縮む北朝鮮経済、外貨も急減 制裁・コロナ誤算続く 金正恩の北朝鮮10年(中)

縮む北朝鮮経済、外貨も急減 制裁・コロナ誤算続く 
金正恩の北朝鮮10年(中)
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『中国の丹東市と北朝鮮の新義州を結ぶ中朝友誼橋。11月半ばには中国側に向けて列車がわたり、作業員が橋を補修する様子が捉えられた。

韓国政府は中朝の陸路貿易が11月中に再開する可能性が高いと見通したが、実現しなかった。下旬に新型コロナの変異ウイルス「オミクロン型」が出現し、北朝鮮は再び国境を固く閉ざした。

朝鮮中央通信は「国家非常防疫事業の完璧さを徹底的に保つよう総力を集中している」と伝えた。中朝貿易は公海上で船舶の積み荷を移し替える方式で細々と行われているようだ。

北朝鮮内の物資不足は深刻な状況が続く。韓国の国家情報院によると、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「薄氷を踏む思いでコメ一粒まで確保せよ」との指示を下している。
韓国銀行の推計では、北朝鮮の2020年の実質国内総生産(GDP)は前年比で4.5%減少した。飢饉(ききん)によって数百万人ともされる餓死者を出した「苦難の行軍」の時期である1997年(6.5%減)に次ぐ沈み方だった。

ただ、足元で穀物などの物価は安定している。「正面突破」や「自力更生」といったスローガンを唱えてきた金正恩氏は、国際社会の人道支援を受け入れていない。経済や食料事情が苦境にあるのは確かだが、なお持ちこたえられる余力はあるようだ。

2003年に北朝鮮を脱出し韓国に移った北韓開発研究所の金炳旭(キム・ビョンウク)所長は「苦難の行軍以降、北朝鮮は物資の国産化を進めた。電力消費を減らすなど経済規模を縮小した結果、混乱は小さくとどまっている」と指摘する。

人々が「国に頼らず生きる」という意識を持った影響もあるという。計画経済と配給制は破綻し、指導部は配給の対象を平壌に住む党の高級幹部らに限定した。

金正恩氏は闇市場を合法化し、有能な人物に企業経営を任せて市場経済化を進めた。全国の総合市場は400を超え、一般の住民はそこで生計を立てている。金主(トンジュ)と呼ばれる新興富裕層も生まれた。

経済は16年までは成長基調にあったが、その後は誤算続きだった。国連安全保障理事会は17年に6回目の核実験を受けて石油供給を制限する制裁を決議した。

外貨の減少は顕著だ。韓国銀行の資料によると、北朝鮮が保有する外貨は、対中輸出の増加に伴い1997年から2003年まで年3億~4億ドルの規模で拡大した。しかし、制裁が直撃した17、18両年はそれぞれ10億ドル以上減っている。

金正恩氏は18年に米国のトランプ前大統領との対話を始めた頃、社会主義体制を維持しながら経済発展を遂げた中国やベトナムを成長モデルに考えていた節がある。海外からの旅行客を当て込んだ観光施設を相次ぎ建設し、外国企業の投資を期待した。

米朝交渉が頓挫したことで、その構想もついえた。指導部は対外開放に伴う自由主義の思想や情報の流入こそ、独裁体制の正当性を脅かすリスクだと見なし、情報統制を強める。昨年来、韓流ドラマを広めた場合の最高刑を死刑と定める「反動思想文化排撃法」や、若者の思想取り締まりを強める「青年教養保障法」を相次ぎ制定した。

国際社会が迫る非核化に背を向け、体制維持のため人々への抑圧を続ける金正恩氏。10年たっても経済発展への道筋は描けていない。』