米台、急接近も中国の壁 蔡氏はサミット「参加できず」

米台、急接近も中国の壁 蔡氏はサミット「参加できず」
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『【台北=中村裕】バイデン米政権は、9~10日に開く「民主主義サミット」に台湾を招待した。台湾にとっては世界約110の国・地域の首脳らが集まる国際会議の場に「台湾」の名称で参加する異例の機会で、昨年来の米台接近の象徴的な動きだ。ただ中国への配慮から、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の出席という「一線」は越えられなかった。

同サミットは、米政府が主催し、民主主義国家の結束を促すのが狙い。中国やロシアは招待せず、中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は「分裂と対立を作り出すものだ」と強く非難した。

招待を受けた台湾の外交部(外務省)は11月24日、「バイデン大統領に感謝したい」との声明を発表した。台湾にとって、同サミットに参加できる意義は大きい。

台湾は1971年に国連から追放されて以来、国際社会で孤立した。台湾が現在、国際的な枠組みに参加が可能な主なものは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、世界貿易機関(WTO)、アジア開発銀行(ADB)、五輪などに限られる。

しかも、中国の反対などで「台湾」の名称使用はいずれも不可だ。APEC、五輪は「中華台北(チャイニーズタイペイ)」、WTOは「台湾・澎湖・金門・馬祖独立関税地域」の名を使うのが参加条件となる。その意味からも米側が今回、台湾を各国首脳が集まる国際会議に招待しただけでなく「『台湾』の名称使用を許した点は意味深い」(台湾の専門家)。

これに対し、中国外務省の趙立堅副報道局長は11月24日の記者会見で「台湾の独立勢力と一緒に火遊びをすれば自らの身を滅ぼすことになる」と述べ、米国を強く批判した。

一方、米台はやはり、一線を越えられなかった。台湾の参加者は、駐米大使に相当する蕭美琴駐米代表と、デジタル担当相のオードリー・タン氏。蔡総統でもなく、外交トップの呉釗燮・外交部長(外相)でもなかった。

外交部は、理由を明らかにしなかったが、米中情勢に詳しい台湾の王智盛・中華亜太菁英交流協会秘書長は「会議がオンライン形式の開催とはいえ、蔡総統が参加すれば、中国のレッドラインに触れ、(軍事的な)激しい反発の行動は避けられなかった」と指摘した。

1995年には、李登輝・元総統が米コーネル大学での講演を理由に、現職の台湾トップでは異例の訪米を成し遂げた。だが、中国は直後に弾道ミサイルを発射し、その後の米中による「台湾海峡危機」へと発展した。

その歴史から「米中にはまだ暗黙の了解がある」と、王氏は指摘する。「米側はあえて中国が主張する『一つの中国』に挑戦することはしない。だが従来、中国に大きく配慮して自主規制をしていた時代に比べれば、今回のサミット招待は、蔡氏を招待しない妥協案とはいえ、大きな突破口を開いた」と評価した。

昨年来、正式な外交関係がない米台の接近が続く。11月には米議員団が今年3回目の訪台を実現させ、蔡総統と会談した。ただ交流は議員レベルが多く、台湾からの訪米には、いまだ多くの障害があるのも現実だ。

9月には台湾外交トップの呉外相の訪米が英フィナンシャル・タイムズ(FT)の取材で明らかになった。だがワシントンには入れず、隣接するメリーランド州で米政府関係者と面会するにとどまった。台湾外交部も訪米のコメントを控えた。

今回のサミット概要が発表される直前の11月の米中首脳会談では、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が「台湾独立勢力がレッドラインを突破すれば断固とした措置を取る」と改めて警告した。

こうした姿勢からも、今後の米台関係について台湾師範大学の范世平教授は、「米中が台湾問題で協議の余地がどんどん狭まっている。そのため米台は中国への挑発は避け(サミットなどで)実質的な関係強化の道をさらに進めていく形になるだろう」と指摘する。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

政治はパフォーマンス。バイデン政権は経済的に中国に依存している現実を考えれば、これ以上、北京を刺激したくない。ただし、外交上の失点から国内に対して強硬姿勢を示す必要があり、このような選択をなされたのだろう。

これから中間選挙を迎えるバイデン政権は外交的にどのようなパフォーマンスをみせるか。それは東アジアの安全保障に大きな影響を及ぼすことになる

2021年12月6日 8:09 』