米国の対中制裁はかくのごときザル法となった

米国の対中制裁はかくのごときザル法となった

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ こういうものが「実態」だとすれば、対中国版COCOMとか、「対中制裁」策に、あまり律儀に付き合うのも、考えものだ…。

 ※ 米中両にらみで、日本国の生き残りと、日本国の国益の最大化の道を探って行く必要がある…。

 ※ どこの国も、考えることは、似たようなものだろう…。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)12月9日(木曜日)
通巻第7152号  <前日発行>
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 米国の対中制裁はかくのごときザル法となった
   ウォール街は逆方向、侵入禁止ゾーンへ自ら突入している
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 米中経済・安全保障調査委員会(USCC)の年次報告書は、米中関係における経済安全保障を多岐に分析し、32分野において対中強硬策が提案された。
就中、金融分野の規制強化が謳われ、「中国は、資本市場を中国共産党の技術開発目標やその他の政策目標に資金を供給する手段として機能させようと、外国の資本やファンドマネジャーに働きかけている」。

 これは逆の意味で「借金の罠」ではないか。
ゴールドマン・サックスなどは中国投資を増やしているからである。ウォール街は中国制裁とは逆の方向へ、侵入禁止ゾーンへ自ら突入している

ホワイトハウスは北京五輪の外交ボイコットを決め、豪政府が追っかけて外交団ボイコットを表明した。日本も閣僚級の派遣を見送る方針というが、北京五輪そのものは開催される。しかし世界の人権団体は北京五輪そのもののボイコットを訴えている。

 トランプ前政権の対中強行策の効果は、バイデン政権になって急速に希釈された。
現在までの政策は中国からの輸入品に高関税、ファーウェイなどの排斥、情報網からの中国企業排除(チャイナモバイル、テレコムなど)、中国の妖しげな企業の米企業買収禁止、ならびに中国企業のNY市場への上場を制限し、面妖な中国企業の上場廃止(滴々など)だった。
一見して強硬策に見えるが、内実は米国ファンドの中国株への投資は沙汰止みになるどころか増勢の気配である。

 くわえてスパイを排除するための中国人へのビザ発給制限を緩和した。
 じつは米国のハイテク企業、研究所から中国人の研究者・留学生ビザ規制緩和の要求が出されていた。バイデン政権になってから5万件のビザが発給された。

 ウォール街は、中国排除どころか、チャイナマネーに浸ろうとしている。とくにJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、ブラックロックなどは中国子会社100%現地法人となり、2021年9月末には海外投資家保有の人民元建て株式と債券の総額が1兆2000憶ドルを突破した。
日本の国家予算とほぼ同額になる巨額である。 

 ▼半導体サプライチェーンの構築は挫折した

 あれほど喧しく言われた対中半導体規制、中国抜きの半導体サプライチェーン構想は、看板倒れの気配濃厚である。
中国排除を目標とした国際サプライチェーン(EPN)は(1)輸出管理、(2)対米投資審査強化、(3)政府調達から中国品の排除などが基軸だった。ところが、商務省が「ブラックリスト」(ELリスト)にあげた米国企業の対中輸出は殆どが許可されていた。

ウォールストリートジャーナル(2021年10月22日)は、2020年11月から2021年4月の間に米商務省はファーウェイ向け輸出許可610億ドル(認可率69%)、SMIC向け420億ドル(認可率90%)合計1000億ドル以上を許可したと報じた。

 中国が半導体自製を目指し、西側はその根幹である半導体製造装置を輸出規制する筈だった。実態はと言えば、57%も増加していた。2021年第1~3四半期の世界半導体製造装置売り上げは752.3億ドル、前年比45.5%増だった。

 米国半導体製造装置業界トップ、アプライドマテリアルの2021年度第3四半期(5~7月期)売上額は前年同期比41%増の62億ドルであったが、うち22.5億ドル(全体の36%)が中国向けだった。

 日本の同業界トップ「東京エレクトロン」(東証一部=8035)は、トランプの登場時、株価は10000円台だった。2017年から制限強化となって株価は下がるかと思われたが、現実は上昇に転じて20000円台を悠々と超え、2021年は37500円ではじまって、ピークには64100円と、じつに70%強の暴騰をしめしている。事態はあべこべに進んでいたことが分かる。

 一方、外交面では米国がアセアン諸国を軽視し、クアッドを重視したため、米国のアセアン諸国における立場は著しく低下しているとするレポートが出現した。
 習近平国家主席がアセアン・中国特別サミットの議長を務めたほど前向きな姿勢とは対称的に米国のアジアへの熱意のなさ、これは「アメリカの怠慢」ではないかとする報告は豪シドニー大学の米国研究センターが作成した。

 ▼クアッド・ファーストの弊害はアセアンの離反誘導だ

 同報告は、米国に対して「ASEAN、東アジア首脳会議などの地域機関ともっと積極的に関わるべきではないかと強い警告調になっている。
「建設的関与を維持し、米国は間接的にこれら東南アジアグループが中国によって支配されるのを防御できる。米国が不在も同然となれば、中国は当然、影響力を行使する」と報告書は述べている。

 中国政府はすでにラオスに強力な梃子入れをなして新幹線を開通させ、その先のタイと結ぶ工事を開始した。
カンボジアはフンセン独裁あげて親中路線、シアヌークビル港は華僑の賭場となっており、シンバポールの西側寄り外交はポーズに過ぎない。
世界に孤立したミャンマー支援に走る中国は、北京に批判的なベトナムとさえ経済協力を促進しており、懸案のメコン協力フォーラムを後援している。
 
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