南米最大ネット銀行上場が示す金融の未来(NY特急便)

南米最大ネット銀行上場が示す金融の未来(NY特急便)
米州総局 伴百江
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN100780Q1A211C2000000/

 ※ 実は、「銀行」というものは、「お金のやりとり」だけでなく、「本人の確認」「アヤシイお金のやり取りのバリア」という役目も果たしている…。

 ※ 「口座」を開くときには、必ず「免許証」なんかで「本人確認」されるし、「お年寄り」が、「多額の送金」をしようとすると、「さしつかえなければ、お使い道を教えていただけますか。」と、にこやかに尋ねて、「特殊詐欺被害」を未然に防いだりしてくれている…。

 ※ 「手数料」とは、そういう「社会的なはたらき」の対価をも、含んでいるものなんだ…。

『9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は横ばいで終えた。前日までに相場が大きく上昇しただけにこの日は利益確定売りも出て上値は抑えられた。市場関係者の関心を集めたのが、ブラジルのネット銀行ヌーバンクの新規株式公開(IPO)だ。取引初日の終値は10.33ドルと公募価格9ドルを約15%上回った。時価総額は約480億ドル(約5兆4000億円)と、南米の銀行で最大となった。このところIPO銘柄の株価は低迷していただけに、久々の活況に市場は沸いた。

ヌーバンク(上場会社は持ち株会社のヌーホールディングス)は2013年にコロンビア出身のダビド・ベレス最高経営責任者(CEO)がブラジルで創業した。同氏自身が銀行口座を開くのに苦労した経験から、誰もがサービスを受けられる銀行を目指して設立した。銀行口座を持たないいわゆる〝アンバンクト〟と呼ばれる消費者を顧客として狙った同社は急成長している。

現在ではブラジル、メキシコ、コロンビア、アルゼンチンに拠点を広げ、顧客数は4000万人超と南米最大のネット銀行に成長した。米銀最大手のJPモルガン・チェースの顧客数が約6200万人なのと比べても、創業わずか10年弱のフィンテックの勢いがわかる。ベレスCEOは「中南米の人口の50%はいまだに銀行口座を持たない」と指摘し、同社の成長余地は大きいと強調する。

IPO前から企業価値は急拡大し、6月時点で300億ドルとブラジルで有数のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)になっていた。大手ベンチャーキャピタル(VC)のセコイア・キャピタルやシンガポール政府投資公社(GIC)などが出資している。著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイも今年6月に5億ドル出資し、成長に弾みがついた。長期的に成長が見込める企業に投資するバークシャーのお墨付きを得てヌーバンクの将来性は明るくなった。

ヌーバンクはもともと年会費無料のクレジットカードの発行会社としてスタートした。個人向け融資や昨年買収したネット証券を通じて、証券売買も手がけ、品ぞろえを拡充している。バークシャーの出資により、ハイテクに強い人材獲得や海外展開を強化。すでにアマゾン・ドット・コムやグーグルなどから人材をスカウトした。

アンバンクトを狙って従来型の銀行に対抗するフィンテックを欧米ではチャレンジャーバンクと呼ぶ。その筆頭格がヌーバンクだ。米国でも金融規制当局や民主党議員が中心となって銀行の金融包摂向上を求める議論が活発となり、アンバンクトを狙ったスタートアップのビジネスも拡大している。国境を越えて事業を拡大するヌーバンクは米国のチャレンジャーバンクがお手本とする。

南米の従来型銀行は競争力維持のために支店閉鎖でコストを削減するなど、文字通りヌーバンクからの挑戦に直面している。もっとも、テクノロジーを導入するための資金力は大手銀の強みなだけに、ヌーバンクがIPO成功による勢いをどこまで持続できるかが焦点だ。世界のチャレンジャーバンクの試金石として、ヌーバンクの動向から目が離せない。

(ニューヨーク=伴百江)』