ここまで分かったオミクロン型 感染力は?ワクチンは?

ここまで分かったオミクロン型 感染力は?ワクチンは?
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 ※ 今日は、こんなところで…。

『新型コロナウイルスの新たな変異型「オミクロン型」の感染が南アフリカだけでなく、英国やデンマークなど各国で急速に広がっている。日本でも入国者や濃厚接触者での感染確認が増えてきている。オミクロン型の性質について、これまでの分析や実験で明らかになってきたことをまとめた。

感染力は?

オミクロン型の感染力は非常に強く、デルタ型を上回る可能性がある。世界保健機関(WHO)によると、70を超える国・地域でオミクロン型の感染者が報告されている。海外渡航に関係した感染例だけでなく、市中感染が広がる国も増えている。

京都大学の西浦博教授らが11月1日~12月7日のデンマークのデータを分析したところ、オミクロン型の実効再生産数はデルタ型の約4倍だった。実効再生産数は1人の感染者から平均何人にうつるかを計算した値で、感染拡大スピードを表す。オミクロン型は累計感染者数が約1.4日で倍増するという猛烈なスピードで拡大している。

英保健安全局が10日に公表した初期報告によると、感染者から家庭内の接触者にうつる二次感染リスクはデルタ型の10.7%に対し、オミクロン型では21.6%と約2倍だった。家庭内の二次感染リスクは追跡しやすいため、ウイルスの感染力を調べる重要な指標とされている。ただ、今回の初期分析では感染者や接触者のワクチン接種歴や感染歴などを考慮していないため、免疫の影響は分からない。

ウイルスの真の感染力は、免疫を持たない集団で1人の感染者から平均何人にうつるかを示す「基本再生産数」で比べる。しかし、感染やワクチンによって免疫を持つ人が増えている現在の状況では基本再生産数の分析は難しい。デルタ型の基本再生産数は約5で、従来型の新型コロナウイルスの約2倍と推定されているが、オミクロン型の基本再生産数は今のところ不明だ。

重症度は?

オミクロン型に感染した場合の重症度については、まだ観察期間が短い初期データの段階で、はっきりしたことは分からない。感染から数週間たって重症化する場合もあることから、より長期のデータが集まるのを待つ必要がある。ただ、これまでに重症者の急増は確認されておらず、重症化リスクが高いというわけではなさそうだ。

欧州連合(EU)の専門機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)によると16日時点で、欧州では重症度のデータがある症例はすべて無症状か軽症で、死亡例は報告されていない。英国では14日までに1人が死亡している。

南ア最大の民間保険会社ディスカバリー・ヘルスが14日に公表した分析では、オミクロン型の流行が始まった時期の成人の入院リスクは、従来型の流行と比べて29%低いという。ただ、南アでは大半の人が感染によって免疫を獲得しており、免疫が重症化を抑えている可能性がある。

オミクロン型の重症化リスクが仮に高くないとしても、感染拡大スピードが著しく速いことから、医療や検査などの逼迫が懸念される。WHOのテドロス事務局長は14日の記者会見で「重症になることもありうる。症状が軽いと決めつける人がいることを懸念している」と危機感をあらわにした。

テドロス事務局長=ロイター

香港大学の研究チームは、人から採取した組織を使ってウイルスを培養する実験で、オミクロン型は気管支ではデルタ型や従来型の70倍以上に増殖するが、肺では増えにくいとする研究結果を公表した。オミクロン型の重症化リスクが本当に低いとすれば、肺で増殖しにくいことが関係している可能性もあるが、あくまで試験管レベルの培養実験にとどまる。東邦大学の舘田一博教授は「実際に人の肺の中で起こっているのかは分からない。今後の検証が必要だ」と指摘する。

再感染しやすい?

オミクロン型は免疫をすり抜けて感染する「免疫逃避」の性質が強い。過去に新型コロナに感染した人の免疫が突破されて再感染するリスクは高くなっているようだ。

英保健安全局が11月20日~12月5日のデータを調べた初期分析によると、オミクロン型の感染者361人のうち25人が新型コロナへの再感染、デルタ型では約8万5千人のうち336人が再感染だった。年齢や地域などの要因を統計処理すると、オミクロン型の再感染リスクはデルタ型の5.2倍(3.4~7.6倍)となった。

南アのステレンボッシュ大学と国立感染症研究所なども、オミクロン型による再感染はデルタ型や南アで見つかったベータ型よりも起こりやすいとの分析を出している。英オックスフォード大学のジェームス・ネイスミス教授は「過去に感染したことがあるだけでは、オミクロン型の感染に対する免疫力はほとんどない」と話す。

ワクチンの2回接種の効果は?

