ドイツ、「脱原発」延期論も時すでに遅し

ドイツ、「脱原発」延期論も時すでに遅し
フランクフルト支局 深尾幸生
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13AYU0T11C21A2000000/

 ※ 一国の「エネルギー政策」、「電源構成をどうするか」は、その国の行く末を左右する…。

 ※ 安易に「再生可能エネルギー優先」に舵を切って、「電力の安定供給」が確保できなければ、「大惨事」となる…。

 ※ 大体、「医療機器」なんてのは、「電気が来なければ、ただの”ガラクタ”」だ…。
 ※ 電力供給が止まれば、まず「透析患者」から「亡くなっていく」だろう…。「電気モーター」の”カタマリ”だからな…。

 ※ 今般、コロナ肺炎で大活躍した”CTスキャン”なんてものも、ご同様だ…。

 ※ 特に、「発電事業」は、巨大装置産業だから、そうそう簡単に「方針転換」はできない…。

 ※ 左翼は、そこら辺の認識不足で、スイッチ切り替えるように”ポコポコ”電力供給が可能だと思っているから困るよ…。

 ※ 『ドイツの決断は議論が膠着しているようにみえる日本にも参考になる部分が多い。』とか言っているが、それも強固な「独仏枢軸」があればこその話しだ…。

 ※ 独が、どれくらい仏から「買電してるか」知ってて言ってるのか…。

 ※ 仏の電源構成は、7割が「原子力発電」であることを、知ってて言ってるのか…

『2022年末にドイツで全ての原子力発電所の運転が終了するまであと1年となった。11年にメルケル前首相が決めた「脱原発」は、最終盤に来て電力価格の上昇などで延期を求める声も大きくなっている。だが、新政権や電力会社は「ノー」を突きつけ、時すでに遅しの状況だ。

「一つの時代が終わる」

北西部ニーダーザクセン州のグローンデ原子力発電所。今年いっぱいで37年の歴史に幕を閉じる。同州のオラフ・リース環境・エネルギー相は1日に発電所を訪れ「この地域にとって一つの時代が終わる。何十年にわたって安全に運転してくれた従業員に敬意を表する」と述べた。

ミヒャエル・ボンガルツ所長は「大みそかに静かに発電を止める。発電所の状態が良いだけに悲しい瞬間となるだろう」と話す。同じタイミングで南部バイエルン州のグンドレミンゲン原発などほかの2基も運転を終了し、残るは22年末までの3基だけとなる。

21年12月で運転を終了するグンドレミンゲン原子力発電所(独バイエルン州)=ロイター

ドイツの脱原発は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、11年5月に当時のメルケル政権が決めた。当時2210万キロワットあった独国内の原発の発電能力は年内のグローンデ原発などの停止で429万キロワットと約5分の1になる。10年は電力全体に占める原子力の割合は22%を占めていたのに対し、20年には11%に減った。

ドイツの世論はおおむね脱原発を支持してきた。19年に決めた脱石炭と同時進行させる劇的な変革だが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと天然ガス火力による代替がうまくいっていたからだ。

だが、脱原発の完了を約1年後に控えたこの秋以降、見直しを求める声がにわかに大きくなってきた。9月の総選挙を戦っていた当時の最大与党キリスト教民主同盟(CDU)の首相候補だったラシェット議員は「脱原発、脱石炭の順番は誤りだった」と発言、党重鎮のメルツ議員も「わが党の多くは今日、拙速に脱原発を決めたことを後悔している」と述べた。

背景にあるのは天然ガス価格の高騰だ。昨冬の寒さによる在庫不足に、新型コロナからの経済回復による需要急増、風力発電の出力低下などの複合的な要因が重なり、欧州の天然ガス価格は春すぎからみるみる上昇。指標価格であるオランダTTFは10月上旬、過去最高となる1000キロワット時あたり約150ユーロと1年前の12倍の高値をつけた。企業や家計の負担は高まった。

