかった。その張り紙を自宅の玄関脇に貼っていた保見光成(以下、保見)が容疑者として逮捕された。

保見は逮捕当初には犯行を認めていたものの、山口地方裁判所での初公判ではこれを翻し無罪を主張。精神鑑定を行った結果「妄想性障害」があると判断され、鑑定人によると「両親が他界した2004年ごろから、近隣住民が自分のうわさや挑発行為、嫌がらせをしているという思い込みを持つようになった」という。

逮捕後、県警が山中で発見した保見の持ち物だとされるICレコーダーには、奇妙な言葉が録音されていた。この村で一体何が起こったのか……。』

『「ポパイ、ポパイ、幸せになってね、ポパイ。いい人間ばっかし思ったらダメよ……。
オリーブ、幸せにね、ごめんね、ごめんね、ごめんね。
うわさ話ばっかし、うわさ話ばっかし。
田舎には娯楽はないんだ、田舎には娯楽はないんだ。ただ悪口しかない。
お父さん、お母さん、ごめん。
お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん、ごめんね。……さん、ごめんなさい……。
これから死にます。
犬のことは、大きな犬はオリーブです」』

オミクロン型濃厚接触者、東京都内で1000人突破

オミクロン型濃厚接触者、東京都内で1000人突破
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC20CDQ0Q1A221C2000000/

 ※ 世の中には、「目先のこと」「目の前の、見えていること」しか「理解できない人」というものは、一定の割合で存在する…。

 ※ そういう人達に、いくら「ウイルスというもの」「感染拡大すれば、一定の割合で重症者が出て、一定の割合で亡くなる人が出ること」「医療体制がひっ迫すれば、コロナ以外の患者にも、命の危険が及びかねないこと」を説いても、ダメの皮だ…。

 ※ せいぜいが、「もっと、丁寧に説明しろ!」「オレが・私が、分かるように説明しろ!」と水かけ問答になるのが、オチだ…。

 ※ 「それが、現実である。」という前提で、策を立てないとな…。

 ※ 『空港検疫の誓約書に、賠償請求する可能性がある旨を記載』するなんてのも、一案だ…。

 ※ NHKの受信料の強制徴収よりも、もっと「注力」すべきことなのでは…。

『東京都は20日、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」に感染した人の濃厚接触者が都内で1000人を超えたと明らかにした。海外からの帰国者のオミクロン型感染が相次ぎ、同じ航空機に乗っていた人を中心に濃厚接触者が増えている。

都内に在住・滞在している濃厚接触者は19日時点で1002人となった。うち408人は宿泊療養施設に入所、または今後入所予定だという。そのほかの濃厚接触者は自宅待機、宿泊施設への入所調整中などとしている。

東京都は20日、アフリカ東部から帰国した都内在住の40代男性がオミクロン型に感染したのを確認したと発表した。都内での感染確認は4例目。同行者1人もコロナ陽性を確認しており、都はオミクロン型かどうか調べる。』

『多様な観点からニュースを考える

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

日本の水際対策の最大の問題点は性善説に立脚して実施されていることにある。

大半の日本人はきちんとルールを守るが、わずかながらルールを守らない人がいて、それが突破口となってウィルスが侵入してきている。

対策を考えたとき、こういった隙間を塞ぐことを考えなければならない。

2021年12月21日 7:26 (2021年12月21日 9:36更新)

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鈴木亘
学習院大学経済学部 教授
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分析・考察

先日、オミクロン株に感染した女性に会って感染した男性が、サッカーの天皇杯を観戦したニュースが耳目を集めた。

この女性は、空港検疫で、自粛期間中は他の人に会わないと誓約書を書いていたのに、そのルールを破っていたということである。

確かに、日本の法律では、自粛を「要請」することしかできないが、実際に、このルール破りで感染が広がり、それに伴って多大な公費が発生している。

民事で、国がこの女性に対して賠償請求の訴訟を起こしても良いのではないか。

そうすれば、ルール破りに対するペナルティーが実質的に課せ、ルール破りを防ぐことができる。少なくとも、空港検疫の誓約書に、賠償請求する可能性がある旨を記載してはどうか。

2021年12月21日 7:46 (2021年12月21日 7:47更新)』