世界の穀物、中国が買いだめ

世界の穀物、中国が買いだめ 過半の在庫手中に
チャートは語る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM13CUD0T11C21A2000000/

『世界の穀物、中国が買いだめ 過半の在庫手中に
チャートは語る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM13CUD0T11C21A2000000/

『中国が食糧の買い集めを加速している。米農務省によるとトウモロコシなど主要穀物の世界在庫量の過半が、世界人口の2割に満たない中国に積み上がっている。中国の巨大な食欲が穀物の高騰や貧困国の飢餓拡大の一因になっているとの見方もある。

東北部の大連市。港には巨大な円筒がずらりと立ち並ぶ。その数およそ310基。国有企業の食糧大手、中糧集団(コフコ・グループ)が持つ中国最大級の食糧貯蔵庫(サイロ)だ。国内外から集めた大豆などをここに備蓄し、鉄道や船で全国に運ぶ。

中国の港に立ち並ぶ巨大な食糧貯蔵庫(20年9月、遼寧省大連市)

「食糧の在庫総量は歴史的な高水準にある」。国家食糧物資備蓄局で食糧備蓄トップを務める秦玉雲氏は11月の記者会見で胸を張った。「小麦の場合、1年半分の消費需要を満たせる。食糧供給は絶対に問題ない」

米農務省の推計データによると、2022年前半(穀物年度、期末)の世界の在庫量に占める中国の割合はトウモロコシが69%、コメは60%、小麦は51%に達する見通しだ。いずれも過去10年間で20ポイント前後高まった。中国が穀物の買いだめを続けてきたことが鮮明だ。
中国税関総署によると20年の食品輸入額(飲料除く)は981億ドル(約10兆円)と、10年間で4.6倍に増えた。21年1~9月期もデータを比較できる16年以降で最高だ。5年間で大豆やトウモロコシ、小麦の輸入額が2~12倍に急増した。米国やブラジルなどから積極的に買い付けている。牛肉や豚肉、乳製品、果物類も2~5倍に伸びた。

中国企業が海外M&A(合併・買収)を通じて輸入を支える。食肉加工大手の万州国際は21年6月、欧州の同業を買収。乳業大手の内蒙古伊利実業集団も19年、ニュージーランド乳業大手を買収した。

食品の価格は世界的に高騰している。国連食糧農業機関(FAO)が算出する世界の11月の食料価格指数は1年前より約3割高い。資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は「中国による買い占めが価格高騰の一因だ」と説明する。

中国が穀物などの輸入を増やすのは、国内での生産が追いついていないためだ。経済成長で豚などの飼料用需要が高まり、外国の良質な農産品を求める消費者も増えた。一方、国家統計局によるとコメや小麦などの食糧生産量と農作物の作付面積は15年以降頭打ちだ。中国の農業に詳しい愛知大学の高橋五郎名誉教授は「中国は農地の分散化や土壌の汚染で生産性が低い。都市部への農民の流出もあり、生産量は今後も伸び悩む」と話す。

習近平(シー・ジンピン)国家主席はかねて「食糧安全は国家の重要事項だ」と強調してきた。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は4月に食べ残しを禁じる法律を可決、共産党と国務院(政府)も10月末に食糧の浪費を減らす具体策を各部門に通知した。全人代は今後、別の「食糧安全保障法案」も審議する。

50代以上の中国人は大躍進や文化大革命による食糧不足を経験した。「我々の世代は多かれ少なかれ、飢えた記憶がある」。国営新華社によると、習氏はかつてこう述べた。食糧不足は国民の不安に直結する。中国の歴代王朝を倒した反乱は飢餓も一因となった。近年、米国やオーストラリアとの関係悪化で輸入環境が激変するという不安材料もある。在庫量を増やすのは危機感の表れといえる。

国連によると、世界で飢餓に苦しんだ人は20年に7億人を超え、過去5年で1億人以上増えた。高橋名誉教授は「飢餓は先進国全体の責任だが、中国の責任はより重い。企業による農業参入などで生産量を増やし、食糧偏在の解消に貢献すべきだ」と話す。(大連=渡辺伸、宗像藍子、グラフィックス 貝瀬周平)

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

この調査報道には驚かされた。

中国が穀物の国内在庫を積み上げる理由の中には、米国など民主主義陣営との対立が深まるなどして、輸入量が将来細るリスクに備える面もあるのだろうか。

日本の戦国時代、籠城する前に穀物を買い集めて城内に備蓄した、という話を連想してしまう。

もう一つ、思い出すことがある。大学時代、中国現代史を専攻している同級生がよく「毛沢東は中国の人民を食べさせることができただけで大きな功績だ」と言っていたこと。大躍進政策の失敗もあり、そういうことではないだろうと筆者は思うのだが、中国という国の指導者には、食料確保というのは非常に重大な問題だという、歴史に根差した意識があるのかもしれない。

2021年12月20日 8:58 』