米国の対中制裁はかくのごときザル法となった

米国の対中制裁はかくのごときザル法となった

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ こういうものが「実態」だとすれば、対中国版COCOMとか、「対中制裁」策に、あまり律儀に付き合うのも、考えものだ…。

 ※ 米中両にらみで、日本国の生き残りと、日本国の国益の最大化の道を探って行く必要がある…。

 ※ どこの国も、考えることは、似たようなものだろう…。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)12月9日(木曜日)
通巻第7152号  <前日発行>
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 米国の対中制裁はかくのごときザル法となった
   ウォール街は逆方向、侵入禁止ゾーンへ自ら突入している
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 米中経済・安全保障調査委員会(USCC)の年次報告書は、米中関係における経済安全保障を多岐に分析し、32分野において対中強硬策が提案された。
就中、金融分野の規制強化が謳われ、「中国は、資本市場を中国共産党の技術開発目標やその他の政策目標に資金を供給する手段として機能させようと、外国の資本やファンドマネジャーに働きかけている」。

 これは逆の意味で「借金の罠」ではないか。
ゴールドマン・サックスなどは中国投資を増やしているからである。ウォール街は中国制裁とは逆の方向へ、侵入禁止ゾーンへ自ら突入している

ホワイトハウスは北京五輪の外交ボイコットを決め、豪政府が追っかけて外交団ボイコットを表明した。日本も閣僚級の派遣を見送る方針というが、北京五輪そのものは開催される。しかし世界の人権団体は北京五輪そのもののボイコットを訴えている。

 トランプ前政権の対中強行策の効果は、バイデン政権になって急速に希釈された。
現在までの政策は中国からの輸入品に高関税、ファーウェイなどの排斥、情報網からの中国企業排除(チャイナモバイル、テレコムなど)、中国の妖しげな企業の米企業買収禁止、ならびに中国企業のNY市場への上場を制限し、面妖な中国企業の上場廃止(滴々など)だった。
一見して強硬策に見えるが、内実は米国ファンドの中国株への投資は沙汰止みになるどころか増勢の気配である。

 くわえてスパイを排除するための中国人へのビザ発給制限を緩和した。
 じつは米国のハイテク企業、研究所から中国人の研究者・留学生ビザ規制緩和の要求が出されていた。バイデン政権になってから5万件のビザが発給された。

 ウォール街は、中国排除どころか、チャイナマネーに浸ろうとしている。とくにJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、ブラックロックなどは中国子会社100%現地法人となり、2021年9月末には海外投資家保有の人民元建て株式と債券の総額が1兆2000憶ドルを突破した。
日本の国家予算とほぼ同額になる巨額である。 

 ▼半導体サプライチェーンの構築は挫折した

 あれほど喧しく言われた対中半導体規制、中国抜きの半導体サプライチェーン構想は、看板倒れの気配濃厚である。
中国排除を目標とした国際サプライチェーン(EPN)は(1)輸出管理、(2)対米投資審査強化、(3)政府調達から中国品の排除などが基軸だった。ところが、商務省が「ブラックリスト」(ELリスト)にあげた米国企業の対中輸出は殆どが許可されていた。

ウォールストリートジャーナル(2021年10月22日)は、2020年11月から2021年4月の間に米商務省はファーウェイ向け輸出許可610億ドル(認可率69%)、SMIC向け420億ドル(認可率90%)合計1000億ドル以上を許可したと報じた。

 中国が半導体自製を目指し、西側はその根幹である半導体製造装置を輸出規制する筈だった。実態はと言えば、57%も増加していた。2021年第1~3四半期の世界半導体製造装置売り上げは752.3億ドル、前年比45.5%増だった。

 米国半導体製造装置業界トップ、アプライドマテリアルの2021年度第3四半期(5~7月期)売上額は前年同期比41%増の62億ドルであったが、うち22.5億ドル(全体の36%)が中国向けだった。

 日本の同業界トップ「東京エレクトロン」(東証一部=8035)は、トランプの登場時、株価は10000円台だった。2017年から制限強化となって株価は下がるかと思われたが、現実は上昇に転じて20000円台を悠々と超え、2021年は37500円ではじまって、ピークには64100円と、じつに70%強の暴騰をしめしている。事態はあべこべに進んでいたことが分かる。

 一方、外交面では米国がアセアン諸国を軽視し、クアッドを重視したため、米国のアセアン諸国における立場は著しく低下しているとするレポートが出現した。
 習近平国家主席がアセアン・中国特別サミットの議長を務めたほど前向きな姿勢とは対称的に米国のアジアへの熱意のなさ、これは「アメリカの怠慢」ではないかとする報告は豪シドニー大学の米国研究センターが作成した。

 ▼クアッド・ファーストの弊害はアセアンの離反誘導だ

 同報告は、米国に対して「ASEAN、東アジア首脳会議などの地域機関ともっと積極的に関わるべきではないかと強い警告調になっている。
「建設的関与を維持し、米国は間接的にこれら東南アジアグループが中国によって支配されるのを防御できる。米国が不在も同然となれば、中国は当然、影響力を行使する」と報告書は述べている。

 中国政府はすでにラオスに強力な梃子入れをなして新幹線を開通させ、その先のタイと結ぶ工事を開始した。
カンボジアはフンセン独裁あげて親中路線、シアヌークビル港は華僑の賭場となっており、シンバポールの西側寄り外交はポーズに過ぎない。
世界に孤立したミャンマー支援に走る中国は、北京に批判的なベトナムとさえ経済協力を促進しており、懸案のメコン協力フォーラムを後援している。
 
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中国、法律の国外適用推進 習主席「断固主権守る」

中国、法律の国外適用推進 習主席「断固主権守る」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021120701151&g=int

 ※ 一応、一般的な話しをすれば、ある国家の「統治権」は、その国の「国民」に及ぶ(属人主義)。
 ※ 他方で、各国家は、その「領土」内に「統治権」が及ぶ(属地主義)。

 ※ すると、A国民がB国にいる場合、A国法が適用されるのか、B国法が適用されるのか、という問題が生じてしまう…。

 ※ 両国間に、「条約」があれば、それで解決される。

 ※ また、西側諸国では、「法の支配」「人権」「三権分立制」なんかの、「民主国家における共通基盤」みたいなものがあるから、大体、そう「突飛なこと」にはならない。
 ※ しかし、そういう「共通基盤」が無い場合は、どうなるのか…。

 ※ オレも、あまり考えたこと無いし、文献読んだことも無いんで、よく分からない…。
 ※ なにせ、「中国式民主が、ある」とか言ってるからな…。

 ※ 『「2国間や多国間の司法協力を進め、外国関連の法執行効力を高め、国家主権、安全、発展の利益を断固として守る必要がある」』とは、具体的にどうするつもりなんだろう…。

『【北京時事】中国共産党の習近平総書記(国家主席)は6日、党政治局の集団学習会を開き、国内法を外国に適用する制度の構築を推進するよう指示した。国営新華社通信が7日報じた。

詳細は不明だが、昨年施行した香港国家安全維持法は海外在住者も適用対象としており、同様の法整備が進む可能性がある。

【中国ウォッチ】党紙が謎のトウ小平氏礼賛論文 習主席主導の新歴史決議に異論?

