民主化進まず、自由貿易停滞 中国WTO加盟20年の誤算

民主化進まず、自由貿易停滞 中国WTO加盟20年の誤算
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR06BAP0W1A201C2000000/

『【ウィーン=細川倫太郎、北京=川手伊織】中国が世界貿易機関(WTO)に加盟してから11日で20年になる。加盟を後押しした米国は、中国が経済成長の過程で民主化を進めると期待した。だが、中国の人権状況は改善せず、3月には同国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」と位置づけた。中国に貿易戦争を仕掛け、世界の通商の自由化は滞った。

WTOと中国は10日、加盟20年の記念フォーラムをオンライン方式で開いた。中国代表部の李成鋼・WTO大使は「中国の開放政策と発展は世界経済に大きな恩恵をもたらしている」と強調した。WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は「中国の加盟はWTOが真の世界組織となるうえで重要だった」と評価した。

祝福ムードとは裏腹に、中国や世界の通商体制を巡る現状は厳しい。米通商代表部(USTR)のタイ代表は「中国がグローバルな貿易規範を守らず、米国をはじめ世界の国々の繁栄が損なわれてきた」と非難する。

バイデン米政権は3月に公表した暫定版の国家安全保障戦略で中国を「唯一の競争相手」と位置づけたことで、従来の関与政策から大きく転換した。米国は1949年に中国本土で成立した中華人民共和国を認めず、台湾に逃れた中華民国を承認した。だが、71年のキッシンジャー大統領補佐官(当時)の訪中を機に、中国を国際社会に受け入れる関与政策に傾き、78年には国交正常化で合意したと発表した。

中国は米国の助けを受けたが、民主化は進まず、割安な製品を輸出して米国の製造業に深刻な打撃を与えた。トランプ前米大統領は中国製品に関税を追加し、中国も米製品に報復の関税を上乗せし、貿易戦争に発展した。

WTOによると、20カ国・地域(G20)が発動した追加関税など、通常に上乗せされた輸入制限措置は2020年末時点で合わせて約1兆3970億ドル(約160兆円)分に達した。輸入総額の約1割で、世界全体では約8%にあたる。

米国では1月、トランプ氏を批判したバイデン氏が大統領に就任したが、中国に対する追加関税や政府調達への参加制限の多くは維持された。

トランプ氏は中国経済を成長させた世界の通商体制やWTOの役割に疑問を投げかけた。その影響でWTOの紛争処理制度は機能不全に陥った。トランプ氏は、裁判に例えれば「最終審」に相当する上級委員会の委員の選任を拒んだ。委員の定員は7人だが、いずれも任期を終え、現状で一人も任に就いていない。

日本にも影響する。WTOの紛争処理制度は「二審制」で、一審にあたる紛争処理パネル(小委員会)は20年11月、韓国が日本製ステンレス棒鋼に課した反ダンピング(不当廉売)関税はルール違反だと判断した。不服な韓国は1月に上訴したが、上級委が開けていない。これを含め、21件の審議が上級委で留保されている。

対中で米国と協調する欧州連合(EU)も不満を強めている。

中国経済はWTO加盟後に大きく成長した。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、20年の輸出は01年の9.7倍、輸入は8.4倍になった。貿易総額は9.1倍に膨らみ、2.8倍だった世界全体の増加率を大きく上回った。

UNCTADによると、貿易総額で中国は13年、米国を追い抜いた。米国では同年、オバマ政権の2期目が始まったが、このころから米国内で「中国が雇用を奪っている」という批判が強まった。習氏の自負とは裏腹に、巨額の産業補助金で公平な市場競争をゆがめ、外資に技術移転を強制する中国の姿勢が非難されている。』