ハリス米副大統領、しぼむ期待 バイデン氏後継選びに影

ハリス米副大統領、しぼむ期待 バイデン氏後継選びに影
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『米国でバイデン大統領に加えてハリス副大統領への逆風も強まってきた。就任から10カ月での正副大統領の支持率低迷は投票日まで1年を切った連邦議会の中間選挙だけでなく、2024年の次期大統領選をにらんだ民主党の候補者選びの議論にも波及しつつある。

「最も人気のない副大統領」(米ワシントン・ポスト紙)、「機能不全」(米CNN)――。米主要メディアでかねて「ポストバイデン」の最右翼と言われてきたハリス氏への批判的な報道が目立つようになったのは11月中旬からだった。

きっかけのひとつが11月7日発表の米紙USAトゥデーとサフォーク大が実施した世論調査だ。ハリス氏の支持率は27.8%でバイデン氏より10ポイント低く、半数以上が彼女の仕事ぶりに不満と回答した。

ハリス氏はカリフォルニア州で検事や州司法長官を経て上院議員を務めたとはいえ議員歴は5年に満たない。初の女性・黒人の副大統領として知名度は高いが行政や外交の経験は浅い。

オバマ政権で副大統領だったバイデン氏は36年間の上院議員時代に培った経験や人脈を駆使して議会対策を担った。対照的にハリス氏が政権の看板政策である子育て支援や気候変動対策に10年で1.75兆ドル(200兆円)規模を投じる歳出・歳入法案で対立する民主党内の調整に動いた形跡はなく、バイデン氏が自ら説得にあたる。

ハリス氏が担う移民対策は難航し、メキシコと接する米南西部国境での不法移民の拘束者数が21年度(20年10月~21年9月)は前年度の3.8倍と過去最高を更新した。

6月には米南部国境に押し寄せる移民に「来ないでほしい」とよびかけ、党内リベラル派から「がっかりした」(オカシオコルテス下院議員)と批判された。

バイデン氏はハリス氏を演説に同席させ、頻繁に昼食をともにする。周辺もハリス氏を「大統領の重要なパートナー」(サキ大統領報道官)と擁護するが、額面通りに受け止める向きは少ない。年内にはハリス氏側近の広報担当の幹部2人が相次ぎ退任する。求心力の低下は隠しようがない。

ハリス氏の失速が取り沙汰されていた11月20日、ポスト紙(電子版)はバイデン氏が24年の大統領選に再選出馬する意向を関係者に伝えたと報じた。サキ氏は22日の記者会見でバイデン氏が次の大統領選に立候補するか問われ「大統領はその意向だ」と即答した。

史上最高齢という年齢を理由に1期4年で退くとの観測を打ち消すとともに、次世代のリーダーとして抜てきされたハリス氏への期待がしぼむ党内の雰囲気を投影する。

もっともバイデン氏も支持率が低迷する。ポスト紙と米ABCテレビが14日に発表した世論調査でバイデン氏の支持率は41%と最低を更新。すでに現職最高齢のバイデン氏は大統領選の時点で80歳を超え、2期8年務めると退任時は80代後半になる。「職務をまっとうするのは現実的ではない」との見方も根強い。

英紙テレグラフ(電子版)は28日、民主党内でバイデン氏の後継を巡る議論でハリス氏が最高裁判事に転出する案が浮上していると報道した。このまま支持率が低迷すれば現職の正副大統領をすげ替えて、次期大統領選で第3の候補を探るべきだとの主張だ。

候補の一人がハリス氏より20歳近く若い39歳のブティジェッジ運輸長官だ。20年の大統領選指名争いで一躍有名となり、同性愛者を公言する初の閣僚となった。もっとも米国では15年に同性婚が合法化されたとはいえ、同性愛者が大統領になることへの賛否は割れる。

一方、野党・共和党はトランプ前大統領が24年大統領選の候補者指名争いで優勢とみられている。米ハーバード大などが10月下旬に実施した調査によると、共和候補を巡りトランプ氏が33%の支持を得て、ペンス前副大統領(10%)らを上回った。「本命不在」の民主党の漂流は「トランプ時代」の再来を側面支援しかねない。

(ワシントン=坂口幸裕)

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