ポーランド、年内にも「国境の壁」着工 欧州委は黙認

ポーランド、年内にも「国境の壁」着工 欧州委は黙認
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR15BDY0V11C21A2000000/

『【ウィーン=細川倫太郎】欧州連合(EU)に加盟するポーランドはベラルーシとの国境沿いに移民流入を抑制するための壁を建設する。年内にも着工し、2022年前半の完成を目指す。EUの執行機関、欧州委員会は移民騒動の背後にロシアの示唆があると疑っており、加盟国の安定を維持するためにも、壁建設を黙認している状態だ。

ポーランド政府などによると、壁の全長は180キロメートル以上になる見通しだ。ベラルーシとの国境の全長のほぼ半分だ。総工費は約16億ズロチ(約450億円)。センサーやカメラで壁を乗り越える動きがないか監視する。

ポーランドの国境警備隊によると、ベラルーシ側から違法に越境しようとした移民は21年、約4万人に達した。移民らは主にイラクなど中東諸国から空路でベラルーシに入った。11月には数千人が国境付近に集まり、ポーランドの国境警備隊が催涙ガスも使い押し返した。その後も、越境を試みる移民は途絶えていない。

報道によると、移民らの多くはベラルーシの兵士らの案内でポーランドとの国境付近に到着した。ベラルーシのルカシェンコ大統領は11月の英BBCのインタビューで、同国の当局者がポーランドを目指す移民を手助けしたとの観測について「あり得る」と認めた。

ポーランドをはじめEU加盟国には、ロシアがベラルーシの「指南役」だとの疑念がある。ロシア側は疑惑を否定している。

ポーランドのモラウィエツキ首相は「欧州委は(壁建設を)助けるべきだ」と主張する。壁建設でほかの加盟国も移民から守られるのだから、EUも建設費用を負担すべきだという論法だ。ポーランド隣国でEU加盟国のリトアニアもベラルーシとの間に約500キロメートルの長さの壁を建設し始めた。同様にEUへ資金支援を求めている。

これに対し、フォンデアライエン欧州委員長は、加盟国の国境管理のため人員派遣はできるが、壁の建設には「資金提供はしない」と繰り返す。22年1月に輪番制のEU議長国になるフランスのボーヌ欧州問題担当相も「国境を守る欧州には賛成するが、有刺鉄線や壁を設ける欧州には反対だ」と述べ、人権重視の姿勢を崩さない。

EU加盟国には壁建設を後押しする声もある。15年に中東やアフリカなどからの移民が多数、押し寄せた際に加盟国の社会が大きく混乱したからだ。ドイツのメルケル首相(当時)は受け入れに寛容だったが、有権者の反発を受け、指導力を失った。

欧州議会の最大会派「欧州人民党(EPP)」のウェーバー代表は「異常事態に直面した場合、EUの資金を(壁の建設など)この手の活動に使えるようにしなければならない」と主張する。

ベラルーシのルカシェンコ政権を支えるロシアが同国西部のウクライナとの国境付近に部隊を集め、22年早々にも同国に侵攻するとの観測を米欧は共有する。ロシアは14年のウクライナ領クリミア半島の併合宣言に対する米欧の制裁で圧迫され、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を恐れている。』