[FT]UAEが金曜「平日」へ 外資誘致でサウジをリード

[FT]UAEが金曜「平日」へ 外資誘致でサウジをリード
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『「今日が金曜日だって知らないの?」。湾岸諸国を初めて訪れた人が現地の文化を知るためのガイドブックのタイトルだ。イスラムの安息日は金曜日だ。礼拝し、家族が集う休日。(そんな事情に疎い)本国の上司からの連絡にいらだつ駐在員の気持ちを表現している。
ドバイ万博の会場で、UAE独立50年を祝い、外国人と一緒に自撮りする男性(2日)=AP

この本は、日曜日に英国の都市郊外の自宅で、ベッドに入ったままで朝食をとっている上司に、駐在員が仕返しの電話をするマンガを載せている。「金曜日に自宅へ連絡していただいた件ですが、調べてきましたよ!」

このジョークはもう通用しなくなったのかもしれない。アラブ首長国連邦(UAE)は2022年1月から、米欧諸国と同じく、土曜日と日曜日を休日にすると発表したのだ。グローバル市場に合わせ、「ワークライフバランス」を高めるためだという。

国際会計事務所グラントソントンUAEのヒシャム・ファルーク最高経営責任者(CEO)は「グローバルな世界への参加は合理的な態度だ。この国は金融のハブ(中核)だが、現状では切り離された1日の間に多大な利益を失っている」と話す。「アジアと米欧を結ぶ玄関口になるには、ほかとは異なる休日を続けていてはいけない」

休日の変更は、現代社会にあわせて経済の仕組みを発展させ、外国人にとっての魅力を一段と高めようとするUAEの取り組みの一環なのだ。
就業は月曜日から金曜日の午前まで

新年から、公共部門の就業時間は月曜日から金曜日の正午までに変わる。政府機関だけでなく資本市場、学校も同様で、民間もこれに従うとみられている。シャルジ首長国はUAE(を構成する7首長国)で最も保守的だとされるが、さらに踏み込んで就業日を週4日とする。金曜日から日曜日までの3日間が休日になる。

ファルーク氏は、グラントソントンUAEのような民間企業が、公共部門の新たな働き方にどう対応するのか検討していると明かした。

一方、宗教の伝統を重視する人たちは変更に抵抗を感じる。UAE市民の一人は「それでも、金曜日は一緒に昼食をとり、信仰と家庭を大事にするのが人々の習わしだ」と話す。

一部の多国籍企業の幹部にとって日曜日は、くつろいで仕事ができる日だった。ほかの国の同僚たちは休んでいるので、UAEでは本来の業務でない活動もできた。

ドバイ首長国に拠点を置くコンサルティング会社ケストレル・グローバルのトム・ハドソン社長は「日曜日の朝に開いてきたゴルフ場での会合を別の日に変更しなければならないという話も聞くが、それを別にすれば、もろ手を挙げて歓迎されている決定だと思う」と証言する。「(UAEの)指導部は外資の関心を集め、(ビジネスの)障害や煩雑な手続きをなくそうと努力している」

コンサルティング会社デノボ・コーポレート・アドバイザーズの創業者メイ・ナスルッラーフ氏は、中東で事業を展開する企業は、意図せずに週6日勤務になってしまわないようにすべきだと指摘する。近隣の湾岸諸国の競合企業は、日曜日に仕事を始める現状が続くからだ。「来年は間違いなく、調整に費やされることになる」

世俗化を進めるUAEの改革には、現地パートナーや定住ビザを持たない外国人の企業所有の容認、エリートの在住外国人への国籍の付与も含む。今後の課題として、コモンロー(英米などの判例法)の導入、英語を使う法廷の設置、ギャンブルの解禁、同性愛の容認などが俎上(そじょう)にあげられている。

改革のペースが上がっている背景にはサウジアラビアの最近の変革がある。サウジはUAEが数十年かけて取り込んできたビジネスの一部を奪いたいと考えている。

サウジは湾岸諸国からの輸入品に新たな関税を課し、UAEで活動する多くのメーカーの輸出に打撃を与えた。多国籍企業は中東の地域拠点をドバイに置くケースが多いが、サウジは同国の首都リヤドに移さなければ利幅の大きな同国の政府調達から外すかもしれないと揺さぶっている。
民間部門への就業を妨げる可能性

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のステフェン・ヘルトグ准教授(比較政治学)はUAEの休日変更が「中東のビジネス拠点の地位を守るための争いにおいて、サウジに対する優位を保つ試みの一つだ」と話す。「(イスラム保守派の影響力が強い)サウジが(UAEの)後を追ってイスラムの安息日(金曜日)を半休にするのは困難なので、賢いやり方だ」

ヘルトグ氏はくぎも刺した。公務員はいまでも民間より高い給与と福利厚生に恵まれており、労働時間が短くなれば、民間部門への労働力の移動を妨げる要因になりかねないという。UAEには政府の仕事をしたいと考えている国民が多いからだ。経済の多角化で脱石油を目指すUAEは、就業者を公的部門から民間部門へ移動させたいと考えている。「要するに、外資獲得を巡る争いという政策課題が、(外国人のかわりに)民間部門で働く自国民を増やそうという政策課題に優先したようにみえる」と同氏は付け加えた。

人口の9割を外国人が占めるUAEの改革の狙いは、外国人が暮らしやすい環境を整え、専門技能を持つ人々を呼び込み、出稼ぎではなく定住してもらうことだ。

外国人とその習慣の一部を温かく受け入れようというUAEの姿勢は、外国人に厳しい愛国主義が強まっているクウェートなど、ほかの湾岸諸国とは異なる。

「以前は私たちの文化を守ることを重視していたが、いまではUAEに住む外国人をはるかに尊重するようになった」と、UAEの当局者の一人は話した。「私たちは中東に一つのモデルを示そうとしている。世界は逆行せず、私たちは前進している」

By Simeon Kerr

(2021年12月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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