 習氏は「2国間や多国間の司法協力を進め、外国関連の法執行効力を高め、国家主権、安全、発展の利益を断固として守る必要がある」と説明した。

 また、各党組織や幹部に司法の独立を支持するよう求め、「干渉や介入のための職権利用は許さない」とも強調した。中国では裁判所を含めすべての司法機関が党の指導下に置かれている。 』

空自F35、函館に緊急着陸 三沢基地所属

空自F35、函館に緊急着陸 三沢基地所属
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE084AD0Y1A201C2000000/

 ※ 空自も、「即応態勢」にあるようだ…。

『8日午後0時18分ごろ、北海道の函館空港に、航空自衛隊三沢基地(青森県三沢市)に所属するF35Aステルス戦闘機1機が緊急着陸した。函館空港を運営する北海道エアポートによると、この影響で滑走路が約9分間閉鎖され、民間航空機1便の出発が30分以上遅れた。けが人はなかった。

三沢基地によると、F35Aは午前11時15分に基地を離陸し、日本海上空で訓練中に機体に不具合が発生したという。トラブルの詳細は明らかにしていない。整備員を派遣し、原因を調査する。不具合が起きたF35Aの安全を確保するため、同型機1機も函館空港に着陸した。

岸信夫防衛相は8日、三沢市の小檜山吉紀市長との面会で、函館空港への緊急着陸に関し「不具合の原因の詳細は確認中だが、三沢基地周辺の方々に心配と迷惑をお掛けしたことを大変申し訳なく思っている。再発防止に努める」と謝罪した。面会は、米軍三沢基地のF16戦闘機の燃料タンク投棄の再発防止を要請するために設けられていた。

基地司令の久保田隆裕空将補は「原因を究明して再発防止に努めるとともに、安全な飛行に万全を期してまいりたい」とコメントした。

F35Aは空自の最新鋭戦闘機で、レーダーで探知されにくいステルス性能が特徴。空自は2018年1月に三沢基地に初めて配備し、19年3月、飛行隊を新設した。〔共同〕』

<独自>日本、北京五輪に閣僚派遣見送り検討

<独自>日本、北京五輪に閣僚派遣見送り検討
https://www.sankei.com/article/20211208-LXZKVPPE45K65ARDAPFMKVSOZM/

『政府が来年2月に中国で開かれる北京冬季五輪への閣僚の派遣を見送る方向で検討していることが7日、わかった。米国は政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を表明しており、日本としても新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権弾圧などを踏まえた対応を取る。

複数の政府関係者が明らかにした。

中国政府は今年7月の東京五輪開会式に苟仲文(こう・ちゅうぶん)国家体育総局長を出席させた。このため、日本も外交上の「返礼」として、北京五輪に同じ閣僚級を出席させる案も取り沙汰されてきた。

ただ、中国の人権問題などに対する批判が欧米で拡大。与党などからも首相や外相ら閣僚の出席は国際社会に誤ったメッセージを与えるとの指摘が出ていた。

政府内では、閣僚ではないスポーツ庁の室伏広治長官や日本オリンピック委員会の山下泰裕会長を派遣する案が浮上している。苟氏は閣僚級だが、中国オリンピック委員会のトップも兼ねる。

政府関係者ではない山下氏を派遣することになれば、外交的ボイコットを打ち出した米国と一定程度足並みがそろうとみられる。政府は中国側の対応や米国以外の先進7カ国(G7)の動向なども見極めつつ、最終判断する見通しだ。

岸田文雄首相は7日、官邸で記者団に対し、米国が北京五輪の外交的ボイコットを発表したことを受けた日本の対応について、「五輪の意義、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」と述べた。

林芳正外相も記者会見で、「適切な時期に諸般の事情を総合的に勘案して判断するが、現時点では何ら決まっていない」と語った。さらに中国の人権問題に関し、「自由、基本的人権、法の支配が中国においても保障されることが重要だ」と指摘した。

「甘い対応できぬ」「独自の立場」北京五輪で首相難題 』

プーチン氏、ウクライナのNATO非加盟要求

プーチン氏、ウクライナのNATO非加盟要求
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0800P0Y1A201C2000000/

 ※ ここら辺も、「いくら話し合っても」、分かり合えないところだろう…。

 ※ ウクライナの将来を決めるのは、ウクライナ国民だ…。

 ※ 米国がいかに「覇権国」とは言え、「他国の国民の決定に、口出しすること」が、できるわけが無い…。ましてや、「他国の将来について、第三国が約束すること」ができるハズも無い…。「密約すること」くらいは、できるんだろうし、実際に散々されてきた…。しかし、表立ってはムリだろう…。

 ※ まあ、そういう「感覚」自体が、「存在しない」んだろうな…。

 ※ おそらく、「上位の者が、決めたことに、下位の者は従うべき。」というような感じなんだろう…。

 ※ オレらの、近くの国にも、「そういうヤツ」、いるよな…。

『【モスクワ=石川陽平】プーチン大統領は7日のバイデン米大統領とのオンライン協議で、緊迫するウクライナ情勢に関して「北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を排除する信頼ある法的に定められた保証」を求める考えを伝えた。ロシア大統領府が同日、発表した。

ロシアはウクライナがNATOに加盟すれば、勢力圏を大きくそがれ、対立する米欧中心のNATO軍がロシアに接近して自国の安全保障が損なわれると懸念している。プーチン氏は首脳協議で、ウクライナのNATO非加盟要求に加えて、攻撃兵器をロシアの隣接地域に配備しないことも「保証」に盛り込むよう求めた。