安定電源、脱炭素電源として再評価

ドイツを本拠とする工業ガス大手リンデのスティーブ・エンジェル最高経営責任者(CEO)は独紙ハンデルスブラットのインタビューに「安定電源として原子力は必要だ。再生エネだけだと電力価格は極端に高くなる」と政策の見直しを求めた。再評価のもう一つの理由は脱炭素電源としての原発の位置付けだ。

11月に英調査会社ユーガブが実施した調査では、ドイツの回答者の22%が原発は温暖化対策に「非常に重要」と答え、31%が「太陽光や風力ほどではないが少なからず役割はある」と答えた。「全く必要ない」と答えたのは28%だった。19年に独調査会社カンタールが実施した調査では60%が22年末かそれより早い脱原発を支持していた。

だが、世論の変化で脱原発が見直されるかというと、その可能性は限りなく低い。年末に運転終了するグンドレミンゲン原発などを運営する独電力大手RWEのマルクス・クレッバー社長に11月、延長の是非について聞いた。すると「正直に言ってこの問題を議論する気にならない。10年前から運転終了日に向け計画を立て、全てを最適化してきた。誰かが延長を望んだとしてもそれは技術的に不可能で、莫大な投資と時間が必要になる」と明快だ。他の電力大手、独エーオンと独EnBWも独メディアに「問題外」と切り捨てている。

ドイツの新政権は連立合意で脱原発の堅持を明記した=ロイター

8日に発足したドイツの新政権も延長や再検討に否定的だ。そもそも連立を組む3党のうち緑の党は1980年代の反原発運動に端を発し、ショルツ首相のドイツ社会民主党は緑の党と連立を組んだ2000年に最初の脱原発政策を打ち出した経緯がある。今回の連立合意でも「我々はドイツの脱原発を貫く。再生エネの拡大と利用を明確に約束している」と明記した。

温暖化ガス削減に原発を活用する方針を打ち出した英仏と異なる道をドイツは歩む。新政権は30年の電源構成に占める再生エネの比率を従来目標の65%から80%に引き上げた。呼応するようにRWEは30年までに再生エネや水素に500億ユーロ(約6兆5千億円)を投資し、再生エネ主体に変貌する。

将来を委ねるのは原発より再生エネ

猛スピードで風力や太陽光を整備しながら、天然ガス火力を水素活用までの「過渡的な電源」と位置付け、非常時のバッファーとして活用する。放射性廃棄物の問題を先送りしながらコストも上昇する原発に頼るよりも、再生エネに将来を委ねたほうが安上がりで国民の支持も得られるとの判断だ。

ドイツでは他の多くの国と同様に高レベル放射性廃棄物の処分場の候補地はまだ決まっていない。一度は1970年代に独北部ゴアレーベンの鉱山が最終処分場に指定されたが、長年にわたる抗議に加え、安全性に疑問が生じたため2013年に撤回し、20年に鉱山の永久閉鎖が決まった。また、独シンクタンクのアゴラ・エナギーヴェンデによると原発の新設・運用コストは太陽光や陸上風力の3倍、洋上風力やガス火力の2倍以上になっている。

電力は国家の根幹だ。安定供給が最優先であることは言うまでもない。そのうえでどう脱炭素を進めるか、原発をつなぎと見るのか新設を含めて長期に活用するのか、放射性廃棄物はどう処分するのか、論点は多い。ドイツの決断は議論が膠着しているようにみえる日本にも参考になる部分が多い。

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察

やや誤解を招くタイトルで、原発に関しては、ドイツでは賛否がきれいに分かれているので、「脱原発派」の人が後悔することはありません。

延期を望むのはもともと原発推進派の人々で、メルケルの決断を非常に苦々しく思っているでしょう。

新政権には、迷いも後悔もありません。方向性は明白ですが、過渡期のエネルギー供給に危うさがあることは確かです。

そこは、ガスや欧州電力網でしのぐことになるので、フランスの原発や周辺国のそれほどクリーンでない電力が入って来ますが、逆に現時点ではドイツから輸出もしています。

20年先を考えれば、多少無理があってもここで決断することが、競争力向上につながる可能性は大いにあると思います。

2021年12月20日 14:19 』