オミクロン型の免疫逃避によって、ワクチンの効果が下がっているとの分析が増えている。特に感染予防や発症予防の効果は大幅に低下している可能性が高い。一方、重症化や死亡を防ぐ効果はある程度高いまま維持されているとの見方が強い。

英保健安全局などの初期分析によると、米ファイザー製ワクチンの発症予防効果は2回目接種から2~9週間後の人では88%(65.9~95.8)だが、10~14週間後では48.5%(24.3~65)、15週間以上たった人では30%台まで下がっている。英アストラゼネカ製ワクチンではさらに低下が顕著で、2回目接種から15週間以上たった人では発症を防ぐ効果がみられなかった。

英国ではワクチン接種が進む=ロイター

南アの民間保険会社ディスカバリー・ヘルスはファイザー製ワクチンの2回接種について、オミクロン型の流行が始まった時期の感染予防効果は33%で、デルタ型の流行期の80%より低いとの分析を公表している。一方、入院予防効果は70%で、デルタ型流行期の93%と比べれば下がっているものの「非常に優れた防御」だとしている。

ワクチン接種を完了した人の「ブレークスルー感染」は各国で確認されている。米疾病対策センター(CDC)は10日、オミクロン型の感染者43人の症例を分析した報告を公表。43人のうち8割はブレークスルー感染で、そのうち14人は追加接種も受けていた。ノルウェーでは、クリスマスパーティーの参加者で100人近い規模のブレークスルー感染のクラスター(感染者集団)が発生している。

長崎大学の森内浩幸教授によると「ワクチンはもともと(新型コロナの流行が初めて確認された)中国・武漢のウイルスに合わせて作ってある。変異を繰り返すと、ワクチンによって作られる抗体のうちウイルスに結合できないものが増えてしまう」という。一方で「抗体とは別の免疫の仕組みである細胞性免疫はウイルスの変異に耐えやすく、重症化を防ぐ効果は保たれやすい」と指摘する。

追加接種の効果は?

オミクロン型に対しても、ワクチンの追加接種(ブースター接種)によって発症予防効果の回復が期待できるようだ。英保健安全局などの初期分析によると、ファイザー製かアストラゼネカ製の2回接種の後にファイザー製の追加接種を受けた人では、70~75%程度の発症予防効果があった。

ワクチン接種を受けた人の血液を使った試験管レベルの実験でも、感染防御で働く「中和抗体」の効果が追加接種によって高まることが確認されている。米モデルナ製についても、米マサチューセッツ工科大学などのグループ、米国立アレルギー感染症研究所などのグループがそれぞれ査読前の研究結果を発表している。従来型ウイルスに比べると中和抗体の効果は低いものの、2回接種後と比べて大幅に改善した。

一般に、追加接種では中和抗体を含む抗体の量が増えるだけでなく、ウイルスに感染した細胞を排除する免疫細胞の働きなども強化される。感染や発症だけでなく、重症化を防ぐ効果も高くなると考えられている。

バイデン米政権のファウチ首席医療顧問は追加接種が依然有効だと指摘し、オミクロン型に特化したワクチンは「現時点で必要ない」との見方を示している。東京農工大学の水谷哲也教授は「特化したワクチンが必要かどうかは、オミクロン型の病原性の高さによって変わる。高くなければ既存ワクチンの追加接種を続けたほうがよい。だが高いと分かれば、特化したワクチンを接種したほうがよいだろう」と話す。

治療薬の効果は?

まだ実験データは限られているが、薬の種類によってオミクロン型の影響はかなりの違いが出てきそうだ。飲み薬では一定の効果があると期待できる一方、一部の抗体薬では効果の低下が懸念される。

ファイザーが開発中の「パクスロビド」は2種類の飲み薬を合わせて服用する。同社の初期段階の実験では、このうち1剤がオミクロン型ウイルスの「プロテアーゼ」と呼ぶ酵素の働きを抑え、ウイルスの複製を阻止する効果を確認したという。

ファイザーが開発中の「パクスロビド」=ロイター

英グラクソ・スミスクライン(GSK)は抗体医薬「ゼビュディ(ソトロビマブ)」について、オミクロン型の疑似ウイルスで効果を確認した。

だが、2種類の抗体を使う米リジェネロン・ファーマシューティカルズの抗体カクテル療法「ロナプリーブ(カシリビマブ・イムデビマブ)」は、試験管レベルの実験でウイルスを無力化(中和)する活性がないとの研究が複数出ている。感染者に実際に投与した場合の効果はまだ分からないが、効きにくくなっている可能性がある。

抗体薬で影響に違いが出ているのは、抗体が標的とするウイルスたんぱく質の部位が異なるからだと考えられる。ウイルスの変異によって標的部位のたんぱく質の構造が変化し抗体が結合しにくくなれば、薬としての効果が下がる恐れがある。(越川智瑛、落合修平、尾崎達也)』