ロシアがウクライナとの国境近くで軍事行動を活発にしているとの欧米からの批判については「ロシアに責任を転嫁すべきではない」と反発した。NATOが武器の供与などを通じてウクライナへの関与を強めていることを「危険な試みだ」と主張した。

ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との間で続く東部紛争に関してプーチン氏は、停戦と和平の実現に向けた2015年のミンスク合意をウクライナが破壊しようとしていると批判した。政府軍が親ロ派地域に対して挑発的な行動を取っているとして、強い懸念を伝えた。

焦点のウクライナ情勢を巡り、米ロ首脳の主張は平行線をたどったもようだ。ただ「こうした敏感な問題についての協議」を続けるよう当局者に指示することで一致したとしており、今後も米ロ間の緊張緩和への対話を続ける見通しになった。

【関連記事】

・バイデン氏、ウクライナ侵攻なら「ロシアに対抗措置」
・米ロ、ウクライナめぐり緊迫の理由は 』

[FT]先が見えない英EU関係 修復願えば仏に歩み寄りも

[FT]先が見えない英EU関係 修復願えば仏に歩み寄りも
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB268K70W1A121C2000000/

 ※ 『ある欧州の外交官は英国の外交姿勢について「戦略的ではなく、常に戦術的」と評する。前に進んだと思っても程なく後戻りするからだ。』…。

 ※ ここら辺は、英米流の「帰納法」「プラグマティズム」だと思われる…。

 ※ 『英国政府が3月に公表した外交・安全保障の基本方針「統合レビュー」は欧州の安全保障にほとんど触れておらず、英国は依然、EUのシステムを考慮せずに事を進めようとしている。』…。

 ※ ここら辺は、英国が「一抜け」した「動因」を、理解していないように見受けられる…。英国の立場では、EUのための「支出」ばかり強いられて、「見返り」はさほど無い…。あまつさえ、「移民」の負担は嵩むばかりだ…。しまいには、「中東難民」まで、割り当てられそうになった…。経済は、「ドイツ一人勝ち」という状態だ…。これじゃあ、堪ったものじゃない…、というような感じなのでは…。

 ※ こういうことは、おそらく欧米人は、みんな「思っていても」、口に出しては言わないことなんだろうが、オレは「日本人」だから、言ってしまおう…。

 ※ メルケルが、「難民引き受け」宣言に出た背景には、ドイツの「○○○人虐殺の贖罪・トラウマ」が横たわっていると思われる…。

 ※ 「原罪」とか、「神との対話」とか、「一神教的」に「誠実であろう」とすると、現実との乖離が甚だしくなって、「不連続な行動」、「噴出する突発行動」に出ることがあるんだよ…。

 ※ アメリカの「禁酒法」とかにも、それが見え隠れする…。

 ※ だから、せいぜいが「解脱」「悟りを開く」くらいに留めておくのが、いいんだよ…。

 ※ それで、「インド太平洋」に軸足を移し、「グローバル・ブリテン」を追求することにした…。そのためには、米英豪が立ち上げた安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」に乗っかることにした…。そういうことで、仏をないがしろにする結果となったが、悪しからず…。

 ※ 「まあ、落ち着け」と言ってかえって傷口を広げることになったが、これも「国益」のためだ…。勘弁な…、という感じなんだろう…。

 ※ まあ、ジョンソン氏の「お人柄」もあるんだろう…。

『「願えばかなう、願い続ければ悩みは消える」。第2次世界大戦中の英軍の慰問歌手ベラ・リンさんは、この希望を抱かせる歌詞の歌で「英軍の恋人」と呼ばれた。外交の指南書ではあまり見かけない表現だが、欧州連合(EU)、とりわけフランスとの関係修復をいかにも願っているような今の英政府の心情と不思議なほど似通って見える。

Ellie Foreman-Peck/Financial Times

11月、一部の英政府高官は対EU関係をリセットする利点を認識したようだ。EUからの離脱問題を担当するフロスト内閣府担当相は、北アイルランド議定書で定められた英本土と北アイルランド間の通関手続きを停止するという強硬姿勢を少なくとも一時的に撤回した。
メディアにもフランスとの対立の解消につながった1904年の「英仏協商」の現代版を結びたいと説明があった。移民が英仏海峡を不法に渡ろうとする事態を何とかすべきだとの圧力も高まっており、英国の内政問題の解決に欧州側の協力が必要な場面は非常に多い。

ところがリセットを目標に掲げても、達成する覚悟がある人は現政権内にはなかなか見当たらない。ジョンソン首相は関係を改善したいようだが、態度を軟化させると与党保守党内の右派を刺激しかねず、国内的にはほとんどメリットがないと考えている。同氏の外交政策顧問のジョン・ビュー氏は関係改善を提言しているものの、あるベテランウオッチャーによると「孤立無援に見える」。

関係修復への動きはほとんどなく

ある欧州の外交官は英国の外交姿勢について「戦略的ではなく、常に戦術的」と評する。前に進んだと思っても程なく後戻りするからだ。直近では11月下旬、英国を目指していた不法移民27人が英仏海峡で死亡した事件への対応がある。ジョンソン氏はマクロン仏大統領に書簡を送り対応策を提案したが、英政府がその内容をツイッターなどで公開したことでフランスの不興を買った。近隣諸国の閣僚やEUの幹部らが集まって対応を協議する場に、英国はフランスの反対で出られなかった。

関係修復に向けた動きは事実上、ほとんど見られない。内部事情に詳しい英外務省関係者は「関係修復を真剣に望んでいるとは全く思えない」と語る。トラス外相が最も重視するのは米国とインド太平洋地域だ。EUへの関心も東欧諸国、特にEUの規則に従わない国へ向いている。しかも対EU政策はフロスト氏が方向性を決める。

他の閣僚にしても、官僚から一目置かれるスナク財務相はEU諸国の閣僚との折衝に興味がないという点で彼らを憤慨させている。パテル内相は個人的にはEUに友好的でも、公の場では相手を遠ざける発言をする。

リセットの土台は防衛、中でも対仏関係にあるとされる。だが英国政府が3月に公表した外交・安全保障の基本方針「統合レビュー」は欧州の安全保障にほとんど触れておらず、英国は依然、EUのシステムを考慮せずに事を進めようとしている。

幅広い分野での関係改善への期待は、米英豪が立ち上げた安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」によって深刻な打撃を受けた。米政府は急いで傷口を塞ごうとしたが、ジョンソン氏はマクロン氏に「まあ、落ち着け」と言ってかえって傷口を広げた。核実験を中心とする英仏の防衛協力は継続するが、これで緊張が和らぐわけではなく、緊張があるにもかかわらず続けるというのが実態だ。

EU離脱が問題の根底に

他のEU諸国との関係も先が案じられる。ドイツでは連立政権を組む3党が、EU諸国は対英政策で抜け駆けをせず、英とEUは離脱協定を完全順守することが必要だと合意文書で確認した。オランダのルッテ首相など以前は英国に理解のあった首脳らも、我慢の限界に近づいているといわれる。一方で欧州は先へも進んでいる。大半のEU加盟国にとって、最優先課題はドイツのショルツ新首相との関係構築だ。

英国のEU離脱がすべての問題の根底にあるのは言うまでもない。今や英国は他の欧州諸国から、合意内容を数カ月後にはほごにする信用できない国だと思われている。ジョンソン氏のことを信頼できず不真面目だと最も声高に批判するのはマクロン氏かもしれないが、だからといってマクロン氏がEU内で浮いているわけではない。

これからの英EU関係はビジネスに絡み、一段と緊迫したものになっていく。フランスは英国のEU離脱が失敗だったと示したがっており、金融街シティーの弱体化を望んでいると英国の閣僚らは嘆くだろう。そんなことは初めからではないにせよ、英国が離脱交渉で金融サービスより漁業を優先した時点でわかっていたはずだ。

より根本的な問題は、EUとの関係修復を目指すとしている今の英政府にそれを実行する力があるかどうかだ。これを疑問視する元外交官の一人は「今の首相の下で修復できるとは思わない。フランスとの関係はあまりにもこじれている」と話す。
リセットには現実主義が必要だが

打てる手はある。1つ目は北アイルランド議定書の通関手続きを停止するという脅しをやめ、EUの譲歩案を受け入れることだ。強硬な離脱派を落胆させるだろうが、彼らは遅かれ早かれ落胆することになる。

2つ目は幹部官僚の意見を聞き、外交の本質とはこちらの望むことをしてもらえるよう相手を説得することと肝に銘じることだ。それには相手の懸案や気質を考慮することが必要になる。英国は離脱協定を蒸し返し、少しでも自国に有利な方向へ持っていこうとしている。そうした際限のない「ゼロサムゲーム」の相手としてEUを捉えるのをやめなければならない。

3つ目としてフランスに英国の難民認定施設を置くという仏側の提案に乗る手がある。ただその結果、英国が受け入れる移民の数が増えるかもしれない。

もっとも、こうした手立てを挙げることで逆に問題が浮き彫りになる。首相や政権の性格を考えれば、脅しで相手より優位に立とうとする瀬戸際政策を好み、外交官を信頼せず(北アイルランド議定書の破棄をちらつかせるなど)まるで選挙時のように本能的に支持者の感情に訴えようとしていることも手伝って、リセットに欠かせない現実主義に転じるのは難しそうだ。

緊張は緩和できるが、真の関係改善には政府がいつまでも戦術にこだわるのではなく、戦略的な決定を下す必要がある。より良い関係を願うのは正しい一歩だ。しかし意志の力で達成することとは違う。

By Robert Shrimsley

(2021年12月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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メルケル政権が終幕 変化より安定、読み続けた空気

メルケル政権が終幕 変化より安定、読み続けた空気
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR069QB0W1A201C2000000/

『【ベルリン=石川潤】ドイツのメルケル首相が8日に退任する。多くの危機を乗り越え、欧州に安定をもたらしたが、気候変動対応や対中外交で理念よりも実利を優先したとの批判もある。長期政権を可能にしたメルケル政治とは何だったのか。ドイツの3人の専門家に聞いた。

「虚栄心なしにとても力強く、妥協点を見つけ実行する」。フライブルク大学のウルリヒ・アイト教授はメルケル氏の政治スタイルをこう表現する。

フライブルク大学のウルリヒ・アイト教授

メルケル政権の16年は2008年のリーマン・ショック、欧州債務危機、15年の難民危機といった危機の連続だった。現在も新型コロナウイルス危機の真っただ中だが、その突出した調整能力がメルケル氏の人気と評価の高さの根底にある。

その秘密が、決して自己アピールに走ることなく、腐敗とは無縁のつつましさにあるというのが、アイト氏の見立てだ。「メルケル氏の真剣さと能力への信頼は政治的な立場を超えてかなり高いものだった」という。

利害の異なる国々が集まる欧州連合(EU)は、メルケル氏のような調整型のリーダーなしには成り立たない。危機に際して欧州をまとめ上げることに貢献したことが、メルケル氏の最大の功績との声は多い。

もっとも、合意形成を重視する保守的な政治手法には批判もつきまとう。政治学者のアルブレヒト・フォンルッケ氏は「すべてを多数派の意思に従属させる」ことこそがメルケル政治の本質だったと指摘する。

政治学者のアルブレヒト・フォンルッケ氏

選挙戦で勝利し、権力を握り続けるため、メルケル氏はたとえば気候変動対応の加速よりも強大な自動車産業の利益を優先したというのがフォンルッケ氏の分析だ。メルケル氏は民主主義を擁護したが、対中外交のように「倫理的な価値観と国益が対立するときは、たいてい権力維持を優先してきた」という。

フォンルッケ氏によると、11年の福島の原発事故後の脱原発の決断も、こうしたメルケル政治の典型だ。「多数派の意見の方向転換に気づくと、メルケル氏は高い適応力をみせた」。決して高いビジョンを掲げて、それを貫こうとする政治家ではなかったという評価だ。

いわば空気を読んで社会に寄り添ってみせるのがメルケル流といえる。安全を第一とし、経済的な繁栄をもたらしたメルケル氏をドイツ国民は16年支持し続けた。「メルケル氏は変化を望まない社会の象徴だった」とフォンルッケ氏は振り返る。

ジャーナリストのウルズラ・ワイデンフェルト氏

もっとリスクをとって動くべきだったとの指摘は多い。ジャーナリストのウルズラ・ワイデンフェルト氏は、かつて環境相を務めて科学者でもあったメルケル氏は「気候変動にどう対応し、何をすべきかを知っている数少ない政治家のひとりだった」と指摘する。それなのに「気候変動対応を政権の仕事の中心に据えようとしなかった」ことに問題の根深さがあるという。

メルケル氏が気候変動のために何もしなかったわけではない。ただ「もっとできることがあった」というのがワイデンフェルト氏の指摘だ。先頭に立とうとせずに、世論が盛り上がるまで積極的に動かなかった面は否めない。

冒険を避け続けてきたメルケル氏にとってほとんど唯一の例外が、15年にシリアなどからの難民を受け入れた決断だ。ドイツ国内では社会を混乱させたとの批判があり、メルケル氏の与党党首辞任にもつながった。だが、国際社会では高く評価された。

メルケル氏がなぜ「突然、道徳的に」(アイト氏)振る舞ったのか。牧師の父親を持ち、旧東ドイツで育った生い立ちなどが指摘されるが、真相はやぶの中だ。分析は数あれど、メルケル政治にはなお多くの謎が残されている。

【関連記事】
・メルケル氏「重要なのは信頼」 ベルリンで送別式典
・メルケル後の欧州に危うさ 財政拡張へ、インフレに懸念

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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貴重な体験談

EUでは昨年から安定成長協定の例外条項発動で一時的に財政規律を緩めたため政府債務が大きい国も大幅財政出動が可能になり、EU共同債も初めて発行しグリーン・デジタル成長戦略を進める。

ECBも大規模量的緩和により長期金利上昇を防いだ結果、日米と遜色のない財政金融協調を実現した。現在新しい財政規律の在り方や政策協調の議論が進む。

先日欧州委員会主催オンライン討論会に招待されパネリストとして議論に参加したが、公的債務GDP比の60%からの引き上げを含め前向きな議論が進む。財政重視のドイツ等と一段の経済統合を推進するフランス等南欧諸国の間で対立も予想されるがドイツも新政権になりEUの統合はさらに進みそうだ。

2021年12月8日 7:34 (2021年12月8日 7:38更新)

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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分析・考察

メルケル政権の16年は欧州経済におけるドイツ独り勝ちの時代でした。

輸出型製造業を柱とする経済成長は、ユーロの導入や、シュレーダー政権期の労働市場と社会保障の一体改革などメルケル政権以前の政治決断の恩恵を受けた部分も大きかったと思います。

ユーロ危機への対応も過剰債務国に過度の負担を強いた面があり、ユーロ圏内の格差の固定化という問題を残しました。

ユーロ圏の停滞期のドイツの独り勝ちは中国市場への傾斜を強めたからこそ実現したものでもあります。

メルケル政権期に十分進展しなかったデジタル化、グリーン化の加速、格差を増幅しやすいユーロ制度の見直し、中国への過度の傾斜の是正が新政権の課題です。

2021年12月8日 7:41

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察

長かったですね。アデナウアー、コール、メルケルと、長期政権は皆CDUで、ある意味安定を重視するドイツ国民の国民性を示しているのでしょう。

メルケルさんは東西ドイツと東西欧州の融和を体現していました。

しかし、16年ビジョンなしに多数派追随だけの運営は長すぎました。

ドイツ史上社民党政権はどれも相対的には短いですが、ブラント政権の東方外交に非常事態条項の憲法改正、シュミット政権の中距離ミサイル問題、シュレーダー政権の労働市場改革と、大きな方向転換と必要な改革を行なっています。

16年間続いたメルケル政権の曖昧な政策のため、各方面に問題が山積しています。新政権が勇気ある進歩を実現できるか注目したいです。

2021年12月8日 11:29

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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター
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分析・考察

2005年11月22日、初の女性首相の選出をベルリンの連邦議会で取材した者として、ドイツのメルケル政権の16年が終わりを告げるのは感慨深いです。

4期16年のうち12年間はドイツ社会民主党(SPD)との「大連立」政権。国民に受けの悪い組み合わせですが、結果的に調整型のメルケル氏が確固たる安定感を築く土台になりました。

ユーロ危機や難民危機、コロナ危機のなか「欧州の女王」として決定力を誇ったメルケル氏ですが、対応は問題含みでした。識者が指摘する彼女の持ち味と弱点には一つ一つうなづけます。

英国が去り、メルケル氏が去ったEUを誰がどうけん引していくのか。欧州の新しい時代の始まりに注目したいです。

2021年12月8日 8:34 』

豪州も北京五輪の外交ボイコット 米国に続き

豪州も北京五輪の外交ボイコット 米国に続き
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM080GG0Y1A201C2000000/

 ※ 豪の追随は、予想されたことだろう…。

 ※ 後は、同じ系統の国である、英・加の動きが注目だ…。

 ※ 見ものは、EUだな…。

 ※ メルケルが去った後の舵取りが、どうなるのか…。

 ※ ある種の「試金石」となるだろう…。

 ※ 日本国の反応は、後で出てくるが、やはり「閣僚」ではない室伏氏と、山下氏の名前が挙がっているようだ…。

『【シドニー=松本史】オーストラリアのモリソン首相は8日、2022年2月の北京冬季五輪に選手団以外の外交使節団を派遣しない外交ボイコットを決めたと発表した。中国の新疆ウイグル自治区での人権問題などを理由に挙げた。外交ボイコットは米国に続く動きとなる。

【関連記事】

・米中、五輪巡りせめぎ合い 外交ボイコットで先鋭化
・五輪の外交ボイコットとは何か 開催に祝意示さず
・北京五輪の外交ボイコット、選手はどうする

シドニーで記者団に語った。中国政府との話し合いを望んできたが「中国はこうした問題について、我々と(協議のために)会う機会を受け入れなかった」と説明し、豪政府関係者を北京五輪に派遣しないことは「驚くことではない」とした。「スポーツと政治問題は別のものだ」とも述べ、選手団は派遣することを明言した。

豪オリンピック委員会もモリソン氏の発言を受けて声明を出し、「政府の選手団への支援を歓迎する」とした。

中国は米国の外交ボイコットに対して、対抗措置をとる姿勢を示している。モリソン氏は中国からの報復を懸念しているか問われると「全くもって受け入れられない。常に豪州の国益のために立ち上がる」と強調した。

モリソン氏が20年4月、新型コロナウイルスの発生源について独立した調査を求めたことに中国は反発し、両国関係は悪化している。中国は豪産大麦やワインに高関税を課し、一部の食肉や石炭の輸入も停止した。豪政府は閣僚レベルでの協議を求めてきたが、中国は応じていない。

豪州は同盟国の米国と足並みを合わせインド太平洋地域で台頭する中国への警戒を強めている。21年9月には米国、英国と共に安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」の創設を発表、両国の支援を受けて原子力潜水艦を配備することも決めた。これに先立つ20年には中国を念頭に外国からの影響力を排除する目的で改正外資買収法など複数の法律を成立させた。

北京冬季五輪を巡っては、米バイデン政権が6日に外交ボイコットを決めた一方、ニュージーランド(NZ)は新型コロナを理由に閣僚を派遣しないとしている。今後、米豪と同様に外交ボイコットを行う国がどこまで広がるかが焦点となる。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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別の視点

スポーツと政治は別、とは言いながらも、中国の人権状況に当のスポーツ団体である女子テニス協会や選手もボイコットを表明するなど、両者を完全に分けるのはもはや無理でしょう。

そうした中で、選手の参加の自由を認めつつ、外交的にはボイコットするという手法は、今後一気に広がるかもしれませんね。

いっそ、両者を完全に切り離して、オリンピックへの各国政府の出席自体を原則無しとしてしまってはどうでしょうか。運営についてもIOCの独立性をより強め(IOCじたいの透明性の確保などが前提ですが)、ホスト国との関係を薄めて行く。
そうすれば、派遣するかしないかでの国際対立も減るのではと思いますが、どうでしょうか。

2021年12月8日 12:51 (2021年12月8日 12:52更新)

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

北京にとって五輪開催は国威発揚の好機だったかもしれないが、今、親中と反中と世界主要国が二分されてしまいそう。この難局を打開するに、政治指導者の度量が試される

2021年12月8日 12:14

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説

中国で商売をしている日本企業のトップは緊張しているでしょう。政府の出方次第で製品の不買運動や抗議デモが想定されます。そんな環境でも事業を拡大するには中国企業にマネができない「オンリーワン」の製品を持っていたり、地元との強い関係を持っていたりすることがカギです。

米中の緊張を受けて、今年は安全保障担当の部署や担当役員が急増しましたが、シナリオ作りは終えているでしょうか。

2021年12月8日 14:10

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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分析・考察

ヨーロッパでは英が前向きに検討していると思われ、マクロン仏大統領が、EUレベルで調整すべきと発言していますので、今日誕生するショルツ政権の対応が注目されます。

日本の対応も遅いよりは早い方がいいでしょう。

いずれにせよ、中国の人権問題は、これから対中国政策の重要な要素の一つになってきますので、日本政府も本腰を入れて、様々な対応手段を整えて、その時々で色々な度合いを付けた反応ができるようにしておく必要があり、人権理由の経済制裁もその中に含まれます。

2021年12月8日 14:08

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高橋徹
日本経済新聞社 アジア総局長兼論説委員
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別の視点

互いに隣国であるオーストラリアとニュージーランドの対応の差が興味深いです。

両国は米英カナダとの機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」のメンバーである一方、中国が最大の輸出相手であることも共通します。

北京五輪に閣僚の外交使節団を送らない対応も同じですが、真っ正面から人権問題を理由にする豪に対し、NZは新型コロナを理由に挙げています。

豪の方が対中批判のメッセージをより強く打ち出したわけですが、外交関係は敵・味方という単純な二分法ではない、とでも言いたげなNZのしたたかな姿勢も印象的です。

2021年12月8日 12:38

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

食糧生産や資源が豊富なオーストラリアと、その消費国である中国は2014年に習近平国家主席が豪州連邦議会で演説するなど一時は蜜月を築きました。

その後の関係悪化は記事にある通りです。今回、中国の台頭を警戒するモリソン首相のもとで素早く米国に呼応し、リスク覚悟で米主導の対中共同戦線へ一段とカジを切りました。

日本も人権重視の姿勢を示す必要がある一方で、日本周辺の緊張が高まらないよう中国とのパイプを生かして中国を説得するという高度な外交力が求められます。

2021年12月8日 12:18 』

米中、五輪巡りせめぎ合い 外交ボイコットで先鋭化

米中、五輪巡りせめぎ合い 外交ボイコットで先鋭化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN073310X01C21A2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】バイデン米政権は6日、2022年2月の北京冬季五輪に選手団以外の外交使節団を派遣しない「外交ボイコット」を決めた。新疆ウイグル自治区などでの中国の人権弾圧に抗議する姿勢を明確にする。これに対し中国政府は7日、対抗措置をとることを表明。米中対立が先鋭化するなか、米国に同調する国がどこまで広がるかが焦点になる。

【関連記事】
・中国反発「対抗措置とる」 米の五輪外交ボイコット
・日本、欧州での広がり注視 自民内にボイコット同調論
・米政権、北京五輪の外交ボイコット発表 選手は派遣へ
・五輪の外交ボイコットとは何か 開催に祝意示さず

ホワイトハウスのサキ大統領報道官は6日の記者会見で「中国がウイグルで大量虐殺や人道上の罪を犯し、その他の人権侵害を続けていることを考慮した」と説明した。

バイデン政権は効果的なタイミングでの発表を探っていたとみられる。9~10日に米政府が110カ国・地域を招いてオンライン形式で開く「民主主義サミット」は柱のひとつに「人権の尊重の推進」を掲げる。日欧など同盟国や台湾など価値観を共有する参加国・地域の結束を促し、権威主義と位置づける中国やロシアに対抗する狙いがにじむ。

中国は米国の決定に素早く反応した。中国外務省の趙立堅副報道局長は7日の記者会見で対抗措置をとると表明した。具体策は明らかにしていないが、米中の対立がさらに先鋭化すれば「民主主義陣営」と米国がいう「権威主義陣営」の色分けで世界を二分しかねない危うさがある。

ただ、どこまでボイコットが広がるかは見通せない。米国は選手団を通常通り派遣するほか、「我々の決定を各国に伝えたが(判断は)各国に委ねる」(サキ氏)との立場をとり、「踏み絵」を迫るのは避けた。

ロイター通信は7日、米国が表明した北京冬季五輪の外交ボイコットにイタリアは参加しないと報じた。イタリアは26年にミラノなどで冬季五輪を開催する予定で、自国開催の五輪への影響を避ける狙いとみられる。

7日に北京五輪へ閣僚を派遣しない方針を明らかにしたニュージーランド(NZ)も「主に新型コロナウイルスによるもの」(ロバートソン副首相)として人権問題とは関連づけず、米国と距離を置いた。各国とも国内世論や米中とのバランスに苦慮している。

中国も巻き返しに動いている。習近平(シー・ジンピン)指導部は「一部の国の高官の出欠で(五輪の成否が)決まるのではない」(中国外務省)として、米国以外に外交ボイコットが広がらないように、関係国の支持取り付けを急いでいる。

中国外務省によると、習国家主席は3日、ラオスのトンルン国家主席とオンライン協議して「北京冬季五輪の成功裏の開催を断固支持する」との言質をとりつけたと発表した。中国はスイス、ハンガリー、韓国、カンボジアなどにも外交ルートを通じて積極参加を呼びかけている。

スポンサー企業も難しい判断を迫られる。国際オリンピック委員会(IOC)によると、五輪の最高ランクのスポンサーである「パートナー」14社のうち、米国企業はインテル、エアビーアンドビー、コカ・コーラ、ビザ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の5社。日本企業ではトヨタ自動車とパナソニック、ブリヂストンが含まれる。

米国では消費者から広告や事業内容が差別的だと判断され、不買運動など企業批判につながるケースが多い。新疆ウイグル自治区などを巡る中国の人権弾圧については米市民団体なども批判を強めており、スポンサー企業に対してもボイコットを求める動きが強まる可能性がある。』

中国恒大、ドル建て債の利払い確認できず 猶予期限切れ

中国恒大、ドル建て債の利払い確認できず 猶予期限切れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM062D50W1A201C2000000/

『【香港=木原雄士】巨額の債務を抱えて経営難に陥った中国恒大集団は日本時間7日午後、米ドル建て債の利払い猶予期限を迎えた。ロイター通信など複数のメディアは利払いが確認できないと報じた。恒大の公募債としては初の債務不履行(デフォルト)になった可能性がある。金融市場は恒大への関与を深める中国政府の方針を受けてひとまず落ち着いているが、債務再編の合意形成には時間がかかるとの見方が多い。

確認できないのはグループ会社が発行した米ドル債の8249万ドル(約93億円)分の利払いだ。11月6日の当初期日までに支払わず、30日間の猶予期間に入っていた。中国企業で過去最大のデフォルトになる可能性がある。

恒大はこれまで猶予期限切れの直前に利払いを実行するなどして、デフォルトをかろうじて回避してきた。私募債を保有するとみられる投資家から債務保証の履行を求められるなど、資金繰りの厳しさが増していた。

米格付け会社S&Pグローバルは7日、債権者からの債務保証履行請求などを踏まえ「恒大のデフォルトは避けられないようにみえる」との見解を示した。恒大のドル建て債は市場で額面の20%台まで下げ、デフォルトを想定した水準にある。

恒大のデフォルト懸念が強まる中、中国当局は全面関与して外貨建て債務の再編に乗り出す方針を打ち出した。地元の広東省政府は恒大に監督チームを送り込むと発表。同省政府系企業幹部が共同責任者に就くリスク管理委員会の設置も決まった。中国政府は社会的な混乱を避けるため住宅購入者への物件引き渡しや取引先の保護に力点を置いて、恒大問題の軟着陸をめざす。

6日には、中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が主宰する中央政治局会議で、投機抑制を重視してきた不動産規制を修正し、景気減速に配慮する姿勢を示した。中国人民銀行(中央銀行)も同日、市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す「預金準備率」を15日から引き下げると発表した。人民銀によると、計1兆2000億元(約21兆円)の長期資金が市場に放出される。企業の資金繰りを支える姿勢を鮮明にした。

当局の一連の軟着陸をめざす動きを受け、金融市場は混乱を回避している。7日の香港株式市場では、恒大など不動産会社の株価がそろって値上がりした。アジアや欧州の主要株価指数も軒並み上昇している。米モルガン・スタンレーは「中国当局と地方政府はシステミックリスクを軽減しつつデフォルトに対処できる経験とメカニズムを持っている」と評価する。

もっとも、恒大は取引先への支払いを含めて2兆元近い債務を抱える。ドル建て債は海外投資家が多く保有しているとみられ、債務再編が「過度な国内優先」と映れば、投資家の反発を招く可能性もある。協議がすんなりまとまるかどうかは不透明だ。

20年に経営難に陥った中国の複合企業、海航集団(HNAグループ)の場合は地元の海南省を中心に社内体制や資産の状況などの確認を進め、再建型の法的整理に移行した。

15年に中国企業として初めて米ドル債をデフォルトした佳兆業集団(カイサ・グループ)のケースでは、債務再編案が2度否決され、最終的にまとまるまでに1年かかった。同社は直近も社債の償還期日を延ばす提案に同意を得られず、2度目のデフォルトに陥る可能性が出ている。

【関連記事】

・中国恒大、リスク管理委設置 広東省政府などが監督
・中国恒大、政府の全面関与で債務再編へ 軟着陸探る
・過度な金融政策依存リスク 中国「恒大」危機が映すもの

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

恒大集団経営難の問題が明るみに出てから、その経営者も監督当局も一度も記者会見を行っていない。投資家は報道などを通じて情報を集めているが、疑心暗鬼している。常識的にみて、この会社はおそらく債務超過に陥っていると思われる。もともとババ抜きゲームだった不動産投資はいよいよその結末を迎えることになる。崩壊しない不動産バブルは存在しないが、ハードランディングするか、ソフトランディングするかは、処理の仕方次第である
2021年12月7日 18:33 』

米ロ首脳協議、ウクライナ巡り応酬 平行線も対話継続へ

米ロ首脳協議、ウクライナ巡り応酬 平行線も対話継続へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07E080X01C21A2000000/

『米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領が7日、緊迫するウクライナ情勢についてオンライン形式で協議した。米欧はロシアが隣国ウクライナとの国境付近に軍を集結し、2014年に続いて再び侵攻するとの警戒を強めている。なぜウクライナ問題が国際情勢の焦点に浮上したのか、3つの視点から読み解いた。

・ウクライナはなぜ重要か
・米ロ双方の思惑は
・今後の展望は

(1)ウクライナはなぜ重要か

ウクライナは4000万を超す人口と広大な国土を持つ旧ソ連第2の地域大国で、欧州連合(EU)とロシアに挟まれた地政学的要衝にある。1991年のソ連崩壊までは構成国の1つで、ロシアと同じ東スラブ民族だ。プーチン氏は両国民が「ひとつの民族だ」と訴え、政治と経済、社会の一体性を強化すべきだと主張する。

ウクライナなしでロシアは帝国にはなれない――。ブレジンスキー元米大統領補佐官はこう述べたことがある。「大国の復活」を目指すプーチン氏にとって、ウクライナを自らの勢力圏にとどめることは絶対条件だ。だが、ウクライナでは2014年、親欧米派勢力が親ロシア派政権を打倒する政変が起きて地政学的状況が一変した。

政変に反発したロシアは、海軍基地を持つウクライナ南部クリミア半島とロシア系住民の多い東部に軍事侵攻した。クリミアを併合し、東部も事実上の支配下に置いた。ウクライナを不安定にし、いずれロシアの勢力圏に取り戻す狙いがあった。

一方、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)加盟を目標に掲げ、ロシアとの対立を深めた。欧米などから武器供給を受けて東部で軍備増強を進め、10月26日には親ロ派の軍事拠点にトルコ製無人機で初めて攻撃を加えたと明らかにした。11月初めには米第6艦隊旗艦がクリミアのある黒海に進入し、国境付近で軍事行動を活発にしたロシアとの間で一気に緊張が高まった。

(2)米ロ双方の思惑は

ロシアは今春にもウクライナ国境近くに軍を集結させ、6月の首脳会談にバイデン氏を引き出した。今回も軍事圧力をウクライナと後ろ盾の米国に対してかけ、自らの条件を飲ませようとしている。

条件は主に3つある。東部紛争の和平に向けた15年のミンスク合意の順守とNATOの東方拡大の停止、ロシア国境近くに攻撃兵器を配備、供給しないことだ。ウクライナ問題こそ最大の安全保障上の懸念であり「レッドライン(越えてはならない一線)」だと主張する。
ロシア軍部隊がウクライナとの国境近くに集まっているとされる衛星写真(11月9日撮影)=米マクサー・テクノロジーズ提供・AP

2000年のプーチン政権発足以降、ロシアと欧米の間で広がった相互不信も強い。プーチン氏は12月1日の演説で、1990年のドイツ統一を巡る協議で、米欧がソ連にNATOの東方拡大をしないと口頭で約束したにもかかわらず「全く反対のことが行われた」と積年の恨みを口にした。この演説を受け、ラブロフ外相は2日、NATOの東方拡大の停止など欧州安全保障体制に関する法的拘束力のある合意を結ぶよう米欧に提案すると表明した。プーチン大統領も7日の首脳会談でウクライナのNATO非加盟要求に加えて、攻撃兵器をロシアの隣接地域に配備しないことも「保証」に盛り込むよう求めた。

米欧やウクライナにとっては受け入れられない提案だ。バイデン氏は7日の首脳協議で、ウクライナとの国境におけるロシアの軍事活動への懸念を強調し、ウクライナの主権と領土保全への支援の意思を伝達。米欧はロシアがウクライナの東部国境に大量の兵士を動員していると主張し、武器供与も含めた同国への支援を強化している。

米国は最近のロシアの動きが2014年にウクライナ領クリミア半島の併合を宣言する前の状況に似ていると分析し、再びロシアがウクライナに軍事侵攻する事態を警戒する。

米紙ワシントン・ポストは3日、米情報機関の報告書などの内容としてロシアが22年初めにもウクライナ侵攻を計画していると報じた。最大17万5000人を動員した多正面作戦になる見通しだと指摘。独自に入手した衛星写真も掲載し、ロシア軍がウクライナ国境地帯の4カ所に集結しているという。

(3)今後の展望は

プーチン氏自身も欧州安保の新たな合意に関する交渉は難しいと認めている。今後も軍事圧力をかけつつ、時間をかけて打開の糸口を探るとみられる。このため、仮に一時的に緊張緩和に応じたとしても、ロシア軍の集結や挑発行為は断続的に続くとの見方が多い。米欧やウクライナとの話し合いに展望を見いだせないと判断すれば、軍事侵攻に踏み切る可能性が高まる。

米国は緊張が高まればNATOやウクライナへの軍事支援を強化する方針だ。ウクライナはNATOに加盟しておらず、米国は条約に基づく防衛義務を負っていない。ウクライナには武器輸出を拡大し、ロシアの脅威に対抗できる自衛力の増強を後押しする。

バイデン政権はすでにウクライナに対戦車ミサイル「ジャベリン」やパトロール艇の売却を決めた。米議会では高度なミサイル防衛システムの調達を支援すべきだとの声も出ている。2月にはトランプ前政権が決めたドイツ駐留米軍の削減計画の凍結を発表した。

一方で米国が欧州で米軍の人員や戦力を拡大するのは容易でない。バイデン政権は最大の競争相手である中国の抑止に向けてインド太平洋シフトを進めており、限られた人員や戦力をどう配置するかの最適解を探る必要がある。中国とロシアという脅威に向き合う米国は欧州や日本など同盟国との連携を強める構えだ。

バイデン氏は7日の協議でプーチン氏に、ウクライナに侵攻すれば欧州の同盟国と協調してロシア経済に深刻な打撃を与える措置を講じると伝えたが、緊張緩和の糸口になるか見通せない。

(モスクワ=石川陽平、ワシントン=坂口幸裕)

【関連記事】

・米ロ首脳がオンライン協議 ウクライナ巡り衝突回避狙う
・プーチン氏、ウクライナのNATO非加盟要求
・ソ連崩壊30年、強権へ回帰 欧米と再び対立

よくわかる解説コンテンツはこちら 
https://r.nikkei.com/topics/topic_column_21100500/?n_cid=MCH997 』

NATOが11月7日まで行った、「トライデント・ジャンクチャー」ってのがある…
(11月 7, 2018)
https://http476386114.com/2018/11/07/%ef%bd%8e%ef%bd%81%ef%bd%94%ef%bd%8f%e3%81%8c%ef%bc%91%ef%bc%91%e6%9c%88%ef%bc%97%e6%97%a5%e3%81%be%e3%81%a7%e8%a1%8c%e3%81%a3%e3%81%9f%e3%80%81%e3%80%8c%e3%83%88%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%87%e3%83%b3/